わざとハズレを引く余裕をどうぞ ~ 『ワン・フロム・ザ・ハート』



少し前、「高松宮殿下記念世界文化賞」というやつの授賞式のもようをテレビでやってたよね。
それの「演劇・映像部門」の受賞者として、フランシス・フォード・コッポラ監督がいたねー。
日本の皇室の名目で、なんで世界の文化人を表彰するのかよくわからないけど、
コッポラ監督が受賞する理由はわかる気がするね。

001コッポラ受賞

コッポラ監督は、かなり日本の映画とくに黒澤映画が好きみたいで、
大学で映画を学んでいた時に、ノーベル賞の事務局に、
特例として「黒澤監督にノーベル文学賞を授与すべき」
という手紙を送ったという経歴の持ち主なんだそうだ。

1970年代には、東映の岡田茂プロデューサーへ
「千葉真一とアル・パチーノの共演による映画を製作したい」とオファーを出したり、
『影武者』の外国版製作に資金援助をしたりもしてる。
そうとうな日本映画びいきだからして、賞をあげる側も当然、
コッポラにあげたくなるだろうね。

そんなこんなで思い出したのがこの映画、
『ワン・フロム・ザ・ハート One From The Heart (1982)』。



コッポラは、ミュージカルや恋愛モノも大好き

この作品は、なんと、ミュージカルタッチのラブロマンスなんだよ。
『ゴッドファーザー』や『地獄の黙示録』のイメージからすると、
ミュージカル調というと意外な感じがするかもしれないけど、実はそうでもないんだよ。

コッポラは、『ゴッドファーザー』で大ヒットをつかむ前に、
『フィニアンの虹 Finian's Rainbow(1968)』というミュージカル映画を
大学生だったジョージ・ルーカスを手伝わせて作っているし、
ルーカス総指揮&コッポラ監督のディズニーランドのアトラクション『キャプテンEO』だって、
ミュージカルに違いないよね。
そもそもコッポラの家庭は、ブロードウェイの音楽一家なのだ。

ラブロマンスというと、やっぱり『ゴッドファーザー』以前に、
『雨のなかの女 The Rain People (1969)』というのを撮っているし、
のちに『ペギー・スーの結婚 Peggy Sue Got Married (1986)』も撮っているよね。

ただし、ラブだけどロマンスというのとはちょっと違うかもしれないね。
『ワン・フロム・ザ・ハート』も含めて、3つの作品に共通しているテーマは “結婚” で、
結婚生活のマンネリや絶望、新しい恋へのあこがれ、そして再生とかを描いていて、
屈折しててベタな恋愛ものじゃないんだな。

コッポラ自身、よっぽど結婚に対して夢を抱いたり、絶望したり、考えるところが多かったのかな?
とか、彼の文学的なテーマの一つなのかな?なんて勘ぐってしまう。

で、とにかく、『ワン・フロム・ザ・ハート』は、ミュージカルタッチのラブロマンスなのだ。



歴史に残るコッポラの “大迷作”

この映画は、コッポラ監督とその周辺の人たちにとって、絶対忘れられない作品だろうと思う。
というのは、興行的におもっきしコケた映画だからだ。

製作費が、当時の額で$26,000,000で、興行収入が$636,796となっているから、
当時の円になおすと80億かけて、2億円しか取り戻せなかったことになるよね。
これはとんでもない不発だねー!

『ゴッドファーザー1・2』と、『地獄の黙示録 Apocalypse Now (1979)』で
大ヒットを飛ばしたとはいえ、この損害はでか過ぎ!
コッポラが '69年に苦心して起こした映画制作会社アメリカン・ゾエトロープ社は、
この一発で吹き飛んだんだよ。

おまけに、MGMやパラマウント、コロンビア映画社の信頼も消失。
とんでもない出来事だんだんだなー。
コッポラは、この後にも3度も会社を倒産させているから、
倒産なんてへのカッパだけど、『地獄の黙示録』の大成功の後だし、
初めての倒産、という意味で記念碑的な作品なのさ。

・・・で、気になるのは、80億円という製作費。
ちょっと待てよ、ってよく考えたら、
“ミュージカルタッチのラブロマンス” にこの額はでか過ぎでしょ。
だってね、一発目の『ゴッドファーザー』の制作費なんて、18億なんだよ。
あの『地獄の黙示録』だって約90億だから、この金額がどれほど異常な金額かわかるよね!
製作額を知ってから作品をみると感じると思うけど、
10人が10人「えー、こんなホームドラマみたいな映画に80億ってか!?」って言うはず。

なんでそんなにお金がかかったのか?
実はそれは明快。
映画のすべてのシーンが “セット” だからだ。
オールセットなんだ、とわかってて観ると、
この作品の見え方はさっきとは違ってくる。
「えー、これもセット?いったいいくらお金がかかっているんだ!?」って。

さらには、挿入歌もすべてオリジナル。
よく既成の曲を拝借してくる作戦をとるけど、
ああいうのは「イメージソング」って言って、
書下ろしほどはお金がかからないもの。
この映画の曲はすべて書下ろしの「テーマソング」で、
しかも、映画の場面場面にぴったり合ったものを
完璧な打ち合わせのもとに作ったように見受けられる。

それだものお金がかかるわけだよね。
でもね、モンダイはそこでないのだ。
マーティン・スコセッシやアンディ・ウォーホルみたいな変なお友達以外は、
みーんなこんな映画を観たくなかったということなんだな。

舞台はラスベガスなんだけど、劇中にはギャブルのシーンはちょびっとも出てこない。
この映画そのものが、一大ギャンブルだったんだな。
とてつもない資金を賭けて、絵に描いたようにスった、映画史に残る “迷作” だよーん!!

「そんな作品だから、一度は観てみたら?」っていう、
マニアックなおすすめでこの記事を書いているんだけど、
いま一度見直してみたら、けっこういいんだよね。
ストーリー追求型の人は、きっと、「全然おもしろくねーぞ」って言うと思うけど、
実はけっこうお洒落な作品だったんだなー。



コッポラの “恋愛と結婚” 感を描いた、ピュア過ぎるストーリー

002ストーリー_タイトル

時は、'80年代初頭オンタイム。
場所は、アメリカのラスベガス。
歓楽街の郊外に、ごくフツーの男女が一緒に暮らしていた。
籍は入れていないけど夫婦状態、子供はなし。
アメリカンドリームを見つけに、ラスベガスにやってきて出会った仲なんだろうね。

一緒に暮らして数年経っているのかあ、それなりの住宅地に家を構えている。
特に不足のないディンクス生活を送っているんだけど、
最近なんとなくマンネリというかすれ違いの多い日々。
ある日とうとう大喧嘩してしまって、彼女が家を出て行ってしまう。

003フラニー
彼女のほうは、バーのピアノ弾きにナンパされる

004キス
『未知との遭遇』のテリー・ガー、『アダムス・ファミリー』のラウル・ジュリア

次の日、アメリカ独立記念日の夜、ベガスの街で、二人ともがそれぞれの新しい恋をゲット。

005男二人
彼のほうは、友達とナンパに
『地獄の黙示録』のフレデリック・フォレスト、『パリ、テキサス』のハリー・ディーン・スタントン

006ナスターシャ
彼は妖精のようなサーカスダンサー(ナスターシャ・キンスキー)に魅せられてしまう

どちらの恋も、南の島や歌やダンス、マンネリじゃないセックス、新天地・・・・
言ってみれば、新しいドリームに満ちていたんだけど・・・・

007奪還

後は内緒。



幻のスタジオセット “ゾエトロープ映画村”

コッポラ監督が、『地獄の黙示録』のフィリピンでの屋外ロケで天候不順に見舞われて、
撮影延期を余儀なくされたり、台風がやってきてセットを壊されたりして、
大変な思いをしたことは有名だよね。
それから、ちょっとした太陽の翳りや鳥の飛び方まで気になる、完璧主義の監督だから
屋外の自然を利用したロケなんぞは、がまんできないものがあるのかも知れないね。

そういうわけで、
膨大な経済的&時間的コストがかかるくらいなら、全部ハリウッドにセットを作ってしまえ
ということでやってしまったんだろうねー。
完璧主義の監督が自然の絶好のチャンスを切り取るのは大変な騒ぎだろうけど、
完璧主義の監督が造るセットというのも大変なことになるに違いないよね。
どっちにしろ、大変じゃんか、ねぇ(笑)。

008セット001
巨大なネオン!

009セット002
巨大な背景画!

010セット003
広大な通り。この後、遠くで花火が上がる

オールセットかあ、とわかって見るとホント驚くよー。
どんだけ広いんだよ、どんだけ家を建てたんだよ、って感じ。
えーっ!この飛行機も造作物かよっ!?って驚くはず。

それから、ネオンで造った装飾や大道具がやたら多い。
もう、この映画は “ネオン映画” である、と言いたいくらいネオンだらけ!
デザインもすべてオリジナルで、これはもはやアート。
もちろん、電気が切れているやつなんてひとつもない(笑)。
ゾエトロープの敷地に、煌びやかなラスベガスの一角をもうひとつ造ってしまったんだなー。

011ネオン001
手間のかかったイメージカット

012ネオン002
本物のラスベガスもびっくりのネオンサイン

013ネオン003

014ネオン004
“つくりもの” の恋を表現しているのか?

建物、背景、大道具、小道具、衣装、インテリア、エクステリア・・・・
そうか!この映画は、“美術さん映画” なんだ!
その映像の世界でいう「美術さん」の美術という意味。
自然の中で撮るリスクもコストもなくてすむからセットにした、
なんて補完的な意味合いなんて微塵もない。
コッポラ監督は、世界一の “美術さん映画” を撮ろうとしたに違いないんだ!
これは、映画やイベントや宣伝の美術・装飾に関わる人にとっては、
ヨダレもんのムービーなんだということがやっとわかったよ。



CG夜明け前。合成技術のデパートやあ!

ルーカスの『スター・ウォーズ ジェダイの復讐』を思い出すとわかると思うけど、
1980年代はまだまだSFXの時代で、1993年のスピルバーグの『ジュラシック・パーク』が登場するまで、
いまのようなCGらしいCGというのはなかったんだね。

それでも、映画冒頭のスタッフ紹介で、3DCGらしき映像があったり、
実写物の動画にに2D画像を合成してあったり、
ファンタジックな表現に、動画と動画のハメコミ合成やヌキ合わせ合成が使われていて、
当時やれるテジタルエフェクトの最先端を窺うことができる。

015オーバーラップ合成001
動画を4重にも5重にも重ねたオーバーラップ

016オーバーラップ合成002

017オーバーラップ撮影003
これはオーバーラップに見えるけど、2重セットと思われる(ガラス越しに2つのセットを同時撮影)

018ハメコミ合成001
動画+動画のハメコミ合成

019ハメコミ合成002
複雑な形のハメコミだねー

020抜き合わせ合成001
3つの動画のヌキアワセ合成

まあ、SF映画じゃないので技巧的な派手さはないけど、
この映画のポップでファンタジックな、最も肝心な部分の表現力を担っているんだよ。



お洒落な音楽とダンスのテーマパークやあ!

音楽はあのトム・ウェイツ!
のちに、ジム・ジャームッシュ監督の『ダウン・バイ・ロー Down by Law(1986)』に
自ら出演して話題になったけど、当時アメリカで最もクールな音楽アーティストと言われていた人だよ。

021ジャズ01
このトランペッターはトム・ウェイツ本人

大雑把に言うと、全編がメロウでスローな4ビートジャズのメロディに包まれているイメージ。
映像と音楽のどっちを先に作ったのかわからないけど、場面場面でお互いがばっちりフィットしている。

022ジャズ02

でも、その才能はジャズだけじゃない。
ピアノ弾き語りから社交ダンス、バレエ、ミュージカル、サーカスまで、
あらゆる “音楽映像” が盛り込まれている
んだなー。
この映画を「ミュージカル映画」と呼ぶ人がいるのも不思議じゃないことがわかるね。

023ピアノ弾き語り
ピアノ弾き語り

024社交ダンス
タンゴ

025ミュージカル
ジャズダンスによるミュージカル

026サーカス
サーカスだってやっちゃう!



作品の冒頭で、トム・ウェイツとカントリー歌手のクリスタル・ゲイル
掛け合いでエッチな感じで歌う歌がコレ↓


昔から賢者は言っている
“稼ぎを恋に注ぎこむな”

搾取され うまくはめられて
そのあげく 抵当は水に流れる

岐路に立てば 方角に迷い
橋は流され 道路は閉鎖

どう考えても 結論はひとつ
恋は人を欺き もてあそぶ

恋の泥沼に 足をいすくわれて
赤いボールが 胸の急所を狙う

いつの世にも 通じるまこと
“稼ぎを恋に注ぎこむな”

どこの町を歩くときでも
目指すはメイン・ストリート

行きつく先は恋の墓場
傷ついたからだを横たえて

酒のグラスで墓穴を掘って
敗れたハートを土に埋める

昔から賢者は言っている
“稼ぎを恋に注ぎこむな”


ガハハハハー!
“稼ぎを恋に注ぎこむな” なんて歌詞が入っていたんだねー。
皮肉なハナシだねー。お洒落過ぎでしょ。



オー! マイ ナスターシャ!

実は、ナスターシャ・キンスキーが、好きん好きーなんです。
オードリー・ペップバーンをエロくした感じで、いぐねーすか?

初々しい18歳の時の『テス』( '79・ポランスキー)。
一番痩せていたと思われる『ホテル・ニューハンプシャー』( '84・トニー・リチャードソン)。
いい女になったなあ、って感じの『パリ、テキサス』( '84・ヴェンダース)。
21歳のこの作品の時は、ちょっとグラマーだった頃かなー。

主役じゃないけど、マイ・ナスターシャが出てるから3回も観たんだよ、この映画。

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ナスターシャ・キンスキーは、15歳の頃からロマン・ポランスキー監督の愛人だったんだよ。
あのやろーめ。

[クイズ] ナスターシャ・キンスキーの国籍って、どこか知っている?



この作品で、何を言いたかったんだろう

1980年代のアメリカは、レーガン大統領の時代だよね。
対ソ連&対中東政策が強化されて、経済発展の突破口を開こうとしていたけど、
そんなに簡単にはうまくいかず、
シリコンバレーがリードする半導体産業で技術を独占していたけど、
すぐに日本に追いつかれ、
自動車産業が傾き始めていた時代。
そして、税制緩和政策のレーガノミクスで、70年代を悩ませたインフレを解消したけど、
国債の増発と貿易赤字の増大化を招いて、
'85年以降には中流がすっとんで大金持ち以外はみんな貧乏になった時代。

庶民の感情としては、政治面でも経済面でも、
'60年代の戦後の繁栄の時代は終わってしまって、
アメリカンドリームを本格的にあきらめつつあった時

と言ってもいいかもしれないな。

この映画と同じ1982年にリリースされて、
その年度のグラミー賞の最優秀アルバム賞にノミネートされた
スティーリー・ダンの片割れドナルド・フェイゲンのアルバム『ナイトフライ』(The Nightfly)でも、
アメリカの過去の栄光や失ったものへの哀愁、新しい希望の渇望などが描かれていて、
その時代の一般の人々を包む空気がどんなものなのか知ることができるよ。

そんな時代の空気を押さえながらこの作品の仕立てを探ってみると・・・
ときは、'80年代が始まったばかりのオンタイム。
場所は、ラスベガスだからネオンギラギラのアメリカンドリームのシンボルみたいなところ。
そして、物語のその日は、アメリカ独立記念日。
ほら、意味ありげでしょ?

フツーを絵にかいたようなカップルが、ラスベガスの郊外の一軒家に暮らしている。
どちらもそれなりの職業に就いていて、大金持ちでもないけど、特に不足もない暮らし。
でも、近頃なんとなくふたりはうまくいってない。
大きな夢や刺激のない暮らしが、ふたりの間にすれ違いを生んでいく。
ちょっとしたきっかけで大喧嘩したふたりは、別れようと決めてしまう。
そう、アメリカが新しいドリームを模索し始めたように、新しい恋へ。
“つくりもの” のようなベガスを捨てて
新しい連れ合いと、新しい夢を追いかけて、新しい土地へ、新しい生活をしに・・・
でも、いま以上の幸せが、そこにあるのだろうか?

コッポラは、アメリカンドリームを恋にたとえたんだと思う。
恋は、ひととき罹る熱病であって、それが治った時の状態がホントの自分なのだ。
幸せへの向きの定まらない助走であって、ゴールじゃない。

ありもしない、うそ臭いネオンの灯りの夢ばかりを追って、
いまそこにあるリアルな幸せを見紛うんじゃないよ!

コッポラは、アメリカに向かって “こころから=One From The Heart”
そう言いたかったんじゃないだろうか。

この映画の封切りからおよそ30年が経った。
産業と金融のグローバリゼーションの中いろいろな紆余曲折があって、
いまもなおアメリカは新しい再生の方法を探している。
日本だって同じ船に乗っているんだよ。

この映画は、いま観てもそのホントのメッセージが通用するんじゃないかな。



まあ、いろいろごちゃごちゃ書いちゃったけど、
この映画を観るのに妙な理屈なんかいらないかもしれないな。
ただのメロウで、ジャジーで、ファンタジックな恋の物語だからさ。

クリスマスにでも、カップルや夫婦でグラスを傾ける時のBGMやBGVがわりにして、
気ら~くに観るともなく観ればいいのだ。

それが、とてつもなく贅沢に創られた小品に対する礼儀というものでしょ?



035ポスター
映画を観ると、日本版のポスターのトンチンカンさがわかります

●『ワン・フロム・ザ・ハート』(One from the Heart)
1982年 アメリカ
上映時間:107分
配給:(米国)コロンビア映画
   (日本)東宝東和
製作:グレイ・フレデリクソン、フレッド・ルース
製作会社:アメリカン・ゾエトロープ
製作総指揮:バーナード・ガースタン
監督:フランシス・フォード・コッポラ
原案:アーミアン・バーンスタイン
脚本:アーミアン・バーンスタイン、フランシス・フォード・コッポラ
音楽:テディ・エドワーズ、トム・ウェイツ、クリスタル・ゲイル(歌)
美術:ディーン・タヴォウラリス(プロダクション・デザイナー)
   アンジェロ・P・グレアム (アート・ディレクター)
撮影:ロナルド・V・ガルシア、ヴィットリオ・ストラーロ
   トーマス・E・アッカーマン(カメラ)
   ジェイミー・アンダーソン(カメアシ)、ジョン・R・レオネッティ(カメアシ)
編集:ルーディ・ファー、アン・ゴアソード、ランディ・ロバーツ
出演:フレデリック・フォレスト、テリー・ガー、ラウル・ジュリア、ナスターシャ・キンスキー、
   レイニー・カザン、ハリー・ディーン・スタントン、カーマイン・コッポラ、イタリア・コッポラ、
   アレン・ガーフィールド、ルアナ・アンダース、レベッカ・デモーネイ ほか
受賞:第55回アカデミー賞
   [ノミネート]・音楽賞(トム・ウェイツ)


練馬に蕎麦あり、日本に野中あり ~ 『玄蕎麦 野中』



僕は行ったことがなかったんだけど、
2008年頃まで、練馬区(東京都)に「田中屋」という蕎麦屋があったんだよ。
なんでも、江戸蕎麦の店では東京一ではないか、とすごい評判で、
「翁」の高橋名人も一目置いたらしいという店。

練馬の「田中屋」は、1968年に創業。
のちに、銀座と赤坂に支店を作って、
経営者が変わって「明月庵 田中屋」と店名を変えて営業を継続していた。

その後、練馬の本店だけは、惜しまれながらも2008年5月に閉店したというわけ。

いまは、「明月庵 ぎんざ田中屋」となって、
中央区銀座に2店と、豊島区池袋の西武百貨店に1店を営業しているようだね。

練馬本店の閉店に際しては、経営者と現場の職人が経営方針でもめた、
といういきさつがあるそうだから、実質的に、名店 練馬「田中屋」はそこで終わった、
と捉えていいんじゃないかな。



この『玄蕎麦 野中』は、
経営者が変わる前の練馬「田中屋」で長年修行を続けてきた野中和久さんが、
1992年に暖簾分けで、練馬区の中村橋で始めた店なのだ。
当時は、「中村 田中屋」という店名だったんだって。

それから10年経った2002年に、いまの『玄蕎麦 野中』に店名を変えたとのこと。
練馬「田中屋」の師匠が亡くなったのか、引退したのか、
経営者が変わるタイミングで縁を切ったのか、商標が使えなくなったのか、
それとも、名実ともに独立したということなのか、

なんだか憶測がぐるぐるしてしまうよなー。

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あの練馬『田中屋』のご店主は、いまでも蕎麦屋をやっていた!
●『たなか』
東京都西東京市ひばりが丘1-15-9
042-424-1882
11:00~15:00(LO14:30)
ランチ営業、日曜営業
定休日/火曜・第三水曜日(但し祝祭日は営業)
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この店は、その名店 練馬「田中屋」の技と味と思想を継承している、
いやいや、はるかに凌駕しているとのウワサがバリバリで、
開店から21年も経っているのに、いまだに平日でも行列のできる店だそうだ、
ということで、よっしゃ、行ってみるべー、と行ってみたんだよ。



中村橋、というのは、東京の西武池袋線の快速電車の停まらない小さな駅の名前。
駅からは、「中村橋」からも「練馬」からも、すげー遠い。
歩いて、20分くらいかかるかな。
しかも、おもいっきり住宅地だから、車で行ってもどこに駐車したらいいのか困るし。

車も人もあまり入って来ない静かな住宅街、
だのに『玄蕎麦 野中』のまわりだけは人だかり。
連休中とはいえ、混雑を避けるために午前11時ちょい過ぎに行ったのにさー。
入口の外に並んで、20分くらい待たされてしまった。ちぇっ



待ってる間に、写真撮ったれ、撮ったれ・・・

000玄蕎麦野中_塀

お店の誰かが作ったもんなんだろうね、店の回りの塀にはめ込んである

001玄蕎麦野中_ガス灯

正面のマンションが写り込んじゃって見えずらいけど、これはガス燈だねー、珍しい!

002玄蕎麦野中_電動石臼

行列に並んでいても、電動石臼が回っているのが見える。9月に行ったので “夏新” だ

聞けば、ココんちは、北海道産の “夏新” から始めて、茨城、福島、長野など
それぞれの収穫期に “玄蕎麦”(=蕎麦殻が付いたままの蕎麦の実)を仕入れて、
低温倉庫に貯蔵して置く
んだったさ。
それを品種を混ぜずに、その日に必要な分だけ出してきて、
回転数の異なる2台の電動石臼で挽いてブレンドしたものを「せいろ蕎麦」に使うんだそうだ。

蟻巣(アリス)の田舎蕎麦」というのは、文字通り蟻の巣のような小さな穴が
たくさん開いた “蟻巣石” というのを使った手動の石臼
で挽いた粉で打った蕎麦のこと。
巣穴が摩擦熱を逃がして、蕎麦の風味を損なわないのと、
粒が不揃いになって野趣あふれる粉ができる特徴があるらしいんだな。
1日10枚限定!手間がかかるんだろうねー。

「淡い緑の粗挽蕎麦」というのは、蕎麦殻を脱穀した実(丸抜き)のうち、
黄緑色の濃いものだけを選別して、粗挽きにして打った蕎麦のこと。
これも、1日10枚限定だっ!

玄蕎麦で仕入れるということは、蕎麦殻を脱穀するのも自分でやるということだよね!
大変な手間がかかるんだろうけど、そうしたほうが美味しいから脱穀にもこだわるんだろうね。
だから、店名に「玄蕎麦」という言葉を冠しているんだなー。



003玄蕎麦野中_外観

004玄蕎麦野中_暖簾

入口には、蕎麦色の暖簾が・・・



順番がきて、いざ突入!
着席して店内を見回してみると・・・
入ってすぐ左に帳場があって、右手には2人掛けのテーブルが4つかな。
左面はすべて上がりになっていて、中で繋がっているんだけど2つの式台があるという造りだ。

中には、4人掛けのテーブルが5つくらいあるのかなあ。
一番奥の小部屋は、茶室みたいな屈んで入る引戸が設えてあるねー。
(中でつながっているので、屈んで入る必要はない)

店内正面奥には、「坪庭」が!

ディテールが凝っているんだけど、極めて上品。
野の花を使った生け花、坪庭、蔓で編んだ籠に活けられた花、禅味な感じの襖絵、
大袈裟でない欄間の飾り、ひなびた感じの格子窓・・・
これは、僕が知っている(2013年11月10日現在)和づくりの蕎麦屋の店内では、
間違いなくナンバーワンだ!
すばらしい!!



005玄蕎麦野中_黒豆茶

同行2名で、右手の2人掛けのテーブルに着席。
すぐに出てきたのは、「黒豆茶」だねー。
たいがいは蕎麦茶が出てくるけど、なんか、ヘルシーな感じでうれしい驚き。
軽いにがみとほんのりした甘味があって、美味しい!

雰囲気があまりにもいい感じなので、よし、真っ昼間だけど、酒でも飲るかあ!
ってわけで、酒メニューをチェック。

006玄蕎麦野中_酒メニュー

地酒の品書きは、僕が不勉強なだけかもしれないけど、かなりマイナー系では?
種類が多くないので、とりあえずどれでも試してみたくなるから不思議だね。

007玄蕎麦野中_ビール

・・・と言いながら、なははははー、結局っビールじゃん。
そうそう、この日は9月とはいえ、暑い日だったのだ。

008玄蕎麦野中_お通し

お酒を頼んだら一緒に出てきたのがこれ。
いわゆるお通しとはちょっと違うね。
お酒を頼まなければ、何にも出てこないんだから。

蕎麦屋って、だいたいお酒を頼むと、こういうお通しみたいな
ちょっとしたツマミを出してくれるよねー。
何にも出てこない店や、お酒と一緒に一品料理を頼むと出さない店も最近はみるけど、
客にとってはけっこううれしい心遣いなんだよなー。

ココのは、その日はたぶん「クラゲの梅かつお和え」だったと思う。
ビールには合わないツマミだけど、こんなに凝った無料おツマミに文句を言っちゃ、
バチが当たるというもんだぜ、ハチよ。

ビールをもう一本飲みたいので、一品料理もたのんでみることにしたよ。

009玄蕎麦野中_一品料理メニュー01

「黒豆揚げ出し湯葉」以外は、江戸蕎麦の超定番だねー。
「焼き海苔」は、ありそうでない定番。
「淡い緑のそばがき」も気になるねー。

010玄蕎麦野中_一品料理メニュー02

オーガニック大豆と天然水と天然にがりにこだわった「こだわり豆腐」というのは、
ココの名物のひとつらしいねー。
「岩石揚げ」って、どんなんだろう?
たまーにあるけど、魚の干物もちょい珍しい。
まあ、特に考えもしないで、江戸蕎麦らしい「海老の踊りかき揚げ」にしてみた。
ちょっと、“踊り” というのが気になるけど。

011玄蕎麦野中_箸皿

これは、箸を載っけて出てきたトレイだなー。
なんと、ロイヤル・コペンハーゲン!
しかも、通し番号がついているから、特注品かなー?
凝ってるねー!

012玄蕎麦野中_箸皿アップ



013玄蕎麦野中_海老の踊りかき揚げ

はいはい、「海老の踊りかき揚げ」が出てきましたあー!

014玄蕎麦野中_海老の踊りかき揚げアップ

スカッ、と揚がっているねー。

015玄蕎麦野中_海老の踊りかき揚げ崩し

サクサクの衣を崩しながら食べていくと、
このメニューの名前の “踊り” の意味がわかった気がする。
むき海老がけっこう入っていたのだ。
4つかな?3つかな?
揚げの中心にこじんまりとしているんじゃなくて、
大き目のやつがポンポンポンと踊っている感じ。
これは、お得な気分!

でもね、このかき揚げの一番のポイントはそこじゃないんだなー。
それは、食べればわかる!
それは、うまい!ということなんだなー。
海老がぷりぷりしてる、なんてあたりまえでしょ?
海老にも衣にも、微妙に味をつけているんだろうなー。
口に運ぶたびに海老というか、磯というかの香りがふんわりと漂うし、
旨味がじわーっと口に広がるのだ。

僕はこれみたいな江戸蕎麦式のかき揚げを、あっちこっちでよく食べるんだけど、
これほどうまいのは、いまんとこなかったなあ。

つまんだり呑んだりの間に、蕎麦を注文。

016玄蕎麦野中_蕎麦メニュー01

017玄蕎麦野中_蕎麦メニュー02

僕は、1日10食限定の「蟻巣(アリス)の田舎蕎麦」、
連れは「海老天とろろ」を。
気になるメニューがけっこうあるっしょ?
全部試してみたくなるよねー。

そうそう、写真を撮り忘れちゃったけど、温かい蕎麦のメニューも豊富。
天丼もあったよ。



018玄蕎麦野中_蟻巣の田舎蕎麦

きたきた!「蟻巣の田舎蕎麦」。
器が凝り凝り!葱があさつき!大根おろしもついている。

019玄蕎麦野中_蟻巣の田舎蕎麦寄り

凛とした麺の姿!盛りもいいね!

020玄蕎麦野中_蟻巣の田舎蕎麦アップ

芸術的だねー!
田舎蕎麦といっても、色は全然黒くない。
よくある、やや緑がかったグレーだよね。
ホシ(蕎麦殻のかけら)がまばらに見えるので、
蕎麦殻がついた状態から全部挽いた全層粉じゃないことがわかる。
白っぽい粒と滑らかなグレーの部分が見られるので、
別々に挽いた粗挽き粉と微粉をブレンドして、
さらに挽いた蕎麦殻を加えたものじゃないかなー。

もちろん、十割だよ。
うーん、ここまでやる店が日本でも他にあるかあ?

021玄蕎麦野中_蟻巣の田舎蕎麦箸上げ

そんなんだから、田舎蕎麦といっても、全まったくごわごわ感やもそもそ感がないんだよ!
しかも、細打ちだから、かなりつるーっといける。
カドも立っていて、喉越しもバツグンだー。
バカみたいにコシが強いということがなくて、
噛むと、粗挽きの穀物フレーバーと蕎麦の味が口の中に広がる。

これは、いわゆる “田舎” じゃないな。
「粗挽き」と「微粉」の良さを足して、蕎麦殻で香りをつけて、3で割らない芸術作品だ。
やや粗挽きに寄った仕上がりだね、“もっちり系の粗挽き” とでもいうのかな。
これは、老舗名店にもニューウェイブ店にもない蕎麦だなー。

022玄蕎麦野中_蟻巣の田舎蕎麦箸上げアップ

本みりんと、ざらめと、ヒゲタの限定蔵出し醤油と、上質にとった出しが、
どれが出っ張るということなくまとまった辛汁とあいまって、
つるつる手繰りが止まらなくなっちゃった。

<銘品種>+<玄蕎麦保管>+<石臼手挽き>+<粗挽き粉&微粉&ホシブレンド>= 絶品

蕎麦好きなら、この公式を覚えておくといいんじゃないかなー。
いま考えられる、ベストの蕎麦が食べられると思うよ。



023玄蕎麦野中_海老天とろろ

ほらほら、かわいいっしょ!
これが「海老天とろろ」。
僕は、海老のおか天が別盛りになった、とろろつけ蕎麦が出てくるんだと思ってたんだけど、
こんなお洒落なぶっかけ蕎麦なんだねー!

024玄蕎麦野中_海老天とろろアップ

麺は「せいろ」の麺、常陸秋の微粉のはず。
とろろは、もっこりねばっこい自然薯だ。
ちなみに、このお皿もロイヤル・コペンハーゲンの通し番号つき!
HPの写真を見ると、マイセンの時もあるみたいだね。



025玄蕎麦野中_蕎麦湯

ふーっ、めーーーーーーーーーーっちゃ、うまかった!!
ごちそうさまでした。
隅から隅までこだわり凝り凝りの蕎麦屋、「星みっつですーー!」。

この時は9月だったから、キタワセの “夏新“ と常陸秋の貯蔵玄蕎麦だったけど、
いまはもう、各種 “秋新” が出揃う頃かな?
また、すぐにでも行たい店だなー!!



026玄蕎麦野中_坪庭

●『玄蕎麦 野中』(げんそば のなか)
東京都練馬区中村2-5-11
03-3577-6767
11:00~15:00(LO1430ころ) 17:00~20:00
ランチ営業
定休日/月曜、第3火曜 (月曜日が祝日の場合営業、翌火曜日が休業)、
    火曜日午後(11時~14時半のみ営業、火曜日が祝祭日の場合は平常通り営業)


うれしさたっぷり、後悔たっぷり



001どら焼き_袋入り

どら焼きでーす。
たまには食べたいなーと思って、近所のコンビニで買ったんだよ。



002どら焼き_フル

なんの変哲もなさそうだけど。



側面から見たら・・・

003どら焼き_フル横



???!!!



004どら焼き_フル横アップ

直径約80mm、よくあるどら焼きよりやや小さいか。
皮の厚さ1枚・約8mm × 2枚。
あんこの厚さ、なんと30mm!!
(計ってんのかあ)

外袋に、「あんこたっぷり」って書いてあるけど、
たっぷり過ぎないかい?
うれしいけど。



005どら焼き_かじり



006どら焼き_かじりアップ

だから太るんだよなあ。(他人のせい)


サボるとすごく目立つ、市ヶ谷の釣り堀



001市谷の釣り堀_駅ホーム

駅のホームに立っている。
電車が入っていて、ほんの十数秒の間に乗り降りが行われる。
いくつも連なった車両が、次々と去っていく・・・

002市谷の釣り堀_駅ホーム02

電車が去ってしまった後に、パッと開けた風景が広がる。
・・・ん、なんだこれ?
レールと橋と道路に囲まれた違空間!

じぇじぇじぇー、違和感あるわーっ。
だってね、ここは千代田区、東京のど真ん中なんだよ。
しかも、この水濠は、“江戸城の外堀“ なのだっ!

●写真正面奥に、防衛省(三島由紀夫事件があった旧自衛隊市谷駐屯地)がある
●写真左の橋を左に渡ると、旧 日本テレビ通り
●写真奥の堀沿いの道を右に行くと、『BUSU』の神楽坂、東京ドーム方面へ
●写真を正面に見て、背中方面には靖国神社がある
●写真右端に、ソニーミュージックの本社ビル(通称黒ビル)が見える

003市谷の釣り堀_釣り堀01

釣り堀みたいに見えるけど・・・

004市谷の釣り堀_釣り堀02

ほら、釣り堀だ・・・

005市谷の釣り堀_釣り堀03

いまは、平日の真昼間だっちゅうのに・・・

006市谷の釣り堀_釣り堀04

・・・やっぱり、釣り堀だぜ!

007市谷の釣り堀_釣り堀05

「市ヶ谷フィッシュセンター」って、言うらしいよ。
でも、ここは東京都千代田区の、JR総武線(=中央線)市ヶ谷駅の横でしょ?
しかも、“江戸城の外堀“ って都有地?国有地?
営業許可って、どうやってとるんだろう。
まあ、いいかー。

実は、ここは、有名なロケ場所なんだねー。

●映画『愛と誠』
●ドラマ『臨場』
●ドラマ『今夜ひとりのベッドで』
●ドラマ『暴れん坊ママ』
●ドラマ『ガリレオ』
●ドラマ『SP 警視庁警備部警護課第四係』
●ドラマ『デカワンコ』
●ドラマ『東京DOGS』
●ドラマ『専業主婦探偵~私はシャドウ』
●ドラマ『バーテンダー』
●CM『サントリー角ハイボール』



などなどなど
近年の撮影への使われ具合をちょろっと調べてみても、ほいほい出てくる。

008市谷の釣り堀_CMサントリー角ハイボール001
009市谷の釣り堀_CMサントリー角ハイボール002
ちょっと前よく見た、『サントリー角ハイボール』のCM。西田敏行と菅野美穂の掛け合い

サラリーマンや刑事などが、“サボっちゃってる” 系のカットによく使われるねー。
実際、スーツ姿のサボってる風な人がちらほら。

線路側は土手だし、残り三方が堀の水に囲まれていて、
フレームに野次馬が入っちゃうことがないので重宝されるんだろうね。

キミもひとつ、どうですか?
いや、サボリのことじゃないよ。