そして家族になる ~ 『ディーパンの闘い』

2017/06/23

6月20日は、「世界難民の日」だったんだってさ。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などが提唱して、
国際連合総会の決議で2000年12月に定められたとのこと。
2001年から毎年、世界各国で難民救済のためのキャンベーンや
イベントが行なわれているんだそうだ。



この映画を観るまで、2009年の最近までスリランカで
激しい内戦が行なわれていた
ということを知らなかったよ。

スリランカは、シンハラ人という人種が7割
タミル人というのが約2割、+その他1割で構成されている
らしいんだけど、イギリスが植民地にしていた時代には
少数派のタミル人を重用する政策をとっていたとのこと。

でも、イギリスから独立した後からは、当然、
多数派のシンハラ人を優遇した政策がとられるようになるよね。
だもんだから、1956年頃から民族間の対立が高まっていったんだと。
またイギリスの負の遺産か、って感じ。

で、1972年にはタミル人がスリランカからの分離独立をめざして
「タミルの新しいトラ (TNT) 」という反政府勢力を発足。
'75年にはそのTNTを母体とした「タミル・イーラム解放のトラ (LTTE) 」
結成して、テロやゲリラ戦などの武力活動を展開していたんだよ。

そしてとうとう、1983年に両者の虐殺合戦が勃発。
総力戦の末、2009年5月にシンハラ派政府軍が勝ったカタチで内戦が終結。
その終戦の直前の4月に、難民と化した一般のタミル人が15万人も
国を脱出
したんだそうだ。

この映画の主人公の男は、その15万人のタミル人に紛れてフランスに脱出した
元「タミル・イーラム解放のトラ (LTTE) 」の戦士という設定なんだな。
や、主人公を演じた俳優は、ホントにLTTEの戦士だった人だそうだから
設定というかなんというか。

あ、ここまで読んで、「うぇー、おもしろくなさそう」って思っているよね?
まあね。
でも、映画の内容には、スリランカとか、タミル人とかあんまり関係ないかな。
「どっかの国から逃げて来た男(家族)」の「フランスでの難民生活」、
っとだけ知ってて観ればいいんじゃないかな。
いま、ヨーロッパでいろいろ問題になっている “難民のひとつのケース”
ということだね。



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主人公の男の名前は、ディーパン。
ホントの名前じゃない
パスポートに書いてある年齢も、ホントのトシじゃない。

妻はまったく知らない女。
スリランカの港で難民船に乗る直前にあてがわれた女だ。

内戦に巻き込まれて死んでしまった赤の他人の3人家族の
パスポートを流用して、その家族構成に当てはめて
即席に夫と妻ということにされたのだ。

娘は、道端で途方に暮れていた母子家族の3人の子供のうちの
1人をもらってきた

偽物の3人家族はフランスに着いた。
長い船旅をともにしたからといって特段、仲良くなったわけではない。

偽物とはいえ、3人の身元を証明するパスポートがあるのだから、
3人くっついているのが得策に違いないのだけど、
とりあえず妻、ということになった若い女にとっては、
まんまとスリランカを脱出してしまえば、好きでもない歳の離れた男と
人数合わせのための子供なんか邪魔なだけなのだ。

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ディーパンは、内戦のとばっちりでホントの妻子を亡くしていた。
もう、民族が違うだけで相手を憎んで暴力を振るったり、
愛する人を殺されたりするのは耐えられなかった。

どんなに貧しくて、どんなにボロい住居に住むことになろうとも
今度こそは、毎日銃弾に怯えたりすることのないところで、
穏やかに生きていきたい、と願っていたのだが・・・。

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難民の暮らしは、難民になる前も、なった後も過酷だ。
この映画は、偽物の家族が、そんな暮らしの中に
ホントの愛や家族の絆を浮かび上がらせる。





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●ディーパンの戦い(Dheepan)
2015 フランス
上映時間:115分
監督:ジャック・オーディアール
脚本:ジャック・オーディアール、トマ・ビデガン、ノエ・ドゥブレ
製作:パスカル・コシュトゥー、ジャック・オーディアール
撮影:エポニーヌ・モマンソー
編集:ジュリエット・ウェルフラン
音楽:ニコラス・ジャー
製作会社:Canal+、Ciné+、フランス2シネマ、フランス・テレビジョン、
     ページ114、ホワイ・ノット・プロダクションズ
配給:ロングライド
出演:アントニーターサン・ジェスターサン、カレアスワリ・スリニバサン、
   カラウタヤニ・ヴィナシタンビ、ヴァンサン・ロティエ、
   マルク・ジンガ、フォージ・ベンサイーディ ほか
受賞:第68回カンヌ国際映画祭 / パルム・ドール
   第33回マイアミ国際映画祭 / 審査員賞
   第19回オンライン映画批評家協会賞 / 米国未公開作品賞
   第40回トロント国際映画祭 / スペシャル・プレゼンテーション部門上映







♪ 15 Step / Radiohead





♪ ムラサキ☆サンセット / キリンジ




comment (6) @ 映画>コレコレ、いいよ!

韓国庶民の叫びか ~ 『殺されたミンジュ』

2017/06/18

改正組織犯罪処罰法(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に
関する法律等の一部を改正する法律案)が、6月15日に強行採決されたねー。

国際組織犯罪防止条約(TOC条約)の批准条件を満たすことで、
2020東京五輪をめがけて、テロ対策整備を急いだんだろうけど、
委員会採決をすっとばすなんて、ちょっと乱暴なやり方だったよなあ。

でもさ、最大の問題はそこじゃないよなあ。
この法律のいうところのテロの準備って・・・

組織的犯罪集団に所属している
二人以上の計画者が
③ 277の「テロ等準備行為」(爆弾テロや毒ガステロの計画、現場の下見・工作
  資金集め材料や道具の調達 等)
④ 実際にその爆弾や毒ガスを入手し
⑤ 現場において使用し、人が死んだりモノを破壊する

・・・ってことらしいんだけど、
これまでは、④、⑤じゃないと検挙&処罰できなかったんだよね。
「疑わしきは、罰せず」。
世の中の犯罪について、すべてそういうもんだけどね。

でも、テロなどの場合、実行されちゃったら逮捕どころじゃなくなる、
そりゃ、逮捕しようとしていた警察官も立件証拠もぜ~んぶすっとんでなくなるよな。
それでは遅すぎる、というわけで②、③の段階でも検挙&処罰できる法律を
整備しようということになったんだな。

でもさ、「組織的犯罪集団」というのは、
事件が起こる前にどうやって断定するんだろうね。
ヤクザと脱税企業と革マル派とか赤軍派なんかの過激派?
まさか、日本中の企業、団体を盗撮、盗聴、メール傍受するんじゃないだろうね。
逆に、個人でテロを計画した場合は捕まらないの?
自衛隊内にいる革命分子は捕まえられないんじゃないの?
ヤクザ屋さんは包丁持って料理したり、花火をやっちゃいけないの?
だいたい、テロって組織的犯罪集団に属しているのかいないのか
わからないようなやつらがやるんじゃないの?
破滅思想のカルト宗教の教団だって、始めは組織的犯罪集団じゃないからね。

僕は、テロ対策用の法律を作ることに反対じゃないんだけど、
こんなんじゃ、穴だらけのざるだし、どうやって立件するの?
誤認逮捕の山を築くことになるんじゃないの?

まあ、治安維持法みたいな、国家権力の濫用を許すような法律にならないことを
祈るばかりだわ。



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「国家権力」といえば、最近観た映画はコレ。

国家のなんらかの機関の指令で、不幸な国民が不幸な国民を監視したり、
処罰したりする社会。
誠実に働いても報われない社会。
小さい頃から、死ぬほど勉強して高学歴を手に入れても
就職さえもままならない社会。
悠々と生きられるのは、ごく一部の国家権力者と大金持ちだけじゃないか!

・・・って感じの韓国映画だなー、これは。

韓国では、儲かっている企業といえばごく一部の大企業だけで、
その大企業に就職したいがためにみんな子供の頃からガリ勉で
一流大学をめざすけど、一流大学を出てもほんの一握りしかまともな会社に
就職できないのが現状なのだ、って何かで読んだけど、
ホントらしいのかなあ、この映画を観るかぎりでは。

それから、アメリカで言えばFBIというかCIAというかみたいな機関の
エージェントが市民生活の中に入り込んでいて、
市民が市民を監視したり始末したりするんだって言うのもひょっとして
ホントなのかもしれないなあ、って気になってくるわ、この映画を観ると。

だって、制作者のクレジットを見たら、ほとんどキム・ギドク一人で
やっちゃっているんだもんね。
シナリオを読んで、誰も乗らなかったってこと?
ヤバイから乗らない = ホントのこと、って感じがしない?



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映画は、冒頭からいきなり
女子高生ミンジュが殺されるシーンから始まるんだよ。
複数の男たちに捕まって、窒息死させられる。

そして1年後、謎の集団がそのミンジュ殺しに関わった男たちを
一人ずつ拉致して拷問を繰り返す。
ミンジュ殺しの仕返しなんだろうな。
主人公はその謎の集団のボスなんだよ。

でも、この映画は、わからないことばかりだ。

何の罪もない女子高生を殺したグループは、当然悪党に見える。
でも、ハナシが進んでいくと、どうもそのグループは
国家の諜報機関みたいなところにエージェントとして雇われて
いたんだろうな、ということが見えてくる。

それで、その女子高生殺しグループは、それぞれちゃんとした
職業に就いているし、逆に謎の仕返し集団は社会の
脱落組でまともな生活をしている人間が一人もいないから
実は、謎の仕返し集団のほうが悪いやつらなのかと疑念がわいてくる。

こいつらが、過去に国家機密に関わるようなことで、
謀反や失敗を犯したせいで国の特命機関にミンジュは殺されたのでは?
もうホントにどっちが正義でどっちが悪なのかわかんなくなってしまう。

ラストでは、いよいよ疑問だらけになって物語は終わってしまうんだよ。

●結局、最も悪いやつはミッションを発した国家の諜報機関ひいては
 国家なんだろうな?
●仕返し集団のボスは、過去にどんな謀反または工作をしたのだろう?
●ミンジュはその謀反や工作とどんな関係があって殺されたんだろう?
●最後に生き残ったやつは、実はミッションを達成したということでは?
●実は、あいつが女子高生殺しグループのリーダーなのでは?
●でも、結局は個人的な恨みをはらしただけなんだろうか?

・・・観た人と語らいたいわー。

ハングルの原題は、「1対1」という意味だそうだ。
これも、なんでそういうタイトルなのか考え中・・・
●女子高生殺しグループも謎の仕返し集団も、
 結局は集団としてのまとまりなどなくて、
 個人的な利害で動いていただけなのでは?
●国家のエージェントグループ VS 仕返し集団という複数対複数の
 戦いに見えるけど、よく考えればどちらもしがない一市民であって、
 そういう意味で1対1。結局、国家権力や富に踊らされるのは
 一小市民ばかりなのだ、と言いたいのではないか?
●ラストはミッションなどは関係なく、
 一個人の恨み VS 一個人の恨み と言いたかったのか?


そしてもうひとつの疑問は、さっきも書いた
「こんなことが、韓国国内でホントにあるんだろうか?」

思えば、実際に軍隊があり、軍役もあり、いまも北との戦争が続行中だし、
北へのスパイも、北からのスパイもうようよしてるし、
事実、日本とは危機感が何倍も強い韓国でのおハナシ。
フィクションとは思えない凄味があるよなあ。





003ポスター.png

●殺されたミンジュ(일대일/ONE ON ONE)
2014 韓国
上映時間:122分
監督:キム・ギドク
脚本:キム・ギドク
製作総指揮:キム・ギドク
撮影:キム・ギドク
編集:キム・ギドク
配給:太秦
出演:マ・ドンソク、キム・ヨンミン、イ・イギョン、チョ・ドンイン、
   テオ、アン・ジヘ、チョ・ジェリョン、キム・ジュンギ ほか
受賞:第71回ヴェネツィア国際映画祭
   ・「ヴェニス・デイズ」部門 オープニング上映
   ・作品賞







♪ 返事はいらない / 荒井由実



がんばれ!ユーミン!!



♪ エイリアンズ / たなかりか




comment (9) @ 映画>まあまあかな