日本は大丈夫か? ~『わたしは、ダニエル・ブレイク』


001四人で


一度でも会社というものを辞めたことのある人なら知っている
と思うけど、失業保険ってちょっと変だよね。

あれって、失業期間中に「就職活動をしている証拠」を提示し
続けないと給付金が出ないでしょ?
しかも、会社を辞めた理由によってすぐに給付金が出るとは
限らないし。
まあ、会社を辞めて、もう働く気のない人や働く必要のない人は、
お金に困っていないと見なされる、という考え方はわかるけどさ。

でも、辞めたのが自分の都合で給付金が3カ月後に出るとして、
2カ月半後あたりに新しい職に就いたとしたら、
その2カ月半の間は生活費が補償されないということになる。
現に収入に困っているというのに。

さらには、もしその人が何かの病気のせいで仕事を辞める
または休まざるをえなくなった場合、
日本の場合は、フツーは雇用保険で補償されたり、
会社が休職扱いで給与の数十パーセントを補償したりするけど、
この映画のイギリスのニューカッスルでは、
とてもやばいことになるんだな。
日本でも、会社が雇用保険をかけていないフリーの職人とかの
場合は同じようなことになるのかな?

発作性の病気だから働けない。
だから失業保険の手続きをしたい。
でも、失業保険をもらうために、病気なのに
再就職活動をして、証拠作りをしなければならない。
お役所は、審査が厳しいし、融通がきかない。
でも、審査が通るまでは収入はゼロ。
間違って新しい職が決まってしまっても、
病気だから働くのを医者にも止められている。
再就職活動は、手続きのためのただの証拠作り
ということ。

つまり、給付金はいつまで経っても出ないし、
職が決まっても働けないので、にっちもさっちも
完全に収入がゼロになるという事態

そうなったら人間、会社を辞めたとたんに
病気のホームレスになっちゃうよねぇ。



いやいや、この映画はイギリスの雇用保険制度を
説明するハナシではないんだよ。

002ダニエル

主人公のダニエルは、40年も大工をやってきて
街の人たち誰もが、めっちゃ腕利きと認めるような
実直を絵に描いたような職人だからゆえに、
お上の制度の矛盾がくっきりと浮き彫りにされるんだな。

誠実に仕事に打ち込んで、ずっと税金も払ってきた人や
自分は何日もまともにご飯を食べずとも、
しっかり子供を育てたいと願っているシングルマザーなんかが
フツーに生きられない社会って、どんな社会なんだ?
ってこと。

003役人と

004空腹


前に、僕も感想を書いた『幸せなひとりぼっち』と
かなり似ているハナシだけど、この作品の場合は終盤に
痛烈なクライマックスが待っているんだな。
僕は涙を抑さえられなかった。



カンヌでパルム・ドールを手にしたローチ監督いわく・・・
「私たちが生きているこの世界は今非常に危険な状態にあります。
映画というものは多くの伝統を担っている。そのうちの1つが
“抗議” という伝統。権力に対する人々を前面に押し出すような
映画で、私はその伝統を引き継いでいきたい。この絶望の時代に
希望をもたらすべきなのです」


イギリスの「ゆりかごから墓場まで」はどこへ行ったんだろう?
アメリカは? 日本は?
重病なのに短期間しか入院できない医療費制度って?
ODAとか経済支援とかで、何千億も外国に払うなんてことは
もうやめて、もっと福祉に金を使うべきなんじゃないのかなー。


005反乱





006ポスター

●わたしは、ダニエル・ブレイク(I, Daniel Blake)
2016 イギリス・フランス・ベルギー
上映時間/100分
監督/ケン・ローチ
製作/レベッカ・オブライエン
製作総指揮/パスカル・コシュトゥー、バンサン・マラバル
製作会社/シックスティーン・フィルムズ、ホワイ・ノット・プロダクションズ、
     ワイルド・バンチ
脚本/ポール・ラヴァーティ
撮影/ロビー・ライアン
編集/ジョナサン・モリス
音楽/ジョージ・フェントン
美術/ファーガス・クレッグ、リンダ・ウィルソン
衣装/ジョアンヌ・スレイター
配給/イーワン・フィルムズ(英)、ロングライド(日)
出演/デイヴ・ジョーンズ、ヘイリー・スクワイアーズ、ディラン・マキアナン、
   ブリアナ・シャン ほか
受賞/英国アカデミー賞
   ・英国作品賞
   英国インディペンデント映画賞
   ・男優賞/デイヴ・ジョーンズ
   ・新人賞/ヘイリー・スクワイアーズ
   カンヌ国際映画祭
   ・パルム・ドール
   ・パルム・ドッグ人道賞
   デンバー映画祭
   ・特別審査員賞: 女優部門/ヘイリー・スクワイアーズ
   イブニング・スタンダード英国映画賞
   ・作品賞
   ・助演女優賞
   ・パワフルシーン賞
   ゴールデン・トマト賞
   ・3位
   ロカルノ国際映画祭
   ・観客賞
   ロンドン映画批評家協会賞
   ・英国・アイルランド作品賞
   ニューヨーク映画批評家オンライン
   ・トップ12作品
   サン・セバスティアン国際映画祭
   ・観客賞: 作品部門
   ストックホルム国際映画祭
   ・観客賞: 作品部門
   バンクーバー国際映画祭
   ・国際作品賞
   2017年 第91回キネマ旬報外国映画ベスト・テン
   ・第1位







♪ Daddy Don't Live in That New York City No More / Steely Dan





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Comment

ふゆこ | URL | 2018.02.08 15:26
つかりこさんの記事読むとすごく観たくなりますが、私の夫も大工じゃないけど自営の職人なので他人事じゃなく怖くなりそうで観れません・・!
びー | URL | 2018.02.08 15:48
いつも、懸命に生きる不器用で貧しい人々のことを映画にしてくれる、大好きな監督です。
この映画の母親の姿は、日本の一人親家庭の女たちとかなり似ています。いかに多くの離婚した女が、性産業の罠に落ちることか。
つい最近も、イギリスで、怪我をして仕事ができなくなったら、複雑怪奇な福祉のルールに翻弄され、あっという間にホームレスになってしまった男性のニュースを見ました。
いつまでたっても、先進国でも、成熟した社会構造にならないって、
ほとほと嫌になります。
バニーマン | URL | 2018.02.08 22:01
これは絶対観なくちゃ!と思っている作品です。
ということは、まだ観ていないってことですが・・・(^_^;)

あー、写真いいですね。
レモンがのっているのって何ですか?
お菓子?
つかりこ | URL | 2018.02.09 16:40
ふゆこさん、コメントありがとうございます。

> つかりこさんの記事読むとすごく観たくなりますが、私の夫も大工じゃないけど自営の職人なので他人事じゃなく怖くなりそうで観れません・・!

↑はいはい、コワイすよー。
僕なんかも、広告制作と言ったって、完全なる受注産業なので、
「明日は我が身か」って、やばい気持ちになりました。
でも、どうすりゃいいのか考えるきっかけになるかもしれません。
「良薬、口に苦し」です。
日本の場合は、ニューカッスルほどは深刻じゃないかもしれませんが、
いい薬になるかもですので、心が元気な時にでもどうぞ。
つかりこ | URL | 2018.02.09 16:58
びーさん、コメントありがとうございます。

> いつも、懸命に生きる不器用で貧しい人々のことを映画にしてくれる、大好きな監督です。

↑ケン・ローチ監督、全部は観ていないのですが、
一貫していますよね。
昔は、不安な気持ちになるばかりでしたが、
いまの時代、日本人も行動に出るためのいいきっかけをくれる監督だと思います。
政治家の人たちに観てもらいたい。
日本は、お金のあるうちに福祉国家、エコ大国になるべきでしょう?

> この映画の母親の姿は、日本の一人親家庭の女たちとかなり似ています。いかに多くの離婚した女が、性産業の罠に落ちることか。

↑そうそう!
がんばっているシングルマザーが、性風俗に堕ちるしくみが
社会にできあがっている!
そのことに驚きました。

> つい最近も、イギリスで、怪我をして仕事ができなくなったら、複雑怪奇な福祉のルールに翻弄され、あっという間にホームレスになってしまった男性のニュースを見ました。
> いつまでたっても、先進国でも、成熟した社会構造にならないって、
> ほとほと嫌になります。

↑もがいている人がホームレスになるしくみもできあがっちゃっているんですね。
日本の建設・土木従事者も同じようなしくみにハマッているんでしょうね。
日本のインフラ作りを支えている人たちなのに。
これは、ホントになんとかしないといけないことだと思います。
日本は、ODAとかで他国にお金をバラまいている場合じゃないですよね。
隣国2国だって、まったく感謝していないどころか、
さかんに略奪とたかりを続けているんだから、
何の足しにもならないということがわかったはずでしょ。
つかりこ | URL | 2018.02.09 17:12
> これは絶対観なくちゃ!と思っている作品です。
> ということは、まだ観ていないってことですが・・・(^_^;)

↑まあ、あわてる必要は何もないと思いますよ。

リアルなカメラワークで淡々とハナシが進む作品です。
フツーにどこにでもいそうな善良な人が、いかにして堕ちていくかが
はっきりわかります。
実際に木をけずったり、何かを修理したもしない
規則仕事のお役人ばかりがいても世の中良くならないことも。

> あー、写真いいですね。
> レモンがのっているのって何ですか?
> お菓子?

↑お褒めいただき、ありがとうございます。
僕は、どう撮ろう、と監督することは仕事ですので得意ですが、
自分でカメラを操作して思う通りに撮影するのは本業ではないので、
大したうまくなんいですよ。
なので、指図ばかりしてないで、自分の手でやってみようかと。(汗)
まだまだ初心者ですので、見るにたえない写真がちょくちょくアップされると思いますが、
どうかご勘弁を。(笑・汗)

このお菓子は、スコーンというやつです。
んーと、砂糖の入っていないクッキーみたいなもんです。
フォークで刺すと、ボロボロ崩れるようなお菓子ですねぇ。
これは、紅茶の葉っぱが入っていて、そういう香りがします。
乗っかっている輪っかのフルーツは、オレンジです。
乗っけてから、焼いたんでしょうね。
ドライフルーツみたいになっています。
全然甘くはないので、コーヒーより紅茶のほうが合うかもです。
ももこ | URL | 2018.02.09 17:57
失業保険の給付金いただいたことあります。
が、就職活動は一切しませんでした(汗)
それから約2年、貯金を崩しながら家賃や保険を払いながら暮らしていました。
今思えば無駄な時間を過ごしたなぁと思います^^;

病気になると身体だけでなく心までネガティブになりがちですよね。
そんな人たちに追い打ちかけるような国の制度ってどうなんでしょうね。
本当に救いが必要な人に、必要なお金が行き届く世の中になって欲しいものですね。

つかりこ | URL | 2018.02.09 23:55
ももこさん、コメントありがとうございます。

> 失業保険の給付金いただいたことあります。
> が、就職活動は一切しませんでした(汗)
> それから約2年、貯金を崩しながら家賃や保険を払いながら暮らしていました。
> 今思えば無駄な時間を過ごしたなぁと思います^^;

↑あ、たぶんその頃は、再就職までの「待機期間」に
就職活動している証明を提出しなくても給付金が出た時代ですねー。
いまは、毎月、求人に応募した「証拠」を持ってハローワークに行って
何時間も待たされて審査を受けるんですよ。
また、前職の勤続期間によって給付される額もまちまちで
昔に比べるとだいぶん金額が少なくなっているようです。

> 病気になると身体だけでなく心までネガティブになりがちですよね。
> そんな人たちに追い打ちかけるような国の制度ってどうなんでしょうね。
> 本当に救いが必要な人に、必要なお金が行き届く世の中になって欲しいものですね。

↑健康保険の制度もどんどん「改悪」されていますよね。
このままでは今後日本は、ホームレスと孤独死がますます増えると思います。
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つかりこ

Author:つかりこ
北海道生まれ。広告制作会社勤務。スポーツ、飲み食い、音楽、読書、映画などなど、興味がゆらゆら。

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