ゆらゆら草

もう少し感受性を働かせれば、毎日がスペシャルになる。そう自分に言い聞かせて、いろいろ感じたことを書きとめてみよっと。

現代っ子のピュアはどこにある ~ 『箱入り息子の恋』  



いやー、久々にピュアな気持ちになったあ、って感じ。

目の不自由な女子と、まじめな男子の恋愛ストーリーだけど、
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』とか『解夏』、『武士の一分』みたいな
よくある “つらいけど、がんばって、泣かせる” 系の映画とは、だいぶん違うんだよ。

まじめだけど無口でぎごちない感じの男子のほうを主役にして、
絶妙な笑いをちりばめたラブコメディなんだなー。

もちろん、泣き笑いでちゃんと感動させくれる内容だよ。

でもね、
ふたりがひょんなきっかけで出会い、いくつかの障害を明るく乗り越えて、
晴れて結婚の方向へ・・・といった見え見えの展開でハナシが進むけど、
よくある “お涙ちょうだい劇場“ とは違うんだなー。

いきなり、本人ヌキで親どうしが対面する “代理見合い” という
オッペケペなシーンから始まるくらいだからね。

そう、この作品のすばらしさは、設定の妙にあると思う。
ちょっと間違うと平凡な “障害乗り越え系” のストーリーになってしまうはずなのに、
絶妙な物語の設定で、実におもしろい映画になっていると思う。



●目の不自由な女子(菜穂子)は、お金持ちの家のお嬢さん。とても美人でピュアな性格。
●主役の男子(健太郎)は、平凡なサラリーマン家庭の息子。
 まじめな市役所職員だけど、無口、残業しない、出世欲なし。
 趣味は、ひまつぶしのテレビゲーム。恋愛経験なしの35歳。
 “箱入り息子” というのとはちょっと違うかな。
●菜穂子の親も、健太郎の親も、自分の子供の弱点を心配して婚活に焦っている。

・・・という設定であるだけで、僕ら観る者にとって、物語はぐ~んとおもしろくなるんだなー。
そう、障害者の菜穂子と、ひきこもり気味の健太郎は、平等なんだよ。
いや、どちらかというと障害者の側が相手を値踏みしていて、めっちゃ痛快。

★目の見えない菜穂子には、健太郎の純粋さ、やさしさだけが伝わる。
 容姿は見えないし、表情も見えないので、無口でぎごちない健太郎の
 飾りのないやさしさが浮き彫りにされるんじゃないかな(笑)。
★健太郎は、出世への野望も自信もないけど、菜穂子のハンディキャップを埋めてあげることなら
 平凡を絵に描いたような自分でもできそうだと感じる。(ホントは大変なことに違いないけど)
★親たちは、わが子を愛するがゆえに、本人をさしおいて問題を起こす。

・・・ね、なんだかポテンシャル感じるでしょ?
実際、上記のような設定のせいで、純愛ものストーリーの “純愛” 部分がクローズアップされて
とってもせつなくて、胸キュン(古)なラブストーリーに仕上がっているんだよ。

でもね、純愛ものらしく、“予定調和” 的にハナシは進んでいくんだけど、
最初からエンディングまで、微妙に観てる人の想像を裏切るように作ってある。
なるほど、ちゃんと映画ファンがウンウン首を縦に振れるように作ってあるんだなー。
うまいねー。

僕は、「こんなんで、ぜってー泣かないぞ」と自分に言い聞かせて観始めたんだけど、
最後のほうで不覚にも涙を流してしまった。
んー、いい映画だねー。



<あらすじ>
※ 観る前に、ちょっとでもストーリーを知りたくない人は、すっとばしてください。


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まじめな市役所職員、35歳。
言われたこと以上はやらない、現代の若手社会人・健太郎を演じるのは、星野源。
『地獄でなぜ悪い』と合わせて、第37回日本アカデミー賞新人俳優賞をとったんだね。

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お見合いをする前に、二人は出会っていたんだね。
ひどい雨が、健太郎のやさしさと夏帆ちゃん(菜穂子)のうつくしさを際立たせる。

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楽しみは、テレビゲームくらい。
お見合いを嫌がる健太郎に、賭けを挑む父。



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恋愛慣れしていない二人のデートは、素直な心が浮き彫りにされてとっても初々しい。

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娘を思う親心は、健常者でも同じだよね。
娘が障害者である分、親のあったかい気持ちも強調されていると思う。

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ストーリーについてはもう言わない。
そりゃそうだよねー。

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この画像の背景は、僕が昔住んでいた日野市だなー。

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観た人はきっと、この場面で泣くよ。

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↓もうちょっとちゃんと知りたいという方は、こちらをどうぞ。
「映画的日記」



夏帆ちゃんの演技がすばらしかった。

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きっと初めてだったと思うんだけど、“濡れ場” にも挑戦したんだよ。
それを差っ引いても、すばらしい演技だったと思うなー。
僕から賞をあげたい(笑)。

夏帆ちゃんと言えば、「三井のリハウスのコマーシャル」に出てたよね。
白鳥麗子 = リハウスガールだよね。

三井のリハウスのコマーシャルは、“家族の物語調” のCMのパイオニア的存在で、
監督はあの市川準
リハウスガールは、これまでに14代も続いてきて、
それを踏み台の一つにして羽ばたいた女優↓もたくさん!

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この作品で、夏帆ちゃんがさらに大きく羽ばたいたと感じたのは、僕だけかなあ?





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●『箱入り息子の恋』
2013年 日本
上映時間: 117分
監督:市井昌秀
脚本:市井昌秀、田村孝裕
製作総指揮:木下直哉、水口昌彦、齋藤正登
製作:武部由実子、中林千賀子
助監督:副島宏司
製作会社:キノフィルムズ、ブースタープロジェクト
配給:キノフィルムズ
出演:星野源、夏帆、平泉成、森山良子、大杉漣、黒木瞳 ほか
音楽:高田漣
主題歌:高田漣 feat. 細野晴臣「熱の中」
撮影:相馬大輔
照明:佐藤浩太
録音:尾崎聡
編集:洲崎千恵子
受賞:第37回日本アカデミー賞新人俳優賞(星野源、『地獄でなぜ悪い』と合わせて)
   第68回毎日映画コンクール スポニチグランプリ新人賞(星野源)
   第35回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞(星野源、『地獄でなぜ悪い』と合わせて)
   第5回TAMA映画賞 最優秀新進男優賞(星野源、『地獄でなぜ悪い』、『聖☆おにいさん』と合わせて)


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