ご縁ふたつ。DVDは売れるかな? ~ 『東京難民』



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東京に出てきて、初めて路上生活者を見たんだっけ。
郷里では見たことがなかったと思う。
北海道で寒いから、路上で生活なんかできないに決まってるよね。

その頃は、何かに就業している人が、
どんなことをしたら路上生活に堕ちるのか想像もつかなかった。
だって、東京ならバイトやパートを含めると、
何にも働く方法がないということは考えにくいし、
生活保護が受けられない状況というのも理解できないから。

この映画を観ると、とてもコワくなるなー。
それは、「あー、自分もこんなふうにして路上生活者になるかもしれないな」
って思わされるということではなくて、
「いまの時代なら、突然会社が倒産して収入がなくなっても不思議じゃないなー」
ってリアルに感じるからだな。

しかも、もしそうなったら、知人から「やめとけ」と言われるまでもなく
この映画の主人公のようにホストになんかになれるわけがないし、
路上生活をする前に、いいトシこいて何かの方法で生活を支えられるられるのか?
って身につまされるのだ。
まあ、若けりゃまだまだ方法はいろいろあけるどね。

アベノミクスのひとつ、東京を経済特区にするハナシ、
あれは、アメリカの企業のように、
社員を会社の都合でクビにできるようにもなるプランだからね。
数年後には、ホントにいきなり難民になる人がたくさん出てくるかもしれないね。

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<あらすじ>

中村蒼が演じる主人公は、フツーの大学生。
ある日突然、学費未納が続いたとのことで、大学を除籍になる。
続いて、家賃未納で管理会社からアパートも追い出されてしまうことに。

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すべて、田舎の父親が支払っていたから、
いまのいままでお金が未納になっていたことに気づかず、
非情な結果だけが突然やってきたんだな。
父親は大きな借金をかかえて、逃亡中だ。
コワイ借金取りがうろついているので、田舎を頼ることもできない。

アパートを追い出される前に、なんとか滞納している家賃を稼ごうとバイトをするけど、
そう簡単にまとまった金なんか稼げないよね。
とうとう、アパートを追い出されてネットカフェで寝泊りすることになる。

ある時、治験のバイトをすることに。
これは、製薬会社に雇われて新薬などのテストに体を提供する仕事だね。
名前を伏せた薬や薬に似せたものを飲まされたり塗られたりして、
パッチテストや血液検査などをして薬の安全性を確かめるんだね。
バイト料は大小さまざまだけど、この物語の主人公は、
製薬会社の施設に泊まり込みの大きなケースで20万円も稼ぐんだな。

そのお金を手にした、と思った矢先に飲み屋で知り合った女にキャッチされて
ホストクラブで高額請求されるハメに。
これで、ネカフェ代も飲み代も払えない状況に陥ったわけだ。
いよいよ、どうしようもなくなってしまったので、
そのホストクラブのマスターに頼んで、ホストとして働いて金を返すことにするんだなー。

そこから先は、転落が早いよね。
なんたって、ヤクザ屋さんが出てくるからね。
ホストクラブの就業状況(笑)や、女性客をどうやって風呂に沈めるか(風俗産業に引き入れる)
なんかもわかるちょっとしたハウツーものみたいな展開だね。

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当然、稼ぐことに冷酷になれない主人公は、ヤクザからも追われるハメに。
そして、とうとう・・・。



監督は、『陽はまた昇る』、『チルソクの夏』、『半落ち』、『日輪の遺産』、
『ツレがうつになりまして。』などを撮った佐々部 清。

脚本は、『あなたへ』で第36回日本アカデミー賞優秀脚本賞をとった青島武。

主題歌は、『桐島、部活やめるってよ』の主題歌も手がけた高橋優。

んー、申し分のないスタッフなんだけど・・・申し訳ないけどもうひとつ中途半端な印象だなあ。
僕的には、もっと恐ろしく作ってほしかったなあ。
家もない、金もない、借金取りのヤクザに追われる、警察に捕まる、騙される、
ヤクザにボコボコにされる・・・そこんとこが全然コワくないし、痛くもない、邪悪度も低い。

映像的に “闇” が足りないのと、演出の “溜め” が足りないのでは?(生意気ですみません)
原作を読んでいたので、これはフツーに撮ったら映画としてあまりいい感じにならないだろうな、
って予想した通りの出来だったなあ。

いやいや、決しておもしろくない、ということはないんだよ。
日本の現在を如実にえぐっていて、場合によってはカンヌ映画祭あたりで賞をとれるテーマ
じゃないかと本気で思っているんだよ。
だから、とてももったいなかったかなあと思うんだなー。



じゃ、なんで劇場まで観に行ったのか、というと、期待半分&おつきあい半分だったんだよ。
実は、この作品の原作の福澤徹三というのは、僕の知人なんです。
昔、僕が1年近く出向していた会社の宣伝部に中途採用で入社してきた人なんだよ。
半年くらい毎日一緒に仕事をした仲間なんだな。
北九州の小倉の街で、何十回も飲みに行ったっけ。

その後、その会社は倒産してしまって、彼は職を失ってしまったんだな。
それから、しばらく美術系の専門学校の講師をやって食べていて、
小説を書いたと言っていたんだよ。
学生に就職難であることに対する危機感がまるでないんだよ、って言っていたっけ。
その頃の経験が生きているんだね、この作品に。

2000年頃に短編集を出して小説家としてデビューしたんだね。
しかも、ホラー作家として。
そういえば、彼が小倉周辺のお化け話をする時の目の輝きといったらなかったよなあ。
特技を活かしたんだねー。

長編2発目の『壊れるもの』(2004年7月 幻冬舎 / 2008年2月 幻冬舎文庫)は、傑作だね!
フツーの会社員を蝕むオカルトが、カチッとした文体で描かれていると思う。
その頃だったかな、彼がホラー小説誌の企画で「ホントにあった怪談」を連載していた時に、
実話ネタを提供してやったことがあったっけ。
東京の四谷の焼き鳥屋で一緒に呑んだよなあ。

それからずっとホラーをベースに創作を続けているけど、
大藪春彦賞を受賞した『すじぼり』(2006年11月 角川書店 / 2009年7月 角川文庫)や
この『東京難民』みたいな “青春×ヤクザ” モノもボチボチ書いているんだね。
最新のヤクザ系は、『灰色の犬』(2013年9月 光文社)というのが出ているんだな。
読んでみようかなー。

今年の年賀状に「今年は飲みに行きましょう」って書いてあったので、
久しぶりに新宿でも行こっか。

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本人がヤーさんみたいに見えるけど(笑)、多分に演出されているね



そういうわけで、映画の前評判がどうであろうと、劇場に観に行ってやろう、
って心に決めていたんだよ。

でもね、中村蒼が夜の雨の中で倒れているシーンがよかったし、
いま人気の山本美月もけっこうよかったし、
ホストに入れ揚げてしまう看護婦を演じた大塚千弘は発見だったなー。
物語の中心付近にベテランのいない中、彼女の存在感は強くて惹きつけられるものがあったなあ。
裸の体当たり演技があったから、というだけではなくてさ。

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左上が大塚千弘ちゃん

それから、この大塚千弘ちゃん、後からネットを調べてて気づいたんだけど、徳島市出身なんだね。
あれー、と思ってよく見ると「映画的日記」映画カッパさんのご近所の女性の娘さんだった!
そう、山下リオのお姉ちゃんなんだね。
そういえば、よく似てる!

縁って、ホント味なものですよねぇー。



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●『東京難民』
2014年 日本
上映時間:130分
製作:森山敦
監督:佐々部清
原作:福澤徹三
脚本:青島武
音楽:遠藤浩二
主題歌:高橋優「旅人」
撮影:坂江正明
美術:若松孝市、小林久之
照明:守利賢一
録音:福田伸
配給:ファントム・フィルム
出演:中村蒼、大塚千弘、青柳翔、山本美月、
   中尾明慶、金子ノブアキ、井上順 ほか


Comment

こんにちは
日本も相変わらず多いですか?
この国も多いです。路上生活者の方たちですよね。
1度その世界に落ちたら結構楽しいのか?なぜ頑張って普通の生活に戻ろうとしないのかが不思議です。
結構高学歴だったりしますよね。
昔、昔。奥田英二さんは、路上生活をされていて、今の奥様に救っていただいたと記憶している嫁です。

  • 2014/03/21 09:11
  • サンデーランチ
  • URL
初の書き込みです
人生の半分以上を東京で生活していますが
こういう内容の映画って他人事じゃないです。
うんうんと頷きながら記事を拝見しました。

しかし原作の方とお知り合いなんて!
驚きました!
飲みに行ったら記事にしてくださいね(笑)
  • 2014/03/21 12:33
  • ニルコビチ
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  • Edit
こんにちは
たしかに、このポスターを見ると、もっと恐ろしくすさまじく描かれてるような気がしちゃいますねえ。

ホストってすごくお金が入りそうな気がしたんだけど、ヤクザ屋さんがからんでくるなんて、結構面倒な世界なんですかね。
  • 2014/03/21 12:52
  • 里花
  • URL
観てみます!
佐々部 清作品でつかりこさんの知人が原作。
是非ともみせて頂きます。
非常に興味深い「切り口」ですね!
久々の佐々部作品楽しみです。
  • 2014/03/21 23:26
  • 映画カッパ
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こんにちわ
東京難民のあらすじを読むと実際にありそうで怖いですね。

今の世の中を反映してると思いました
  • 2014/03/22 16:15
  • ネリム
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北海道にも、路上生活者はいますよ。札幌だけかもしれませんが、地下街の入口に寝るそうです。
生活保護ももらうべき人がもらえないで、なんでという人がもらっている感じもします。
経済特区の話は怖いですね。
何でもかんでもグローバルスタンダードもどうかと思います。

それにしてもつかりこさんは、交際範囲が広いですね。
御友人の活躍を期待しています。
  • 2014/03/22 20:39
  • takaki11
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東京難民・・予告編を映画館で観て
面白そう、興味ある~と思いました。
でも、そこまで落ちるかな~?と考えた時
現実的でもないような気もしたりして。。。
今度機会を見つけて観てますね。
  • 2014/03/23 18:35
  • さとちん
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Re: サンデーランチさん、紅茶の師匠にもなれそうですよね
奥田英二、路上生活をしていたことがあるんですかあ。
役者さんの売れてない頃のハナシって、すごいものがありますよね。

奥田英二の奥さんは安藤和津で、その娘が安藤サクラですよねー。
  • 2014/03/25 07:01
  • つかりこ
  • URL
Re: 初の書き込みです
ニルコビチさん、カキコありがとうございます。

そういえば東京生活、これまでの人生の3分の2に近づいています。
思えばあっと言う間でした。
って、まだ生きてますけど。

そうそう、この映画を観たら落ち着かない気分になりました。
原作者の意図では、就職への危機感のない高校生以上の
若者に観てほしい、ということですが、
鑑賞後、若者は少し「希望」を抱けるかと思いますが、
大人には「危機感」だけが残るのではないかと思います。
やな映画です(笑)。

もちろん、会ったらブログネタにしますねー。
  • 2014/03/25 12:21
  • つかりこ
  • URL
Re: こんにちは
里花さん、コメントありがとうございます。

ポスターの雰囲気は、得も言われぬ「暗雲」を感じますが、
本編はさらーっとし過ぎている感じがしましたね。
もっと、「コワイ」とか「激しい」とか抑揚がほしいなと思いました。

ホストクラブは、劇中でも、お客はたくさんお金を払いますが、
ホストがたくさんお金をもらえるようになるには、
固定客をたくさん持ったりなるまでなかなか大変そうです(汗)。

すべての店がそうなのかわかりませんが、
かなりヤクザっぽいのでは?
まあ、ヤクザも商売ですから、“ケンカをせず、お金をちゃんと払う人” には
何もしないと思いますが(汗)。
  • 2014/03/25 12:58
  • つかりこ
  • URL
Re: 観てみます!
映画カッパさん、まいどお世話になります。

佐々部監督って、オーガナイザータイプの監督なんでしょうかね?
脚本家とか助監督とか、原作を無視してでもある意味 “変な映画” にするくらいの
人間がチームにいなかったのでしょうか?
「切り口」がおもしろくて、きちっとまとまっているのですが、
「はみ出すパワー」に欠けているのではないかと、残念な気持ちです。

ご紹介いただいた、「チルソクの夏」はよかったですねー!
  • 2014/03/25 13:07
  • つかりこ
  • URL
Re: ネリムさん、コメントありがとうございます!
小説を読んでも、映画を観ても、たぶんネリムさんなら
「そんなに簡単に堕ちるわけないだろー」って思うかもしれません。

でもね、このハナシのポイントは、
「世間知らずで、ぽよーんとなんも考えてないで生きている若者」が
「突然、街に投げ出されたら」、ホントにこうなるに違いないと
思わせるところにあると思います。
実際、ネカフェ生活してる若者っているんですよね。

マン喫やネカフェで寝ると、疲れがとれないですよねぇ?
  • 2014/03/25 13:18
  • つかりこ
  • URL
Re: takaki11さん、いつもありがとうございます。
あ、そうか!
札幌は冬でもあったかい地下街がありますもんね。

経済特区、特定秘密保護法案、消費税アップ、配偶者控除の撤廃、
基礎年金の保険料支払いの延長・・・
庶民にはどんどんきつい時代になっていくようです。
配偶者ウクライナへの経済支援なんかやってる場合じゃないですよね?
アベノミクスは何をめざしているんでしょうね。

交際範囲、広くないんですよ。
仕事はデスクワークが長くて、ひきこもりみたいなもんです。
福澤さんは、ひきこもり友達みたいなもんです(笑)。
  • 2014/03/25 13:47
  • つかりこ
  • URL
Re: さとちんさん、ありがとうございます!
そうですねー、この映画を観てると・・・
「なんでそこで市役所に相談しないんだよ」とか
「そんなことやったら、そうなるに決まってるだろ」とか
ちゃんとしてる人なら、そんなに簡単にあそこまで堕ちないだろー
って思うところがあちこちにあると思います。
(原作はもう少し緻密に書かれていますが)

でも、「世間知らずで、ぽよーんとなんも考えてないで生きている若者」
が観るとホントにこうなるに違いないと思うかもしれません。
実社会で問題解決したことのない、あるいはする気力のない若者向け
に作られているんですね。

また、ファンタジーっぽく作るというテもあるはずですが、
リアルに徹底してないしファンタジックでもないしなので
突っ込みどころが生まれるんでしょうね。

正直言って、あまりおもしろくないかもしれません。
「ひねり」がないというか、「映画的エスプリ」がないというか
直球すぎるかなー、と思っています。
すごくつまんない、ということもないのですが(汗)。
  • 2014/03/25 14:10
  • つかりこ
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