ゆらゆら草

もう少し感受性を働かせれば、毎日がスペシャルになる。そう自分に言い聞かせて、 いろいろ感じたことを書きとめてみよっと。

1年で1億人が泣いた ~ 『芙蓉鎮』



ある日突然、家に警察がやってきて、「預金通帳と財布の中身を見せろ」と言う・・・
「ずいぶん貯めたな」、「現金も不動産も玄関の置物も、すべて没収だ」と言って・・・
玄関ドアに[黒夫婦]と書かれたでかい紙を糊でべったり貼って去って行ったら、どうする?

一所懸命働いて、節約して、なけなしの貯金をしただけで、
「ブルジョア分子」と呼ばれてすべての財産を取り上げられる。
学校で一所懸命勉強して、社会に出てからも研究を続けて、やっと指導的な立場に立ったら、
「反体制思想家」として投獄されてしまう。
そういう目立つやつがいないか、隣人が常に目を光らせていて、見つかったらチクられる。
1966年から1977年まで続いた「文化大革命」は、そんな弊害をたくさん生んだそうだ。

いわゆる文革は、毛沢東が自身の権力を強化し、共産主義の名のもとに国の統制を固めようとした、
と評されているんだけど、同時に、1000万人近くの犠牲者と膨大な文化遺産の破壊と
長い長い経済の停滞を招いたんだな。

それが、1978年頃から “民主化” の国民運動の波が中国に押し寄せたと言われていて、
文革時代のような蓄財や思想の自由に対する恐怖政治的な厳しさは薄れて行って、
公務以外で物やサービスを売り買いする「市場経済」も急速に拡大していったとのこと。
1989年の「天安門事件」で、'80年代の “民主化” がピークになったと言われているんだよ。

「天安門事件」後、'90年代になって、また、政府の締め付けが厳しくなったんだそうだ。
でも、思想や思想形成につながる文化の統制は厳しいままだけど、
経済・産業の発展については、政府も民主化の恩恵を肯定していて、そのまま続いちゃって、
“民主経済の強大化” と “共産主義管理の弱体化” が共存した現在に至っているんだね。



芙蓉鎮タイトル

この映画が中国で公開されたのは、1986年だから、「天安門事件」の3年前
おもっきし “民主化運動” が活発だった頃なんだよ。

物語の時代は、文革が始まる前の'63年頃からそれが終わる'78年頃。

そう、映画のメッセージは、強烈な “文化大革命批判” だっ!

三人

雨000

李国香

僕はこの映画を、日本で封切られた ’87年にリアルタイムで観たんだけど、
観て思いきりびっくりしたのを覚えている。
だってね、'80年代中国といえば、まだまだ日本では民主化なんてピンときてなくて、
反体制的な意見なんて掲げようものなら、即刻死刑!的な、昔からの中国のイメージだったんだもの。
いまだって、ノーベル賞でさえ国が受賞を許さないくらいなんだよ。

たしか、当時の宣伝コピーは、「1億人が泣いた」って感じのフレーズだったはず。
その大袈裟な数字に一瞬笑ったけど、「でも、まんざらウソでもないかも」という気持ちで
東京・新宿の映画館に観に行ったんだっけ。

それで、“文化大革命批判” でしょ。
いやー、ホントにびっくりしたねー。
「中国でこんな映画を撮るのが許されて、公開も許されて、
1億人も観たなんてホントかよ!?」って思った
ね。
当時は、中国の映画なんて全然知らなかったし、
芸術性やメッセージ性なんてこれっぽっちも期待してなかったんだけど、
いずれもすばらしくて、「すごい映画を観た」って、すごく興奮したのを覚えているなあ。



『芙蓉鎮(ふようちん)』の芙蓉とは、蓮の花のことかな?
“鎮“ とは、日本の村とか町みたいな行政単位のことだよね。
景徳鎮とかの鎮もそういうこと。

王村鎮002

ロケに使われた町は、中国湖南省湘西永順県にある王村鎮というところ。
いまや、中国の海岸地方の大都市は、世界的にも近代化した風景をしているけど、
内陸のちっぽけな王村鎮は、いまでも昔の風景の残る街で、
この映画のヒット後、観光地として栄えているらしい。
2007年にその勢いで、王村から芙蓉に鎮名を変えたとか変えないとか。

主演は、劉暁慶(リウ・シャオチン)
1951年生まれだから、いまは62~63歳だね。
劇中の彼女は、素朴でひたむきでとってもかわいい!

ひとり002

僕は知らないんだけど、1984年出演の映画『西太后』やテレビドラマ『則天武后』で
日本でも有名な女優だとのこと。

おまけに、国内では、不動産や化粧品のビジネスを成功させて、
長者番付にも名前が上るほどの人だとか。
国家公務員として高級な、国家第一級演員に認定されていて、
いまでも映画やドラマに出演しているようだね。
劇中では、そんな大人物って感じはもちろんないよ。
可憐で愛らしいのひとこと。

タバコ

ふたり000

出演時、35歳かあ。
えー?全然見えないなあ、22~23歳くらいにしか見えない。
お上にいじめられて、守ってあげたくなってしまって、
男なら完全にやられてしまうと思うな。



中国は、日本やアメリカを仮想敵国として、文化大革命を悪と位置づけて
経済の民主化・市場経済化を許容して発展してきたよね。
でもいま、「文化大革命時代は、よかったなー」という風潮も高まってきているそうだ。
それは、人口13億とも15億ともいわれている内の
1億人程度が生活に困窮しなくなっただけで、残りの十数億人はこれまでと変わらないか、
これまで以下の生活をしているからなんだな。
大金持ちとの貧富差が激しく大きくなって、大資本のせいで住んでいる街を追い出されたり
職を失ったりしているからなんだね。

たった40年ほどの間に、民主解放 → 共産主義強化 → 民主解放 → そして、共産強化欲求の高まり
・・・と、中国の国民思潮は振り子のように揺れ動いてきた。
この映画は、コロコロ変わる政策が、どんなにフツーの庶民を苦しめて来たのかを
はっきり教えてくれる
映画なんだな。

ふたり003

雨002

でもね、そんな予備知識や理屈なんかなくても、激しく感動させられる作品だけどね。
これは、映画史に残る名作のひとつ、だと思うな。

そうそう、忘れてた!
このサイトで、“食べ物のシーンが妙にうまそう” な作品についてちょろっと書いたけど、
この映画も明らかにそのひとつ。
「米豆腐」という湖南料理が、最初から最後まで出てくるんだよ。
あれは、妙にうまそうだなー!
いまでも、現地に行って食べてみたい、と思ってる。

米豆腐



芙蓉鎮ポスター

●『芙蓉鎮』
1986年 中国、日本公開1987年
上映時間: 164分
監督:謝晋
製作:上海映画作製所
原作:古華『芙蓉鎮』
脚本:阿城、謝晋
音楽:葛炎
撮影:蘆俊福
編集:周鼎文
出演:劉暁慶, 姜文
受賞:1987年金鶏賞
   ・作品賞
   ・主演女優賞(劉暁慶)
   ・助演女優賞(徐寧)
   ・美術賞(金綺芬)
   1987年百華賞
   ・作品賞
   ・主演男優賞(姜文)
   ・主演女優賞(劉暁慶)
   ・助演男優賞(祝士彬)
   1988年カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭クリスタル・グローブ賞、グラン・プリ


Posted by つかりこ on  | 4 comments  0 trackback

4 Comments

映画カッパ says..."映画の使命"
凄い映画とは聞いていました。
しかし、恥ずかしながらまだ鑑賞できていません。
この記事を拝見させていただき、改めて意欲がわいてきました。BSハイビジョン等でオンエアーしてくれたら嬉しいのですが…!?
2013.05.26 08:31 | URL | #- [edit]
つかりこ says..."Re: 映画の使命"
あー!ホントですね。
廃盤なんですねぇ。

買うと、amazonで9,000円くらい、TSUTAYAで5,000円くらい、
ちょっと高いですねー。
あー、TSUTAYAのお店によっては、レンタルも。
ネットでのDLやレンタルもあるかもしれませんね。

昔、VHSビデオのレンタルでさらっと借りられたのですが、
こんなに鑑賞困難な状態になっているとは
知りませんでした。すみません。

日中関係が取沙汰されているいま、
まだまだ観たい人がたくさんいると思うのですが、
なんか残念な状況です。
ホント、テレビでやってくれないかなあ。

私が持っていれば、すぐにお送りさせてもらうのですが、
私も2度観た記憶だけなんです。
ホント、ごめんなさい。
2013.05.26 18:08 | URL | #- [edit]
ちっち says..."コンニチワ。"
全く無知でお恥ずかしいばかり。

今から約27年前の映画ですか。

中国人のパワーは驚異的で世界中に
散らばって活躍する人種ですね
それも一部の人だけなのでしょうけど。
それでもすごい。
2013.05.27 16:24 | URL | #- [edit]
つかりこ says..."Re: コンニチワ。"
こんにちはー!

いつもありがとうございます。

政策を批判した映画って、中国製では珍しいと思うんですよね。
フツーでは、どう考えてもあり得ないです。
「経済は民主化させるかあ」という政策に則った、
プロパガンダ映画だったのかもしれませんね。

経済面では、“中国の時代” が来た感があります。
日本もがんばらなきゃ、ですねー。
2013.05.27 16:49 | URL | #- [edit]

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