隠れ家じゃなくて、隠れ屋敷 ~ 『麻屋』

2013/03/10 05:27:49 | 蕎麦>埼玉県所沢市 | コメント:0件



いったい蕎麦屋って、どうやって商売を成立させているんだろう。
行きたいな、と思った蕎麦屋が昼の2時間しかやってなかったり、
マイカーじゃないと行けないようなところにあったり、
なんてことに出くわすと、そんなふうに思うことがある。

どうしても気になるのが「営業時間」。
気にならない?

一番多いのが、「11:00~14:00、17:00~20:00」だよね。
これは、どう考えても昼ご飯と晩ご飯タイムだよねぇ。

「ウチはめし屋です」って言っているようなもんでしょ?
だから、どうしてもこの時間帯でいくしかないとしたら、
田舎とニ八のもりと天もりしかない、なんてのはダメでしょ。

僕だったら、メニューはできるだけバラエティ豊かで、量がそれなりに多くて、
おかずやツマミになる料理もたくさんあって、値段もリーズナブルに設定するなあ。
お客さんは、昼ご飯と晩ご飯を食べに来るんだから。

それで、儲けたけりゃ客席は多いほどいいし、
お客の回転を早くしたり、夜は高級化する工夫も必要かも、
ということになるね。

しかも、この時間帯の営業を通すなら、お酒で儲けようなんて考えない方がいいなあ。
だって、午後8時で終わりでしょ。
現代人は、なかなか6時や7時には仕事をあがれないないからね。
かといって、正月でもなけりゃ、
昼間っからガボガボ酔っぱらうまで呑める人もあんまりいないよね。

蕎麦屋酒を楽しませて儲けようと思ったら、23時や24時頃までやらなくちゃ。
なおかつ、土・日・祝日は中休みなしにすれば完璧でしょ。
休みの日なら、昼間っから呑みたい人はけっこういるだろうからね。
仕込みに必要な時間や人件費のことを無視して、
たいへん恐縮なのですが、理想を言わせてもらえば・・・。
でも実際、夜遅めまでがんばっている蕎麦屋もあるからねぇ。

ツマミになる料理は凝る必要がない、と言ったら語弊があるかもしれないけど、
日本料理屋や高級割烹みたいにビシッとやる必要は全然ないと思う。
蕎麦屋らしい材料で、ちょっと気の利いた、という程度のものがいいんだよね。
じゃないと、なに屋なのかわからなくなってしまう。
酒とツマミは “蕎麦前” であって、あくまで蕎麦が主役なんだから。
サラッと夜遅くまでやってくれる蕎麦屋がふえてくれるといいなあ、
っていつも思ってしまう。

江戸時代や明治時代の職人さんや商家の旦那なんかは、
遅い昼飯や午後に休憩を入れたりで、
平日でもアフタヌーンティーみたいな感じで、
昼下がりにちょいと酒と蕎麦をひっかける、
といった粋な蕎麦屋の使い方をしていたんだろうけど、
それ向きな営業時間の店もあるよね。
平日の「12:00~16:30」だけ、って感じの店。
このタイプは、昼酒型の江戸蕎麦の伝統にかなっているはずだけど、
はたしていまこの世に、平日の午後に酒を呑むことのできる人が
どのくらいいるんだろうか。

一番理解しがたいのが、平日の「11:30~14:00」だけしか店を開けず、
田舎と並そばのもりと鴨南蛮くらいしかないところ。
概してこだわり派が多くて、もちろん蕎麦はうまいんだけど、
値段もけっこうする店が多いかな。
観光地や大都会なら、「今日は軽いもので済ませたいな」って人や、
「人気の店があるんだよ、おかずがないし、ちょっと遠いけど行ってみる?」
って感じの、僕みたいな物好きが来るだけで商売が成立するかもしれないけど、
フツーは全然儲からないよね、きっと。
そういう蕎麦屋って、なんかの理由で儲ける必要がない店が多いのかなあ。

で、その次に気になるのは「立地」。
都会でも田舎でも営業時間については、
僕的には中休みなしで「11:00~23:00」か
上に書いた「11:00~14:00、17:00~23:00 ※土・日・祝日は中休みなし」
が理想なんだけど、駅や繁華街に近いか遠いかでまた違ってくると思う。

駅から遠い店は自動的に酒は呑みずらくなるよね。
マイカーやお金のかかるタクシーで行かなきゃいけなくなるからね。
だから、近所の人があまり飲みに来ないのなら夜は遅くまで開ける必要はなくなるし、
中休みをとっても全然いいかもしれない。
それでも繁盛したいなら酒商売ではなく、
楽しいメニューや珍しいメニューとか、超こだわり蕎麦とか、
デザートに凝るとか、安いとか、量が多いとか、
別のコンピタンスを創り出す必要が出てくるわけだ。

まあ、どんな店でも、蕎麦屋である限り蕎麦がうまいことが最も肝心だけどね。
そればっかは、うまけりゃうまいほど、こだわればこだわるほどいいに決まってる。
これまた、採算とか考えもしないで勝手なこと言ってすみませんが・・・。


ところで、この前行った『麻屋』は、その「別のコンピタンス(強み)」を持った店だったんだよ。

麻屋の蕎麦のメニューは、少なくはなく、かといっても多くもなく、でもあったかい蕎麦はゼロ。
うどんがあって、こちらは冷たいメニューのほかにあったかいメニューもたくさんあるけど、
西埼玉名物の地粉でコシを出した武蔵野うどんでもないし、
なんとなくピントがぼやけてる印象なんだ。

“おつまみ” も「もつ煮込み」、「おでん」、「板わさ」、「みそ田楽」だけで、
なんとなく、これぞ蕎麦屋、って感じがしないでしょ。

営業時間帯が “昼飯&晩飯型” なのに、ご飯ものは1品だけだし、
ランチメニューも1種類のみ。

お酒も「ビール」、「酒」、「冷酒」と書いてあるだけで、迫力がない。

悪いということは何もないんだけど、営業時間やメニューを見る限りでは、
集客パワーというものがありそうに見えないんだな。
値段のお得感は、かなりあるけどね。

ところが、メニューからふと顔を上げてみてわかった!
そういえば、なんかココ、広いなあ。
せせこましいところがなくて、妙に居心地がいいのだ。

06麻屋_店内

よく見たら、客席空間は40畳くらいはあるかなあ。
そこに、小さなテーブルが3つと、7~8人は着けそうな囲炉裏作りの相席テーブルが一つ、
こあがりに座卓が3つかな。
それだけレイアウトされていても、何にもないスペースがたくさんあって、
ゆったり広々としてるんだ。
ムダというかもったいないというか、いや贅沢な空間の使い方。

入った時からまず目を惹くのは、中庭だ。
フツーの家ではまず考えられないL字型に3枚はめ込まれたどでかい一枚板ガラスから、
いやがおうにも見えるんだよ。
南からの自然光にあふれた、よく手入れされた庭木たちが目を癒してくれる。
鳥のえさ台が設けられていて、鳥たちが競い合ってえさをついばんでいるのが見える。

02麻屋_中庭

トイレも和づくりで広々。
厨房もそうとう広い。
奥には、あがりではなくて10畳くらいの座敷まである。

入口を見た時は、よくある “一軒家改造型” と思ったんだけど、
これは、“お屋敷” だ!
この辺は、団地やファミリー型マンション、建て売り住宅なんかが立ち並ぶ住宅地なんだけど、
こんなところにこんな贅沢な屋敷があったんだ!って驚いたなー。
おまけに、帰る時に気づいたんだけど、7~8台停められるくらいの駐車スペースもあった。
敷地面積200坪、いや300坪くらいあるのかな。

01麻屋_入口

うん、そうだ、これはサロンだ!
和サロン
ゆっくり眺めていると、なんとゆったりで贅沢な店だということに
しばらく経ってからじわじわと気づいてしまった。
こりゃ、誰にも邪魔されずに、鳥でも眺めながらのんびり蕎麦前酒をやるのに最高だわ。
隠れ家じゃなくて、隠れ屋敷。
今度、ゆっくり来よう、って考えたらなんだかウキウキしてきた。

聞けば、平成25年現在で、開業22周年とのこと。
なんとなくピンボケなのに、長年愛されてきている理由がわかったね。

03麻屋_天汁そば
天汁そば 850円

05麻屋_天汁

ちなみに、蕎麦は常陸秋
自家製粉ではないみたいだけど、実はこれがすごくうまいんだな。
微粉で打って、しっかりもっちり茹でた、昔ながらの実直な蕎麦だけど、
ものすごく、と言いたいくらいうまい!
香りも味もバツグンだ。
なるほど、あったかい蕎麦がゼロというのは、
もりのこの味に絶対的な自信があるからなんだなー。
うん、僕の中ではヘタをするといままで食べた “微粉系” では、一番うまいかもしれない。
恐るべし常陸秋、恐るべし『麻屋』。

04麻屋_天汁そばアップ



●『麻屋』
埼玉県所沢市けやき台1-44-5
04-2926-5033
11:30~14:30(オーダーストップ)
*夜予約準備のため14:00で閉める場合あり
18:00~19:30(オーダーストップ)
*宴会の場合は営業時間延長
定休日/日曜日


コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する