秘密にせずにいられない感想 ~『あなたになら言える秘密のこと』


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これは、いいねー。

毎週、視聴率を気にしながらやってかなくちゃなんない
テレビドラマとは明らかに違う作り方。
これが映画だよなー。

まあ、概して静かで暗い映画だけどね。
ハリウッドでは、あまり作られないタイプだろなあ。
スペイン映画だからな。
日本映画に近いテイストかもしれないな。

でも、これは好き。
個人的には、“当たり” を引いた、って感じ。
静かで、残酷で、悲しくて、驚愕して、あたたかい、ラブストーリー。



ハンナは、イギリスのどこかの街の工場に勤めている。
一人で暮らし、きちんと出勤し、きちんと仕事をこなし、
毎日、リンゴ半分とチキンナゲットとライスをタッパーに入れた弁当を
一人で食べて、一人でアパートに帰る。

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まじめな工場労働者、というんじゃないな。
無口で、無表情、心を開かず、友達も作らず、
美味しがらず、着飾らず・・・
そう、ただ生きているんだな。

ある日、ストイック過ぎる彼女を見かねて、
責任者から長めの休暇をとるように勧められる。
仕事ぶりに問題があるわけではないので、クビというわけではなく、
ロボットのように働く彼女へ長期の休養を与えたんだろうね。


突然やることがなくなったハンナは、
何のあてもなく、ふらりと出かけた港町のカフェで
近くにいた人の電話の会話を耳にはさむ。

急に看護師が必要になった、期間限定(1か月?)で働ける人はいないか、
というような内容だ。
暇を持て余しているハンナは、すかさず自分を使ってくれ
と申し出てて契約成立。
ハンナは、看護師をやっていたことがあったんだよ。

よし働けや、ということで、ハンナが連れて行かれたところは、
なんと、広大な海の上に突き出た海底油田のプラントの上だっ。
巨大だけど、廃田寸前で数人しか残されていないさびれたところだ。

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んー、なんという状況設定。
大海の上に開いた針の穴のような孤独。
広大な自然の原に漂う、小さな人工。
限りなく自由な世界にある、身動きのできない閉ざされた空間
これだけで、この物語世界にぐいいと引き込まれてしまった。

言葉にするとシュールな状況に感じるかもしれないけど、まったくのリアルだ。
そうか、この地球上にこんな場所があったんだ

数人の人がいるだけで、社会のノイズがまったくない世界。
当然、物語は登場人物の行動や会話に敏感になってしまう。
ちょっとしたシーンや言動の意味がくっきりと浮き彫りにされて伝わってくる。
一人きりで殻に閉じこもっているか、選ぶ余地もなくそこにいる数人の誰かと
触れ合うしかやることがないというわけ。

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しかも、ハンナが看護する相手は全身に大やけどを負って
一時的に視力を失っている男。
ハンナはキホン無口だから、まるで、映画を観ている自分がベッドに伏して、
目をつぶって、注意深くハンナの言葉に耳をそばだてているように感じてくる。

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言葉のやさしさや厳しさ、治療で触れられる手のあったかさや火傷の痛み、
与えられる食べ物の温度や味覚
なんかが、ダイレクトに伝わってくる。
観る者の感覚が研ぎ澄まされる。


視力が回復しない男は、毎日きちんと看護してくれるハンナに
一所懸命話しかける。
プライベートなことや自分の感情に関わることを一切話そうとしない
彼女に興味津々だと言うより、荒涼とした海に漂いながら感じる
目が見えない不安や、火傷の苦しみを抜け出して、
生きてる何かを見つけたかったんだろうな。

とりとめもない会話を繰り返しているうちに、
ハンナは少しずつ心を開いていく。
そして、すべてを語り合いすべてを知り合った二人は、
裸になってきつく抱き合って濃厚なチョメチョメを・・・

・・・ってなわけないだろ。
いや、邦題のニュアンスからして、多少なりともそんな展開になるんだろうな
って想像してた人は、僕とおんなじただのスケベだなー。



この映画には、重くて暗い、痛烈なサプライズがあるんだよ。
そして、あったかーい涙。
これ以上は、言えないよ~ん。

強いて言えば、
観た後たぶんキミは、邦題を・・・
「あなたにも言いたい、秘密にしてはいけないこと」
・・・って、書き変えたくなるだろうな、ってこと。



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●あなたになら言える秘密のこと
(LA VIDA SECRETA DE LAS PALABRAS/THE SECRET LIFE OF WORDS)

2005 スペイン
上映時間:114分
監督:イサベル・コイシェ
脚本:イサベル・コイシェ
製作:エステル・ガルシア
製作総指揮:ジャウマ・ロウラス、アグスティン・アルモドーバル
撮影:ジャン=クロード・ラリュー
編集:イレーヌ・ブレカウ
美術:ピエール=フランソワ・ランボッシュ
衣装:タティアナ・エルナンデス
配給:松竹
制作会社:ヴィレッジ・ロードショー・ピクチャーズ、デューン・エンターテインメント
出演:サラ・ポーリー、ティム・ロビンス、ハビエル・カマラ、
   エディ・マーサン、スティーヴン・マッキントッシュ、ジュリー・クリスティ、
   レオノール・ワトリング、ダニエル・メイズ、スヴァレ・アンケル・オウズダル、
   ダニー・カニンガム、ディーン・レノックス・ケリー、エマニュエエル・イー ほか







♪ 明日への手紙 / 手嶌葵


ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』の主題歌だよ
すっごい、いいドラマだったよなあ


♪ Country Honk / Rolling Stones


ブルースが先か、カントリーが先かそれがモンダイ


花の季節


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今日の風で、庭のブルーベリーの花が散らされてしまった。



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でも、花は意外なところから咲いたりもするよ。



被災された方々に、謹んでお見舞い申しあげます。
Mくん、大丈夫かあ?








♪ 瞳を閉じて / 荒井由実





♪ 大好きな君に / 小田和正




恋と友情と音楽とファッションと ~『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』


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んー、なんてオシャレな映画なんだろう!
17・18才くらいから23・24才くらい向けの、イギリスの青春映画なんだけどね。
体育会系でなくて、文化会系ヤングを描いた、クールでホットな作品だねぇ。

微妙にミュージカル仕立てなんだけど、そもそも素人バンドのハナシだから
歌うシーンがバンドの歌と紛れた感じで、わざとらしく見えなくていいな。



スコットランドのグラスゴーに住んでる3人。

最主役格の女の子は、心療病院に入院中。
拒食症って設定だっけな?
毎日、薬を飲まされてボヘーッとしているんだけど、そこは思春期、
元気があまってるから病院を抜け出して呑みに行ったり、絵をかいたり、
詩を書いたり、iPhoneで音楽を作ったり、じっとなんかしてらんない。

メガネの男子は、大学生かな。
アマチュアバンドをやってるけど、ちっともうまくいってない。

そうこうしてる時に、病院を抜け出してきた女の子と知り合いに。
ふとした弾みで彼女の作った曲を聴いて、一発でお気に入りに。
彼がギターレッスンのバイトをしてる教え子の女子も巻き込んで
バンドやろうぜ!ということに。

そんな即席にできたバンドは、少しずつ成功へ。
もちろん、うまくいかない恋や、友情や、
アマチュアリズムとプロ意識の葛藤などなど・・・
次へ進むまでの青い時代が瑞々しく描かれていく。

とりとめもないストーリーだし、若者向けだから、
「おもしろい物語か?」って聞かれたら、
そうでもないか、って答えるかもしれないけど、
個人的には観てよかったなあ、って思ってる。


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何がオシャレって、まずは文字通りファッション
ほとんどカットが変わる度に、登場人物の服装が変わるくらいのノリだね。
“よそいき系” も “ふだん系” も、“かわいい系” も “きれい系” も、
なんでもござれ、で見られるよ。
すごくかわいかったり、なかなかかっこよかったり、いいねー、これは。
ま、若者向けだけどねぇ。

イギリス映画だし、スコットランドのグラスゴーが舞台だから、
ブリティッシュ・トラッドを基調にしたデザインのファッションかな。
50~70年代の懐かしい感じのアイテムを、いま風にアレンジした着こなしに見えたなあ。
“ふる-あたらし系” の絶好の見本といえるかも。

コスチュームとして使われているブランドは・・・
「フレッド・ペリー(FRED PERRY)」、「トップショップ(TOPSHOP)」、
「アーバンアウトフィッターズ(Urban Outfitters)」、
「アメリカン・アパレル(American Apparel)」、「ヌーディージーンズ(Nudie Jeans)」、
「クラークス(Clarks)」などだそうだ。
そんなに高そうじゃないので、すぐにでも真似できそうだね。



映画って、いろんな観方があると思うけど、
登場人物のファッションを見るのが好き、というのもあるよね。

僕がその昔にホレたファッションは・・・

●『タクシードライバー』のトラビスが着ているジャケットとジーパン
あのカーキ色のアーミーウェアは、「タンカーズジャケット」というやつ。
これは、当時は日本ではまず手に入らなかった。
MA-1ジャケットはかろうじて売ってたけどね。
ジーパンは、「リーのライダース」か「リーバイスのブーツカット」だね。
それと、飾りっ気の少ないウェスタンブーツを履けば、キマリ!

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●『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のマーティのダウンベスト
'85年だから、ダウンベストは日本でもすっかり人気のアイテムになっていたけど、
映画で、カジュアルファッションとして見たのは初めてだった気がするなあ。

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●『アニー・ホール』のアルビーのボストンタイプの眼鏡
当時僕は、全然視力が弱いということがなくて、
メガネなど必要なかったんだけど、あれにはあこがれたなあ。

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●『レオン』のニット帽
『カッコーの巣の上で』のジャック・ニコルソンも、
『ディアハンター』のデニーロも被ってたやつ。
長年、いつか被ろう、って思っていて、
近年、ユニクロで1,000円くらいで買って被っていたら、
まわりの人たちに、「ドロボーみたい」とか「悪人に見える」とか言われて、
がっかりしたよ。

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●『ブレードランナー』のデッカードが使ってたグラス
デッカードが自分の部屋へ帰ってきて、ウィスキーを飲むやつ。
でっかくて(デッカードだけに)かっこいいグラスなんだよなあ。
あのデザインじゃなくても、とにかくでっかいロックグラスがほしくて
あっちこっち探したんだけど、どでかいのって案外ないんだよね。
いまは、「デッカードグラス」とか言って、2万円くらいで売ってるみたい。
ウェアじゃないけど、ま、ファッション的アイテムということで。

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●『ルパン三世 カリオストロの城』のFIAT500
あのカーチェイスを観たら、男子はみんなあのクリーム色の
フィアット500がほしくなるよねぇ。
いまは、旧車も新型もあまりほしいと思わないけどね。
非力だし、ボロそうだし。
お金に余裕があるんなら、3台目くらいに持ちたいけど。
あ、プラモデルは作ったことあるよ。
これも、ファッション的アイテムということで。

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●『ティファニーで朝食を』のホリーが着てた男物のワイシャツ
あ、ちゃった、シャツじゃなくてオードリーにホレたんだのか。
“全裸で男物のカッターシャツを着る” というのが流行ったのは、
この映画のおかげだとか。ありがたや

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●『007』のショーン・コネリーが着てたスーツ
どの作品とはいい難いけど、ショーン・コネリーはかなり
スーツが似合っていたような気がするなあ。
英国製のめっちゃ高い生地を買って、
劇中のテーラーみたいなとこで採寸してもらって、
とっておきの一着を作りたいもんだねー。
ダニエル・クレイグも、 コリン・ファースもスーツが似合うよね。
イギリス人は、そういう遺伝子を持ってるのかねー。

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それから、さらにこの映画をオシャレにしてる理由は、音楽なんだなー。
なんたって、この映画の監督はスコットランドで人気の「ベル&セバスチャン」
というバンドのスチュアート・マードックというミュージシャンなんだね。

彼が、実体験を元にプロデュースしたアルバム「God Help The Girl」を
原案にして、監督・脚本・製作・スタイリング・音楽、資金集めまでやって
作ったのがこの映画というわけ。

スチュアート・マードックは、『ハイ・フィデリティ』、『プラダを着た悪魔』、
『JUNO/ジュノ』、『(500)日のサマー』などのサントラにも関わったんだそうだ。

『ムーンライズ・キングダム』や『グランド・ブダペスト・ホテル』を撮った
ウェス・アンダーソンを発掘した名プロデューサー/バリー・メンデル
製作に協力しているというから、折り紙つきだな。

「ベル&セバスチャン」は、音楽ジャンルではネオアコースティック(ネオアコ)とか
ギターポップというジャンルに入るらしいんだけど、
むむむー、よくわかんないなあ。
まあ、聴いてみて、好きか嫌いかだよねー。


♪ If You're Feeling Sinister / Belle & Sebastian




♪ We rule the school / Belle & Sebastian




劇中では、「ベルセバ」の曲↑は流れないけど、
同じミュージシャンの作風であることはわかるな。

アコースティックでゆっくり目のリズムでうるさくない感じで、
ブラックミュージックのニュアンスがまったく入っていない曲調だね。
要するに、素直で癒しの入ったメロディ、って感じ。
↓劇中で使われている曲はこんな感じ。


♪ A Down and Dusky Blonde / God Help the Girl soundtrack




♪ Come Monday Night / God Help the Girl soundtrack




・・・ね? 癒されるだろ?
ロックのロの字も、ブルースコードのブの字も入ってない。
ポップのポじゃん。

スコーティッシュ・ポップス、っちゅうのが
けっこう昔から根付いていたらしいんだけど、
こういうジャンルもあったんだねー。
思えば、「フリッパーズ・ギター」なんかは、この路線なのかな?



あの頃、やりたかたかったファッションと音楽。
コレでも観て、ちょっとビターでスイートな青い時代を思い出してみる?





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●ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール(God Help the Girl)
2014 イギリス
上映時間:111分
監督:スチュアート・マードック
原案:スチュアート・マードック
脚本:スチュアート・マードック
製作:バリー・メンデル
製作総指揮:クリス・カーリング、フィル・ロバートソン、ジョン・ウイリアムソン
撮影:ジャイルズ・ナットジェンズ
音楽:スチュアート・マードック
編集:デヴィッド・アーサー
美術:マーク・リーズ
衣装:デニース・クームズ
配給:アット・エンタテインメント、武蔵野エンタテインメント
出演:エミリー・ブラウニング、オリー・アレクサンダー、ハンナ・マリー
   ピエール・ブーランジェ ほか
受賞:サンダンス映画祭(2014) ワールドシネマドラマ部門
   ・グランプリノミネート
   ・審査員特別賞受賞
   ベルリン国際映画祭(2014) ジェネレーション部門
   ・クリスタル・ベア賞ノミネート
   ニューポートビーチ映画祭(2014) 音楽賞受賞
   シアトル国際映画祭(2014) 若手フューチャーウェーブ賞ノミネート