人は人のみにて生くるにあらず ~ 『世界から猫が消えたなら』


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世界は僕に、たくさんのかけがえのないものをくれているんだなあ。

僕は世界に、何かかけがえのないものをあげているんだろうか。

僕がいた世界と、僕がいなくなった世界に、何か違いはあるんだろうか。



・・・そんなことを考えさせられたなあ。

函館の風景がいいねー。



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●世界から猫が消えたなら
2016 日本
上映時間:103分
監督:永井聡
原作:川村元気『世界から猫が消えたなら』
脚本:岡田惠和
製作:映画「世界から猫が消えたなら」製作委員会(東宝、博報堂DYメディアパートナーズ、
   小学館、アミューズ、ストライプインターナショナル、マガジンハウス、
   ローソンHMVエンタテイメント、ソニー・ミュージックエンタテインメント、
   KDDI、GYAO、日本出版販売)
制作:東宝映画
制作協力:ドラゴンフライ
撮影:阿藤正一
照明:高倉進
録音:郡弘道
音効:齋藤昌利
編集:今井剛
美術:杉本亮
装飾:渡辺大智
衣装:荒木里江
VFXスーパーバイザー:神田剛志
音楽プロデューサー:北原京子
音楽:小林武史
主題歌:HARUHI「ひずみ」(Sony Music Labels Inc.)
配給:東宝
出演:佐藤健、宮崎あおい、濱田岳、奥野瑛太、石井杏奈、
   奥田瑛二、原田美枝子、パンプ ほか





♪ ひずみ / HARUHI




伝えていくべきコト ~ 『ザ・ギヴァー 記憶を注ぐ者』


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一見、犯罪も、戦争も、飢えも、悩みもないユートピアだけれど、
自由も、感動も、恋も、冒険も許されない管理社会。

さまざまな自由と人権が保たれているけど、
醜い争いや犯罪が多発して、
いずれは核戦争のような滅亡の時を迎えるかもしれない社会。

自分が生きるなら、どっちがいいだろう?
ってか、後者に暮らしてるのか、僕らって。



時は、近未来なのか、はるか未来なのか、とにかく未来のハナシ。

よくある設定の、天変地異後の荒廃した世界
その人たちは、壁はないけど『進撃の巨人』みたいな限られたエリアで
美しいコミュニティを作って暮らしているんだな。

コミュニティの住人たちは、みんなが善人で、勤勉で、街は限りなく清潔だ。
犯罪がない、争いもない、病気もない。
さらには、感情の起伏もない、恋もなければ結婚も出産の自由もない、
旅も冒険もない、過去の歴史の記憶もないんだ。

一度、なんらかの原因で滅亡の危機に瀕した世界に生きているもんだから、
人類はその反省の上に、人間がもたらす “災い” を完全に封じ込めた管理社会を作ったんだな。

家族は、なんらかの基準で寄せ集められたお父さんとお母さんと
的確な遺伝子操作によって、出産専門の部門で生ましめられた子供という構成。

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ある時、コミュニティでは、12才になった子供を集めて、ある儀式が行なわれることに。
個性がはっきりしてきた子供に、これまでの観察を元に、職業を任命するんだな。

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安全で健康な社会を維持するためのいろんな役割が割り振られるんだけど、
たった一人だけ、“記憶を受けつぐ者” という特別な仕事を与えられるやつがいるんだよ。
まあ、それがこの映画の主役ってわけだ。

コミュニティの住民は、人類の歴史を学ぶことがない。
というか、人類に歴史というものがあることすら知らないし、
毎朝飲まされる薬のせいで、何かあるかも、って疑う気力さえもないのだ。

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メリル・ストリープおばさんでございます

でも、何かあった時のための保険なんだろうね、“記憶を受けつぐ者=レシーバー” を設けて、
一人くらいは人類の歴史を記憶させとこうということなんだな。

主人公のジョナスは毎日、“The Giver=記憶を伝える者” のおっさんから
人類の記憶を受け取っていく。
戦争や飢饉や人種差別などなど、自分たちがいまなぜこんな生き方をしなければならないのか
を知るための辛い記憶を毎日注入されるんだけど、
それと一緒に、恋することや人を愛すること、自由である喜びなんかも知っていく。

そう、いま自分たちは恋や愛や自由を奪われた、狭い世界に閉じ込められていることを。
あの、行ってはいけない境界の向こうに、ホントの世界があることを。

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ヒロインのオデイア・ラッシュ(18)は、世界で最も美しい顔14位

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テイラー・スイフトも出てる!



そうしてレシーバーは次のレシーバーを待たずして
自分のやり方で “ギヴァー” になる・・・。

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原作は、アメリカのロイス・ローリーという女子が書いた児童文学なんだね。
1993年発表、アメリカの児童文学の最高賞・ニューベリー賞を受賞した、
世界的な名作だったんだね。

彼女は、1948年から1950年の間、日本に住んでいたんだそうだ。
お父さんがアメリカ軍の歯科医だったので、日本の米軍基地に住んでいたんだね。
彼女が、12~13才の頃。
そう、この映画の主人公の年齢と同じトシだよね。

ちなみに、著者が住んでいたのは、“ワシントンハイツ” というところなんだね。
ワシントンハイツは、第二次大戦後にアメリカ軍が接収して建設した在日米軍居留地の一つ。
Washington Heights、U.S. Air Force Washington Heights housing complex =
合衆国空軍ワシントンハイツ団地 ということ。

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ワシントンハイツの “ハウス” ※ウィキペディアより拝借

これは、なんとあの代々木公園にあったんだね。
代々木公園ばかりか、いまリニューアル中の国立競技場渋谷公会堂
NHK、参宮橋方面の国立オリンピックセンターまで、ぜーんぶがそれだったんだってさ!

僕も35年以上こっちに住んでるけど、そんなのがあったって全然知らなかったよ。
いまもある福生(ふっさ)の米軍基地やハウス、
調布や府中に米軍の住宅があったことなんかは知ってたけどさ。

そっか、渋谷の公園通りの上から原宿あたりまで、ぜ~んぶ米軍のハウスだったんだねー。
んーと、92.4万平米、兵舎とハウスが827戸のほか、学校、教会、劇場、商店、将校クラブ・・・。
周囲が塀で囲われた街。
日本人立ち入り禁止、中は当然治外法権だったと。

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ワシントンハイツ全景 ※ウィキペディアより拝借



少女だった著者のロイスちゃんは、この規律正しく管理された塀の中で
2年も多感な時期を暮らしたわけだ。

本人談では・・・
塀の外へ出てはいけないと言われていたけど、
自転車に乗って、長い坂を下って、
渋谷の方まで冒険に出るのが楽しくてしょうがなかった

その時のことを思い出して『The Giver』を書いたんだとのこと。
んー、それをそのまま映画にしても、いい作品が撮れそうな気がするなあ。



秩序正しくて安全だけど、自由や変化や夢のない、塀に囲まれた世界と、
自由で目に新しくて刺激的だけど、飢餓や争いや危険にまみれた世界を
行ったり来たりした彼女だけど、この作品ではどっちがいいとは言っていないと思う。

ただ、いまも塀の中に閉じ込められたままになっている、
塀ができる前に世界で起こったいろいろなことの記憶を
“伝える” べき、 “受け継ぐ” べきだということを訴えている
んだろうな。





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●ギヴァー 記憶を注ぐ者(The Giver)
2014 アメリカ
上映時間:97分
監督:フィリップ・ノイス
脚本:マイケル・ミトニック、ロバート・B・ウィード
原作:ロイス・ローリー
製作総指揮:ハーベイ・ワインスタイン、ボブ・ワインスタイン、ロン・バークル、
      ディラン・セラーズ、ラルフ・ウィンター、アリソン・オーウェン、
      スクーター・ブラウン
製作:ニッキ・シルバー、ジェフ・ブリッジス、ニール・コーニグスバーグ
撮影:ロス・エメリー
編集:バリー・アレクサンダー・ブラウン
美術:エド・バリュー
衣裳:ダイアナ・シリアーズ
キャスティング:ヴィーナス・カナニ
音楽:マルコ・ベルトラミ
音楽監修:デイナ・サノ
配給:プレシディオ
出演:ジェフ・ブリッジス、メリル・ストリープ、ブレントン・スウェイツ、
   アレクサンダー・スカルスガルド、ケイティ・ホームズ、テイラー・スウィフト、
   キャメロン・モナハン、オデイア・ラッシュ、エマ・トレンブレイ







“ We Are Never Ever Getting Back Together ” / Taylor Swift





“ 戦争を知らない子供たち ” / ジローズ




家族は、アカの他人 ~ 『レッド・ファミリー』


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また、北朝鮮のことに触れた韓国の映画を見つけちゃったよ。
最近、北朝鮮が足をバタバタさせているから、
ついコレ系のタイトルが目に入って来ちゃうんだよな。



この映画は、韓国に入り込んでいる北朝鮮の特殊工作員を描いた映画なんだよ。

その工作員とは、4人の家族なんだな。
お父さん、お母さん、娘、おじいちゃんという構成だけど、
本物の家族ではなくて、母国にそれぞれ家族を残して来てる。

それぞれ、特殊工作の実行部隊員として訓練を受けてきているから、
フツーの人に見えても、格闘や暗殺などの仕事にも長けているという設定。
リーダー(お母さん)の統率も厳格で、構成員の仕事も冷徹で的確だ。

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この家族が、ハタ目には実にいい家族なんだな、
ホントは “アカの他人” の集まりなんだけど。
仲良く暮らす夫婦と、賢くて素直な娘、穏やかでものわかりのいいおじいちゃん。
絵に描いたような、じゃなくて絵に描いた幸せ家族。

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逆に、隣に住む家族は本物の韓国人の家族だけど、ろくでもない。
内緒でサラ金から借金しまくるわ、旦那をバカにして暴言を吐くわの母ちゃんと
弱っちい父ちゃんと、いじめられっ子の息子と、何にもできないばあちゃん。

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かりそめの工作員家族は、隣はバカでうるせーやつらだと思いつつも、
怪しまれないように、仕事上、それなりの家族付き合いをするんだよ。

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そうやって、付き合っているうちに、
バカで喧嘩ばかりしてる家族だって、ホントの家族はいいなあ、
なんて思うようになってくる。
望郷の念にかられるようになってくる。



このあたりが、この映画のいいところなんだろうな。
ロクでもない家族は、金欲やすれっからしな人間にあふれる韓国社会を、
かりそめの工作員家族は、秩序は保たれているけど自由も愛もない北朝鮮の社会
表わしていて、両方ともを批判しているんじゃないかな。

でも、ろくでもない家族だって、家族は家族。
「喧嘩するほど仲がいい」って言うじゃん。
そうだよ、北と南だって誰かのさしがねでいがみ合ってはいるけれど、
もともと家族じゃないか!
いまは、たまたま喧嘩しているだけの家族じゃないか、
ってなメッセージが読み取れるんだな。

さすがは、『アリラン』、『嘆きのピエタ』を監督した巨匠キム・ギドクの脚本だ。
うまいことメッセージが表現されている。

でも、映像面ではもひとつかな、と思うな僕は。
全くの新人監督なので、しょうがないのかもしれないけど、
それにしてももう少しなんとかならなかったのかなあ、とは感じるなあ。

で、ここまでの説明を読むと、バリバリのシリアスものに感じると思うけど、
そうじゃないんだな、この映画。

たぶん、コメディなんだろうね。
たぶんというのは、温厚なおじいちゃんがハリガネで人を殺したり、
聡明なお母さんが銃でサラッと人を撃ったりするシーンもちょくちょくあるというのに、
チームの名前が「ツツジ班」だったり、
金正恩をけなす韓国家族に、工作員家族が「私はけっこう好き」って
切り返すシーンがあったりして、けっこう笑えたりもするからなんだよ。

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これは、劇場で観ていたら困るだろうね。
北や南の工作員も観にきてるかもしれないから
不用意に笑ったり、うなずいたりできないよねぇ。(笑)

で、つまり、怒ったらいいのか、笑ったらいいのかよくわからない
アンバランスなタッチに感じるってわけ。



工作員家族は、ズッコケてるけど人間らしい南の家族と接しているうちに、
だんだんとそれぞれの心の中に “情” が芽生えてくる。
そして、非情を必要とする任務をしくじってしまう。
さらには、良かれと判断してやったことで、とんでもない失態を招いてしまう・・・。

この上、ラストでは、ファミリー・ヒューマンドラマって感じでマジで泣ける。
サスペンス・アクション・コミカル・ヒューマンドラマ??
んー、ますます不思議な味わい。

うん、おもしろいと思うよ。
きわどく、珍しい設定だしね。
東京国際映画祭で、“観客賞” 受賞だからね。





北朝鮮が、今度はミサイルを飛ばしたねー。
まわりの国や中国さえもが、再三やめろと言ったのに。

そりゃ、「要求を呑まないと、水爆の弾頭を積んだミサイルを撃つぞ」って
脅して生活物資をせしめるしかやりようのない国なことはわかるけど、
それにしても、なぜいまなのか、なぜ南シナ海に飛ばしたのか、
なぜ中国の言うことをきかなかったのかが、もひとつわからないなあ。

まあ、この前小競り合いになった韓国に、自分とこの力を示せるし、
日本にはもちろん以前のような支援を要求するメッセージになるだろうし、
ミサイルの飛距離が伸びたことを示すことで、アメリカにも脅しを強化できるだろうし、
アセアン方面へは中国に加担する国があることを示せるだろうしで、
いいこと尽くしだと計算したんだろうけどね。

中国は、ホントに迷惑がっているんだろうか?
北朝鮮とロシアは、冷戦時代の東側から続く数少ない友好国だしね。
表向き迷惑がっといて、実は領土・資源開拓政策は「北朝鮮もロシアも味方なんだぞ」
って脅しをかける、巧妙な作戦だったりしてさ。
まあ、根拠の希薄な悪口はよくないことだけど、そんなふうに勘ぐりたくもなるわさ。



アメリカが、アフガンやイラク戦で使った特殊部隊やネイビーシールズを
韓国に配備しつつあるという噂があるんだよ。
北朝鮮のミサイルがアメリカ本土まで届くということがわかって、
いよいよ軍事的な実行部隊が動き出したのかねぇ?

でもこれは、僕は間違いだと思うなあ。
歴史に学ばなくちゃさー。
これは、朝鮮戦争の時と同じことをやっているだけだよね。
「北 + 中国 + ロシア」 VS 「南 + アメリカ」という対立を再燃させているだけ。

これはさ、本来は、中国、ロシア、アメリカなんかいらないんだよね。
朝鮮半島の「北」と「南」が “家族に戻ればいい” だけだよな。
北と南の確執って、そんなに強いものなんだろうか?
中国 + ロシアとアメリカが仲が悪い、というかドロボー同士が争っているだけで、
ホントは「喧嘩するほど仲がいい」んじゃないのかなあ。



この朝鮮半島の南北問題って、当事者同士で話し合ったって解決なんかしないんだろうな。
もちろん、中国やロシア、アメリカが何を言ったって解決しっこないだろう。
解決しなくなるほどスッパリ分断させた、当の原因だからな。
むしろ、南北統一なんかしないでほしいと思っているのかもしれない。

じゃ、どうやったら南北が一つの国に戻れるんだろう?
ちょっとだけこの南北の喧嘩の仲裁に入って、
仲直りの手助けしてあげられるやつが必要なんだろうね。

そこで提案なんだけど・・・
それって、日本なんじゃないかって思ってるんだよ、僕は。

そりゃ、中国やロシアにしてみれば、「アメリカ側」にしてやられる
ということになるから、黙ってはいられないだろうけど、
日本は韓国や北朝鮮との関係において、たくさんの課題を抱えているわけで、
それらの解決のためにも、南北統一に関わる義務や権利があるに違いないと思う。

その辺を説得材料にして、南北統一に “協力” すべきなんじゃないかな。
「北に独自の制裁を加える」、なんてアメリカの火事場ドロ政策に加担なんてしてないでさ。

良心に則って働けば、朝鮮半島が平和になるだけでなく、
日本にとっても拉致被害問題も、従軍慰安婦問題も、竹島問題も、
在日コリアン問題も全部きれいに片付く
んじゃないの?
その上、健全で強い東アジアの政治・経済づくりの足がかりにもなるんじゃないかな。





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●レッド・ファミリー(Red Family 붉은 가족)
2013 韓国
上映時間:100分
監督:イ・ジュヒョン
脚本:キム・ギドク
原案:キム・ギドク
製作総指揮:キム・ギドク
製作:キム・ドンフ
撮影:イ・チュニ
編集:キム・ギドク、キム・フク
美術:チョン・ヘウォン 、 キム・ジヒョプ
照明:パク・ジソン
視覚効果:イ・ジャンウク
録音:イ・ソクチュン
音楽:チェ・イニョン
衣装:キム・ジナ
配給:ギャガ
出演:キム・ユミ、チョン・ウ、ソン・ビョンホ、パク・ソヨン、パク・ビョンウン、
   カン・ウンジン、オ・ジェム、パク・ミョンシン、キム・ジェロク ほか
受賞:第26回(2013年)東京国際映画祭コンペティション部門 観客賞







“ 春はもうすぐ ” / NSP





“ No.1 ” / 西野カナ





“ イカロスの末裔 ” / キリンジ




あの頃の会いたくない自分 ~ 『フランシス・ハ』


たとえば、キミは27才の女子。
ちょっとした夢を持って都会へ出てきたんだよ。

夢をかなえたい。
大都市なら、やりたいことの就職先なんてなんぼでもあるし、
つなぎのアルバイトだって見つけられる
って思ったんだったよね。

でも、やりたいことをやれる会社に入ったはいいけど、
もう何年も使いっぱしりばかりで、
夢のまわりをうろうろしているだけ。

それどころか、最近の上司のキミを見る目は、
腐ったみかんでも見るかのようだよね。
考えたくもないけど、いつ辞めろと言われるかびくびくの毎日だろ。



この前、キミは彼氏と別れてしまった。
彼氏のベッドで一緒に寝てた時、
「そんな仕事やめちまって、オレと結婚しよう」
なんて言われて、腹が立ったんだろ?

でも、惜しいことしたよなあ。
けっこういいやつだったんだよね。
もうこの先、同じ年頃であんないい人と出会えるのかな。

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キミとルームシェアしてたマリちゃん、
突然、結婚することになったんだってねー。
キミたちって、レズなのかと思っていたよ。

だって、前に合コンした時も、
「よっぽどの男じゃないと、興味湧かなーい。
成功するまで、私たち一緒に暮らそうねー」
なんて言ってたから。

それで、居候してたキミのほうがアパートを追い出された、
というわけか。

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夢をかなえたい、って言ったって、27だしさ、
結婚だってしたいのか、したくないのか?
そろそろ、はっきりしないといけないのかもしれないね。

いまのままだと、良くも悪しくも、どこにも “キミ” がいない。
みんな、“若さ” とか、“大きな夢” とかを脱ぎ捨てて、
キミを置き去りにしていく。

世の中って、“ダメ” を受け入れられないやつが、
“ダメ人間“ の烙印を押されるんだよ。



先月、突然アラスカに行って来るって言ってたけど、
あれは、なんだったんだよ。

で、会社辞めて、新しい仕事見つけたんだって?
よかったじゃん。
新しいカレはできた?
え、好きな人はいるって。

うん、次の自分を創りつつあるんだね。
いちから出直しかあ。
とにかく、おめでとう、
まあまた、いろいろ壁にぶち当たると思うけどさ・・・



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・・・ってな感じの時期ってなかった?
仕事も恋も、なんだか思うようにいかねーな、
英会話学校にでも行って、職でも変えようかなー、なんてこと。

この映画は、そんな、大なり小なり誰でも通り過ぎる、
若者から大人への転機のようなものを描いた作品なんだなー。

主人公の、やることなすことうまくいかないいま。
映画ではちょっと珍しい “ダメ女” を描いた作品。
『もらとりあむタマ子』のアメリカ版、って感じかな。

きれいなモノクロで、ダメ男を描いた『コーヒーをめぐる冒険』と
似てなくもないけど、社会派ではないなあ。
昔のヌーベルバーグ映画の匂いがぷんぷんするねー。

あっちこっちの評で書かれているけど、
主人公の名前 “フランシス” は、
フランソワ・トリュフォーからとったんだろうね。

音楽がかっこいい!

ふふふふ
は? って思わせるエンディングをどう捉えるかは、
キミしだいなんだなー。



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●フランシス・ハ(FRANCES HA)
2012 アメリカ
上映時間:86分
監督:ノア・バームバック
脚本:ノア・バームバック、グレタ・ガーウィグ
製作総指揮:フェルナンド・ロウレイロ、ロウレンソ・サンターナ
製作:ノア・バームバック、スコット・ルーディン、ロドリゴ・テイクセリア、リーラ・ヤコーブ
撮影:サム・レヴィ
編集:ジェニファー・レイム
プロダクション・デザイン:サム・リセンコ
音楽監修:ジョージ・ドレイコリアス
主題歌:デヴィッド・ボウイ『モダン・ラブ』
キャスティング:ダグラス・アイベル
配給:エスパース・サロウ(提供 新日本映画社)
出演:グレタ・ガーウィグ、ミッキー・サムナー、アダム・ドライバー、マイケル・ゼゲン、
   パトリック・ヒューシンガー、マイケル・エスパー、シャーロット・ダンボワーズ ほか
受賞:テルライド映画祭(2012)プレミア上映
   第71回ゴールデングローブ賞
   ミュージカル・コメディ部門 主演女優賞ノミネート(グレタ・ガーウィグ)







“ 水曜日の午後 “ / Stardust Revue




夢まで、ロケット飛ばそうよ ~ 『庭から昇ったロケット雲』


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近年、ロケットづいてんのよ。

映画カッパさんに教えてもらって観た『コンタクト』あたりから始まって、
『ゼロ・グラビティ』、『インターステラー』ときて宇宙気分になっているところへ、
ちょい若おやじさんが、3月にロケットの発射を観に種子島へ行ってきた
っていうもんだから、頭の中がロケットでいっぱいになっていたんだよ。
ちなみに、ちょい若おやじさんは、某国立大学の学生さんで、
JAXSA(ジャクサ:宇宙航空研究開発機構)に就職したい、という夢を持っているそうだ。
(言っちゃった、ごめん)



そうこうしているところで、
この春から大学へ進学したわが愚娘(初登場)から課題のレポートについての相談が。

「民俗学系の博物館って、どこにあるの?ゴールデン・ウィークに、車で連れてって」
・・・だとさ。

つ「おいおい、博物館が先に来るのかい?」
娘「は??」
つ「博物館に行く、のが課題なの?」
娘「そうだよ」
つ「えー?フツーは、“自分の興味のある民俗学的テーマについて
  博物館へ行って調べて、そこで学んだことをレポートせよ“ だろ?」
娘「違うよ。博物館に行って何を見たかレポートせよ、って言ってたよ、先生」
つ「んんんんんん?そんなんじゃ、民俗学と関係ないことレポートするやつが出てくるよ。
  埼玉のリスの分布とか、好きな仏像とか、下駄スケートの種類とか・・・」
娘「んなわけないでしょ、民俗学って決まってるんだから」
つ「んんんんんん、そら先生さ、学生に “民俗学って何かわかってるか”、
  “ちゃんと自分の興味のあるテーマを見つけられるか” を試しているのかも知れないな」
つ「まず、自分で興味のある、探ってみたい民俗学的テーマを見つけてごらんよ。
  それからだよ、行くとこ決めんのは」



・・・ってわけで、数日後、晴れて秩父の「龍勢(りゅうせい)祭」について調べることになったんだよ。
こっちのほうでは、「秩父夜祭」や「秩父の狼信仰」なんかと並んで有名な催しのひとつなんだな。
それで、埼玉県秩父市の吉田という町にある「龍勢会館」という資料館に行ったんだったなー。


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「龍勢」とは、20mほどの竹竿の先に、くり抜いて火薬を仕込んだ松の木の幹をくっつけた、
ロケットのことなんだよ。
ロケットの煙のしっぽを出しながら空を飛ぶようすから、「流星」にひっかけたんだろうね。

秩父にある27流派の “組” が、自慢のロケットを製作して、
10月の第2週目の日曜日に、常設のやぐらから、空高く30本あまりもぶっ放す!

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これは、よくある「鳥人間フェスティバル」みたいな客寄せイベントじゃなくて、
れっきとしたお祭りなんだよ。
フツーなら、27組は神輿を担ぐんだろうけど、秩父吉田ではロケットをぶっ放して
地元の椋(むく)神社に奉納するんだよ。
ほらね、なんだか民俗学的な趣きになって来たでしょ?

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なんで、お神輿じゃなくて、ロケットよ?
いつごろから行われているんだよ?
って聞かれても、そりゃわかんないわー。
それを調べに行ったのさー。

展示物の中にいくつかの起源の説明が書いてあったけど、まあ、はっきりしないね。
これは、町に代々住む人を訪ねて話を聞いたりして、徹底的に調べて
その歴史的かつ現在的な意義と何かへの影響を解明したなら、
そこそこいい論文ができるような気がするなー。



あ、そんなことどうでもいいか。
それで、それやこれやのロケット気分のインプットがあった状態で、
『アクロス・ザ・ユニバース』っていう映画を寝っ転がって観ていたら、
この映画の予告編が入っていたんだよ。

ビビッと来たね!
ロケットだ、ロケットだ、しかも、家族愛のハナシっぽいぞ。
おお、いまのウチにぴったりだぜ!
というわけで、さっそくこの映画のDVDを借りてきて観たのだよ。

前置きがすごく長くなってしまったけど、
娘との楽しい思い出なんてめったにないので、許してちょ。



“ Rocket Man “ / Elton John





<あらすじ>

シンプルなハナシです。

アメリカのテキサスの田舎のほうに、父、母、じいちゃん、息子、娘2人の6人家族がいた。
お父さんのおやじさんの牧場を継いでいるんだよ。

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お父さんは、その昔、軍隊に勤めていて、NASAに宇宙飛行士として配属されていて、
来たるべき日のために訓練をしていたんだな。
お父さんは、子供の頃から宇宙飛行士になりたくて軍に入ったんだよ。
いまは、町の学校で非常勤講師みたいなこともやってる。

それが、お父さんのおやじさんが急に亡くなってしまったせいで、
家業の牧場を継ぐことを決意。
宇宙に飛び立つ夢をあきらめなきゃならなくなるんだよ。
お父さんは、とても家族思いの青年だったのだ。
それは、子供を育てるようになったいまも同じ、という設定なんだよ。


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お父さんは、自分の牧場のかたわらに小屋を作って、
そこでロケットを作っている
んだよ!
どうしても夢をあきらめられなくて、自分でロケットを作って、
それに乗って宇宙へ行こうと決めているのさ!

街の人たち(みんなお父さんの幼馴染)は、あたたかく見守りながらも
「そりゃ、当然無理だろう」と思っているんだけど、
彼はテキサス大学の修士を修了しているし、軍とNASAで働いていた時の知識や技術やコネを活かして、
マジで本格的なロケットを作っていたんだな。

ロケット完成が近づいたある日、膨大な借金の返済勧告が・・・。
何万トンもの燃料を購入しようとしたせいで、強大な邪魔が・・・。
借金を隠していたために、奥さんが、家族が・・・。
一刻も早く完成させて、飛ばさなければ・・・。

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さてさて、お父さんは夢を叶えられるんだろうか・・・。



観始めてからすぐに目頭が熱くなってしまった。
だってさ、“よしよし、泣いてもいいよ” って空気が、ふわーっと漂っているんだよ。
ロケットものと言っても『コンタクト』や『インターステラー』みたいな科学ものじゃなくて、
『フィールド・オブ・ドリームス』みたいなヒューマンものなんだな。

でも、ストーリーの終わらせ方は、まったく納得いかないな、僕は。
ものすごく映像がきれいだし、絶妙な空気感で、
せっかく「くるぞくるぞ、泣くぞ泣くぞ」って見続けられるのに、
終わらせ方がうまくないせいで、涙が引っ込んでしまう。
そのせいで、個人的には “B級” の烙印を押したくなるくらいだ。

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怒っているんじゃなくて、惜しいんだよ。
惜しい、惜しい、惜しい、惜しい、惜しい、惜しい、惜しい、惜しいー!
どどーっと泣かせて、ウチの家族のロケットがらみのいい思い出のひとつになってほしかった。



このハナシをどう終わらせれば、大きな感動を呼んでガツーンとおもしろくなるか、
誰か、グッドアイデアないかなあ?



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●庭から昇ったロケット雲(The Astronaut Farmer)
 ※セルソフトのタイトルは『アストロノーツ・ファーマー/庭から昇ったロケット雲』
2007 アメリカ
上映時間:104分
監督:マイケル・ポーリッシュ
脚本:マーク・ポーリッシュ、マイケル・ポーリッシュ
製作:レン・アマート、マーク・ポーリッシュ、マイケル・ポーリッシュ、ポーラ・ワインスタイン
製作総指揮:J・ガイヤー・コジンスキー
撮影:M・デヴィッド・ミューレン
編集:ジェームズ・ヘイグッド
美術:クラーク・ハンター
音楽:スチュアート・マシューマン
配給:ワーナー・ブラザーズ
出演:ビリー・ボブ・ソーントン、ヴァージニア・マドセン、マックス・シエリオット、
   ローガン・ポーリッシュ、ジャスパー・ポーリッシュ、ブルース・ダーン、
   ティム・ブレイク・ネルソン、ジョン・グライス、マーク・ポーリッシュ、
   サル・ロペス、J・K・シモンズ、ブルース・ウィリス ほか







“ エイリアンズ “ / キリンジ