最近観た映画 ジャブ評


◆リザとキツネと恋する死者たち( Liza, a rokatunder)


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2014 ハンガリー
●監督/ウッイ・メーサーロシュ・カーロイ
●脚本/ウッイ・メーサーロシュ・カーロイ、バーリント・ヘゲドゥーシュ
●出演/モーニカ・バルシャイ、デビッド・サクライ、
    サボルチ・ベデ・ファゼカシュ ほか


おぽんちなジャポネスク
こういうの何ていうんだっけ?
ほら、よくあるじゃん?
映画の劇中で、変な日本語の看板があったり、
日本人の服装やインテリアが妙に時代がかっていたり、
音楽なら、中国と勘違いしてるんじゃないかっちゅうメロディだったり・・・

いまは昔と違って、世界の映画界にも日本人がたくさんいて
いくらでもリアルな日本を確かめることができるに違いないのに、
ああ勘違いというか、フェイクというか、ニッポンを茶化してるっていうか、
わざと “トンデモニッポン” をぶち込む演出。
そういうやり方って、ちゃんと定義づけられた、
なんやらっていう言葉があるんだよね。
(忘れた。知ってる人がいたら、教えてくんさい)

そう、この映画は全篇そういうおぽんちジャポネスクにあふれた
コメディなんだよね。

二枚目具合が恥ずかしい、日本では見かけない日本人みたいな俳優の幽霊(トミー谷)。
彼がマイクを片手に歌って踊りまくる、ちょっとイタイ感じの昭和歌謡(でもいい感じ)。
主役のリザもトミー谷もたくさーーん話す、たどたどしい(かわいらしい)日本語のセリフ。
わざとらしい日本の恋愛小説。
そして、九尾の狐伝説・・・

日本大好きな監督の、日本へのラブコールともいえそうな作品だね。
これが、ハンガリー映画だというから驚き!

時は1970年代。
場所はブダペストの日本大使(領事?)の未亡人の家。

リザは、たぶんだいぶん前から、
ここでお手伝いさん(看護師?)として働いてきたんだね。
寝たきりなのに、昔ながらの厳格な日本人そのままの奥さまの言われるままに、
ずっと閉じ込められるようにして暮らしてきたようすだ。

そんなリザの楽しみといえば、日本の恋愛小説を読むこと。
少し婚期を過ぎたくらいのリザの、恋にあこがれる毎日。
友達といえば、派手なジャケットを着て、変な歌謡曲を歌いながら踊る
変な日本人の幽霊・トミー谷だけ。

ある日、厳格な奥さまの許しが出て、リザはニセモノのマクドナルドみたいな
ハンバーガーショップにあこがれのバーガーを食べに出かける。
もちろん、恋愛小説よろしく恋の予感にウキウキしながら。

それで、ちょっとイナたい感じの男ではあるけれど、
そいつと恋らしきことになるのだ。
観てるほうは「何もあんな男と・・・」と思うのだけど、
なんせリザは恋愛などしたこともないんだから、
「これが恋なのね?」って感じ。

ところがだ、せっかくの少ないチャンスでつかんだこの恋のお相手を
あのトミー谷が、ほがらかに殺してしまうんだよ。
そして、その後に出会う男たちも次々と。

さすれば、トミー谷はリザにしか見えない幽霊(死神?)だから、
リザが殺人犯と疑われるのは当然。
奥さまが亡くなってしまった後に残された本「九尾の狐伝説」
リザの身辺から発見されたことも相まって、
リザは重大な殺人犯として警察に監視されることになるんだな。
(でも、トミー谷はあくまでほがらか)

ちなみに、「九尾の狐伝説」は、狐が絶世の美女に化けて帝を誘惑して、
国家転覆をしようとするハナシ。

リザの監視には、ある刑事が担当になるんだけど、
彼女を見張るうちに、彼は彼女のことを好きになっていく・・・

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ちょっと変な歌あり、踊りあり、恋あり、サスペンスあり、
ファンタジーありで、ああ、おもしろかったあ!・・・

・・・でもいいんだけど、そんなわけがないよね、特にヨーロッパの映画は。
僕の少ない経験で言って恐縮だけど、必ず辛辣なメッセージが込められているはず。
さらに特に、こういうコメディは曲者なのだ。

で、調べてみるとやはり、
この映画のミソは、時代設定が1970年代のハンガリーということだったんだね。

ハンガリーは聞くところによると、社会主義だった頃は外国との交流や情報交換、
スパイ行為、反体制言動・活動などにはものすごく厳しくて、
ちょっとしたことで逮捕されたり死刑にされたりするような国だったらしいんだね。
どうりで、最近撮られたこの映画でさえオブラートが分厚いと思った。

リザは、そんな体制下で閉じ込められるようにして生活してきたハンガリー庶民の
象徴として描かれているんだね、この映画では、たぶん。
ちょっとくらいの浮かれた恋すらもびくびく怯えて、
自由主義社会の文化にあこがれるだけで警察に追われたり、
おとぎ話なのに国家転覆みたいな記述のある本を持っているだけで監視されたり、
いつも死神につけまわされるような生活。
そんなハンガリーの過去を、おもしろおかしく揶揄しながら
現在の自由に明るく賛歌を贈った
映画なんだな、これは。

なるほど、世界三大ファンタスティック映画祭のうちの、
第35回ポルト国際映画祭でグランプリ、
第33回ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭で審査員&観客賞を受賞するわけだ。

まあ、そんなしちめんどくさいこと考えなくても、
と~~~ってもファンタスティックでキュートな映画ですぜー。

★個人的クオリティ度 9.5点
★個人的好きだなあ度 9.5点





◆マイ・ブルーベリー・ナイツ(My Blueberry Nights)


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2007 香港・フランス・中国
●監督/ウォン・カーウァイ
●脚本/ローレンス・ブロック、ウォン・カーウァイ
●出演/ノラ・ジョーンズ、ジュード・ロウ、ナタリー・ポートマン、
    レイチェル・ワイズ、デヴィッド・ストラザーン ほか


ある日、バーで

「このブルーベリー・パイは、いつも売れ残るんだよ、しかも、丸ごと」
「まずいの?」
「いいや」
「じゃあ、なぜひと切れも売れないの?」
「理由なんてないのさ、ただ売れ残るだけさ」
「あら、物事には必ず理由があるのよ」
「・・・・」
「なんだ、おいしいじゃない」


街の喧騒から少し離れたカウンターバーで、一人で静かに飲む。
友達みんなとわいわいやりたい気分じゃないのだ。

恋人との別れに決定打を打ったことを頭の片隅に置いたまま、
酔っているとも、酔っていないともいえない体。

同じ止まり木にとまった他の客や、パートのバーテンダーと
話したいとも、話したくないともいえない時間。

そんな空間で、ごく自然に会話が始まって、
それがホントに大切な言葉のやりとりで、
そのおかげで、自分の恋や人生が新しいベクトルで動き出す・・・

そんなバーに通いたいと思ったことってない?

「僕らはみんな、その日たまたま売れ残ったブルーベリー・パイなのさ。
すごくおいしいブルーベリー・パイが売れ残ることがあるのと同じように、
恋も仕事も、うまく行かない理由なんてない。
たまたまうまくいかないだけ。
だから時には、たまたま「うまい」と言って食べる人もいるのさ」

・・・そんな言葉をいつか聞けるんじゃないか、って夢見てさ。

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主演はなんと、あのノラ・ジョーンズ。
と、ハゲてないジュード・ロウ。
ナタリー・ポートマンが、異色の役。
そして、レイチェル・ワイズ、デヴィッド・ストラザーン。
監督は、『恋する惑星』や『ブエノスアイレス』のウォン・カーウァイ。

映像も音楽も、おしゃれで、クールで、せつなくて、甘い、
都会の片隅の恋のハナシ。

★個人的クオリティ度 8.5点
★個人的好きだなあ度 9.0点





◆悪党に粛清を(The Salvation)


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2014 デンマーク・イギリス・南アフリカ
●監督/クリスチャン・レヴリング
●脚本/クリスチャン・レヴリング、アナス・トマス・イェンセン
●出演/マッツ・ミケルセン、エヴァ・グリーン、ジェフリー・ディーン・モーガン ほか


北欧製のザ・西部劇
デンマーク映画なんだな。
しかし、これはアメリカの西部劇以上に西部劇してるぜー!
いまはもう、アメリカでも観ることのできない、典型的なウェスタンだよ。
しかも、現代の技術をもって作られた、ハイクォリティな西部劇。
外国の監督が撮ったからこそ、「これぞ、西部劇」というのができたんだろうね。
いいなー、これは。

時は1860年代かな。
デンマーク人のジョンは、アメリカへ移民する。
もろに、1890年頃に "フロンティア" が消滅するまで続いた、「西部開拓時代」だね。
そりゃそうだよな、西部劇なんだから。

その7年後に、ジョンはデンマークから美しい妻と息子を呼び寄せるんだ。
子供が赤ん坊だったせいと、生活の下地ができるまで、
“単身赴任” してたんだな、きっと。

ジョンは、通りすがりの暴漢たちともめたことから、
近くの町を牛耳る極悪なデスペラード集団と対立することになる・・・

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傍若無人なボス。
こきたなくて、残虐な子分たち。
言いなりのシェリフ、葬儀屋。
泣き寝入りの町の住民。
影のドン的な悪女。
ジョンの復讐が始まる・・・

ね、典型的だろ?
でも、古くささは全然感じられなかったなあ。
憎しみと、ピリピリと緊張感あふれるガンファイト!
ウェットさが微塵もない、ピシッと節制の利いたストーリー展開!
僕は、特に西部劇ファンというわけではないんだけど、
実に、おもしろかった!

主役は『007 カジノ・ロワイヤル』や『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』、
『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』にも出てる、
デンマークの俳優マッツ・ミケルセン。

主演女優は『007 カジノ・ロワイヤル』、『300<スリーハンドレッド>〜帝国の進撃〜』、
『シン・シティ 復讐の女神』の、大好きなエヴァ・グリーン。

あのマンチェスター・ユナイテッドのフォワードをやってたエリック・カントナや
『未来世紀ブラジル』のジョナサン・プライスもちょい役で登場。
個人的には、それだけでも楽しくてしょうがなかったよ。

おすすめです。

★個人的クオリティ度 9.0点
★個人的好きだなあ度 9.0点





◆帰ってきたMr.ダマー バカMAX!


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2014 アメリカ
●監督/ピーター・ファレリー、ボビー・ファレリー
●脚本/ショーン・アンダース、ジョン・モリス、ピーター・ファレリー、
    ボビー・ファレリー、ベネット・イェーリン、マイク・チェローネ
●出演/ジム・キャリー、ジェフ・ダニエルズ、キャスリーン・ターナー ほか


これが、ジム・キャリーだ!
ジム・キャリーと言えば、『マスク』?『マジェスティック』?
『エターナル・サンシャイン』?『トゥルーマン・ショー』?
『マン・オン・ザ・ムーン』?・・・
いやいや、彼はたたきあげのべったべたなコメディアンなんだから、
これが真骨頂でしょ。

この作品は、22年前に大化けヒットした
『ジム・キャリーはMr.ダマー』の第2作なんだよ。
ジム・キャリーの出世作とも言える作品の20年ぶりの次作というわけ。
それだけでも、オッペケペーなハナシだよね。

しょうもないので、ストーリーは省くけど、
演技はすごいのひと言!
表情も身のこなしも、これぞアメリカのコメディアン!って感じ。
あまりにキマリ過ぎてて、クドイくらいだなー。(笑)
あまりにもベタなアメリカン・ジョークで、
アメリカ人も「ちぇっ、おやじギャグのかたまりじゃんか」って
トホホがるんじゃないかと思うくらいだな。

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それもそのはず、この映画の監督ったら、ファレリー兄弟って言うんだけど、
『ムービー43』の1話を撮った兄弟だったんだな。
まあ、『メリーに首ったけ』もこの監督だけどさ。

で、共演というかダブル主演というかが、ジェフ・ダニエルズ!
僕はこの俳優、好きなんだよー。
『カイロの紫のバラ』でしょ、『ラジオ・デイズ』、『スピード』、
『カラー・オブ・ハート』、『イカとクジラ』、『LOOPER/ルーパー』、
『オデッセイ』ときたもんだ。

でも、中でも一番好きなのは『サムシング・ワイルド』!
(http://yurayuragusa.blog.fc2.com/blog-entry-52.html)
あれはいいなあ、彼が主演だし。
トレンディドラマみたいな、ソフトなラブコメディなんだけど、なんか好き。

あ、脱線しちゃったけど・・・そうそう、ジェフ・ダニエルズって
最近は渋い顔して偉い人や悪い人を演ったりしてるけど、
元々は天然ボケ系のコメディアンなんだよね。
その真骨頂がこの作品では観られるというワケ。

そういう2人が掛け合いでコントを連発するもんだから、
イヤでも、いや、イヤなのに笑わされるわー。
ホント、バカ。

★個人的クオリティ度 8.5点
★個人的好きだなあ度 8.0点



最近観た映画ジャブ評



◆夏をゆく人々(Le meraviglie)


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2014 イタリア、スイス、ドイツ
●監督/アリーチェ・ロルバケル
●脚本/アリーチェ・ロルバケル
●出演/マリア・アレクサンドラ・ルング、サム・ルーウィック
    モニカ・ベルッチ ほか


蜂を飼うということ
これは不思議なタッチの映画だねー。
ファンタジーという意味ではないんだけどね。
文章にしたら、ホームドラマみたいなストーリーなんだけど、
アメリカンな感じでは全然ないわ。

邦題が『夏をゆく人々』だろ?
それじゃ、海辺のコテージでひと夏を過ごす男女の
メランコリックなフランス映画、って感じだよな。
んー、そんな感じじゃないなあ。
原題はイタリア語?『LE MERAVIGLIE』= 驚き?不思議? かあ。
んー、そんな感じでもないなあ。
劇中では、非現実的なことは何も起こらないからね。

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イタリアのトスカーナ地方のド田舎のほうで、
養蜂業をやってる一家のハナシ。
劇中ではエトルリア文化みたいなことを言っていたけどね
エトルリア人といえば、イタリアがローマ帝国になる前の先住民族だな。

6人家族で、子供が女子ばかりなので、
14~15才くらいかなあ、長女のジェルソミーナが
“跡取り” 的な感じで学校にも通わずに家業を手伝ってる。
まあ、家族全員が手伝っているんだけど、
ジェルソだけはもろに一家の家計を支える父親の弟子という感じ。

父親は、古い頑固なタイプの人で、仕事に厳しくいつも怒っているし、
新しいことや自分の気に食わないことにすぐに目くじらを立てる人だ。
養蜂という仕事にはこだわりと誇りを持っているようなんだけど、
儲けるということには全然頓着していないんだな。

ある時一家に、一人の少年がやってくる。
親父が独断で、住み込みの犯罪更生プログラムに協力することにしたのだ。
蜂と野山の自然しか知らないジェルソや次女に、微妙な変化が起こる。

またある時、テレビ番組の取材がやってくる。
番組で、地域の特産品コンテストをやるから出ないか、という。
父親はもちろん反対だ。
ジェルソは、設備をもう少し近代化できないなら廃業せよ、という
行政からの命令に、資金繰りで悩んでいたので、
賞金ほしさに出演を了承してしまう。

何代も社会と隔絶されて生きてきた一家に、
ささやかな変化が訪れる、ある夏の物語・・・。

蜂を飼うこと・・・それは、エトルリア人が3,000年も前から
守ってきた自然と文化、そして家族の絆を継承することなのだ。

第67回カンヌ国際映画祭で審査員グランプリ。
モニカ・ベルッチも出てるよ。

お父さんや家族が、家の外にベッドを出して寝ているシーンが
2度もあるんだけど、あれって何? 暑さしのぎ?
養蜂上のノウハウかなんかかい?

★個人的クオリティ度 7.0点
★個人的好きだなあ度 8.5点





◆クライム・ヒート(The Drop)


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2014 アメリカ
●監督/ミヒャエル・R・ロスカム
●脚本/デニス・ルヘイン
●出演/トム・ハーディ、ノオミ・ラパス ほか


静かなマフィアはコワイ
好きだわ、コレ。
こういうのって、ホントにあるんだろうね。
たぶん現代の、ニューヨーク・ブルックリンのハナシ。
ある二人の男が切り盛りする、バーが舞台なんだな。

そこのバーは、闇の世界では、“ドロップバー” って呼ばれているんだよ。
ドロップバーとは、僕の解釈では2つの意味を持っているんだわ。
一つは、「堅気からドロップアウトした」というのと、
もひとつは、「札束をぼとぼと “落とす” 」という意味。
つまり、完全にマフィアに食いものにされているという意味と、
マフィアの裏金の「集金ボックス」になっているという意味。
マフイアの末端とか、マフイアにたかられている人たちが、
文字通り店内にしつらえてある金庫に、ぼとぼと札束を落としに来るんだよ。

だから原題が『The Drop』なんだね。
それを『クライム・ヒート』って、どこの日本人がつけたのさ?
しかもね、この映画は全然 “ヒート” って感じじゃないし。
どっちかというと、“コールド“ だな。
凍り付くようなコワさがウリの作品だと思う。

でも、凍り付くといっても、グロいとか残酷なシーンはほとんどなくて、
マフィアの含みのある質問や、人を検分する目つきなんかが実にコワイんだよ。
ちょっとでも返答を間違ったら、間違いなく殺されることになる
ピリピリした会話、僕はそれが一番コワかったなあ。
最新の『マッドマックス』のトム・ハーディが主役のバーテンダーだから、
いつ人をぶん殴るか、わくわくして観てたんだけどね。

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助演女優は、スウェーデン版『ドラゴン・タトゥーの女』のノオミ・ラパス。
原作・脚本は、『ゴーン・ベイビー・ゴーン』原作のデニス・ルヘイン。
日本では、劇場未公開。
ワンコ好きも必見の、節制の利いたマフィアものだよ。

★個人的クオリティ度 8.0点
★個人的好きだなあ度 9.0点





◆カンフー・ジャングル(一个人的武林/Kung Fu Jungle)


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2014 香港・中国
●監督/テディ・チャン
●脚本/ラウ・ホーリョン、マック・ティンシュー
●出演/ドニー・イェン、ワン・バオチャン、チャーリー・ヤン ほか


カンフーの達人、次々登場
この映画は、香港と中国でいま考えられるカンフーの達人を
1本の映画に集めてみたい、という願望の元に作られたんだろうなあ。
僕はくわしくないんだけど、見たところでは、
通常のパンチと蹴りのカンフーはもちろん、鷹爪というか鍵爪で戦うやつとか、
棒術、剣術など、6~7種類の武術が出てくる気がするなあ。

そもそも、アクション映画で有名な監督のテディ・チャンは、
衰退しつつあるカンフー映画と長年カンフーアクションに関わってきた
人たちにリスペクトを捧げると言っているしね。
エンドロールでは、過去の名作のポスターや短いカットが
集められているんだよ。

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ストーリーは、まったくもってシンプル。
うん、カンフーアクションを見せたいのだから、それでいいのだ。
カンフーを極めたいと思っているある男がいて、
香港に住んでいる各種流派の達人たちに、決死の対決を挑むんだよ。
ただそれだけ。
「カンフーは、人を殺すための武術」って、
劇中でそいつが何度も言うのが印象的だったな。

主役は、カンフーといえばこの人といえるドニー・イェン。
対抗悪役は、『罪の手ざわり』にも出ていたワン・バオチャン。
この人、カンフーの達人だったんだ?!

★個人的クオリティ度 9.0点
★個人的好きだなあ度 8.0点





◆奇跡の2000マイル(Tracks)


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2014 オーストラリア
●監督/ジョン・カラン
●脚本/マリオン・ネルソン
●出演/ミア・ワシコウスカ、アダム・ドライバー ほか


ある意味ミアのドキュメンタリー
ミア・ワシコウスカの好きな人、いますかー?
はい、これ観ましょうねー。
だってね、ミアのパンツ一丁姿やすっぽんぽんで泳ぐ姿が観られるよー。

あ、いやいや、そうじゃなくて(ホントに観られるけど)、
ミア・ワシコウスカといえば、病気で余命間もない人とか、
ちょっとサイコスリラーな人とか、お姫様とか、
どっちかというと都会的&家の中的な女優だよね。
土で汚れた顔なんて、想像もつかないわさ。
それが、この映画ではおもいっきりアウトドア・ガールだからね。
アウトドアというか、サバイバルの域だけど。
新しいミア・ワシコウスカが観られる、っちゅうわけさ。
なんせ、何か月も、ラクダをひっぱりながらオーストラリア大陸の
砂漠地帯を歩き続けるんだよ。

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左がミア、右がロビン

ちょっとサプライズに欠ける内容かな。
まあ唯一、はっきりした理由もなく始めるのはサプライズだけどね。
でも、これは実話だからしょうがないよね。
1977年にロビン・デヴィッドソン(女子)さんという、
可憐な女子がホントにやらかした
ことなんだね。

この映画ができる前にも、5回も映画化のハナシが
あっては消えていたらしいね。
んー、たしかに、映画にできそうな偉業ではあるけれど、
フィクションを入れることなく、ひたすら歩くようすを商業映画にするのは
難しかったんだろうね。
でもって、この作品も興行的には失敗したようだね。
製作費が回収できていないそうだ。
でも、ミア・ワシコウスカは好き。
黒のラブラドール・レトリーバーもかわいいよ。

★個人的クオリティ度 8.5点
★個人的好きだなあ度 7.0点





◆紀子の食卓(紀子の食卓)


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2006 日本
●監督/園子温
●脚本/園子温
●出演/吹石一恵、光石研、吉高由里子 ほか


自分や家族との絆を見つける
あの園子温監督が、10年前に撮った作品だね。
ちょい前、話題だった吹石一恵がヒロイン。
というか、光石研が主役だなこれは。

昔の園監督の作品を観ると、かなり社会派なんだってことがわかるな。
しかも、実際にあった事件などに考察したものが多い。
たとえば、『愛のむきだし』(2009)は、カルト宗教のハナシだし、
『冷たい熱帯魚』(2011)は、埼玉であったバラバラ事件がモチーフになってるし、
『恋の罪』(2011)は、東電OL殺人事件のことだし、
『ヒミズ』(2012)は、DVのことがテーマだし、
『希望の国』(2012)は、原発事故のハナシだし、
WEBの自殺サイトと集団自殺をテーマにした『自殺サークル』(2002)、
その続編的なこの『紀子の食卓』(2006)は、
コスプレの心理のようなものにもスポットを当てているしで、
次から次へと社会問題を映画にしてるんだよ。

たぶん、1984年から始まって2001年までの園子温と、
2002年の『自殺サークル』から2012年の『希望の国』までの園子温と、
変な映画を撮る監督で皆さんおなじみの『地獄でなぜ悪い』(2013)から
『みんな!エスパーだよ!』(2015)までの園子温は違う人間なんだな。
文学期 → 社会派期 → エンタメ期 とでも言うのかな。
で、さらに本人は、2016年の『ひそひそ星』から制作方針を変えた、
って言っているからね。
もう、中途半端なエンターテインメント作品は、撮らないんだそうだ。
ますます楽しみというか、ますますコワイというか。(笑)

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ところで、この『紀子の食卓』のストーリーといえば、
たぶん愛知県に住むフツーの女子高生が家出をするハナシだ。
ふだん家族との関係に違和感を感じていた紀子は、
WEBサイトの「廃墟ドットコム」で会話を続けていくうちに、
そこで知り合った女子を訪ねて東京へ行ってしまうのだ。

東京に出て来てからは、そのクミコという女子と「レンタル家族」
という商売を行なうんだよ。
家族がほしいとか、家族と触れ合いたいと願う依頼主に、
時間貸し有料で娘になってあげるという仕事。
この設定は、なまぬるい世の中で生きるうちに、
僕らは家族のアイデンティティを喪失してしまっていると
園監督は言いたいのかもしれないな。
同時に、家族から離れてともすれば自殺しそうな女子高生は、
「自己」とか「自我」というものを失っているとも言っているような気がする。
劇中では、「あなたは、あなたと関係していますか?」と繰り返し出てくるんだよ。

自分と関係する方法と、家族と関係する方法。
それが、「レンタル家族」で「いい娘」と「いい家族」を
演じることだと言いたいんだろうな。
自分は自分の中にいては、自分を知ることができない。
家族は家族の中にいては、家族を知ることはできない。
他者を演じることで、ホントが見えてくる
ということだろう。
これは、心理学とか演技論とでもいうことを呈したんだろうな。
んー、なかなかリクツっぽい。
パンチラのことばかり考えているんじゃないんだな。(笑)
しかし、この作品をおもしろいかと聞かれれば、何て答えたらいいのやら。
まあ、吹石一恵と吉高由里子は、若くてピチピチだけどね。
あ、バンチラはなかった、ような気がする。

★個人的クオリティ度 6.5点
★個人的好きだなあ度 7.0点







♪ Breathe Your Name / Sixpence None The Richer





♪ Sleeping Gypsy(Full Album)/ Michael Franks




最近観た映画 ジャブ評


◆チャンス商会 ~初恋を探して~(장수상회/Salut d'Amour)


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2015 韓国
●監督/カン・ジェギュ
●脚本/イ・サンヒョン、カン・ジェギュ、パン・ウンジン
●出演/パク・クニョン、ユン・ヨジョン ほか

じいちゃん、ばあちゃんの恋にはワケがある。
うんうん、なかなかいいっすよー、これは。
ある町内に住む、一人もんの頑固じいさん。
近所のチャンスマートという食品スーパーで働いてる。
街の再開発のための立ち退き要求に、
頑として首を縦に振らない近所の爪はじきもんなんだけど、
それには感動的なわけがあったんだな。

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頑固で生真面目なじじいのクセに、最近、向いの花屋に引っ越してきた
中村珠緒にそっくりなばあさんにひとめ惚れ。
まわりのあったかい目に見守られながら、ほのぼのとシニアラブが展開するんだけど
・・・おおーっ、そういうオチがあったのかあ!泣くーーー! って感じ。
『シュリ』とか『ブラザーフッド』、『マイウェイ 12,000キロの真実』などの
バリバリ戦争系を撮ったカン・ジェギュ監督のハートフル・コメディだ。

★個人的クオリティ度 8.5点
★個人的好きだなあ度 7点





◆みんな!エスパーだよ!


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2015 日本
●監督/園子温
●脚本/田中眞一、園子温
●出演/染谷将太、池田エライザ、真野恵里菜 ほか

超能力を観るか、パンチラを観るか。
若杉公徳さん原作の漫画なんだよね?
園子温監督で、テレビ東京系の深夜ドラマになって人気だったそうなので、
映画版を観てみたよ。
ある月食の夜にオナ○ーしていたチェリーとバージンの男女が、
何者からか超能力を授かってしまう。
超能力を持った若者たちは、その力を良いことに使う者たちと、
悪いことに使おうと(世界の支配?)する者たちがいて、戦うというハナシ。
おバカな設定だねー。
で、はい、やっぱし、日本一のパンチラ映画だったよ。
しかも、僕はよく知らないんだけど、
ティーンズファッション誌出身のめっちゃかわいい子のパンチラだよ。
そういえば、満島ひかりも、安藤サクラも、水野美紀も、清野菜名も、
おまけに自分のカミさんの神楽坂恵も、園作品でパンチラさせられたよねー。
パンチラ好きなんだろうね、園監督。

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時々こういうおバカな映画を撮っちゃう園監督だけど、僕はそれほど嫌いでもないんだよ。
転んでもタダでは起きないというか、イタチの最後っ屁というか、
ヒットしなくても、観る人のたった一人にでも、強烈なインパクトを残すように作っている
そのマインドが好きなんだよ。
おもしろくもつまんなくもないのを作らない。
すっげーバカバカしいとか、すっげーグロいとか、すっげー暗いとか、
つまんなくても “すっげー” が付くのだ。
じゃ、すっげー予算があるプロジェクトで、すっげーおもしろい映画を撮れるか、
さてさてこれからが楽しみな監督だと思う、僕は。

★個人的クオリティ度 6点
★個人的好きだなあ度 6.5点





◆イタリアは呼んでいる(THE TRIP TO ITALY)


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2014 イギリス
●監督/マイケル・ウィンターボトム
●脚本/マイケル・ウィンターボトム
●出演/スティーブ・クーガン、ロブ・ブライドン ほか

多忙なおじさん向け旅行ガイド。
イギリスの大物コメディアン名コンビ・スティーブ・クーガンと
ロブ・ブライドン
が、ぷらーっとイタリア旅行に出かけるハナシ。
コメディアンだからって、バカ笑いものではなくて、
ウィットに富んだ会話が散りばめられた、
オシャレな笑いがもらえる映画という感じだね。

ふたりは、脚本家と役者だったかな?
そういう設定、というか、それってリアルそのものだよな。
それぞれ何かと忙しいんだけど、二人とも人生下り坂に入って
そんなに有名になれたわけでもないし、大金持ちになれたわけでもないし、
で、「ちょいと1週間くらい、息抜きに旅にでも行くかあ」って感じで出発。
そうだなあ、イギリスの西田敏行と鶴瓶がブラブラ仕事の話でもしながら
京都でも旅するといった感じ。

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ストーリーはどうでもいいや。
イタリアの5つ星ホテルや絶景レストランの絶品料理、
ミニクーパーでクローリングする美しい街の風景、
そして軽ーいラブロマンス・・・。
おもしろおじさんのゆるーいイタリア旅行ガイドって感じ。
おじさん以外は、観てもおもしろくないかもねー。

★個人的クオリティ度 8点
★個人的好きだなあ度 6点





◆ヴィレッジ(The Village)


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2004 アメリカ
●監督/M・ナイト・シャマラン
●脚本/M・ナイト・シャマラン
●出演/ブライス・ダラス・ハワード、ホアキン・フェニックス ほか

アーミッシュか、旧約聖書か。
これは、僕が『ザ・ギヴァー 記憶を注ぐ者』のレビューを書いた時に
バニーマンさんに教えてもらった作品。

ある森の中に、掟ガチガチの村があったんだな。
どうも、その掟は人と人との争いや犯罪なんかが絶対に起きないように、
コミュニティの平和をめざしたルールなんだな。
・村の家々に赤い印がつけられたら、恐ろしいものが襲ってくる。
・村の外側を覆う森に入ってはならない。
・“ノア”・パーシーという人の存在。
そう、まるで「出エジプト」や「ノアの箱舟」のメタファーじゃないかという設定。
そして、中世とも現代とも言えない衣装や建物。
うん、これは『ナルニア国物語』のようなファンタジーなんだなと思っていたら・・・。
ある日、アイヴィという盲目の少女が、恋人の命を救うためにその掟を破ることになるんだけど、
その結末を知ると、このダークなグリム童話みたいなハナシが一挙に現実味を帯びるんだよ。

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監督は『シックス・センス』のM・ナイト・シャマラン。
最近は『ヴィジット』でも話題だよね。
主役は、ロン・ハワードの娘ブライス・ダラス・ハワード。
他には、ホアキン・フェニックス、エイドリアン・ブロディ、ウィリアム・ハート、
シガニー・ウィーバー・・・と、何気にすごいキャスティングなんだねー。
でも、『シックス・センス』と比べると、だいぶ見劣りするかなあ。

★個人的クオリティ度 8点
★個人的好きだなあ度 7点





◆かしこい狗は、吠えずに笑う(SHADY)


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2013 日本
●監督/渡部亮平
●脚本/渡部亮平
●出演/mimpi*β、岡村いずみ ほか


映画は予算じゃない、の最高の見本。
これは、おもしろいなあ!
映画のおもしろさって、やっぱり予算規模にかなり比例するよなあ、
なんて、やっぱりやっぱり思う昨今だけど、
ごくごくまれに、お金がかかってなくてもおもしろい作品があるはずだ
って、映画ファンの願いを見事にかなえてくれる映画だ、と言っていいと思う。
監督は、まだ28~29才。
『アザミ嬢のララバイ』(2010)やドラマ『時をかける少女』(2016)の脚本家なんだな。
お芝居やアニメの脚本のコンペで勝って得た賞金やなけなしの貯金をはたいて
この映画を書いて、監督もやって撮ったらしいんだよね。
そう、いわゆる自主制作映画だよね。
でも、映像も音楽もぴかいち!
で、各種映画賞に応募して軒並みに受賞して、ロードショウがかかったという
映画製作者の夢を実現したとでもいうような作品なんだよ。

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ハナシは、『ソロモンの偽証』のスケールを小さくしたような「学園ミステリー」だよ。
ある女子高で、“ブスでぼっち” の女の子と、かわいさが鼻についていじめられている女の子が
ひょんなきっかけで仲良くなる。
ふたりは、なんでもわかりあえる親友としてどんどん仲良くなっていく。
でも、だんだんとある疑惑が深まっていく。
んー? 親友どうしの会話のスキマから何かが・・・
少しずつ、少しずつコワさが増していく見事なサイコ劇なんだなー。
いまもっとも注目される若手実力派の脚本のすごさが、バッチリ堪能できる一本でっせ。

ぴあフィルムフェスティバルで「エンタテインメント賞」と「映画ファン賞」、
福岡インディペンデント映画祭2012で「120分部門グランプリ」と「FIDFF2012最優秀賞」、
第22回映画祭TAMA CINEMA FORUMでコンペティション部門「グランプリ」 、
第13回TAMA NEW WAVE で「最優秀女優賞」。
渡部亮平、覚えておいたほうがいい映画人のひとりだろうなー。

★個人的クオリティ度 7点
★個人的好きだなあ度 9点







♪ That Misty Red Beast / Toots Thielemans





♪ カメレオン / mimpi*β