猫とワタシ

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もう少し感受性を働かせれば、毎日がスペシャルになる。そう自分に言い聞かせて、いろいろ感じたことを書きとめてみよっと。

この記事のみを表示する気軽に通える、超一級店 ~ 手打ちそば処『椿屋』

蕎麦>埼玉県所沢市



その日は、12月29日。
明日は会社が休みなので、昼間から蕎麦屋酒をやっちまおう、と決め込んで、
どっかの駅から歩いて行けるところ、というコンセプトで店を選んで、
西武新宿線・新所沢駅に行ってみたぜー。

ホントは昼酒と昼風呂は苦手なんだけどなあ。
昼酒は妙に酔っ払って、心臓がドキドキするし、
昼風呂は風邪を引いてしまうのだ。

駅から5分位歩くと『椿屋』はあった。
けっこう交通量の多い県道の道端にある、
3階建てくらいのマンション風の建物の一階だ。

パッと見の外観は、ただのマンションにしか見えないので、
これは、みーんな見逃してしまうだろうなあ、って感じ。
しかも、通りすがりの人でも気軽に「おっ、めしでも食ってくかあ」とは思いにくい感じの構えだ。
メニューもショウウィンドウも何もないんだもんな。

椿屋玄関

でも、入口の前に立ってよくみると、蕎麦好きならドキッとくる情報がちゃんとあった。
ひとつは、「手打ちそば処」であること。
もひとつは、ママチャリのノイズに紛れて「本日の蕎麦 宮崎児湯郡川南町産」
「品種名 鹿屋在来種」とあることだ。

椿屋蕎麦品種

普通にお腹が減っただけの人だったら、「なんじゃ、こりゃ」で終わりだろうな。
値段も写真も何もないうえに、漢字が戒名のように並んでいるんだから、
逆に不気味な感じがするかもしれない。

でも、蕎麦の味は、その産地や品種でずいぶん違うということを知っている人は、
これだけの情報で、おっと!と足を止めるに違いないね。

蕎麦粉の産地と言えば、北海道産とか長野産とか茨城産なんかがフツーで、
宮崎も蕎麦の安定産地だけど珍しいよね。
よくわからない地名だけど“在来種”なんて書いてあると、
そりゃ、そそられるっちゅうもんだ。

なんか得した気分で暖簾をくぐると、
外観の殺風景さとは違って、中は小ぶりで庶民的な感じだけどちゃんとした蕎麦屋だ。
テーブルが3つとこあがりテーブルが3つ、それに2~3人座れる程度のカウンターだけの規模。
15人も入ればいっぱいかな。

2人掛けのテーブルが1つ空いているいるだけで、そこに座ったっけ。
ちゃんと混んでいるんだな、これが。

メニューにはないんだけど、壁に貼ってある半紙にはなんと、「神亀」が!
そして、「男山」も!
おー、なかなかやるじゃん、と感動しながら、すかさず「神亀」の燗を注文。
それから、アテに「山かけ豆腐」も。

椿屋山かけ豆腐

燗酒の徳利&お猪口と一緒に、あたりまえのように蕎麦味噌が出てきて、
なるほど、ちゃんと蕎麦屋なんだ、とさらに納得。

蕎麦味噌の旨味 → 神亀 → 山かけ豆腐のあっさり → 蕎麦味噌・・・
というローテーションで日本の旨味のハーモニーを愉しんでいたら、
神亀がすぐになくなっちゃった。

ので、旭川の男山「鴨のネギ味噌」を追加。
「鴨のネギ味噌」ってなんだべか、と待っていたら、
杓文字に塗りたくった蕎麦味噌とあまり変わらないものが出て来て、
あれっと思ったけど、味は大違い。
蕎麦味噌に、刻んだ鴨肉が混ぜてあるからグンと旨味が強いのだ。

椿屋鴨のネギ味噌

「味噌の旨味 × 肉の旨味」が日本酒に合わないわけがないよな。
おまけに、醤油や味醂の旨味も蕎麦屋にはいっぱいあるから、
蕎麦屋酒はうまいに決まってる、というわけだ。

そろそろ蕎麦にいくか、と思って壁のメニューを見ると、
宮崎児湯郡川南町産であるうえに、「石臼挽き」と「更科」と「田舎」が選べるときた。
すべてのメニューで、麺をこの3種から選べるというからものすごい。
この店の凄味がガツーンと伝わってきたぞ!

なら、できるだけ種類を食べたいので、「合重ね(お好みのそば二枚重ね)」1,100円にして、
「石臼挽き」と「田舎」を試してみることにした。

先に出てきたのは、「石臼挽き」
おっと、これは “粗挽き” だ。美しい!
丸抜きを挽き込んだ、って説明には書いてあるけど、
蕎麦殻の黒い星が芸術的に散りばめられている。

他でも何度もこういう麺に出くわしているけど、
ココのはバツグンにきれいだねー。
これは、いいなあ!
ギュッ、ポンの外人系ねーちゃんじゃなくて、
楚々として可憐な和美人、って感じ。

しっかし、伝統的な微粒粉+細麺もいいけど、
粗挽きってのも、魅力あるよなあ。
どういう製粉と配合でこういう麺ができて、
どうやって“つないで”いるんだろう。

椿屋石臼挽き
合重ね・石臼挽き

椿屋石臼挽きアップ

少し黄緑がかった細身の粗挽き麺は、
すすって噛むと独特の甘味と香りが口の中に広がった。

“二枚重ね“と書いてあるのに、後から「田舎」が出て来た
これは、お昼の混雑対応とのびるのを防ぐのと、うまい時間差攻撃だな。

んー、この田舎も粗挽きだ。
“田舎”は、うどんみたいに太いのが多いけど、ココのはフツーの太さ。
その分、田舎+粗挽きでもズルッとやりやすいかな。
コシのしなやかさと味の濃さが半端じゃない!

そういえば、蕎麦汁の出しの風味の強さも、他とは一線を画しているな。
うん、だからって、けっして魚介くさいというわけでもなく、
こういううまさもあるんだ、と気づかされる。

椿屋田舎
合重ね・田舎

椿屋田舎アップ

ちょっと、待てよ!
これまで「椿屋」なんて名前、聞いたことなかったよなあ。
これはひょっとして、すごい店、見つけちゃったぜ。

何がすごいかって、この店は小さなお店のナリも値段も
まったく粋を気負うことがなくてごく庶民的なのに、
蕎麦は最先端を行っていることだ。

最近の蕎麦打ちのトレンドは、「手打ち」、「十割」、「田舎」ときて
手動にしろ電動にしろ「石臼挽き」がポピュラー化しているけど、
その次に、手打ちの「粗挽き」が盛り上がっていると思う。
もちろん、全部昔からあるものだけど、ブーム化という意味で。

その先を、「熟成蕎麦」とか「杵つき」や「寒ざらし」が “はしって” いるけど、
「石臼+粗挽き」が旬だろうと思う。

そして、玄蕎麦の「産地」と「品種」の表示
これも、最近ぐぐっと流行り始めているんじゃないかと。
もう、ワインのブランドと同じ感じになってきたね。

「やっぱ常陸秋だなあ」とか「今年は、徳島県祖谷在来種がいいらしいぞ」とか
「この前、イタリア産のサラセン種で作ったそばを食べたよ」なんて
電車の中のおじさんが会話してるのを聞く日も、間違いなく近いな。
いやいや、おちょくっているんじゃなくて、わくわくうれしい気持ち。

「粗挽き」と「産地・品種表示」・・・
そう「椿屋」は、この蕎麦界最新トレンドをスコーンとやっちゃってるのだ。

最近よく見るスノッブなたたずまいでジャズが流れてて、
メニューに粗挽きのもりと田舎しかなくて、
一枚1,000円もするようなもったいぶった蕎麦屋なら感動も薄いけど、
ココは、見た目も値段もフツーの蕎麦屋だからジーンとくるんだよ。
このフツーと最先端のギャップが、なんともわくわくなのだ。

「椿屋」のすごさは、それだけじゃない。
まずは、メニューの豊富さ。
いわゆるもり・せいろ系が11種、冷たいぶっかけ系が6種、
温かいかけ・種物系が12種、どんぶり系のご飯ものが6種、
ヌキを含めないおつまみ系が14種、
どんぶりとセットのランチメニューが6種、
定番の酒類が10種!デザートも1つある!

それに、蕎麦の麺の「石臼挽き」「更科」「田舎」の3種をかけ算すると、
壮大なグランドメニューになるじゃんか!
さらに、神亀などのその時々のおすすめの酒や季節の変わり蕎麦、
季節のタネで揚げた天ぷらの盛り合わせ、
メニューにないおつまみなんかもあるから、すご過ぎ。

そして、安さ
もり650円、鴨せいろ1,050円、かき揚げ天そば950円、かつ丼と手打ちそばのランチセット950円、
鴨の治部煮850円、だし巻玉子550円、かき揚げ天420円、山かけ豆腐350円・・・・。
これも、かなりだね。

これなら、およそこの世に存在する蕎麦屋遊びのほとんどのことが、
このたった3人で切り盛りしているちっちゃい店で体験できるぞ。

そうそう、それって子供も大食いも酒好きも蕎麦通も、
みんなが満足できる店ということだ。
“気軽に通える、超一級店”とでも言えばいいのかなあ。

入口が小さくて、中も小さいのに、すげー深い懐の蕎麦屋。
メニューも多くて安くて、庶民的なのに、すごい蕎麦を出す店なんだなあ。

超オーセンティックなのに、庶民的で親しみやすい蕎麦屋、
・・・というのもあるよねぇ。
それは、僕の場合「神田まつや」のこと。
まあ、まつやの店内はそんなに小さくないけど、


神田まつや
神田まつやの店先

まつやと比べて「椿屋」に足りないのは、当然、歴史だよね。
まつやは、いい感じにひなびた店内外の造りと、
気取らないおばちゃんの接客が気持ちいいよねぇ。

でも、まつやは「切り」が機械だと聞くけど、
手打ちで最先端の蕎麦を出している分、
新しめのナリの椿屋もまんざらでもないかとも思う。

“どんなにすごい蕎麦を打っていても、どんなに長い歴史を背負ってても、
大名屋敷への出前以外は、蕎麦屋は庶民の気軽なカフェなのだ”、
というスタンスが貫かれている店、
それがホントにいい蕎麦屋に違いないと思うなあ。

満席の「椿屋」の店内、カウンターに着いてる初老ご夫婦の旦那さんが、
女将の手すきのタイミングで、「にしん蕎麦を田舎で」って注文してた。
メニューにはないけど、ちゃんとあるんだな、これが。

客と馴れ合い言葉を交わすわけでもなく、あわてるわけでもなく、
女将が厨房にさらっとオーダーを通してた。

「椿屋」では、一日に何杯のにしん蕎麦が注文されるんだろうか。


●手打ちそば処『椿屋』
埼玉県所沢市北所沢町2017-6
04-2942-6000
「水~月」11:00~20:30
ランチ営業、日曜営業
定休日/火曜日


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secret

最高の店です最高の店です

本当にいい店だと思います。
雑誌なんか見ながら東京の名店巡りをしたことありますが、ここの蕎麦、サービスは一級ですね。
そして庶民的で、ほんとにリラックスして気持ちよくなれます。
最高の店です。

Re: 最高の店ですRe: 最高の店です

のーまんさん、書込みありがとうございます。
ウチのページ、去年の10月頃から始めて知人にもこのブログの存在をあまり知らせてないせいもあるのですが、
あまりにも書込みがないので、気づかずレスが遅くなってしまいました。
すみませんでした。

のーまんさんが、書込み第一号です!
(別にうれしくはないですよね)
ありがとうございます。

はい!ものすごくいい店ですよね。
気取らずサラッとしているのに、蕎麦もツマミも多彩で蕎麦屋らしくて、接客も適切だし、安いし。
肩肘張っていないのに超 質が高い!
僕も “気軽に行って、最高レベルの蕎麦を楽しめる” 理想的なお蕎麦屋さんだと思います。

いつまでも続いてほしい店のひとつですよね。
一緒に応援してあげましょうや。

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