色丹島に行ってみたいなあ ~ 『ジョバンニの島』



子供の頃、
「ソ連は卑怯にも、戦争が終わった後に侵攻してきて、北方領土を占領したんだよ」
って聞かされてきたんだよ。
僕は道産子なので、身近にそういう話題に触れることが多かった気がするなあ。



日本が言う “戦争の終わり” とは、1945年8月15日のことだよね。
同年7月26日に、米・英・中の3か国によって発せられたポツダム宣言(日本軍の無条件降伏を要求)を受けた後、
8月6日の広島、8月9日の長崎への原爆被害を経て、8月14日にポツダム宣言受諾を決定して連合国に降伏を通告。
翌日の15日に国民に玉音放送をしたから、8月15日が終戦記念日になったんだよね。

ところが、アメリカとイギリス、フランス、カナダ、ロシアは、
日本がポツダム宣言の降伏文書(休戦協定)に調印した日 = 1945年9月2日
「対日勝戦記念日」または「第二次世界大戦終結記念日」に指定しているんだよ。

さらには、日本国との平和条約(サンフランシスコ平和条約)の発効日である、
1952年の4月28日を「対日戦争終結日」とする考え方もあるんだな。

つまり、日本は・・・
「8月14日に降伏を通告したんだから、その後に侵攻・占領した領土の奪取は認められない、日本に還せ」

と主張しているんだけど、
ロシアは・・・
「いや、9月2日の無条件降伏調印までは戦争状態だったんだから、戦争で奪った領土は返さない」

と主張しているんだな。

でも、日本はたとえ終戦日を9月2日だとして百歩譲ったとしても、
下記のような理由で、不当な占領は認められない、と主張しているんだよ。
ソ連が日本の北方四島に侵攻したのは、1945年の8月8日の対日宣戦布告の後からなんだけど、
実は日本とソ連は、その前から「日ソ中立条約」というのを結んでいたんだね。
これは、明らかな条約違反だし、おまけにアメリカによる原爆投下のさ中での戦線布告は卑怯だろ、
って詰め寄っているんだけど、ロシアは無視しているみたいだな。
それどころか、最近はますます北方四島での産業開発に力を入れているというのが現状だよなあ。



この映画は、北方領土の4島 = 国後(くなしり)島、歯舞(はぼまい)群島、色丹(しこたん)島、
択捉(えとろふ)島のうちの色丹島を舞台にした映画なんだよ。

<あらすじ>

色丹島にはもちろん日本人が住んでいて、主に漁業で生計を立てていたんだな。
戦時中にしてはワリと平和な状況だったけど、
逆に8月15日の後から物騒な感じになってくるんだよ。
ソ連軍が上陸してきて、住民の住居や財産、役所や学校なんかを勝手に奪って
ソ連軍人やその家族なんかが島に住み始める。

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日ソの住民たちは、軍人たちのピリピリ具合をよそに、ワリと溶け込んで暮らすんだよ。
主人公のお兄ちゃんは、ソ連人の同じくらいの年頃のコと恋をしたりする。
そう、この物語は深刻なばかりでなく、恋の物語でもあるんだよ。

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しばらく、日ソの一般の人たちは大きなトラブルを起こすでもなく共生しているんだけど、
いよいよ日本人の強制退去の日がやってくる。
本土(北海道)への強制移送だな。

荷物や動物のように運ばれる住民。
途中で亡くなって、海に捨てられる赤子・・・。

主人公の家族も船で移送させられるんだけど、なんと着いた先は本土ではなく樺太
一時的な中継場所なんだろうけど、そこは凍土に囲まれた奴隷の収容所のような所だったんだな。
親子は別々の場所に分けらたうえ、お父さんは軍事関係者なので、強制労働までさせられる。

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それから、70年(?)後、当時、色丹島に住んでいた住民が集まって、
ロシアの現住民との交流会が開かれる・・・。



うん、思った通りのストーリー。
予定調和を絵に描いたような結末。
まとも、まとも。

でもね、この作品にはいいところが2つあると思う。
ひとつは、北方領土問題の一部でも、その具体的な事実が映像として記録されていることだ。
いろいろに語り継がれているけど、映画で可視化されていたならすごくわかりやすいよね。

もうひとつは、この映画はアニメーション作品としてとても美しいこと。
3DCGを駆使したりして、超テクだという意味ではなくて、絵画的に美しい。
絵心にあふれた作品だな。

その美しさの極みが、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」をモチーフにしたファンタジーなカット!
それが、物語の勘所に挿入されているところが、この作品のキモじゃないかな。
ジョバンニとカムパネルラは、“みんなの本当の幸せ“ のために銀河に向かうんだよ。
うーん、やられたー、「銀河鉄道の夜」を持ってきたかあ、って感じ。

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日本音楽事業者協会という、ホリプロやナベプロなど日本中のタレント事務所の協会の
50周年記念映画だもんだから、声優陣へのタレント起用は壮観。

監督は『アタゴオルは猫の森』『宮本武蔵 -双剣に馳せる夢-』などの西久保瑞穂。
原作と脚本は、『北の国から』シリーズや『最後の忠臣蔵』などの杉田成道。



この映画は、事実に基づいた作品なんだよ。
いまは季節はずれだけど、一度は観てみたほうがいいかもねー。





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●ジョバンニの島
2014 日本
上映時間:104分
監督:西久保瑞穂
原作:杉田成道
脚本:杉田成道、櫻井圭記、池端俊策(協力)
キャラクター原案:福島敦子
キャラクターデザイン・作画監督:伊東伸高
撮影:アレッサンドロ・キオド
総美術監督:サンティアゴ・モンティエル
美術監督:林孝輔、稲葉邦彦
CG監督:井野元英二
音楽:さだまさし(メインテーマ)
編集:植松純一
製作:日本音楽事業者協会(製作)、Production I.G.(アニメーション制作)
配給:ワーナー・ブラザース映画
声の出演:横山幸汰、仲代達矢、谷合純矢、市村正親、北島三郎、ユースケ・サンタマリア、
     柳原可奈子、仲間由紀恵、八千草薫、犬塚弘 ほか
受賞:2014年アヌシー国際アニメーション映画祭 長編部門審査員特別賞
   LA EigaFest 2014 公式招待


プロフィール

つかりこ

Author:つかりこ
北海道生まれ。広告制作会社勤務。スポーツ、飲み食い、音楽、読書、映画などなど、興味がゆらゆら。

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