2015/08/17

ふかいことをおもしろく ~ 『吉里吉里人』


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●『吉里吉里人』
井上ひさし(いのうえ・ひさし)
1981年 新潮社
※イラスト:安野光雅



初版の発刊は、1981年かあ。
思い出すなあ、あの頃。

友達に、なまらおもしれーぞ、って勧められて読んだんだっけ。

本屋で現物を目にした時は、ビビッたよ。
だって、ハードカバーのいわゆる単行本サイズで、800ページ以上もあったんだよ。
背表紙の厚さを見ると、辞書並み!
しかも、中を開いてみるとなんと、ページの文字組みが2段組み!
当時の僕は、1冊でこんなに分厚い本は見たことがなかったんだな。

「えーっ、これホントに読めんの?どんだけ日にちがかかるんだろ」、
なんて不安になったんだけど、別の友達も、あれはおもしろい!って
言っていたのを思い出して、思い切って買ったんだったなー。

でも、読み出したらけっこうスイスイ行ける。
しかも、ものすごくおもしろい。
おもしろい、というのは、ストーリーに惹きつけられるという意味でもあるけど、
主にゲラゲラ笑える、という意味。
1週間くらいで、バーッと読んじゃったなあ。

あ、いまは文庫で上・中・下で出てるねー。
それぞれ、500ページくらいあるけど。(笑)



ストーリーを簡単に書けば・・・
東北にある「吉里吉里(きりきり)」という村が、
日本国から独立しようとするハナシだよ。

吉里吉里村は、岩手県に実在する地名だけど、
どうも地理的にはズバリそこにハマるわけではなく、
その近辺の架空の村という設定になっているみたい。

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その吉里吉里が、ある日突然、独立宣言をするんだけど、
独立するための準備や体制を整えたり、日本国からの妨害などがあったりして、
いろいろなことが起こるといった内容だね。
それが、実にユーモラス、かつアイロニックに展開するんだなー。

第33回読売文学賞、第13回星雲賞、第2回日本SF大賞を受賞。
“SF“ って言っても、この小説の場合は、スターウォーズみたいな
“Science Fiction(空想科学小説)“ じゃなくて、
社会的なテーマを語るという意味で、“Speculative fiction(思弁的創作)”
というジャンルに入るのかな、この小説は。
違うかなあ?
要は、科学とか宇宙じゃないけど、ファンタジーってこと。
SFの定義って、難しいんだよな。

なんか、難しそうな感じになっちゃったけど、全然そんなじゃないよ。
全篇おもしろおかしい、マンガみたいなハナシ。
終始、笑わせてくれるんだよ。



この小説の笑えるポイントは、3つあると思う・・・
一つ目は、方言をいじくり倒した “言葉遊び”
東北弁を標準語に訳してすっとぼけたりして、これはホントおっかしい。
でも、ちょびっと知的な遊びって気がするのが、井上ひさし節なんだろね。

二つ目は、登場人物のキャラのおもしろさ。
さすが、演劇の世界で長いこと活躍してきただけのことはあるね。
キャラクターの設定は明確で個性的。
みーんな、愛すべき変な人なんだなー。

三つ目は、含み笑いさせられるブラック・ジョーク
日本国に反抗して独立しよう、ってんだから、
おのずと日本の政府や、制度や、行政なんかをおちょくることになるわけ。
欧米風の風刺画を連発して見せられるようなおかしさもあるんだね。

で、腹を抱えながら読んでいくことになるんだけど、
だんだんと「んー、このハナシはそれほど荒唐無稽でもないかなー」、
なんて気になってくるから、コワイよねー。
“ふかいことをおもしろく“ の井上爆弾が炸裂するんだなー。

沖縄米兵少女暴行事件や米軍用地特別措置法問題などがあった '90年代後半に、
沖縄でこの本のリバイバルブームがあったらしいよ。
「日本政府が非協力的なら、我々は独立しようぜ」という気運があったんだよね。
いや、今でもあるのか。



これを読んだからって、「日本だって、アメリカから独立しようぜ」とか
「政権、変えようぜ」なんて気になるわけがないじゃん。
ひたすら、笑って読みましょうや。
・・・ってか







“ Stop Whispering “ / Radiohead





“ Inside Looking Out “ / Grand Funk Railroad