ゆらゆら草
もう少し感受性を働かせれば、毎日がスペシャルになる。そう自分に言い聞かせて、 いろいろ感じたことを書きとめてみよっと。
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自家栽培で、麺の味 一本勝負 ~ 農家の店 三たて蕎麦『やじま』


最近の手打ち蕎麦屋は、自家製粉もかなりあたりまえ化してきたよね。
だって、それなりの蕎麦屋へ行って店内をきょろきょろすると、
たいがい電動石臼のひとつやふたつ発見できるもんね。

打ちたての蕎麦を茹でたてで出していたのに加えて、
挽きたてもくっついて、いわゆる「三たて」のポピュラー化。
なんていい世の中になったんだろうな。
値段高騰をなんとかしてほしいけどね。

01やじま玄関

この前食べに行った蕎麦屋は、「農家の店 三たて蕎麦 やじま」。
でも、この言い方は正しくないと思うな、僕は。
だって、蕎麦の実を自家栽培してるんだから、
「穫れたて」を加えて「四たて蕎麦」に違いないからさ。
うん、農家の店、というのは的を得ているよな。

そうそう、自身で手打ちをするし、石臼で粉を挽いたり、
自分の実家で蕎麦の栽培までしたことのある親友のHが言ってたけど、
「救荒穀物だけあって、蕎麦なんてどこでもぐんぐん育って穫れるけど、
自分でいい蕎麦の実を作るのは難しいなぁ。乾燥させたりしなきゃならないしね」
なんてインプットもあったので、この「やじま」を見つけた時は
自家栽培の蕎麦って、どんなもんかなあ、とぐぐっと興味がわいていたのだ。

そういえば、「みよしそばの里」も蕎麦を栽培から始めて、粉にして、打って、
食べさせてくれるけど、あそこは蕎麦の生産者が試食を行なっているといったニュアンスだけど、
ココはそうではなくて、明らかにうまい蕎麦を食べさせるために
栽培から自分でやっちゃっている蕎麦屋。

この店の弱点はたくさんあるぞ。

まず、アクセス。
川越には違いないけど、広大な田んぼエリアの農道の片隅にあるから、すごくわかりずらい。
どの駅からも遠いし、標識もないから、迷ってしまった。

そして、建物、店内。
極めてきれいで清潔感にあふれているんだけど、
こあがりが3卓と3~4人掛けのカウンターという小さな作りの店内は、
どう見てもどっかの田舎の食堂といった内装。

器類もまったくこだわっていない。
箸も100円ショップで売っているようなふつうの割り箸。

メニューは、冷たいもり系蕎麦とおろし蕎麦があるくらいで、暖かい蕎麦はひとつもない。
鴨南以外の種物も、天ぷらも、出汁巻玉子も、板わさも、蕎麦味噌も、つまみもなにもない。

ビールや日本酒、酎ハイなどはメニューにはとりあえずあるけど、
ロケーションからしても店内の雰囲気からしても、
どう考えても蕎麦屋酒したくなるもんじゃないなあ。
“粋な和の空間で、ちょいと気の利いたつまみで、サクッと熱燗でも”
といった向きには、まったく楽しめない店と言い切っちゃおう。

さらには、接客も芳しくないな。
何が欠けているというわけではないけど、
女将さんもご主人も始終にこりともしないし、
口調がどちらかというと暗い感じなので、
妙な緊張感を客に与える空気が漂っている。
なんだかストイックな感じなんだなあ。

じゃ、何がそんなにいいのかというと、
それは当然、蕎麦そのものだ。

それは、とても勇気のいることだと思う。
飲食店って、食べ物や飲み物のうまさはもちろん、お店の雰囲気や、気の利いた接客や、
タイミングのいい給仕や、器や、軽妙な合いの手などを合わせた
総合点で客足を集めるものだろうと思うんだけど、
ここは蕎麦の “食い味” 一本で勝負しているのだから。

蕎麦の味は、ラーメンのように旨味追求に無節操というわけにはいかないよね。
粉と汁を伝統手法の周辺で、どうはみ出すかといった料理だし、
作り手と食べ手で、微妙な味のわびさびコミュニケーションを楽しむようなところがあるから、
蕎麦の味覚だけで勝負するのは、ものすごく難しいことだと思う。

だのにココは、蕎麦の麺以外にはあからさまに力を注いでいないときた。
「まあ、そんなことはどうでもいいから、麺を食ってみろ」といったスタンスだもんな。

注文した蕎麦が出てきて、その“麺一本やり精神”の凄味がくぐっときた。
十割せいろも田舎せいろも、うっすらとうぐいす色がかっているのだ。
「新蕎麦の季節だからな」と思ったけど、ココでは年中この色だそうだ。
玄蕎麦や粉の保存にも相当努力しているからだそうだ。

02やじま十割せいろ
十割せいろ950円

03やじま十割せいろアップ

04やじま田舎せいろ
田舎せいろ950円

05やじま田舎せいろアップ

2~3本口に含んで噛んでみると、いわゆるコシがあるんだけど、
コシの後に“もっちり”がついてくる!
コシは強いけど生茹でっぽいとか、味がよくてもっちりだけどちょっと柔らか過ぎかな
といった蕎麦は何度も食べたけど、その両方のよさを楽しめる蕎麦は生まれて初めてだ。

2~3度噛むと、蕎麦の香りが口いっぱいに広がる。
味も濃厚だ。
つまり、蕎麦だけで食べてもはっきりとした味と香りのある食べ物になっているのだ。
これは、絶対によく噛んで食べるべき蕎麦だ。

聞くと、栽培種は「常陸秋」だそうで、この品種の蕎麦を僕は初めて食べたので、
品種のせいなのかご主人の腕のせいなのかわからないけど、
こんなに味のある、そしてうまい麺を食べたことがなかったなあ。

蕎麦汁も明快だ。
甘くなく、塩辛くもなく、ほんの少しかつお出しの香りがするくらい。
簡単に言って、無個性。
“枯れ” というんじゃなくて、無変哲、って感じ。
そう、麺の味を主役に考えているからだな。

茹であがった状態で、十割せいろは2mmくらい、田舎せいろは3mmくらいの太さ。
普通の十割とは比べようもないくらい表面がつるつるしているけど、
それでも細身のニ八のようにはズルッとすすれない。
ニ八もやればいいと思うんだけど、すすりには興味がないらしい。
やっぱり麺の歯ごたえと味と香りだけを売り物にしている店なのだ。

んー、しかし、うまい!
こんなに味と香りが豊かな麺は、なかなかないぞ。
麺づくり以外何もやらない訳と価値が確かにここにあるなー。
うん、一本とられた。

「写真、撮らせていただいていいですか?」と聞くと、厨房のご主人がこちらをチラ見。
注文のすべてを出し終わったらそそくさと出てきて、とくとくと話しはじめちゃった・・・


★矢島憲一さん(ご主人)語録

●畑づくりから、栽培、収穫、製粉、手打ちまで、全部一人でやってるんだよ。

●年3回栽培してるんだけど、種まきと収穫と製粉、それと冠婚葬祭の時は、
どうしても臨時休業になってしまうなぁ。
臨時休業については、ホームページを見てくれ。

●栽培も蕎麦打ちも、全部自己流。誰からも習ったことはないよ。

●いちから全部一人でやるのは大変だけど、全部を自分で見られるからいいんだよ。

●どうだい、うまいだろ。その辺の蕎麦屋のとは全然違うだろ。
蕎麦屋は、どうやったらうまい蕎麦が作れるか、わかってないんだよ。

●僕(自家栽培しようとしても、なかなかいい玄蕎麦ができないと聞きますが)
それは違う。製粉技術がないから、いい蕎麦粉が作れないということだ。

●蕎麦のうまさは、粉がすべてだよ。
製粉では、蕎麦殻、つながらない粉、つながる粉、4種も5種も粉が出るんだよ。

●僕(十割蕎麦でも、この麺は粗挽きの粒が混じった粉のようですが、
これもご自身で挽いて調合されているんですか?)
そうだよ、自分でやってるんだ。

●店を始めて13年だよ。もうすぐ15年だ。
近年、やっとうまい蕎麦ができるようになったよ。

●(僕がココで作られた蕎麦粉/400g・680円を買おうとしたら・・・)
茹であがった後、冬の水道の冷たい水で締めたらだめだよ。
水に少しお湯を足して温度を上げて洗うんだ。17度だ。
ほら、缶コーヒーだってキンキンに冷えてたら味がしないだろ?
それとおんなじだよ。
この時期、水道から出したままの冷たい水で締めては絶対だめ


↑冷たい水で締めるな、というのは初耳。
しかも、缶コーヒーに例えるかあ?
おもしろいことを聞いちゃったねー!

とにかく、ものすごいこだわり人間なんだということがわかる。
店置きのリーフレットの文章にも、そのこだわりの深さというか、
几帳面さというか完璧主義というか、がにじみ出ているよなー。

06やじまリーフ001

07やじまリーフ002

「マシュマロって知っているかい?ウチのはそんな感じ」と言われて、
マシュマロくらい知ってるだろ誰だって、なんてムッとしている間に
そばがきも売りつけられてしまった。

うん、ふわふわのそばがきは他でも食べたことがあるけど、
これも麺と同じで明らかに味が普通と違う。
よくできたマッシュポテトのようなデンプンの味と
蕎麦の甘味と香りがずーんとくる。
うーん、「常陸秋」恐るべし!

08やじまそばがき
そばがき800円

09やじまそばがきアップ

じっと、ご主人のお話を聞いていて、ふと思った。
この人はきっと、自分で栽培した蕎麦の製粉業をやったら大成功するのでは、と。
だって、1日に昼の11:30~14:00までの2時間半の営業で、月曜と火曜が休みだからね。
どんなに混んでも、大した儲からないのがわかる。
でも、あの味と香りの蕎麦を打てる粉なら、欲しがる蕎麦屋はたくさんあるだろうな。

10やじま蕎麦粉


●農家の店 三たて蕎麦『やじま』
埼玉県川越市谷中66-1
049-222-9952
11:30~14:00
定休日/月曜、火曜


こんなとこに、すごい蕎麦屋だ ~ 幻の富倉そばの店 『みかあさ』


蕎麦好きの間では、埼玉県西部でうまい蕎麦屋といえば4軒挙げられるらしい。

その内のひとつが、ココ。

みかあさそば入口

川越市と言っても、東武東上線でさらに西にひとつかふたつ行った「霞ヶ関」駅の近く。
日本の省庁街の「霞が関」じゃないよ。なんの変哲もない田舎の住宅街。
しかも、まわりは東京国際大学や東洋大学のキャンパスだから、
こんなに理想的な蕎麦屋があるべき環境じゃないのでは、と思う。
学生に蕎麦前の楽しさや蕎麦のうまさなんてわかるわけないじゃん。
僕だってまだまだわからないのに。学生はハンバーグでも食ってろ、だよなー。
だからなおさら、「えっ、こんなとこに!?」と思ってしまうほどに、すげー蕎麦屋だった。

でもね、「あー、こんなとこにあってよかった!」と納得することもある。
それは、値段。
だってね、少しもりが少な目だけど、あのせいろ蕎麦が500円だよ!
土地代または家賃の高い都内では、きっと無理な値段でしょ。
川越の他の名店と呼ばれる蕎麦屋だってもっともっと高いからね。
かきあげを単品でたのんだって700円だからね。
ちなみに、冷やしとろろそば650円、かけそばだって500円さ。

でも、安いだけではまずい立ち食いとおんなじだけど(うまい立ち食いもあるぞ)、
ココの麺は手打ち蕎麦屋の中でもバツグンじゃないかと思う。
だから、コスパがぴかいちなのだ。

僕はランチメニューの「しめじ天せいろ」をたのんだんだけど、
その麺はいままでに見たことないくらい細い極細麺
少し黄味がかった色、パキッとカドが立ち、コシが強く、
蕎麦の香りがふわっとする極めてパンチのある麺だったんだよ。
しかも、折しも新蕎麦(北海道産・秩父別産キタワセソバ)
ちょっと短めだったのが残念だけど、十割だからまあ許す、って感じ。
せいろ一枚750円くらいでも納得の個性だなあ。

かりっと揚がったしめじの天ぷらがさらにうまくなるつけ塩も、
ベトナム産のミネラル塩と、舌もこだわりも満足させるよなあ。
だから、ものすごく安いのだ。

みかあさそば全景

みかあさそば寄り01

みかあさそば寄り02

しかも、ココの蕎麦にはおもいっきりウンチクがあるときた。
下記、原文ママ。

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みかあさの蕎麦は植物の葉っぱの繊維でつなぐ珍しい蕎麦
↓「富倉そば」について詳しくはこちらをどうぞ↓


富倉そばは、すぐ北が新潟県という長野県飯山市の富倉地方という集落にひっそりと伝わる
昔ながらの手打ちそばです。後継者不足などにより県外不出といわれている富倉そばは、
基本的に現地でしか味わうことができず、まさに知る人ぞ知る「幻の蕎麦」なのです。
それでも、一部の熱狂的な蕎麦好きの人たちの中には、「富倉そばは一度食べたらクセになる」
と、わざわざ富倉そばを食べるためだけに、都内から何度も足を運ぶ方もいらっしゃいます。

このように根強いファンを持つ富倉そば。
その秘密は何といっても蕎麦のつなぎにあります。

小麦粉は一切使わず、なんと山ごぼうの一種のオヤマボクチという植物の葉の繊維で
つなぐのです。このつなぎは、オヤマボクチの葉から葉脈などを取り除き、繊維のみを
取り出して作るのですが、これには大変な手間と時間がかかります。しかも葉っぱの20%程度
しかつなぎとして使える繊維が取れないという大変貴重なモノです。

みかあさつなぎ

これをつなぎに使って打つ富倉そばは、オヤマボクチの繊維を生地に均一に行き渡らせるよう
丹念に練り込み、薄く薄く伸ばし広げるようにして打ち上げていきます。
いわゆる江戸前の蕎麦の打ち方とは全く異なり、どうしても非効率で手間も時間もかかる
打ち方になってしまいます。

ですが、このように丹精込めて打ち上げますと、行き渡った繊維が和紙のような働きをして、
そば粉同士をしっかりつないでくれるのです。

そのため富倉そばは、つるっとした舌触り、滑らかなのど越し、細打ちでも強いコシがあり、
噛むたびにプチプチと弾ける独特の食感で私達の舌を喜ばせてくれます。
先程の蕎麦好きの方の言葉をお借りすれば、「一度食べたらクセになってしまう」大変
不思議な魅力を持った蕎麦、それが富倉そばなのです。

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ほほー、「富倉そば」ねぇ、幻の蕎麦かあ。
これは、味覚のインパクトに加えてダブルパンチをもらってしまった。
左右のストレートパンチをおもいっきり。
やっぱり、ただもんではないんだな、って感じ。

これだけでもすごいのに、なんと、ココのツマミメニューを見てゾクッ。
馬刺しがあるし、沢蟹のから揚げかな?、油揚げのそばみそ焼き、わさび莖と昆布の漬物、
のりわさ、すいとろ(大和芋のそばつゆ風味)、大葉の佃煮、イカわたの醤油漬け、
蕾菜の天ぷら、などなど、酒好きのハートをわしづかみぃ!!
もちろん、板わさやだし巻き玉子、焼きみその基本も押さえてある。
これが、一品350円~950円に全部収まるから、とうとうアッパーカットをもらっちまった。

でも、待て待て、驚くのはこれからさ。
蕎麦前といえば、たいてい日本酒だけど、ココの品揃えはいったいなんだっ!?
日本酒マニアが涎をダラダラ流す銘柄がズラーッと揃っているじゃんか!!
どうやって仕入れているんだろう?
酒販問屋を2~3社使っても、この顔ぶれをひょいと手に入れるのはムリのはず。

みかあさそば純米酒

ガツーン!!
さっきのアッパーでノックアウトかと思っていたら、
倒れる前におもいきりまわし蹴りを食らった、って感じ。
これは、ぜってい夜に来るしかないぜ。電車を4回くらい乗り継いでもさ。

おー、いったい何者なんだこの店のやつらは、と思ったけど、いるのは二人。
かわいくて丁寧な接客の女将とさわやかな大将。
わ、若い!まだ、30代?40代?
うーん、この若さでこのこだわりかあ。
料亭のような珍しくて気の利いたツマミ・・・
日本酒フリークを黙らせる決定的ラインナップ・・・
そして、味覚もカタチもウンチクも申し分ない蕎麦。
徹底的というか完璧というか。

いやー、お見事!!
いくら景気が悪くなっても、こんな店にはなくなってほしくないなあ。
ますますのご繁盛を心からお祈りしちゃいます。

ちなみにこの店の名前、『みかあさ』。
なんか深遠なる大和言葉なのか、なんて想像してたんだけど、スペイン語だそうだ。
「我が家」という意味だって。
えっ?あー!「ミ・カーサ」ってことかあ。

んー?で、なんでスペイン語さ、こんなに和の極みなのに。
あー、お二人、独立する前はスペイン料理の腕利き料理人だったとか?

ま、いいや。
今度、夜に蕎麦前からいただきに行った時に聞いてみよっかな。


●十割蕎麦『みかあさ』
埼玉県川越市霞ヶ関東1-15-14
049-233-3935
11:30~14:00(L.O.13:30)
17:00~21:00(L.O.20:30)
定休日/火曜、祝日


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