真夏の夜に、冷えすぎない涼をどうぞ 2/3


◆ザ・ギフト(The Gift)

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2015 アメリカ
上映時間:108分
監督:ジョエル・エドガートン
脚本:ジョエル・エドガートン
製作:ジェイソン・ブラム、レベッカ・イェルダム、ジョエル・エドガートン
撮影:エドゥアルド・グラウ
編集:ルーク・ドゥーラン
音楽:ダニー・ベンジー、ソーンダー・ジュリアーンズ
製作会社:Blumhouse Productions、Blue-Tongue Films
配給:STXエンターテインメント(米)、ロングライド/バップ(日)
出演:ジェイソン・ベイトマン、レベッカ・ホール、ジョエル・エドガートン、
   アリソン・トルマン、ティム・グリフィン、ビジー・フィリップス、
   アダム・ラザール=ホワイト、ボー・ナップ、ウェンデル・ピアース ほか
受賞:第48回シッチェス・カタルーニャ国際映画祭
   ・最優秀男優賞受賞(ジョエル・エドガートン)


ギフトって、どういう意味?

ジョエル・エドガートンの長編初監督、脚本、製作、出演!
ジョエル・エドガートンといえば、『スター・ウォーズ エピソード2』や
『スター・ウォーズ エピソード3』、『ウォーリアー』、『エクソダス:神と王』
などの役者だよね。
『ジェーン』の脚本もやってんだね。
へぇー、多才なんだねー。

この映画は、Wikiによると、サイコ・スリラーということに
なっているみたいだね。

「スリラー」というと、「ミステリー」と似た意味で、
映画・ドラマの世界では、「謎が謎を呼び、それが少しずつ解かれていく」系
の物語のことを言うんだそうだ。

でも、「ミステリー」は最後に事件解決的に謎が解明されるのに対し、
「スリラー」は最後まで謎が解明されないか、
最後に謎は解明しても、最後まで事件や問題が解決しない
もののことを
言うんだってさ。

で、「サイコ」は「心理」だから、「謎が解明されていく度、そぞーっとする映画」
というわけだ。がははー

でも、「ホラー」でも「オカルト」でもないから、
血や内臓が飛び出すような惨殺とか、突然驚かされる恐怖とか、
オバケの恐怖の映画ではないよ。
あくまで、ぞぞーっ。

ジョエル・エドガートン氏は、役者としてはフィジカル系がほとんどで、
コレ系の映画に出たことなかったと思うけど、
ご本人はこういうの好きなんだろうなー。

だってさ、すごく良くできたハナシなんだもんな。
やー、これはなかなかの名作だと思う。



ある幸せそうな夫婦がいて、夫の故郷に引っ越してくるんだな。
たしか、夫はIT系の事業に成功していて、新居もご立派。

ある日、二人で買い物かなんかに出かけた先で、
夫の高校時代の同級生にパッタリと出会う。
故郷なんだから、そういうこともあるわなー。

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後日、その同級生から高そうなワインが引っ越し祝いとして届けられる。
聞くところによると、アメリカあたりではディナーとかで招かれた時に
一緒に飲む酒を持って行ったりすることは稀にあるけど、
引っ越し祝いということで高価な贈り物を届けたりするようなことは
あまりなくて、あったとしたらそれはとっても粋なことか、
とっても奇異なことらしいんだな。

夫婦、特に奥さんのほうは、そのとっても粋なほうと受け止めて
すっかり気を良くして、彼を夕食に招く。
それからというもの、その旧友はちょくちょく高価な贈り物を
持って来るようになるんだな。
しかも、旦那のいない間に家までやってきて。

そう、だんだん不気味になってくる。
そう、この作品もこの “だんだん” というのが秀逸なんだなー。
サイコだよ、スリラーだよー。

で、奥さんは、旦那の高校時代からの親しい友人だし、
贈り物をくれるしということで好感を深めていくんだけど、
旦那のほうは妙に嫌っているところがミソなんだな。

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この映画が文脈の点で優れているのは、
何かをくれる人が不気味だというところにあると思う。
フツーこのテの映画は、破壊するとか、殺すとか
何かを “奪う” 人が不気味だからだ。
新しい!
もうそれだけで、「んー、いいね、いいね」って見入ってしまうわさ。

それから、ジョエル・エドガートンが演じる “贈り物男” に対する
自分の気持ちが、ハナシの途中からガラッと180度変わってしまう
のもおもしろかった。
ヒトって、状況によって思い込みがコロコロ変わるもんなんだねー。

そして、あのエンディング!

ギフトって、「贈り物」という意味の他に、
「神様からの授かりもの」という意味があるんだねー。
この映画を観た人には、それがどういう意味か、わっかるかなー?

★個人的クオリティ度 9.0点
★個人的好きだなあ度 8.5点






♪ Everyone's Gone To the Movies / Steely Dan





♪ Any World (That I'm Welcome To) / Steely Dan




真夏の夜に、冷えすぎない涼をどうぞ 1/3


◆インビテーション(The Invitation)

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2015 アメリカ
上映時間:100分
監督:カリン・クサマ
脚本:フィル・ヘイ、マット・マンフレディ
製作:マーサ・グリフィン、マット・マンフレディ、フィル・ヘイ、ニック・スパイサー
撮影:ボビー・ショア
編集:プラミー・タッカー
衣装:アリーシャ・レイクラフト
音楽:セオドア・シャピロ
音楽監修:ランドール・ポスター
配給:アットエンタテインメント
出演:ローガン・マーシャル=グリーン、タミー・ブランチャード、ミキール・ハースマン、
   エマヤツィ・コーリナルディ、リンジー・バージ、マイク・ドイル、
   ジェイ・ラーソン、ジョン・キャロル・リンチ ほか
受賞:シッチェス・カタロニア国際映画祭
   ・グランプリ受賞
   ストラスブール・ヨーロピアン・ファンタスティック映画祭
   ・審査員賞受賞


インビテーションって、どういう意味?

巷では評価が低いみたいだけど、なんでよー?
こりゃ、おもしろいよ。

サイコ・ホラーというやつだな。
まあ、たしかに、家の中を中心としたワン・シチュエーションものだし、
ちょっとは血が出るけど、チェーンソーで人をズバズバ切るとか、
壁から突然手が出てくるとかないし、
恐ろしい顔をした幽霊が出てくるというわけでもないので、
刺激が少ないと言えばその通りなんだけど、
この “不穏な空気” の描き方には脱帽だなあ。



あるカップルがいて、ある日、その男のほうにディナーの招待状が届く。
2年前に別れた、元妻からだ。
実は元妻のほうも、新しい恋人と暮らしているようだ。

元夫婦は、ある辛いことがあって別れてしまったんだよ。
喧嘩別れをしたわけではないので、
お互い憎しみ合っているというようなことはなく、
元妻の身辺で、何かいい進展でもあったんだろうなということで、
元夫はいまの恋人を連れて出かけていく。

かつての我が家に着くと、そこには旧友夫婦たちも集まっていた。
全部で10人くらい集まったのかな。
別れる前にずどーんとふさぎこんでいた元妻も、すっかり明るくなっていて、
みんなは思わぬ再会を喜び、和やかなパーティが始まろうとしていた。

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でも、元夫だけはなんとなく違和感を感じ始める。
住み慣れたはずの家の感じや、旧友たち以外に招かれている人のようすが
かすかだけど変な感じなのだ。
それが、時間が経つにつれ、少しずつ確信めいてくる・・・。

そう、この “不穏な空気” こそ、この映画の優れたとこなんだよ。

でも、「なんだー、ホラー映画によくあるワン・シチュエーションものの展開じゃん、
想像通りで安っちいなあ」って僕も観ていたんだけど・・・
ところがだ・・・
ラストで、ああーーーーっ、ぞぞーーーーっ!!

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失礼だけど小品です。
A級とB級の間くらいのカルトムービーって感じ。
でも、テレビドラマの『世にも奇妙な物語』でも観るつもりで観てませ―。
そしたら、辞書で「invitation」のもう一つの意味
確かめたくなること請け合い!

★個人的クオリティ度 6.0点
★個人的好きだなあ度 9.0点






♪ 絶体絶命 / シシド・カフカ




そして家族になる ~ 『ディーパンの闘い』


6月20日は、「世界難民の日」だったんだってさ。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などが提唱して、
国際連合総会の決議で2000年12月に定められたとのこと。
2001年から毎年、世界各国で難民救済のためのキャンペーンや
イベントが行なわれているんだそうだ。



この映画を観るまで、2009年の最近までスリランカで
激しい内戦が行なわれていた
ということを知らなかったよ。

スリランカは、シンハラ人という人種が7割
タミル人というのが約2割、+その他1割で構成されている
らしいんだけど、イギリスが植民地にしていた時代には
少数派のタミル人を重用する政策をとっていたとのこと。

でも、イギリスから独立した後からは、当然、
多数派のシンハラ人を優遇した政策がとられるようになるよね。
だもんだから、1956年頃から民族間の対立が高まっていったんだと。
またイギリスの負の遺産か、って感じ。

で、1972年にはタミル人がスリランカからの分離独立をめざして
「タミルの新しいトラ (TNT) 」という反政府勢力を発足。
'75年にはそのTNTを母体とした「タミル・イーラム解放のトラ (LTTE) 」
結成して、テロやゲリラ戦などの武力活動を展開していたんだよ。

そしてとうとう、1983年に両者の虐殺合戦が勃発。
総力戦の末、2009年5月にシンハラ派政府軍が勝ったカタチで内戦が終結。
その終戦の直前の4月に、難民と化した一般のタミル人が15万人も
国を脱出
したんだそうだ。

この映画の主人公の男は、その15万人のタミル人に紛れてフランスに脱出した
元「タミル・イーラム解放のトラ (LTTE) 」の戦士という設定なんだな。
や、主人公を演じた俳優は、ホントにLTTEの戦士だった人だそうだから
設定というかなんというか。

あ、ここまで読んで、「うぇー、おもしろくなさそう」って思っているよね?
まあね。
でも、映画の内容には、スリランカとか、タミル人とかあんまり関係ないかな。
「どっかの国から逃げて来た男(家族)」の「フランスでの難民生活」、
っとだけ知ってて観ればいいんじゃないかな。
いま、ヨーロッパでいろいろ問題になっている “難民のひとつのケース”
ということだね。



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主人公の男の名前は、ディーパン。
ホントの名前じゃない
パスポートに書いてある年齢も、ホントのトシじゃない。

妻はまったく知らない女。
スリランカの港で難民船に乗る直前にあてがわれた女だ。

内戦に巻き込まれて死んでしまった赤の他人の3人家族の
パスポートを流用して、その家族構成に当てはめて
即席に夫と妻ということにされたのだ。

娘は、道端で途方に暮れていた母子家族の3人の子供のうちの
1人をもらってきた

偽物の3人家族はフランスに着いた。
長い船旅をともにしたからといって特段、仲良くなったわけではない。

偽物とはいえ、3人の身元を証明するパスポートがあるのだから、
3人くっついているのが得策に違いないのだけど、
とりあえず妻、ということになった若い女にとっては、
まんまとスリランカを脱出してしまえば、好きでもない歳の離れた男と
人数合わせのための子供なんか邪魔なだけなのだ。

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ディーパンは、内戦のとばっちりでホントの妻子を亡くしていた。
もう、民族が違うだけで相手を憎んで暴力を振るったり、
愛する人を殺されたりするのは耐えられなかった。

どんなに貧しくて、どんなにボロい住居に住むことになろうとも
今度こそは、毎日銃弾に怯えたりすることのないところで、
穏やかに生きていきたい、と願っていたのだが・・・。

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難民の暮らしは、難民になる前も、なった後も過酷だ。
この映画は、偽物の家族が、そんな暮らしの中に
ホントの愛や家族の絆を浮かび上がらせる。





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●ディーパンの戦い(Dheepan)
2015 フランス
上映時間:115分
監督:ジャック・オーディアール
脚本:ジャック・オーディアール、トマ・ビデガン、ノエ・ドゥブレ
製作:パスカル・コシュトゥー、ジャック・オーディアール
撮影:エポニーヌ・モマンソー
編集:ジュリエット・ウェルフラン
音楽:ニコラス・ジャー
製作会社:Canal+、Ciné+、フランス2シネマ、フランス・テレビジョン、
     ページ114、ホワイ・ノット・プロダクションズ
配給:ロングライド
出演:アントニーターサン・ジェスターサン、カレアスワリ・スリニバサン、
   カラウタヤニ・ヴィナシタンビ、ヴァンサン・ロティエ、
   マルク・ジンガ、フォージ・ベンサイーディ ほか
受賞:第68回カンヌ国際映画祭 / パルム・ドール
   第33回マイアミ国際映画祭 / 審査員賞
   第19回オンライン映画批評家協会賞 / 米国未公開作品賞
   第40回トロント国際映画祭 / スペシャル・プレゼンテーション部門上映







♪ 15 Step / Radiohead





♪ ムラサキ☆サンセット / キリンジ




アリスあるいは浦島太郎 ~『リップヴァンウィンクルの花嫁』


んー、これは、“フシギちゃん” ですー。

『スワロウテイル』や『リリイ・シュシュのすべて 』、
『花とアリス』の岩井俊二監督の最新作と言えばわかりやすいかな。

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●『リップヴァンウィンクルの花嫁』は、サスペンスである

最後までハラハラさせられるという意味では、サンペンスだし、
最後まで謎を孕んでいるという意味では、ミステリーかもしれない。

綾野剛が演じる人物が、結局は「いい人」なのか「悪い人」なのか、
何かのメタファーなのか、この映画を観た人と語り合いたくなるわー。

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●『リップヴァンウィンクルの花嫁』は、社会派である

物語の冒頭から、すぐにわかることだけど、
この作品の大きなテーマは「ネット社会」なんだなー。

PCやスマホって、カンタンに買い物をしたり、
バンドメンバーや結婚相手を見つけたりできるよね。
それって、フツーだったら「何度も接して・見て・話して・触れて・
いくつかの想いをシェアして・信用できる仲になって」
といっためんどい手続きを踏んでからやるものだけど、
ネットでだったらそれらを省いて、カンタンにやれる
ってことなんだよな。

何か込み入った相談事だって、余計な気を遣わずに
すぐにお互いの内面を持ち寄ることができる。
それによって、ずいぶん救われる人もいるはず。

でも、その「信用づくり」や「仲良し絆づくり」のプロセスが省かれているがゆえに
いつ諍いの爆弾が爆発するかもわかんないし、
それを利用した詐欺のような犯罪も生まれるんだろうね。

そんな「新しい社会現象」を生む道具について考えさせられるハナシでもあるな。

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●『リップヴァンウィンクルの花嫁』は、文芸作品である

この映画の言いたいことの核心は、「孤独」というものじゃないかと思う。
それは、ネットのあるいまも、それがなかった昔も
大した変わりはないのかもしれないけど、ネットという触媒ができたいま
人の孤独が新しい見え方をするようになったということ。

他人の行為を「優しい」と感じるのは、自分が孤独だからなのかもしれないし、
他人を「冷たい」と感じるのは、いま満ち足りているからかもしれない。
いまの時代の「孤独」とは?「絆」とは?

そんなことを問うているのではないだろうか?

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●『リップヴァンウィンクルの花嫁』は、おとぎ話である

岩井監督はきっと、「不思議の国のアリス」が好きなんだろうね。
この作品も、一人のいたいけな女子が、
いろんなハプニングに見舞われながら前に進んで行く。

ただ、主人公は少女ではなく(20代後半?)、
ハプニングは案山子がしゃべったりするようなファンタジーでなく、
実際にいそうな人や実在社会の悪意や善意だということ。
全然シュールじゃなくて、ありえないことは起こらない。
“いま、身のまわりにあるアリスの世界” なんだと思う。

主人公は、いくつものハプニングに出会い、どんどん堕ちていく
・・・ように見えるだけで、実はそのトラブルの壁を突き抜けて
傷つきながら大きくなっていく・・・ように見える。

ちなみに、“リップヴァンウィンクル” というのは、
欧米版の「浦島太郎」みたいなハナシなんだそうだ。(未読)
「浦島太郎」だって、亀を助けて竜宮城という時空を突き抜けて
新しい世界と自分を見つけるんだよね。
ほら、「不思議の国のアリス」だっておんなじ仕立てに違いない。

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●『リップヴァンウィンクルの花嫁』は、黒木華ムービーである

岩井監督はきっと、黒木華が好きなんだろうね。
監督いわく、2012年に手がけたCMのオーディションで
出会ったのをきっかけに、彼女をイメージして小説を書いたのが、
この映画誕生の第一歩だったんだそうだ。

僕も、色白で、か細い声で、まじめで、世間知らずで、
夢見がちだけどアグレッシブではなく、人を疑うことを知らない
危なっかしい女性・・・そんなイメージを持ってたっけ。

いやいや、ホントのことは知らないよ。
友達でも知人でもないし、
じっくりトーク番組なんかで観察したというわけでもないし。
イメージ、いめーじ。

この映画は間違いなく、映画俳優としての黒木華が、
ますます好きになる作品
だと言ってしまおう!

あ、Coccoの演技もすごいよ!
そうそう、この物語のコアメッセージは彼女にこそあると
言っていいかも知れないな。

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・・・こんな風に、いろんな観方ができるという意味で
“フシギちゃん” な映画だと言いたかったんだよ。
逆に言うと、どんなジャンルにも属さないと言えるのかも知れないね。

多元的な手ざわり、複数のテーマ、
たくさん出てくる疑問と、たくさん想像できる答え・・・
こんな複雑な味わいを持った作品は、原作が他人のマンガや小説では
作ることができないんだろうなあ。



最近、映画もテレビドラマも、やたらとマンガが原作のものが多いよねぇ。
それって、なんでかわかる?
もちろん、すばらしいマンガ作品がたくさんあるからに違いないんだけど、
映画製作上のたくさんの手間も省けるからなんだね。

なんにも決めずに、いきなりクランクインする場合もあるけど、
通常は商業映画って、クランクインするまでにもいろんな労力が注がれているんだね。

①「企画書」を書いて、出資者や制作会社、配給会社などにアタリをつける
②「ストーリー」を書いて、出資者や制作会社、配給会社などを説得する
③「シナリオ」を書いて、出資者や制作会社、配給会社、出演者などを説得する
④「絵コンテ」を書いて、制作関係者に浸透させ、制作を進める

↑オリジナル作品の場合、だいたいこんな感じなんだけど、
ところがマンガ本を原作にしたら、②~④を省く、
または大幅に削ることができるんだな。
だって、やり方によっては
絵コンテがすでにできあがっているようなもんだからね。
そりゃ、すごい手間の削減だよね。

しかも、タネ本のマンガはすでに発行済みだから・・・

⑤ 映画封切り前の宣伝・PRになる
⑥ すでにファンやオピニョンリーダーができあがっている
⑦ 相乗効果で、本・映画ともキャラクターグッズやノベライズなどの
  派生ビジネスがやりやすくなる

・・・などの省予算やシナジー効果も生まれるという、いいことづくしなんだね。

でも逆に、ビジュアルやストーリーが高い完成度でできあがっちゃっているがゆえに
「映画制作者の思い入れが反映しずらくなる」=
「映画表現の創造性や新規性が低まる」 = 「おもしろさが減る」
ということなんだろうな。



この映画は、原作から脚本、演出、撮影、編集まで岩井監督のオリジナルなんだよ。
だから、こういう絶妙なタッチの、誰にも似ていない作品ができるんだろうね。

最近では珍しい「映画作家」の映画、いいねぇー。





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●リップヴァンウィンクルの花嫁
2016年 日本
上映時間:180分
監督:岩井俊二
原作:岩井俊二
脚本:岩井俊二
製作総指揮:杉田成道
プロデューサー:宮川朋之、水野昌、紀伊宗之
制作プロダクション:ロックウェルアイズ
撮影:神戸千木
編集:岩井俊二
美術:部谷京子
スタイリスト:申谷弘美
メイク:外丸愛
音楽:桑原まこ
製作:RVWフィルムパートナーズ(ロックウェルアイズ、日本映画専門チャンネル、
   東映、ポニーキャニオン、ひかりTV、木下グループ、BSフジ、パパドゥ音楽出版)
配給:東映
出演:黒木華、綾野剛、Cocco、原日出子、地曵豪、和田聰宏、
   佐生有語、金田明夫、毬谷友子、夏目ナナ、りりィ ほか
受賞:第40回日本アカデミー賞(2017年)
   ・優秀主演女優賞/黒木華
   第41回報知映画賞(2016年)
   ・助演男優賞/綾野剛 (『怒り』、『64-ロクヨン- 前編/後編』と合わせて)
   第31回高崎映画祭(2017年)
   ・最優秀助演女優賞/りりィ
   第90回キネマ旬報ベスト・テン(2017年)
   ・日本映画ベスト・テン 第6位








♪ 何もなかったように / Cocco





♪ Hana wa Saku (Flowers will Bloom) / Kaori Muraji




泣かせる爆弾の地雷原 ~ 『湯を沸かすほどの熱い愛』


所沢市って、けっこう文化的なことやってんだよね。
月に1回、新聞に折込チラシが入るんだよ。
「ミューズ イベント・インフォーメーション」って言うんだけどね。

それには、師匠クラスを集めた寄席や、フジコ・ヘミングとか
ウィーン少年合唱団とかのクラシックコンサートや、
人気 J-POPアーティストのコンサートとか、
そして映画の上映会とかが案内されてんの。

いつもすごいアーティストばかりが揃っているし、
市が主催しているので微妙に安いんだよね。
(もちろん税金等が使われているんだろうけど)

これまた、施設がいいんだよ。
「ミューズ」というのは、所沢市の市民文化センターのことで、
大ホール、中ホール、小ホール、バンケットルームで構成された
インベト施設なんだけど、大ホールはオーストリア製の
日本最大級のパイプオルガンが備えられているほどの音響ホールだし、
中ホールはイギリスのシェイクスピア劇場のスワン座を参考に作られた
超ハイクオリティな設備なんだよな。

ちょくちょく目にして、気になっていたんだけど、
年1回かな、「世界が注目する日本映画たち」というのが
催されているのさ。

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よく見ると、企画・制作が「ぴあ」なんだよ。
お金の補助と場所は所沢市が出して、コーディネートとチケット販売を
ぴあがやっているんだろうね。
なんだか、プログラムの安心度も高いだろ?

現にいっつも、日本アカデミー賞やキネ旬ベストテンなんかで
賞をとった系の作品が勢ぞろい

で、1日2~3本やって1,500円くらいだからね、お得でしょ?
しかも、毎回、監督とか出演者を招いてのトークショー
なんかもついているんだな。

こりゃ、ぜってー観に行かなくちゃって思いながら
いつも機会を逃していたんだよ。
で、今回は3日間で8本上映する中に、DVDが出るまでどうしても待てない
と思っていた作品が入っていたので、今度こそ、って心に決めていたんだよ。

その作品が、『湯を沸かすほどの熱い愛』、これだ!
しかも、監督の中野量太氏もやってくる!
さらに、まだ劇場でやっているというのに800円!

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家から、うきうき徒歩で行くことにしたよー。

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道すがら、他人ちの春の花なども鑑賞。(汗)

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家から西武新宿線の航空公園駅まで、徒歩でおよそ20分。

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そこから、駅前通りのオブジェの点在する歩道をまっすぐ10分。

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きたきた、屋外に設置されたポスターボード。

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施設の隣は、日本の航空発祥の地「所沢航空記念公園」。

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お、なんだかお洒落なカフェレストランが!
まだ、開演まで早いので、ちょっと休憩、休憩。

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ほう、「食材の生産者」や「加工業者」、「料理人」の紹介が。
地産地消と食の安全をPRしているんだね。

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わはは、所沢のクラフトビールのテイスティングセットがあったので、
それにしたったー。
1種130mlなので、計520mlかあ。
ちょっと量が多かったかなあ、これから映画を観るのにー。

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左から、ペールエール、セッションエール、IPA、スモークポーター。

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いざ、出陣!





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むむむー、映画を観てこんなに泣いたのは初めてだよー。
この映画はなんだあ。

フツー、映画の「泣けるポイント」って、
多くても3カ所か4カ所くらいだよね。
この映画は、それが10カ所くらいあるぞ。
こんなにたくさん「泣かせる爆弾」が埋めてある作品は、初めて観たよ。

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上映後のトークショーで、自ら原作・脚本を書いた中野監督が言ってたけど、
「これでもかってくらいやりました。なんせ、長編商業映画のデビュー作だから、
コケたくないでしょ?」。

それにしても、始まって数分でいきなり泣かせて、
10分に一度くらい目頭が熱くなって、
そのスキマスキマで、くすくす笑わせるもんだから、
5分に一度くらいキュンキュン来るようにできてるんだな。

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やー、お見事!
最初から最後まで、ぐいぐい引き込まれてしまったわー。
キネ旬ベストテンの表彰式で、フジテレビアナの笠井さんが
「昨年の日本映画で、一番良かった」と言ってた
だけのことはあるわ。

中野監督いわく、
「いろいろこだわって自主制作映画を何本も撮ってきたけど、
ある時からお客さんに伝わらなきゃ、やってる意味がないって
思うようになったんですよ、あざといと言われようと、
やり過ぎと言われようと、ばっちりウケるように意図的に作ったんです」、
「そもそも、関西生まれですし」、とのこと。



内容は、「すばらしい母と家族の物語」とでも、言っておきましょう。
ストーリーは言わない。(笑)
いじめのこと、夫婦のこと、親子のこと、家族のこと、
いまどきの若者のこと・・・。

そして、驚きのラスト!



中野監督は、6才の頃から母子家庭で育ったんだそうだ。
だから、「母親」を描くことや家族を描くことに熱いものがあるんだろうね。

「僕は、家族の定義なんてないと思っています。
たった一つ、個人的な解釈で言えば、
いつも一緒にご飯を食べる人たちのこと、だと思っています」
とも言っていたねー。

そんな経験や想いが、なるほどたくさん詰まった映画だよ。
失礼になるかもしれないけど、文芸作品じゃないし、
芸術作品でもないし、難しいこともない。
監督本人も言っているように、ちょっとだけあざといと感じられるくらい
きっちりおもしろさや感動が作り込まれているんだな。

でも、それがわかっていても、バツグンにいいなー。
中野監督自らの原作&オリジナル脚本!
マンガが原作の映画やテレビドラマがほとんどないま、
監督の思い入れが強ければ、ホントにいい映画が出来上がるんだなー
って思い知らされたよ。


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思わずパンフ買って、サインと握手してもらったよー!

所沢市さん、ぴあさん、ありがとう!





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●湯を沸かすほどの熱い愛
2016年 日本
上映時間:125分
監督:中野量太
脚本:中野量太
エグゼクティブプロデューサー:藤本款、太田哲夫、村田嘉邦、篠田学、板東浩二
プロデューサー:深瀬和美、若林雄介
アソシエイトプロデューサー:柳原雅美
キャスティングディレクター:杉野剛
撮影:池内義浩
照明:谷本幸治
録音:久連石由文
美術:黒川通利
装飾:三ツ松けいこ
音響効果:松浦大樹
ヘアメイク:千葉友子、酒井夢月
衣装:加藤麻乃
編集・題字:高良真秀
音楽:渡邊崇
主題歌:きのこ帝国『愛のゆくえ』
助監督:塩崎遵
ポストプロダクションプロデューサー:篠田学
ラインプロデューサー:大熊敏之
制作プロダクション : パイプライン
製作:「湯を沸かすほどの熱い愛」製作委員会(クロックワークス、テレビ東京、
   博報堂DYミュージック&ピクチャーズ、パイプライン、ひかりTV)
配給:クロックワークス
出演:宮沢りえ、杉咲花、オダギリジョー、松坂桃李、伊東蒼、
   篠原ゆき子、駿河太郎 ほか
受賞:第40回 日本アカデミー賞(2017)
   ・優秀作品賞
   ・優秀監督賞/中野量太
   ・優秀脚本賞/中野量太
   ・最優秀主演女優賞/宮沢りえ
   ・最優秀助演女優賞/杉咲花
   ・新人俳優賞/杉咲花
   第90回キネマ旬報ベスト・テン
   ・日本映画ベスト・テン/7位
   ・主演女優賞/宮沢りえ
   ・助演女優賞/杉咲花
   第41回報知映画賞
   ・作品賞
   ・主演女優賞/宮沢りえ
   ・助演女優賞/杉咲花
   ・新人賞/中野量太
   新藤兼人賞(2016年度)
   ・金賞/中野量太
   第29回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞
   ・主演女優賞/宮沢りえ
   第59回ブルーリボン賞
   ・助演女優賞/杉咲花
   第31回高崎映画祭
   ・最優秀監督賞/中野量太
   ・最優秀主演女優賞/宮沢りえ
   ・最優秀新進女優賞/杉咲花
   ・最優秀新人女優賞/伊東蒼
   第38回ヨコハマ映画祭
   ・監督賞/中野量太
   ・脚本賞/中野量太
   ・助演女優賞/杉咲花
   HIHOはくさいアワード(2016年度)
   ・10位
   第26回東京スポーツ映画大賞
   ・主演女優賞/宮沢りえ
   ・新人賞/杉咲花
   おおさかシネマフェスティバル2017
   ・日本映画ベストテン/6位
   ・助演女優賞/杉咲花
   ・新人監督賞/中野量太
   第40回モントリオール世界映画祭
   ・Focus on World Cinema部門 正式出品
   第21回釜山国際映画祭
   ・アジア映画の窓部門 正式出品
   第29回東京国際映画祭
   ・Japan Now部門 正式出品







♪ 愛のゆくえ / きのこ帝国





♪ ルネのテーマ / ラリー・コリエル & 渡辺香津美