ゆらゆら草

もう少し感受性を働かせれば、毎日がスペシャルになる。そう自分に言い聞かせて、 いろいろ感じたことを書きとめてみよっと。

奥崎謙三という戦争 ~『ゆきゆきて、神軍』  


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あれは、忘れもしない1987年12月17日の午前11時過ぎ

暗闇の客席が、ゆっさゆっさと揺れ出したんだよ。
数十人の観客が、一斉に騒ぎ出す。
スクリーンの両端に立っている、BOSEだかJBLだかの
スタンドタイプのスピーカーがガタガタ揺れて、片方がバッタリ倒れた。

幸い惨事にはならなかったけど、
十勝沖地震の経験からして、あと3秒揺れが続いたら、
僕は出口に向かって激走していたと思う。

銀幕に写ったその男は、そんなことにはまったくお構いなく
ただ怒鳴り続けていた。



千葉県東方沖地震
千葉市でおよそ震度7、東京都内で震度4。
僕はその時、この映画を観ていたんだよ。
なんで、平日の昼間に映画を観ていたのかは言えない。(汗)

まだ、東京・渋谷の桜丘町にあった頃の「ユーロスペース」
(いまは円山町へ移転)。
思い出せないけど、キャパはたしか50~100人くらいだったかな。
当時は “単館ロードショウ” の映画館、なんて言ってたはず。

名画座とは微妙に違って、リバイバルだけでなく、
「大手の配給会社が商業的な価値から見放したんだけど、
これは映画ファンに紹介せずにはいられない」というような作品や監督を
発掘したり、「ヤバ過ぎて、フツーの劇場では上映できない」
というような作品を喜んで引き受けたりする趣向だな。

そう、いまで言う “ミニシアター” というやつだねー。
ユーロスペースはその先駆けの一つだったんだね。

で、この『ゆきゆきて、神軍』は、
その「ヤバ過ぎて・・・」の部類だったわけだ。
なんせ、あの岩波ホールでさえ上映を断念した作品なんだから。

封切りは、同年の8月1日だったそうだ。
僕が観に行ったのが、その12月17日だから、
なんと4カ月半ものロングランの真っ最中。
結果、7カ月もの間上映し続けたんだそうだ。
しかも、単館ロードショウでだよ。

今年の終戦記念日の前後に、
渋谷の「UPLINK」というミニシアターで、
『ゆきゆきて、神軍』公開30年記念上映と題して
リバイバル上映が行なわれていたみたいだね。

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■奥崎謙三 “神軍平等兵” ~ 正義と制裁を振りかざす狂気

●1920年、兵庫県明石市生まれ。
●1941年3月、岡山連隊に入営(陸軍二等兵)
●1943年1月、独立工兵第36連隊に配属、4月にイギリス領東ニューギニアへ。
部隊は敗走を重ねながら飢えとマラリアに苦しむ。
奥崎は、たびたび上官に暴行を働いて食料を奪取した。
●1944年7月、「GI, Come gun!」と叫び、投降。豪州軍の捕虜となる。
●1946年3月、復員。
引揚船内で復員者の食料を横領しようとした船長に執拗な暴行を加え、
腹部をハサミで刺傷

●1947年3月、鉄工所に就職。
●1951年、神戸市兵庫区にサン電池工業所を開業。
バッテリー商・中古車販売・自動車修理を経営。
●1956年、店舗の賃貸借をめぐる金銭トラブルから不動産業者を刺殺
傷害致死罪で懲役10年。
●1969年、天皇を戦犯と決めつけ、皇居の一般参賀で
「ヤマザキ、天皇をピストルで撃て!」と叫び、昭和天皇にパチンコ玉を発射
暴行罪で懲役1年6カ月。
公判廷では、性器を露出して検事に小便をかけ、判事に唾を吐きかけた。
●1974年、残留日本兵救出の目的でグアムを訪問。
●1976年、『宇宙人の聖書!?』自費出版。
●1976年、皇室ポルノビラ事件。
銀座、渋谷、新宿のデパート屋上から、ポルノ写真に天皇一家の顔写真を
コラージュしたビラ約4,000枚をまき
、猥褻図画頒布で懲役1年2カ月。
●1977年、獄中から参院選全国区に出馬。神軍新聞発行。
●1980年、再度参院選全国区に立候補。
選挙広告の掲載を拒否した朝日新聞社を恨み、社長・渡辺誠毅の襲撃を計画

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●1981年、「天皇に通ずる社会の悪因」として、『田中角栄を殺すために記す』を自費出版
田中に対する殺人予備罪で書類送検。
●1982年、『ゆきゆきて、神軍』の撮影開始
●1983年3月、西ニューギニアでロケ敢行。
●1983年9月、パプアニューギニアへ単独で慰霊行。
●1983年12月、衆院選で当時の兵庫1区から立候補

奥崎謙三 政見放送

1983年12月、衆院選兵庫1区で三度目の立候補。落選

●1983年12月、改造拳銃での殺人未遂事件
当映画撮影中に、自身が所属した部隊で「戦病死」したとされた兵士が、
実は上官命令で終戦後にも関わらず “敵前逃亡" の罪で処刑されたことを突き止める


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元中隊長ほか3名の殺害を決意。12月15日、選挙期間中にも関わらず
元中隊長宅を訪問時に応対したその息子に向け改造拳銃を発砲・傷害
逃亡の後、自首のようなかたちで逮捕。
護送時、駆けつけた報道陣に対し、手錠をかけられた右手を振り上げ、
「ご苦労さん!」と言い放った。

●1986年9月18日、妻のシズミ没。
●1987年9月4日、広島高等裁判所における奥崎の第二回公判で、
この映画の映像が弁護側の証拠として採用され、法廷内で上映
奥崎は原監督に「全く面白くありません」と手紙を出した
のちに殺人未遂等で徴役12年確定。
●1987年9月18日、拘留中に妻・シズミの一周忌として、
虎屋に特製「神軍饅頭」を注文(「神」「軍」の2種焼き印入り)。
ユーロスペースの観客および関係者に配布

●1997年8月、府中刑務所より満期出所。
●1998年、映画『神様の愛い奴』に主演。
●2005年、死去。



この映画は、上記青字の1982年から1983年12月の改造拳銃による殺人未遂事件
までを追ったドキュメンタリー
なんだよ。
しかも、’87年9月の拘留中の出来事は、8月に封切られたこの映画の
興行中に行なわれたこと。

奥崎が、嫌がる相手の家へ強引に押しかけたり、
話の途中で逆上して怒鳴り散らし、暴力を振るったり、
改造拳銃で人を撃ったりするのを記録したこの映画の撮影は、
本物のドキュメンタリーなのか、傷害や殺人の幇助なのか、
監督の原一男の罪が追及
される一面もあったんだよ。
なんせ、この映画が裁判の証拠になったくらいなんだから。

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マーチン・スコセッシ監督は、「誰もこんな映画を作ったことがなかった」、
「誰もこんな映画を観たことがなかった」と言った。
マイケル・ムーア監督は、「私がこれまでに見た最高のドキュメンタリーの
傑作は『ゆきゆきて、神軍』である」と語った。



奥崎謙三は、第二次大戦で
ニューギニアで飢えとマラリアに苦しみながら敗走を繰り返した
千数百名の部隊の一員だった。
そして、ギリギリ生き残った30数名のうちの一人だった。

記録では、復員後に狂暴化したように見える。
自らを “神軍平等兵” と名乗って、
主に、昭和天皇の戦争責任や戦地で行なわれた犯罪、金権政治などを糾弾して
単独で活動を行なっていた
んだな。

やっていることは支離滅裂に見えるけど、言っていることはけっこうまとも。
でも、フツーの活動家やアナーキストと違うのは、
ひとたび悪と決めつけたら、対象の人物を全部殺そうとすることだ。

奥崎の生きる理由は「正義」だったんだと思う。

24時間毎日、いつ敵に撃たれて死ぬかも知れない恐怖、
人肉を食らわざるを得なかったほどの飢え、
毎日マラリアで死んでいく仲間、
上官の理不尽な命令と制裁、
すべてが極限状況の戦場・・・

奥崎はきっと、死ぬか狂うかが永遠に繰り返されるあの戦場で、
この世には、神も仏も天皇もない、政府も個人もない、男も女もない、
信じられるものは自分か敵か、正義か悪か、生か死か、怒りか沈黙か
しかないと悟ったんだろうな。

すべてが狂ってしまっている戦場で、
自分の正義にしがみつき、そうでないものを撃滅する(殺す)ことだけが
自分が発狂せず、生きていける術
だと胸に彫り付けてしまったんだろう。

奥崎謙三という人は元々、日本という国や天皇陛下や友人を
とても愛していたんだと思う。
でもその気持ちは、戦争という狂気に裏切られたのだ。





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●ゆきゆきて、神軍(ゆきゆきて、しんぐん)
1987 日本
上映時間:122分
監督:原一男
企画:今村昌平
製作:小林佐智子
製作協力:今村プロダクション ほか
撮影:原一男
編集・構成:鍋島惇
録音:栗林豊彦
演出助手:安岡卓治、大宮浩一
撮影助手:高村俊昭、平沢智
演出協力:徳永靖子、三宅雄之進
選曲:山川繁
効果:伊藤進一
ネガ編集:神谷編集室
タイトル:日映美術、8 - 8光映、にっかつスタジオセンター、IMAGICA
出演:奥崎謙三、奥崎シズミ ほか
受賞:日本映画監督協会新人賞
   ベルリン国際映画祭カリガリ映画賞
   毎日映画コンクール日本映画優秀賞、同監督賞、同録音賞
   報知映画賞最優秀監督賞
   日本映画ペンクラブベスト1位
   キネマ旬報ベストテン2位(読者選出1位、読者選出監督賞)
   ブルーリボン賞監督賞
   ヨコハマ映画祭ベストテン1位、同監督賞
   おおさか映画祭特別賞
   くまもと映画祭特別企画製作賞
   映画芸術ベストテン1位







♪ Anarchy In The UK / Sex Pistols





♪ With A Gun / Steely Dan





♪ Surf and-Or Die / Walter Becker


Steely Dan 消滅! ウォルター・ベッカーが、9月3日に死んじゃってた!!
これまで、ひねくれた音楽をたくさん聴かせてくれて、ありがとう。 R.I.P. 合掌



◎9月15日朝6時過ぎ、北朝鮮がまた北海道越しにミサイルを飛ばした。
 奥崎謙三が生きていたら、どんな行動に出るんだろうな?




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ロックミュージシャンのドキュメンタリー映画。



主人公の名前は、ロドリゲス。

ネイティブアメリカン系のアメリカ人。

1960年代後半の不況の真っただ中のデトロイトの片隅を漂っていた。

そう、漂っていた。

45年前の彼を知っている人間は、彼を浮浪者だと思っていたんだから。



彼はビルの解体工事の仕事をしながら、地元のライブハウスで歌っていた。

景気後退で希望がシュリンクしつつある街の片隅で、打楽器のようなギターの音に載せるものは “嘆きの詩” だ。



貧困や、貧困から生まれる犯罪や、不当な管理社会などへの嘆きと罵倒。

ロドリゲスの歌は、狭くて不幸な街の人々の胸を打ち続けた。



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大物プロデューサーに拾われ、彼はメジャーレーベルからレコードデビューした。

2枚リリースしたアルバムは、まったく売れなかった。



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ボブ・ディランに似ていると言われるが、それはかなり違う。

もっと、エッジが立っているのだ。

静かだけど、触れると手を切りそうな心の叫びは、鋭利すぎてアメリカに受け入れられなかった。



ロドリゲスの歌と名前は、アメリカに広まることはなかった。

知っている少数の人たちの脳裏には “自殺” と記され、生きていた時の記憶も消えつつあった。





ある音楽ジャーナリストが、不思議な現象に目をとめた。

ロドリゲスのレコードとCDが、南アフリカで売れているという!



アメリカで6枚しか売れなかったレコードが、どうやってアフリカ大陸に渡ったのだ?

アパルトヘイト時代に、発禁になりながらも爆発的に売れたという。

この40年で100万枚以上も売れているのだ。

アメリカでの数字とはわけが違う。

人口や経済力で計ると、とんでもない数字だ。



ロドリゲスの歌は、アパルトヘイト反対を掲げる音楽ムーブメントのバイブルになっていた。

本人が行ったこともない国で。



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“シュガーマン” を愛してやまない、ヨハネスブルグのレコード店店長



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ロドリゲスの版元、サセックス・レコーズ元社長。著作者に無断で南アのレーベルに版権を売ったのか?



彼のレコードを出版してる南アのレーベルは、どこから版権を買ったのか?

それとも海賊版なのか?

作者が取るべき印税はどこに支払われているのか?





調べ着いたところには、驚愕の事実と大きな感動が・・・。



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アメリカのロックはまやかしもんだ。

本物のロックは南アフリカにある。

1994年、アパルトヘイト撤廃。

2013年12月5日、ネルソン・マンデラ死去。

ロドリゲスの歌が売れているうちは、南ア国民の幸福はまだまだ遠いところにある、と僕は思う。






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●『シュガーマン 奇跡に愛された男』(Searching for Sugar Man)
2012年 スウェーデン、イギリス
上映時間: 86分
監督:マリク・ベンジェルール
製作:サイモン・チン
製作総指揮:ジョン・バトセック
音楽:ロドリゲス
撮影:Camilla Skagerstrom
編集:マリク・ベンジェルール
配給: ソニー・ピクチャーズ・クラシックス(米)、角川映画(日)
受賞:アカデミー賞 長編ドキュメンタリー映画賞
   英国アカデミー賞 ドキュメンタリー映画賞
   英国インディペンデント映画賞 外国作品賞ノミネート
   放送映画批評家協会賞 ドキュメンタリー映画賞
   シカゴ映画批評家協会賞 ドキュメンタリー映画賞ノミネート
   ロンドン映画批評家協会賞 ドキュメンタリー映画賞ノミネート
   ワシントンD.C.映画批評家協会賞 ドキュメンタリー映画賞ノミネート
   ロサンゼルス映画批評家協会賞 ドキュメンタリー映画賞次点
   トロント映画批評家協会賞 ドキュメンタリー映画賞次点
   ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞 ドキュメンタリー映画賞
   全米製作者組合賞 ドキュメンタリー映画賞
   ダーバン国際映画祭 観客賞(ドキュメンタリー部門)
   サンダンス映画祭 ワールドシネマ ドキュメンタリー部門 観客賞
   ワールドシネマ ドキュメンタリー部門 審査員特別賞
   ワールドシネマ ドキュメンタリー部門 審査員大賞ノミネート
   ロサンゼルス映画祭 観客賞(ドキュメンタリー部門)
   モスクワ国際映画祭 ドキュメンタリー映画賞




安倍総理が、去年(2013年)の12月に靖国神社を参拝して問題になったよね。
いったい、何が問題なんだろう、って思わない?
特に、中国や韓国の人たちにとって、何がそんなに問題なんだろうって。
いい機会だから、ここに簡単にまとめておこうと思う。

だいたい、靖国神社参拝について問題にされるのは、下の5つの点だね。

① 信教の自由
憲法第20条第1項で、日本人は誰でも自由に信教できることが保障されているんだね。
一般国民でも、政治家や官僚のような公人でもだよ。
逆に、信教を誰からも強制されないことも保障している。
つまり、総理大臣だって靖国神社を参拝したっていいんだね。

② 政教分離
同じく憲法第20条には、「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」
と書かれているんだね。
これは①と相反していて、総理大臣の参拝が「国なのか、個人なのか」という議論を呼ぶ元なんだよね。
だから、公用車を使わず、大臣を従えず「個人的に参拝した」という総理も出てくるんだね。

でもね、「中国や韓国の人たちにとって」という観点で言えば、
そんなことはどうでもいいことだよね。
信教が自由でも不自由でも、政教分離でも一致でも、
どっちでも同じように中国や韓国の人たちは反発するはずなんだから。

③ 歴史認識・植民地支配
これは、「靖国神社は戦争を肯定しているか否か」の判断に関わる、
一番の問題じゃないかと僕は思う。
中国や韓国の人たちの感情を逆なでして、外交の摩擦なども生む問題だということ。
でもね、僕は感情の問題じゃないと思うけどね。

④ 戦死者・戦没者慰霊
日本には戦死軍人に対する公的な慰霊施設がないらしいんだね。
千鳥ヶ淵があるけど、あれは第2次大戦限定だし、身寄りのない遺骨用なんだね。
だからって、墓でない靖国神社をそれにしていいのか、そもそもフツーの慰霊施設なのか、
ほかに作るべきなのか
、なんてモメてる。

でもね、これも僕は “問題” とはあまり関係ないと思ってる。
だってね、別に慰霊施設を作ったからって、嫌がる中国人や韓国人はいるだろうし、
それでも靖国を参拝する総理大臣は出てくるはずだから。

⑤ A級戦犯の合祀
A級戦犯の定義について議論があるみたいだけど、問題はそこにないと思う。
じゃ、C級戦犯はどうなんだ?一般の国民は何級戦犯なんだ?ってことでしょ。
そんなことで、靖国神社の意味が変わるものでもないっしょ。



・・・てなわけで、対外的には主に③が問題なわけだ。

それについて・・・

日本は、「国のために戦って亡くなってしまった人の霊を慰霊しに行って何が悪いのだ」、
「戦争のヒーローを崇めているのではない、二度と悲惨な戦争が起こらないように祈っているのだ」、
「アメリカの首相だって、アーリントン墓地に行くだろう」
って説明する。

それに対して中国や韓国は、「靖国神社の参拝は慰霊ではない、戦死者を崇めているのだ」、
「兵士を崇め、称賛し、戦争を肯定し、次の戦勝を祈っているのだ」、
「いまのドイツの首相がナチス将校の墓を拝みに行くか?
戦争責任というものをまったく反省していないではないか」
と責め立てる。

ここまできたらもう、ハナシは平行あるのみだよね。
だって、日本はこう言う、でも中国、韓国はそれを信じない、ということだからねー。



こういう行きづまりの時、「ホントはどうなんだろう?」って思う人には、
この映画(ドキュメンタリー調)は、考えるヒントをくれると思う。

監督が中国人だからもちろん、
「靖国参拝は、軍国主義の正当化」というスタンスで映画が作られているんだけど、
日本人は、そういう一方的なパンチを受けながらも、
客観的に物事を判断できる人種だと、僕は信じている。
それが、近所の国の人には真似のできない日本人の品格であり度量なのだ、
と自分に言い聞かせてこの映画を観たんだよ(2度目)。(笑)



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この映画のポイントは、この日本刀にあるんだよ

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思い切り右翼団体みたいな人が参拝に

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元軍人なのかなあ

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昔は、戦地に行く前に祈祷することもあった

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現職自衛隊員も

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思い切り軍人姿の人も

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なるほど、合祀名簿からはずしてほしい人たちもいる

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戦没者に贈られる勲章状

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A級戦犯ってなんだろう?一般の国民は何級戦犯?



じゃあさ、この映画が言うように
「靖国参拝は、戦死者を崇め称賛し、軍国主義を正当化するもの」ということで
現状を考えたらどうなるだろう?



日本の言う「国のために戦って亡くなってしまった人の霊を慰霊しに行って何が悪いのだ」、
「戦争のヒーローを崇めているのではない、二度と悲惨な戦争が起こらないように祈っているのだ」、
というのはウソだよね。

実際、靖国神社というのは、
「戦争に行って死んだら神になる。靖国神社に祀られて、天皇陛下でさえ親拝にくる」といって、
国民が戦争に行く、死をもいとわずに戦う、意思をモチベイトする機関
だったんだね。

それをいまでも美学としてとらえている人たちがいて、
「日本は敗戦したけど、戦死者を称え、崇め、
次に戦うことになった時には武運をもらって必ずや勝とう」と思っているんだよね。
でも、これは「戦争をやりたい」という意味とは違うけどね。

その人たちって、けっこう強力な自民党のバックアップ団体だったりするから、
自民党の総裁は少なくともポーズだけでも靖国参拝をするんだよ。
つまり、自民党にとっては、重要な “政治カード“ の一枚なんだね、小泉総理の時までは。



じゃ、中国や韓国が言ってることはどうだろう?
「靖国参拝は、戦死者を崇め称賛し、軍国主義を正当化するもの」だとしたら、
何だといいたいのだろう?

そりゃ、反省してるのか?と言いたくなるだろうけど、
国を挙げて何十年も日本軍の悪さを教育したり、
未来永劫忘れちゃならないと臥薪嘗胆するのはなぜなんだろう、って思わない?
それは、これも中国や韓国の重要な “外交カード” の一枚だからなんだね。

「円借款」とか「ODA」という言葉を知ってるよね?
日本は敗戦後、罪滅ぼしするみたいに、アジアの国々に経済支援や技術供与を行ってきたんだな。
特に中国や韓国に対する経済的な支援は膨大で、中国へは累積6兆円以上、
韓国へは累積2~3兆円にもなるんだよ。
このお金は低利または無利子の貸付なんだけど、返さなくていいお金もずいぶん含まれているんだ。
また、技術供与については金額に換算するととてつもない金額になるらしいし。
韓国へは、1965年の「日韓基本条約」で定められた戦後賠償が、
現在の金額に換算して1兆800億円支払われているんだよ。
この額が、まだまだ発展途上だった中国や韓国にとって、
どのくらい大きな額だったのかは大雑把に想像してもわかるよね。

これは、“戦後の罪滅ぼし” という暗黙の了解のもとに行われてきたことだよね。
だから、中国や韓国はこの利益をもたらす「暗黙の了解」を忘れたくないわけだ。
けど、そういう援助を日本から受けていることを自国民には知られたくない。
だから、日本の戦争責任を表沙汰にして “憎しみ” として教育しているんだね。
そうすればおまけに、日本に負けるな、という国家発展のためのモチベイションにもなるし。
国に感情を利用されてかわいそうなのは、中国や韓国の国民ばかり、だと思うな。
未来永劫、日本に憎しみを持ち続けることにどんな目的があるのか、
考える人はいないんだろうか。

でもね、日本政府は僕みたいに恩着せがましいことなんて言わないよね。
ここにも日本人の品格の高さが窺えると思うけどね。
同じ儒教がベースの国なのに、中国や韓国には、
「もう、物乞いみたいなみっともないことはやめようぜ」と言い出す人はいないんだろうか。

小泉総理の時、中国の経済成長は著しく、日本の経済は傾いているというわけで、
中国へのODAの一部を打ち切ったんだよね。
そうしたらいきなり、靖国参拝への批判や教科書問題が勢いを増したんだよ。
それで、なんで中国が「日本の戦争責任は未来永劫」と言いたいのか、
一瞬浮き彫りになったんだけどねー。



つまり、日本政府も中国・韓国政府も、政治的・経済的に利益を得るためのカードとして
靖国神社参拝を利用しているんだよね。
純粋に憎んだり、謝ったりしている国民感情は、目的もわからず利用されているだけ。



この映画は、小泉元総理の退任の後に作られた作品だよ。
映画のメッセージはもちろん、「靖国参拝は軍国主義の正当化で、やってはいけないこと」。
その目的は、意図していなくても構造上結果的に、
「日本の戦後賠償を未来永劫続けさせる」ということに違いないわけ。

でもね、現職の安倍総理の靖国神社参拝の強行は、
小泉元総理の時とは全然意味が違ってきてる
よね。
だから、この映画もいま観ると封切り間際の頃とはメッセージが違って見える。
もう、カードの切り合いじゃすまなくなっているんだな。
ただ「靖国神社参拝はいけない」というだけでなくて、
もっと深刻ないろんなことが見えてくる・・・。

そもそも、自民党総裁が、支援団体の一部のナショナリストへの
ポーズのために参拝をするのとは意味が違う。
だって、安倍総理自身がナショナリストなんだから。
「場合によっては、我々は戦争をやりますよ」と宣言しているようなもんだよね。

僕も、日本が自分の意思で防衛的な戦闘をできる軍隊を持つべきだと思うし、
もっと国民が愛国心を持つべきだ、とも思っているんだけど、
それは、軍国主義になりたいと言う意味ではなくて、“まともな国にしたい” という意味。

日本は、先進国の中でも極めて変わった国なんだよね。
共産主義国や軍事国家のすぐそばにありながら、軍事力も弱小で、
自身の意思で防衛的な戦闘もできないなんて。

まあ、GHQ以降、アメリカの戦後統治のもとにあるんだから仕方がないけど、
日本は両翼をとっぱらった飛行機、飛車&角抜きの国際政治をしている
とっても変わったアンバランスな国なんだ、ということ。
戦争をしたいという意味じゃなくて、まともじゃないということ。

中国や韓国の要人も、小泉総理の時とは違って、本気で戦闘体制を整えるつもりなんだ
ということを感じている
だろうと思う。
それは、本気で戦争をやる、という意味ではなくて、
両翼の揃ったジェット機として、日本が政治的にも経済的にもアジアにおいて
イニシャティブをとって、有利に利権を獲得するようになるに違いないという意味だ。
外交政治は、国益追求が目的のすべてだからね。
国民は、「日本が刀を持って攻めてくる」と思っているかもしれないけど。

最近のアメリカの民主党の政治を見ていると、
米軍基地問題やTPP問題についての自分勝手さが目立っていて、
政治的にも経済的にも、日本を尊重しているんだろうか?
という疑問が湧いてくるなあ。
日本はもうアメリカに頼って生きるのはやめたほうがいいのかもしれない
という気がしてくる。

安倍総理が靖国参拝をした時点では、アメリカと
「日本やアメリカの国益のマイナスになるから、靖国神社参拝はしない」
という約束になっていた
らしいね。
その共通認識を破ったから、アメリカは “失望(disappoint)“ したんだよ。

アメリカが軍備配備の検討や軍事演習をしようとしている矢先で、
中国とのトップ会談も控えたタイミングだったよね。
安倍総理は、アメリカの民主党がキライなのかもしれないね。
軍産複合体の代表である共和党が好きなのかもしれない。
結果、「アメリカの言いなりにはならない」という宣言をぶちかましたカタチにもなったんだね。

そんなことをやったり、憲法9条の改正を独断で突っ走ったりで、
自民党内でも、安倍総理は “危険人物化” しつつある。

僕は、安倍総理の “自主独立” 的な方向性には反対ではないんだ。
政治的にも経済的にも軍事的にも、いち独立国としての方向に向かったほうが自然だと思うからだ。
それは、決して軍国主義国家になりたいという意味ではなく。

でも、安倍さんがどこまでナショナリストなのか知らないし、
「特定秘密保護法案」を強行的に議決させたり、「東京の経済特区化」を進めていて
アメリカに迎合的なのか反抗的なのかもよくわからない。
アメリカが統治国の日本の先行きをどう考えているのかもわからない。
中国や韓国、台湾やその他東南アジア諸国がどう感じて、
どういう行動を起こすのかも想像できない。

だから、しっかり今後の外交情勢を見極めていかないといけないな、
って自分に言い聞かせている。

そんなことを考えるきっかけになった映画だなー、この映画は。



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●『靖国 YASUKUNI』
2008年 中国、日本
上映時間:123分
監督:李纓
製作:張会軍、胡雲、蒋選斌、李纓
製作総指揮:張雲暉、張会軍、胡雲
撮影:李纓、堀田泰寛
編集:李纓、大重裕二
配給:ナインエンタテインメント、アルゴ・ピクチャーズ
公開:サンダンス映画祭
   ベルリン国際映画祭
   香港国際映画祭


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