そして家族になる ~ 『ディーパンの闘い』


6月20日は、「世界難民の日」だったんだってさ。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などが提唱して、
国際連合総会の決議で2000年12月に定められたとのこと。
2001年から毎年、世界各国で難民救済のためのキャンペーンや
イベントが行なわれているんだそうだ。



この映画を観るまで、2009年の最近までスリランカで
激しい内戦が行なわれていた
ということを知らなかったよ。

スリランカは、シンハラ人という人種が7割
タミル人というのが約2割、+その他1割で構成されている
らしいんだけど、イギリスが植民地にしていた時代には
少数派のタミル人を重用する政策をとっていたとのこと。

でも、イギリスから独立した後からは、当然、
多数派のシンハラ人を優遇した政策がとられるようになるよね。
だもんだから、1956年頃から民族間の対立が高まっていったんだと。
またイギリスの負の遺産か、って感じ。

で、1972年にはタミル人がスリランカからの分離独立をめざして
「タミルの新しいトラ (TNT) 」という反政府勢力を発足。
'75年にはそのTNTを母体とした「タミル・イーラム解放のトラ (LTTE) 」
結成して、テロやゲリラ戦などの武力活動を展開していたんだよ。

そしてとうとう、1983年に両者の虐殺合戦が勃発。
総力戦の末、2009年5月にシンハラ派政府軍が勝ったカタチで内戦が終結。
その終戦の直前の4月に、難民と化した一般のタミル人が15万人も
国を脱出
したんだそうだ。

この映画の主人公の男は、その15万人のタミル人に紛れてフランスに脱出した
元「タミル・イーラム解放のトラ (LTTE) 」の戦士という設定なんだな。
や、主人公を演じた俳優は、ホントにLTTEの戦士だった人だそうだから
設定というかなんというか。

あ、ここまで読んで、「うぇー、おもしろくなさそう」って思っているよね?
まあね。
でも、映画の内容には、スリランカとか、タミル人とかあんまり関係ないかな。
「どっかの国から逃げて来た男(家族)」の「フランスでの難民生活」、
っとだけ知ってて観ればいいんじゃないかな。
いま、ヨーロッパでいろいろ問題になっている “難民のひとつのケース”
ということだね。



001ディーパン.png

主人公の男の名前は、ディーパン。
ホントの名前じゃない
パスポートに書いてある年齢も、ホントのトシじゃない。

妻はまったく知らない女。
スリランカの港で難民船に乗る直前にあてがわれた女だ。

内戦に巻き込まれて死んでしまった赤の他人の3人家族の
パスポートを流用して、その家族構成に当てはめて
即席に夫と妻ということにされたのだ。

娘は、道端で途方に暮れていた母子家族の3人の子供のうちの
1人をもらってきた

偽物の3人家族はフランスに着いた。
長い船旅をともにしたからといって特段、仲良くなったわけではない。

偽物とはいえ、3人の身元を証明するパスポートがあるのだから、
3人くっついているのが得策に違いないのだけど、
とりあえず妻、ということになった若い女にとっては、
まんまとスリランカを脱出してしまえば、好きでもない歳の離れた男と
人数合わせのための子供なんか邪魔なだけなのだ。

002父娘.png

ディーパンは、内戦のとばっちりでホントの妻子を亡くしていた。
もう、民族が違うだけで相手を憎んで暴力を振るったり、
愛する人を殺されたりするのは耐えられなかった。

どんなに貧しくて、どんなにボロい住居に住むことになろうとも
今度こそは、毎日銃弾に怯えたりすることのないところで、
穏やかに生きていきたい、と願っていたのだが・・・。

003ギャング.png



難民の暮らしは、難民になる前も、なった後も過酷だ。
この映画は、偽物の家族が、そんな暮らしの中に
ホントの愛や家族の絆を浮かび上がらせる。





004ポスター.png

●ディーパンの戦い(Dheepan)
2015 フランス
上映時間:115分
監督:ジャック・オーディアール
脚本:ジャック・オーディアール、トマ・ビデガン、ノエ・ドゥブレ
製作:パスカル・コシュトゥー、ジャック・オーディアール
撮影:エポニーヌ・モマンソー
編集:ジュリエット・ウェルフラン
音楽:ニコラス・ジャー
製作会社:Canal+、Ciné+、フランス2シネマ、フランス・テレビジョン、
     ページ114、ホワイ・ノット・プロダクションズ
配給:ロングライド
出演:アントニーターサン・ジェスターサン、カレアスワリ・スリニバサン、
   カラウタヤニ・ヴィナシタンビ、ヴァンサン・ロティエ、
   マルク・ジンガ、フォージ・ベンサイーディ ほか
受賞:第68回カンヌ国際映画祭 / パルム・ドール
   第33回マイアミ国際映画祭 / 審査員賞
   第19回オンライン映画批評家協会賞 / 米国未公開作品賞
   第40回トロント国際映画祭 / スペシャル・プレゼンテーション部門上映







♪ 15 Step / Radiohead





♪ ムラサキ☆サンセット / キリンジ




コメント

つかりこさん、いつもありがとう!

知らなかった~!スリランカでの内戦!
つかりこさんのお陰で、この映画のお陰で知ることができました。
それにしても民族が違うというだけで、こんなにも悲しい歴史が生まれるなんて、
人間は本当に愚かですね。
「同じ人間」なのにね。
みんな地球人なのにね。

2017/06/23 (Fri) 15:21 | ももこ #- | URL | 編集

>あ、ここまで読んで、「うぇー、おもしろくなさそう」って思っているよね?
まあね。

全然そんなことはありません!すんばらしく観たくなりました!
最近ネットで映画をレンタルしているのでTUTAYAに行ってないのですが、TUTAYAに行けばあるかしら?ネットレンタルの配信には無かったのよ~(´・ω・`)   もう調べたっ!

>この映画を観るまで、2009年の最近までスリランカで
激しい内戦が行なわれていたということを知らなかったよ。
>1983年に両者の虐殺合戦が勃発。

アタシは、ほとんど何も知らないと言っていいほどモノを知らない人間ですので、↑も全然知りませんでした。そうなんですね・・・。虐殺合戦って・・・。

>難民の暮らしは、難民になる前も、なった後も過酷だ。
この映画は、偽物の家族が、そんな暮らしの中に
ホントの愛や家族の絆を浮かび上がらせる。

名文です。
映画観る前でも、つかりこさんの文章だけで泣けてきました。
ああ、この映画観たい!絶対観る!

2017/06/23 (Fri) 18:00 | きたあかり #- | URL | 編集

こんばんは。

>この映画を観るまで、2009年の最近までスリランカで
>激しい内戦が行なわれていたということを知らなかったよ。

たったいま、そのことを知りました・・・(^_^;)
紅茶とカレーと島国ということぐらいしか知りませんでした。
だいたい平和な国だと思っていたぐらいです。

この映画のことは、およそのあらすじぐらいのことは知っていましたが、
スリランカのことは抜けていましたね・・・。
観たいな~とは思いつつ、未見の一本ですね。

Radioheadは複雑なんだけどますますシンプルになっていく?という
書いている本人がよく分らない説明で申し訳ありませんが、なんとなく
そんな感じの不思議なバンドですね。
って、だれもそんな風には思わないか(^_^;)

OKコンピューター以降は、所謂一般的な?ロック・バンドであることすら
必要でなくなったようなバンドになっちゃたバンドのように思われます。
回りくどくて分かり難くて申し訳ありません。
うまく説明が出来ないバンドです・・・。

でもこの曲は、比較的分かりやすい一曲です。
と、僕は思います・・・(笑)

2017/06/23 (Fri) 19:13 | バニーマン #- | URL | 編集
Re: つかりこさん、いつもありがとう!

ももこさん、コメントありがとうございます。
こちらこそ、いつもありがとう!

> 知らなかった~!スリランカでの内戦!
> つかりこさんのお陰で、この映画のお陰で知ることができました。

↑ですよね、僕も全然知らなかったです。
つい最近まで、26年間も内戦を続けていたなんて。
映画は、ちょいちょいいろんなことを教えてくれます。

> それにしても民族が違うというだけで、こんなにも悲しい歴史が生まれるなんて、
> 人間は本当に愚かですね。
> 「同じ人間」なのにね。
> みんな地球人なのにね。

↑そうですね。
日本も、江戸時代になる前も後も、ほとんど内戦ばかりしていたので
他国のことをとやかく言う資格はないでしょうけど、
世界中、争いばかりなんですね。
人間を含めた動物って、争うもんなんですね。
でも、争って、白黒つけるのはいいですが、
殺傷し合って物事の分別をつけるのはやめたいものですよねぇ。

2017/06/25 (Sun) 17:52 | つかりこ #- | URL | 編集
Re: きたあかりさん、コメントありがありがとうございます。

> >あ、ここまで読んで、「うぇー、おもしろくなさそう」って思っているよね?
> まあね。
>
> 全然そんなことはありません!すんばらしく観たくなりました!
> 最近ネットで映画をレンタルしているのでTUTAYAに行ってないのですが、TUTAYAに行けばあるかしら?ネットレンタルの配信には無かったのよ~(´・ω・`)   もう調べたっ!

↑んーと、この映画は2015年のパルムドール作品なので、
ネットのレンタルやストリーミング等でも、
ないことはないと思うのですが・・・。
ツタヤにはありましたよ。
僕はそちらで借りて観ました。

> >この映画を観るまで、2009年の最近までスリランカで
> 激しい内戦が行なわれていたということを知らなかったよ。
> >1983年に両者の虐殺合戦が勃発。
>
> アタシは、ほとんど何も知らないと言っていいほどモノを知らない人間ですので、↑も全然知りませんでした。そうなんですね・・・。虐殺合戦って・・・。

↑1983年以前は、タミル派がテロを行なったり、
局地で戦闘が行なわれるといった、ゲリラ戦だったみたいなのですが、
それ以降、一度に大量の人が死ぬような大規模な戦闘が始まって、
総力戦を繰り返したということらしいです。

> >難民の暮らしは、難民になる前も、なった後も過酷だ。
> この映画は、偽物の家族が、そんな暮らしの中に
> ホントの愛や家族の絆を浮かび上がらせる。
>
> 名文です。
> 映画観る前でも、つかりこさんの文章だけで泣けてきました。
> ああ、この映画観たい!絶対観る!

↑お褒めにあずかり、ありがとうございます。
でも、あまり褒めないでくださいねー。
ハードル上がっていきますので・・・。

そうですね、僕の評ではヒューマンドラマで、
感動で泣けるもののように感じてしまうと思いますが、
実際の映画全体のトーンは、クライムアクションに近いと思います。
ぴりぴりとした緊張感が漂った物語です。
観られると、僕の記事から受けた印象と違うかもしれません。
文章って難しいもんですよね。

ほらほら、褒めちゃだめだって言ったでしょ?

2017/06/25 (Sun) 19:07 | つかりこ #- | URL | 編集
Re: バニーマンさん、コメントありがとうございます。

> >この映画を観るまで、2009年の最近までスリランカで
> >激しい内戦が行なわれていたということを知らなかったよ。
>
> たったいま、そのことを知りました・・・(^_^;)
> 紅茶とカレーと島国ということぐらいしか知りませんでした。
> だいたい平和な国だと思っていたぐらいです。

↑ですよねー。
僕も、スリランカといえばほのぼのとした紅茶畑の風景と
ウィッキーさんみたいなほがらかな人々の国という
イメージでした。

> この映画のことは、およそのあらすじぐらいのことは知っていましたが、
> スリランカのことは抜けていましたね・・・。
> 観たいな~とは思いつつ、未見の一本ですね。

↑きたあかりさんのコメでも書きましたが、
この映画は、ハートウォーミングな人間ドラマといったテイストではないです。
クライムもののような緊張感が全体を占めた作品です。
僕の書き方がよくないと思われますので、そこんとこよろしくですー。
でも、個人的には、節制がきいていてなかなか好きです。

この作品は、カンヌの上映会場で、ブーイングを呼んだそうです。
きっと、スリランカにおいては、反政府ゲリラというような
少数派の反逆者を擁護するようなストーリーだし、
フランスの闇も浮き彫りにしているからだと思います。

> Radioheadは複雑なんだけどますますシンプルになっていく?という
> 書いている本人がよく分らない説明で申し訳ありませんが、なんとなく
> そんな感じの不思議なバンドですね。
> って、だれもそんな風には思わないか(^_^;)
>
> OKコンピューター以降は、所謂一般的な?ロック・バンドであることすら
> 必要でなくなったようなバンドになっちゃたバンドのように思われます。
> 回りくどくて分かり難くて申し訳ありません。
> うまく説明が出来ないバンドです・・・。
>
> でもこの曲は、比較的分かりやすい一曲です。
> と、僕は思います・・・(笑)

↑やっしゃる通りだと思います。
僕は特別にファンということはないのですが、
一応、アルバムを1枚目から全部聴いてみると、
なんだかよくわからないバンドという印象です。
オルタナティブロックと呼ばれていますが・・・。

歌詞は、スミスのようないじめられっ子の恨み節や
ニルバーナのような反抗的なものですね。
それは、デビュー時代から変わっていないように思われます。

でも、楽曲的には何をめざしているのか
もう、わけがわからなくなっているようにも感じます。
元々、ドラム、ベース、ギター、ギター、ギターという構成なのにも関わらず
リードギターがゼロに等しかったり、小さい音とでっかい音が極端に差があったり、
バックがうるさいのに、歌がファルセットだったりだし、
リズムもコードも既成の枠からちょびっとはみ出したりして、
新しい曲づくりをめざしてきたんでしょうけど、
おっしゃるように近年は電子的過ぎて、「これがオルタナ?」、「プログレ?」って
感じになっちゃいましたねー。
いまでは、超成金バンドのはずなので、やりたいようにやれるんでしょうけど、
デビュー当時からのファンは、いまでもファンなのでしょうかね?(汗)

2017/06/25 (Sun) 19:38 | つかりこ #- | URL | 編集
まいどです

元号が変わったぐらいの頃かなあ...と思うんですけど、
私...普通に何も考えずにスリランカ行きましたよ…!

中途の経緯はかなり厄介なので省きますけど、時の海部政権の
肝いりとかで、既に首都ではなくたってたコロンボに出張して、
ルビー(駄物ですけど)の買い付け….。
しかしタミル人のビジネスモラルはインド人のそれと同じで
「騙して儲けるのが美徳(騙される方が愚か!)」...。
ほとんど手品みたいなトリックで、ババを掴まされてしまいました。
以後は懲りて、タイのブローカーに仲介に入ってもらってたりしましたね。

内戦中ではあるけれど、「民族紛争だから外国人に危害を加えることはない」
って言葉を呑気に信じつつ、街をふらついてたように思います。
知らないって怖いっすね。
映画…俄然興味をもって来ました。


2017/06/27 (Tue) 23:50 | pipco1980 #- | URL | 編集
Re: まいどです

pipco1980さん、コメントありがとうございます!

> 元号が変わったぐらいの頃かなあ...と思うんですけど、
> 私...普通に何も考えずにスリランカ行きましたよ…!
>
> 中途の経緯はかなり厄介なので省きますけど、時の海部政権の
> 肝いりとかで、既に首都ではなくたってたコロンボに出張して、
> ルビー(駄物ですけど)の買い付け….。
> しかしタミル人のビジネスモラルはインド人のそれと同じで
> 「騙して儲けるのが美徳(騙される方が愚か!)」...。
> ほとんど手品みたいなトリックで、ババを掴まされてしまいました。
> 以後は懲りて、タイのブローカーに仲介に入ってもらってたりしましたね。
>
> 内戦中ではあるけれど、「民族紛争だから外国人に危害を加えることはない」
> って言葉を呑気に信じつつ、街をふらついてたように思います。
> 知らないって怖いっすね。
> 映画…俄然興味をもって来ました。

↑ うぉー、すごいおハナシですねー!
スリランカに行かれたことがあるんですね!
しかも、内戦のまっただ中!

WIKIを読んでみますと・・・
基本的には内戦の激戦場となったエリアは、
スリランカの北東部だったようですね。

でも、2000年前後というとテロと虐殺を繰り返していた
「第3次イーラム戦争」の真っ最中みたいで、
コロンボ市内や空港は、テロや暗殺の中心地だったみたいですよ。
2001年の7月には、政府空軍機26機とコロンボの国際空港の
一般旅客機6機が襲撃・爆破される事件も起こったみたいです。
両派が全面戦争みたいになったのは2006年頃からのようですが、
それでも、コロンボに上陸するのは極めて危険な行動だったに
違いないですねー!
「民族紛争だから外国人に危害を加えることはない」けど、
「流れ弾や自爆テロの爆風を食らってしまう可能性は大きい」
という状況だったのではないでしょうか?
おまけに、ババをつかまされてしまったりで、pipco1980さんも、
企業戦士として内戦に参加していたということ
ではないでしょうか(汗)。あぶねー!

おかげさまで、この映画の観え方が、また少し変化してきました。
タミル人とか、スリランカとか、映画の内容とはあまり関係ないかな
と思っていたのですが、いや、それはけっこうなポイントでは。
だって、タミル人を悪として観るか、善として観るかで
この映画の後味というかメッセージというかがかなり変わってくる
と思われるからです。
pipco1980さんにとっては、きっとタミル人は「悪」なんでしょうね。
そうやって観ると、「難民を受け入れるということは、
大変な危険も伴うこと」という政治的な意味合いが強くなりますね。
インド政府やイギリス政府はいまだに、少数派のタミル人を虐殺したと
スリランカ政府を非難してたりします。
そういう目で観ると、この映画の「愛」や「家族の絆」や「幸せな暮らし」
といったヒューマンな部分が際立ちますね。
カンヌの上映会で、ブーイングが出たというのは、
難民受け入れに反対の人たちがタミル人を否定的に観てそうしたように思えますが、
逆に、難民受け入れに賛成の人たちがブーイングしたのかなと
考えられなくもないと思われます。
イギリス人やインド人はスタンディング・オベイションをしたでしょうか。

・・・そういう映画なんだとということがわかってきました、おかげさまで。
コメント、ホントありがとうございました。

2017/06/28 (Wed) 03:30 | つかりこ #- | URL | 編集
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2017/07/01 (Sat) 10:00 | # | | 編集

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