ゆらゆら草

もう少し感受性を働かせれば、毎日がスペシャルになる。そう自分に言い聞かせて、 いろいろ感じたことを書きとめてみよっと。

思い出の風景 ~ 『思い出のマーニー』  


001ポスター.jpg



いやー、すご~くいい映画だったよ。
何がいいって、とても個人的なことなんだけどねー。

物語の舞台が、北海道なんだよ。
道産子だからね、僕は。

まあ、北海道を舞台にしたハナシなんていくらでもあるので、
そんなこと言ってたらキリがない、ということになるんだけど、
この作品における僕の “ツボ” は、劇中に出てくる風景にあるんだなあ。



あれは、昔見た北海道の噴火湾(ふんかわん)の夜の海。
高校の夏休みの楽しみのひとつに、全校生徒が自由参加で行うキャンプがあるんだけど、
その時に観たんだなー。
「豊浦(とようら)」か「礼文華(れぶんげ)」という町の海岸だったと思う。
山や野原じゃなくて、広い浜辺の砂の上に点々とテントを張るんだよね。

ジンギスカンをやって食べたり、花火をやったり、肝試しをやったり・・・
各テント、自由に短い北海道の夏を楽しむんだよ。

高校2年の時だったかな、
ある日の夜、完全に陽が沈んでも海のほうがなんだか明るい。
キャンプ場の浜の方には、民家なんてなんにもないから、
フツーなら、ぼんやりとしたテントの明かりと空の星の輝き以外は真っ暗なはずなのに、
海のほうに街灯の明かりのようなものが灯っているんだよ。

振り向くと、そう、月明かりなんだね。
満月に近いと、かなり明るいんだよ。

しかも、その明かりが、凪いだ海の水面にキラキラ映ってる!
僕の実家のある町も田舎だし、海もあるけど、あんなにきれいに輝く海の月影は観たことがなかった。
ほぼモノクロームの世界。
真っ黒な凪いだ海の表面を、ダイヤモンドをカットするように細かくたくさん削って
月の光を反射させた、って感じ。

002月明かり.jpg
ホンモノはこんな感じ

天候、時刻、月の位置、潮の満ち引き具合、そして自分の気持ちの状態・・・
きっと、すべてがうまくいって合致した時でないと観られない風景。
めったにない、運命のタイミングに出くわした、って気がしたねー。

003月明かり.jpg

そんな風景が、この映画ではちょろちょろ出てくるんだなー。
物語の舞台設定は、釧路や根室だから全然場所は違うし、
アニメでは、実際に肉眼で観た衝撃とはまるで違うけど、
「ああ、この映画のスタッフの中に、あの風景を観たことがあって、
映画にしたいと思った人がいるんだろうな」って思うと、
すんごくうれしくなってしまった。

004月明かり.jpg



それから、もうひとつ。
僕には、いつか文章か映像で表現してみたいな、と思っているコトがあるんだけど、
それが、この作品に描かれていたんだよ。なんと!

それは、前にもちょろっと書いたけど、“ろうそくだーせー” のこと。
劇中では、ほんのちょびっとしか出てこないし、物語の本筋と関係ないんだけど、
「おー、よくぞあれを盛り込んだねー」って感じ。

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“ろうそくだーせー” は、まったくの「和」のもので、
マーニーの洋館のイメージとは相容れないものがあるんだけど、
どうしても入れたい、というような意思が感じられて、
この作品に僕自身の気持ちが反映されているようで、
一発でハートをつかまれてしまったんだなー。

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そういえば、いみじくも今日は8月7日!(これを書いているいまはまだ、7日なんです)
北海道の七夕の日、つまり “ろうそくだーせー” の日なんだね。
子供たちのカンテラや提灯は、今日も北海道の街の暗い道を照らしたのかなあ?



さらっと観ると、「うん、いつものジブリ作品だね」って感じにみえるけど、
けっこう新しいことをやったんだね。

まずは・・・
●監督じゃない別の人が書いた、文学作品が原作であること

そのためにこの映画は、“アニメ作品” である前に、“物語” として秀逸なんだね。
日常にあるファンタジーが観る者の心に、ちゃんと入り込んでくるね。

それから・・・
●伝えたいことが明快であること

後期の宮崎作品のように、メッセージがわかりにくいということはなくて、
原作がテーマにしてる “少女の心の再生“ をきちんと描いていると思う。

主人公の杏奈は、どこにでもいそうな12歳の少女なんだね。
僕もそうだったけど、その頃って、ちょっとしたことにすぐに心が反応してしまう。
だから、ちょっとしたことで傷ついたり、不満に思ったり、
大したことでもないことを許せなかったり、いつも人間不信気味、
そしてそんな自分さえも嫌いになってしまう・・・そんな女の子。

007杏奈.jpg

しかも、生い立ちが不幸だったもんだから、フツーのコ以上にスネっコなんだな。
いわゆる “ぼっち”“ひきこもり” 系。
原作は外国の昔のものでも、いまの日本にぴったりかもね。

クラスメイトなんかともうまくやれない彼女は、ぜんそくの療養のために
夏休みだけ、母の知り合いの住む北海道にやってきて、
マーニーという女の子と知りあって心を開いていく。

そしたら、自分がいままでうざったかった母や友達の言動が、
実は愛にあふれていたことに気づいていくんだね。
マーニーのおかげで、だんだんとスネっコじゃなくなっていく。
心が大人になるって、こういうことなんだろうね。
自分の心が未熟だった頃の、いまではもう取り返しのつかないできごとが
いろいろ思い出されて、泣けたなー。

008夕日.jpg

そして、驚きの結末!
最後のほうになって、ちょっとしたミステリー仕立てになっているんだね。
なるほど、よくできたハナシ。


そうそう・・・
●女の子どうしの友情(?)をテーマにしたこと

・・・も、過去のジブリにはなかったことだよね。
タイムワープ的なファンタジーも含めて、大林作品とテーマが似ているかもしれないな。
少女時代の「仲良し」とか「スキンシップ」とか、
現代の “ぼっち” のコたちには、夢のような友達とのふれあいに、素直に感動できる作品だと思う。

009杏奈とマーニー.jpg

●いろんな人の協働作品であること

いやいや、映画とかアニメってもともとたくさんの人の力で作るものだけど、
肝心なところのリーダーシップという意味でね。

これまでは、製作の部分については、
宮崎さんや高畑さんのワンマンぶりが目立っていたよね。
それが作品の良さも悪さも生み出していたと思うんだけど、
今回は、原作はもちろん、脚本、作画、美術なんかも大物ばかりを頼んだ
監督以外の人の力の比重が重い協働作品なんだよね。

それでも、表現もコンセプトもブレがなくてしっかりした作品にできあがっていると思う。
すご腕ばかり集めたからって、うまくいくとは限らないものだけど、
この作品では、うまいこといい和音が生まれたんじゃないかな?
同じ米林監督作品でも、「借りぐらしのアリエッティ」のようなポートレート的なものとは全然違って、
ずしんとくる物語になっているよね。

個人的な想い入れが7割だけど、とても良くできた作品だと思うな。
「ナウシカ」や「ラピュタ」や「千と千尋」のような壮大なるファンタジー系作品とは別の、
ジブリの “女の子の日常ファンタジー“ 系の中では、もっともおもしろい作品じゃないかな。



この前、ジブリの株主総会をテレビでやってたよね。
ジブリ、製作部門を解散するの!?
もっと新しいものを作るために、一度、バラすということ?
何か次の展望を持っているんだろうか?





Fine On The Outside / プリシラ・アーン







010ポスター.jpg

●『思い出のマーニー』
2014年 日本
上映時間:103分
原作:ジョーン・G・ロビンソン「When Marnie Was There」
脚本:丹羽圭子・米林宏昌・安藤雅司
監督:米林宏昌
製作:鈴木敏夫
プロデューサー:西村義明
製作担当:奥田誠治、藤巻直哉
製作会社:スタジオジブリ
作画監督:安藤雅司
美術監督:種田陽平
音楽:村松崇継
配給:東宝
主題歌・挿入歌:プリシラ・アーン「Fine On The Outside」
声の出演:高月彩良、有村架純、松嶋菜々子、寺島進、根岸季衣、吉行和子、黒木瞳、杉咲花、大泉洋 ほか


コメント

金髪碧眼の女性には無条件に食いついてしまう

 こんにちは。
 金髪碧眼の美女は何時まで経っても男の憧れです(笑い
 ジブリは宮崎さんが稼いで高畑さんが大穴開けるのが恒例。でも肝心の宮崎さんも「もののけ姫」あたりから支離滅裂になって、最近は見るに堪えないものになってしまいました。増してその他の監督の物となると「耳を澄ませば」意外問題外。
 そんなわけで今作も全く期待していなかったのですが、面白いですか?面白いなら見てみたいと思うのです。なにせ金髪碧眼の美少女ですから(笑い

miss.key #eRuZ.D2c | URL
2014/08/08 07:38 | edit

No title

こんにちは
わ~~これ、この映画。見たい!
それも日本語で是非見たい作品です。
いつか必ずDVDを手に入れなくちゃ~

サンデーランチ #- | URL
2014/08/08 09:36 | edit

No title

思い出のマーニー良いんですね。
行こう、行こうと思いながらまだ行っていません。
つかりこさんの解説を読んで一層観に行きたくなりました。
来週は、休みがあるので予定を空けて行ってみます。

takaki11 #- | URL
2014/08/08 14:49 | edit

No title

とってもお気に入りだったようですね!

とても観たくなりました。

個人的な思い入れと重なると、よりいっそう魅力が増しますよね。

劇場には行かないので(^_^;)、早くレンタルが始まることを祈っています・・・。

バニーマン #- | URL
2014/08/08 19:39 | edit

観なければ…

米林宏昌監督の第二作目。
今回は、巨匠抜きでの製作。
宮崎監督の親心か、それともライバルとしての決断か…、
どちらにしても、今後のジブリの在り方を示す作品だと思います。
米林宏昌監督の意欲作、見せて頂きます!!

映画カッパ #- | URL
2014/08/08 23:51 | edit

自分がこれまで持っていた作品のイメージが完全にひっくり返りました。素晴らしいレビューをありがとうございます。
百合映画(いわゆる女性同士のあれ)だと言われてたので、てっきり…
ジブリ作品の美術はいつも素晴らしいですよね。また今回は舞台が舞台なだけに、その持ち技が存分に活かせる。
そこに住んでいたなら感動も相当でしょう。うらやましい限りです。
大阪じゃ絶対無理。 「わたし、マーニーのこと好きやで」
…こりゃあかん(笑)

ヒッシー #- | URL
2014/08/09 08:55 | edit

Re: 金髪碧眼の女性には無条件に食いついてしまう

miss.keyさん、コメントありがとうございます。

んー、「耳を澄ませば」がお好きなら、大丈夫だと思うのですが。
「ラピュタ」や「トトロ」のようなスーパーファンタジーではないです。
でも、「おもひでぽろぽろ」や「コクリコ坂」のようなドラマとも
ちょっと毛色が違いますね。

一番の問題は、女の子どうしの絆がテーマなので、
男にピンとくるかどうかというところかも知れません。

僕は、僕にとっての “心の風景” が偶然にも2つも盛り込まれた作品だったので、
それだけでストーリーや映画の出来と関係なく、惚れてしまったんです。

まあ、人によって賛否さまざまでしょうけど、
よろしかったら、観てやってください。


>「もののけ姫」あたりから支離滅裂になって、

↑その辺の個人的な見解を書いたことがありました。
よかったら、読んでやってください。
http://yurayuragusa.blog.fc2.com/blog-entry-77.html

つかりこ #- | URL
2014/08/10 03:05 | edit

Re: サンデーランチさん、コメントありがとうございます。

原作がイギリス人ですし、舞台は日本ですし、
ご夫婦で盛り上がれるといいですね!

つかりこ #- | URL
2014/08/10 13:26 | edit

Re: takaki11さん、コメントありがとうございます。

女子どうしのハナシだし、少女の心の成長がテーマですので、
好きじゃない人はだめかもしれないですね(汗)。

でも、ろーそくだーせー、は一瞬出てきますよ(笑)。

舞台は、釧路や根室あたりで、架空の街を設定したようです。
北海道の田舎の魅力にあふれていて、行ってみたくなるような
ロケーションでした。
食べ物の魅力も出してほしかったですねー。

つかりこ #- | URL
2014/08/10 13:35 | edit

Re: バニーマンさん、コメントありがとうございます!

> 個人的な思い入れと重なると、よりいっそう魅力が増しますよね。

↑そうなんです。
個人的想い入れ70%です(笑)。

この作品は、「ラピュタ」みたいなでっかいSFでなく、
リアルな日常の心理的なファンタジーだし、
女の子どうしの心情を描いているしで、
その賛否はけっこう人を選ぶのではないかと踏んでいます。

そうですねー。
DVDが出たら、とりあえず観てみる、というのがローリスクですねー。

つかりこ #- | URL
2014/08/11 03:25 | edit

Re: 観なければ…

カッパ師匠、いらっしゃいませ。

> どちらにしても、今後のジブリの在り方を示す作品だと思います。

↑いままでのジブリにはないテーマで作られているし、
きわめて上質にできていると思いますが、
宮崎さんや高畑さんがやってきたみたいに、
“これまで、アニメにしたことのないこと”
というほど新しくはないんですね。

そのせいでしょうか、ジブリは製作部門を一時解散するようですね。
鈴木さんの頭の中には、次のジブリの設計図があるのでしょうか?
この作品の次のアクションが注目されますねー。

つかりこ #- | URL
2014/08/11 03:30 | edit

Re: ヒッシーさん、コメントありがとうございます!

> 百合映画(いわゆる女性同士のあれ)だと言われてたので、てっきり…

↑あ、百合の人たちも喜ぶかも知れないとは思いますが、
それ系の内容ではないようですね。
きっと、女の子どうしのハナシなので、男には理解しにくいものがあるかも、
という映画評がそういうイメージを生んでいるのかもしれませんね。

> 大阪じゃ絶対無理。 「わたし、マーニーのこと好きやで」
> …こりゃあかん(笑)

↑まあまあ、そんなこと言わないで・・・。

つかりこ #- | URL
2014/08/11 03:41 | edit

おはようございます。
マーニー面白そうですね

ネリム #oM6tt0T6 | URL
2014/08/13 08:40 | edit

Re: ネリムさん、お忙しいのにありがとうございます。

はい、けっこうおもしろいと思いますよ。

僕は、個人的な想い入れポイントが2つもあったので、
それだけで好きになってしまいました。

つかりこ #- | URL
2014/08/14 18:53 | edit

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

# | 
2014/08/25 21:52 | edit

Re: 参照させていただきました

しろくろShowさん、「お気遣いコメント」ありがとうございます。

あのくだり、ですね!
それはそれは、きっとご自身の胸の空間に、すっぽりハマったんでしょうね!?

僕も自分の想い入れを発見してしまって、とても好きな作品の1つになりました。
映画って、そういうハプニングもちょくちょく生まれたりして、
おもしろいもんですよね。

「つまんねーじゃないかよ!」って、怒られなくてよかったです。
私の記事のご紹介をいただき、ありがとうございました。

つかりこ #- | URL
2014/08/26 02:39 | edit

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なんとなしに宴のあと

今年の夏は個人的に怪獣映画で明け暮れたようなものだったが、実はその間もそれ以外の映画はこっそり(?)見ていたりするのだ。いちおう備忘録として記録しておくが今回書くのはどちらも劇場で見たものが二本。最初はなんと2ヶ月も前に見た( ̄。 ̄;) 「渇き」のはなしである(7/1だったかな。もう脳の皺から記憶が溶けて鼻から出そうだよ!(>_

You talkin' to me ? 2nd_新たなる驚異を求めて | 2014/08/25 21:46

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