ゆらゆら草

もう少し感受性を働かせれば、毎日がスペシャルになる。そう自分に言い聞かせて、 いろいろ感じたことを書きとめてみよっと。

キミがマフィアになる街 ~ 『ゴモラ』  



仕事でおつきあいのある広告代理店の女子が、イタリア旅行をしてきたとのこと。

彼女は英語もペラペラで、仕事でグァム、サイパン、エジプト、トルコ、アメリカ、メキシコなどに
何度も行ったり住んだりしてたことがある、旅慣れた女子なんだよ。
でも、イタリアは初めてだったそうだ。

そんな彼女が、イタリア旅行で驚いたことが2つあったんだってさ。

一つは、ヴェネツィアはサイコーだったとのこと。
フィレンツェもミラノもローマも行ったけど、ヴェネツィアが一番だったって。
映画やテレビの旅番組などでその “水の都” のようすはおなじみだけど、
実際に行って観ると、想像をはるかに超えて美しくてロマンチックなんだ、って言ってたなー。

もう一つは、ナポリのこと。
バスでローマから半島を南下してナポリに着いたけど、市内観光はナシ。
バスの窓から見える風景だけが、観光だったんだそうだ。
ちょっとお土産を買いたいとか、ちょっとトイレに行きたいとかもだめ。
決められた場所に着くまで、一歩たりともバスを降りちゃだめだ、と言われたそうなんだよ。

まあ、どこの国でもスリとかひったくりが頻発するエリアもあるし、
ガイドって引率の責任があるから、多少オーバーに警戒するもんだし、しようがないか、
って思ったんだけど、どうも通常とはレベルが違うらしいんだな。
「バスの窓から手やバッグを出すな」っていうくらいだから。
サファリパークかよ。



この映画は、そんなナポリを舞台にした映画だよ。
ナポリを根城とする、イタリアのでっかい犯罪組織「カモッラ」の実情を描いた作品とでもいうのかな。
シチリアのコーサ・ノストラ、ンドランゲタ、サクラ・コローナ・ウニータと並ぶ
イタリア4大マフィアの一つだそうだ。

001ゴモラ_ポスター01.jpg

現在、約130団体(約6300人)が所属。
売春をあっせんしたり、シチリア・マフィアと組んで、麻薬取引を行ったり、
衣料や食品などのヤミ製造、違法なゴミ回収処理業など、“シノギ” はマフィアのお決まりのパターンだ。

原作があって、ロベルト・サヴィアーノという作家が書いた、『死都ゴモラ』というドキュメンタリーノベル。
サヴィアーノ氏は、この本を発表した2006年からマフィアに殺害を予告されていて、
2008年からイタリアを出て海外移住しているとかいないとか。



002ゴモラ_団地.jpg

映画の冒頭からいきなり、巨大な “団地” が出てくる。
どれくらいの大きさだろう、1フロア30世帯 × 15階建てくらいかな。
古くなっちゃって、すっごいオンボロな、ほとんど廃墟に近い雰囲気だ。
いかにも、ゴミと犯罪が転がっていそうな感じ。

「ちょっと待てよ、これってまさか、インドネシアの映画『ザ・レイド』に出てくるような
マフィアの棲家じゃないだろうな」、って思ったら、やっぱりそうだった。
『ザ・レイド』がこの映画の真似をしたのかもしれないな。
全部の世帯がマフィアの構成員じゃないだろうけど、ほとんどがそうなんだろうなって印象。
だって、そこに住んでる1人のおっさんが、団地に住んでいるみんなからシノギを集金したり、
ギャラ(?)を配って歩いたりしてるんだから。

この設定は、極めて象徴的だなー、と思う。
ナポリの犯罪組織「カモッラ」は・・・
●貧しい人たちのほとんどが関わっている
●フツーの人々が住んでいるところにフツーに住んでいる
・・・のであって、
“団地” という物理的なビジュアルが、
銃による殺人や麻薬売買なんかの凶悪な犯罪が、毎日の生活の中でカンタンに起こっているんだ
ということをひと目でわからせてくれる
んだな。



この映画の特徴は、ストーリー的にはちっともおもしろくないということだろうな。
そう言うとちょっと語弊があるかもしれないけど、それは、わざとらしい演出がそぎ落とされた
ドキュメンタリータッチだということだよ。
フツーの人たちが、フツーに犯罪を犯す日常。
団地のおばさんが殺される銃の音だって、本物の音は「パンッ」って軽いんだよ。



003ゴモラ_ウルトラゴモラ.jpg

「ゴモラ」とは、旧約聖書の “創世記” に書かれた、
背徳にまみれたために神に滅ぼされたという古代の都市の名前。
この映画の場合は、ウルトラ怪獣ではないのだ。

映画は、実際にあった出来事をもとにした、5つのハナシが並行して進むんだよ。
(↓ネタバレしてます)



■トトのハナシ
トトは、「ENGLAND 7」のサッカーシャツ(ベッカム?)を着た少年。小学生かな。
学校にも行かず、親がやってる雑貨屋の配達を手伝っているけど、カモッラのギャング組織に入りたい。
組織の仕事の方が儲かるからだ。
トトは、後に殺人の片棒を担ぐことになる。

004ゴモラ_トト.jpg


■ドン・チーロのハナシ
ドン・チーロは、団地の組織のメンバーの家を訪ねて、集配金をする仕事をしている。
敵対組織に寝返るため、仲間を殺させる。

005ゴモラ_ドン・チーロ.jpg


■フランコとロベルトのハナシ
フランコは、産業廃棄物処理会社の経営者。
青年ロベルトは、大学を出たが就職に困っていて、人づてにフランコの会社に入社。
高給に満足していたけど、自分の会社が有害物質を不法投棄するブラック企業であることを知り
会社を辞める。

006ゴモラ_フランコとロベルト.jpg


■パスクワーレのハナシ
パスクワーレは、腕のいいオートクチュールの仕立て職人。
名立たるブランドの服を手がけ、スカーレット・ヨハンソンに納品するような会社だけど、
マフィアが絡んでいるんだろうね、搾取されていて貧乏から抜け出せない。
中国人の縫製業者に引き抜かれるけど、ある日、彼を乗せた中国人の車が襲われ、彼以外が殺される。

007ゴモラ_パスクワーレ.jpg


■マルコとチーロのハナシ
マルコとチーロは映画『スカーフェイス』の主人公に憧れる少年。
やんちゃ盛りの二人は、組織が隠していた大量の武器を見つけてノリで強盗をして豪遊する。
組織はこの事態を重く見て、二人をカンタンに処刑する。

008ゴモラ_マルコとチーロ.jpg



僕は、この映画の紹介で、イタリア旅行をしてもナポリには行かないほうがいい、
って言いたいんじゃないんだよ。(本場のマルゲリータは絶対食べたいし)
まだまだ考えずらいけど、日本もそのうちこんなふうになるんじゃないか、
ならないようにしたいもんだなと言いたいんだよ。

犯罪行為やそれをみんなで繰り返すコミュニティは、世界中どこでも貧しいところから生まれるんだね。
マフィアやヤクザって、社会的・経済的に虐げられる側の人たちの非合法的な互助組織なんだよね。

えー、イタリアのどこが貧しいんだよ?って思うだろうけど、
イタリアって、南北で貧富の差が激しいらしいんだよね。
問題はそこだと思う。
国全体が貧しいのなら、また別の問題があるんだろうけど、
貧富の差が激しい場合は「貧」のほうの憤りがその分激しくなるんだろうね。
(国全体が貧しくて、国そのものがギャングと化しているところもあるけど)

日本は、バブルの崩壊とリーマンショックと2つの震災を経て、
しかも、エネルギーと食料を持たざる国としてグローバル経済の中を生きつつあるよね。
おまけに少子高齢化で、労働力も減退しているから、個人の収入そのものはもちろん、
社会保障の面でも格差をつけざるを得ない状況にきているんだと思う。
アベノミクスの内容には格差社会を増長させるような制度変更が見られるよね。

貧富の差の「貧」のボリュームが大きくなれば、
間違いなく犯罪コミュニティは増えたり大きくなったりするはず。



009ゴモラ_産廃.jpg

この映画は、ナポリの犯罪組織のことを淡々と語った、不快な作品だと思う。
マフィアの抗争ならまだロマンもあるけど、女子や子供まで巻き込んでいるから嫌になる。
でもこれは、日本はじめ先進国、新興国を含めた世界中の自由主義経済の末期を捉えた、
いま目をそらしちゃいけない作品なんだろうなとも思う。

そうこの映画は、マフィア映画じゃない。
犯罪化社会映画なんだよ。



010ゴモラ_ポスター02.jpg

●『ゴモラ』(Gomorra)
2008 イタリア 2013年 日本
上映時間: 135分
監督:マッテオ・ガローネ
脚本:マルリツィオ・ブラウッチ、ウーゴ・キーティ、ジャンニ・ディ・グレゴリオ、
   マッテオ・ガローネ、マッシモ・ガウディオソ、ロベルト・サヴィアーノ
原作:ロベルト・サヴィアーノ『死都ゴモラ』
製作:ドメニコ・プロカッチ
製作会社:
配給: 紀伊國屋書店/マーメイドフィルム
出演:トニ・セルヴィッロ、ジャンフェリーチェ・インパラート、マリア・ナツィオナーレ、
   サルヴァトーレ・カンタルーポ、ジージョ・モッラ、サルヴァトーレ・アブルツェーゼ、
   マルコ・マコール、チーロ・ペトローネ、カルミネ・パテルノステル、シモーネ・サケッティーノ
   ほか
撮影:マルコ・オノラート
美術:パオロ・ボンフィーニ
衣装:アレッサンドラ・カルディーニ
編集:マルコ・スポレンティーニ
受賞:第61回カンヌ国際映画祭 審査員特別グランプリ受賞
   第21回ヨーロッパ映画賞 最優秀作品賞・監督賞・脚本賞・撮影賞


コメント

No title

こんにちは
TVしきりに”ゴジラ”(映画の最新作)の予告をやっているので、ゴジラかとおもっちゃいました。ゴモラなんですね。
嫁はイタリアにも行ったことがありませんが、爆弾が言うには”来たイタリアはヨーロッパに近いところだから紳士・淑女が多い”と…

南はやはり危険なイメージがありますよね。特に女性は注意が必要かな?

ここシドニーもベトナム、チャイニーズ、コリアン、イタリアン、レバニーズとマフィアだらけ…
一見普通の人に見えるし、人当たりも関わり合いが無ければとても親切に見えるが、実際はとても怖い存在の様。

血も涙もないということなのかな?最近はTVのニュースでも殺人事件が増えてきました。やはりドラッグ系です。

弱い物を使う(女・子供)は典型でしょう。

危ない物にはてを出さない。親切な人には気を付ける。世の中そうそう親切な人っていませんよね。



サンデーランチ #- | URL
2014/05/12 09:45 | edit

こんにちわ
犯罪は改めて醜いなと思いました。

ネリム #oM6tt0T6 | URL
2014/05/12 12:32 | edit

No title

貧困から抜け出すチャンスのない社会はこわいと思います。
諸外国をみてても格差社会が諸悪の根源だろうなと思うニュースが多いです。
日本でもワーキングプアの問題等があるけど、どうしたら良くなるんだろ・・・。


さとちん #WOq6nlhY | URL
2014/05/12 15:24 | edit

こんにちは

ナポリですか・・・この街には行ったことないです。
映画「食べて、祈って、恋をして」で、主人公たちがローマからナポリに遊びに行ったとき、「気をつけて、美術館にもスリがいるから」という台詞があったのは覚えてます。あと、おっきなマルゲリータ!
治安の良くない国はたくさんあるけど、イタリアで?って思っちゃいますよね。
すごく重みのある映画ですね。
たしかにミラノとか、北部の方は街がきれい&物価が高かった印象があります。

里花 #- | URL
2014/05/12 16:53 | edit

No title

昔、イタリア旅行に行った時ナポリは、そんなにひどい街という感じがしましたが、
今は、ゴミだらけの町という感じで退廃が進んでいるような気がします。
マフィアは貧困がある限りなくならないんですね。
日本では、暴力団に入る若者は少なくなって、もっと割の良いことに行く人が多いそうですが
どうなんでしょうか?
グローバルスタンダードは良いとは思いませんし、格差社会は、考えられますね。

ゴモラは、悲しい怪獣というイメージが今でも残っています。

takaki11 #- | URL
2014/05/12 21:56 | edit

気になってました

この「ゴモラ」は、ウルトラ大怪獣よりも、
ずっと気になっている映画です。
ぜひ、観たい…、観ようと!! と思っています。
ご紹介ありがとうございます。

映画カッパ #- | URL
2014/05/12 22:40 | edit

『ゴモラ』

いつも、見慣れてるからハリウッド。視野を広げて、こういう作品にもと思わせてくれて感謝してます。肩が凝るように脳にも柔軟な思考を、まずは具現化する最初の一歩を(笑)

JOHNNY #- | URL
2014/05/13 07:42 | edit

Re: サンデーランチさん、コメントありがとうございます。

「ゴジラ」、シドニーでもCMやっているんですね!
ハリウッド版で、ゴジラのデザインもかなり異なるんですが、
個人的には観るのを楽しみにしております。

マフィアは怖いですよねー。
現代のマフィアは、その辺の会社組織と一緒で、“商売第一” のようです。
だから、変な関わり方をしなければ、一般の人に危害を加えることがないそうです。
マフィアに損害を与えるようなことをすれば、報復をされますが、
それでも、女子や子供を殺すようなことはないのが一般的だそうです。
ところが、この「カモッラ」は平気で女・子供を殺します。
そもそも、女・子供も組織の構成員だったりするのがいけないんでしょうけど。

つかりこ #- | URL
2014/05/13 22:21 | edit

Re: ネリムさん、コメントありがとうございます!

国や地域や個人が貧しいと、犯罪も肯定されがちみたいです。
生きていくためにやむを得ず、法を無視してしまうんでしょうね。
他国に比べて豊かなのに、犯罪が絶えない日本ってなんなのでしょうね。

つかりこ #- | URL
2014/05/13 22:25 | edit

Re: さとちんさん、コメありがとうございます!

ワーキングプアやネカフェ難民などのリアリティが
高まってきていますよね。
ますます、経済的に困る人が増えそうな予感がしてます。

↓実施されたもの、予定のもの、懸案中のものがこんがらがっていますが・・・

●消費税10%(物価上昇?)
●生活保護基準引き下げ
●遺族年金の縮小
●2013年10月から1%の年金支給額引き下げ
●医療費70~75歳窓口負担が1割から2割へ増加
●年収1200万円を超えると所得控除を縮小で増税
●世帯年収910万円を超えたら、高校授業料有料化
●年収1000万円を越えたら残業代ゼロ
●国家公務員50歳代後半の給与削減
●東京都職員給与0.20%引き下げ
●公務員給与の削減終了
●復興特別法人税廃止
●年金保険料被扶養者控除の廃止

つかりこ #- | URL
2014/05/13 22:41 | edit

Re: こんにちは

里華さん、コメントありがとうございます!

僕はイタリアに行ったことがないのですが、
ナポリと言えば、世界三大夜景のひとつとマルゲリータ、
それとセリエAの試合は観たいなー、なんて言ってたら、
サッカーの試合なんて行っちゃいけないんだよ、って言われる昨今です。
いつからそんなんなっちゃったんでしょうね。

つかりこ #- | URL
2014/05/13 23:00 | edit

Re: takaki11さん、コメントありがとうございます。

> 日本では、暴力団に入る若者は少なくなって、もっと割の良いことに行く人が多いそうですが

↑暴対法が敷かれてから、ヤクザ稼業はリスクばかりが大きくて
 儲からない商売になりつつあるようですね。

日本では、暴対法の網にかかりにくい中国マフィアと「ドラゴン」という組織が
新しい闇の勢力になりつつある(なってしまった)ようです。

日本のグローバルスタンダード化における課題は、同盟国で親日であるはずの
アメリカが一番のネックなのかもしれませんね。

つかりこ #- | URL
2014/05/13 23:08 | edit

Re: 気になってました

師匠、コメントありがとうございます。

ドキュメンタリー感たっぷりです。
もったいぶった演出がないのですが、
映画ですのでクォリティもしっかりしています。
引き算の演出とでも言うのでしょうか、
淡々としていて、サラッと人が殺されます。
その日常感が実にコワイです。

つかりこ #- | URL
2014/05/13 23:22 | edit

Re: 『ゴモラ』

JOHNNYさん、コメントありがとうございます。

そうですね、ハリウッドではこういう映画は作れないでしょうね。
ロマンがなさ過ぎて、商業的な成功が見えてこない作品だからです。

そういう意味では、珍しいのでハナシのタネにでも、
おひとついかがでしょう?

つかりこ #- | URL
2014/05/13 23:26 | edit

No title

カンヌ受賞作ですか……実はカンヌ作品ってあまり見てなかったり……
今年も開催が近いんですよね。ラインナップを見たけど全然分んね〜笑
唯一、デビット・クローネンバーグの作品だけは見たいかな。

ヒッシー #- | URL
2014/05/14 00:59 | edit

Re: ヒッシーさん、コメありがとうございます

カンヌは、社会派かかなりアーティスティックな作品が
受賞することが多いようですね。
けっこう実験的で小難しかったり、眠たくなるような作品が多くて、
なかなか「おもしろい」と言いにくい傾向があるかもしれません。
僕も昔はことごとく避けて通っていました(汗)。

個人的にもエンターテイメントが好きなのですが、
たまにはこういうのもいいかな、と、
自分にストレスを課したりもしてるんですよ、最近は(笑)。

つかりこ #- | URL
2014/05/14 14:08 | edit

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