ゆらゆら草

もう少し感受性を働かせれば、毎日がスペシャルになる。そう自分に言い聞かせて、 いろいろ感じたことを書きとめてみよっと。

練馬に蕎麦あり、日本に野中あり ~ 『玄蕎麦 野中』  



僕は行ったことがなかったんだけど、
2008年頃まで、練馬区(東京都)に「田中屋」という蕎麦屋があったんだよ。
なんでも、江戸蕎麦の店では東京一ではないか、とすごい評判で、
「翁」の高橋名人も一目置いたらしいという店。

練馬の「田中屋」は、1968年に創業。
のちに、銀座と赤坂に支店を作って、
経営者が変わって「明月庵 田中屋」と店名を変えて営業を継続していた。

その後、練馬の本店だけは、惜しまれながらも2008年5月に閉店したというわけ。

いまは、「明月庵 ぎんざ田中屋」となって、
中央区銀座に2店と、豊島区池袋の西武百貨店に1店を営業しているようだね。

練馬本店の閉店に際しては、経営者と現場の職人が経営方針でもめた、
といういきさつがあるそうだから、実質的に、名店 練馬「田中屋」はそこで終わった、
と捉えていいんじゃないかな。



この『玄蕎麦 野中』は、
経営者が変わる前の練馬「田中屋」で長年修行を続けてきた野中和久さんが、
1992年に暖簾分けで、練馬区の中村橋で始めた店なのだ。
当時は、「中村 田中屋」という店名だったんだって。

それから10年経った2002年に、いまの『玄蕎麦 野中』に店名を変えたとのこと。
練馬「田中屋」の師匠が亡くなったのか、引退したのか、
経営者が変わるタイミングで縁を切ったのか、商標が使えなくなったのか、
それとも、名実ともに独立したということなのか、

なんだか憶測がぐるぐるしてしまうよなー。

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あの練馬『田中屋』のご店主は、いまでも蕎麦屋をやっていた!
●『たなか』
東京都西東京市ひばりが丘1-15-9
042-424-1882
11:00~15:00(LO14:30)
ランチ営業、日曜営業
定休日/火曜・第三水曜日(但し祝祭日は営業)
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この店は、その名店 練馬「田中屋」の技と味と思想を継承している、
いやいや、はるかに凌駕しているとのウワサがバリバリで、
開店から21年も経っているのに、いまだに平日でも行列のできる店だそうだ、
ということで、よっしゃ、行ってみるべー、と行ってみたんだよ。



中村橋、というのは、東京の西武池袋線の快速電車の停まらない小さな駅の名前。
駅からは、「中村橋」からも「練馬」からも、すげー遠い。
歩いて、20分くらいかかるかな。
しかも、おもいっきり住宅地だから、車で行ってもどこに駐車したらいいのか困るし。

車も人もあまり入って来ない静かな住宅街、
だのに『玄蕎麦 野中』のまわりだけは人だかり。
連休中とはいえ、混雑を避けるために午前11時ちょい過ぎに行ったのにさー。
入口の外に並んで、20分くらい待たされてしまった。ちぇっ



待ってる間に、写真撮ったれ、撮ったれ・・・

000玄蕎麦野中_塀

お店の誰かが作ったもんなんだろうね、店の回りの塀にはめ込んである

001玄蕎麦野中_ガス灯

正面のマンションが写り込んじゃって見えずらいけど、これはガス燈だねー、珍しい!

002玄蕎麦野中_電動石臼

行列に並んでいても、電動石臼が回っているのが見える。9月に行ったので “夏新” だ

聞けば、ココんちは、北海道産の “夏新” から始めて、茨城、福島、長野など
それぞれの収穫期に “玄蕎麦”(=蕎麦殻が付いたままの蕎麦の実)を仕入れて、
低温倉庫に貯蔵して置く
んだったさ。
それを品種を混ぜずに、その日に必要な分だけ出してきて、
回転数の異なる2台の電動石臼で挽いてブレンドしたものを「せいろ蕎麦」に使うんだそうだ。

蟻巣(アリス)の田舎蕎麦」というのは、文字通り蟻の巣のような小さな穴が
たくさん開いた “蟻巣石” というのを使った手動の石臼
で挽いた粉で打った蕎麦のこと。
巣穴が摩擦熱を逃がして、蕎麦の風味を損なわないのと、
粒が不揃いになって野趣あふれる粉ができる特徴があるらしいんだな。
1日10枚限定!手間がかかるんだろうねー。

「淡い緑の粗挽蕎麦」というのは、蕎麦殻を脱穀した実(丸抜き)のうち、
黄緑色の濃いものだけを選別して、粗挽きにして打った蕎麦のこと。
これも、1日10枚限定だっ!

玄蕎麦で仕入れるということは、蕎麦殻を脱穀するのも自分でやるということだよね!
大変な手間がかかるんだろうけど、そうしたほうが美味しいから脱穀にもこだわるんだろうね。
だから、店名に「玄蕎麦」という言葉を冠しているんだなー。



003玄蕎麦野中_外観

004玄蕎麦野中_暖簾

入口には、蕎麦色の暖簾が・・・



順番がきて、いざ突入!
着席して店内を見回してみると・・・
入ってすぐ左に帳場があって、右手には2人掛けのテーブルが4つかな。
左面はすべて上がりになっていて、中で繋がっているんだけど2つの式台があるという造りだ。

中には、4人掛けのテーブルが5つくらいあるのかなあ。
一番奥の小部屋は、茶室みたいな屈んで入る引戸が設えてあるねー。
(中でつながっているので、屈んで入る必要はない)

店内正面奥には、「坪庭」が!

ディテールが凝っているんだけど、極めて上品。
野の花を使った生け花、坪庭、蔓で編んだ籠に活けられた花、禅味な感じの襖絵、
大袈裟でない欄間の飾り、ひなびた感じの格子窓・・・
これは、僕が知っている(2013年11月10日現在)和づくりの蕎麦屋の店内では、
間違いなくナンバーワンだ!
すばらしい!!



005玄蕎麦野中_黒豆茶

同行2名で、右手の2人掛けのテーブルに着席。
すぐに出てきたのは、「黒豆茶」だねー。
たいがいは蕎麦茶が出てくるけど、なんか、ヘルシーな感じでうれしい驚き。
軽いにがみとほんのりした甘味があって、美味しい!

雰囲気があまりにもいい感じなので、よし、真っ昼間だけど、酒でも飲るかあ!
ってわけで、酒メニューをチェック。

006玄蕎麦野中_酒メニュー

地酒の品書きは、僕が不勉強なだけかもしれないけど、かなりマイナー系では?
種類が多くないので、とりあえずどれでも試してみたくなるから不思議だね。

007玄蕎麦野中_ビール

・・・と言いながら、なははははー、結局っビールじゃん。
そうそう、この日は9月とはいえ、暑い日だったのだ。

008玄蕎麦野中_お通し

お酒を頼んだら一緒に出てきたのがこれ。
いわゆるお通しとはちょっと違うね。
お酒を頼まなければ、何にも出てこないんだから。

蕎麦屋って、だいたいお酒を頼むと、こういうお通しみたいな
ちょっとしたツマミを出してくれるよねー。
何にも出てこない店や、お酒と一緒に一品料理を頼むと出さない店も最近はみるけど、
客にとってはけっこううれしい心遣いなんだよなー。

ココのは、その日はたぶん「クラゲの梅かつお和え」だったと思う。
ビールには合わないツマミだけど、こんなに凝った無料おツマミに文句を言っちゃ、
バチが当たるというもんだぜ、ハチよ。

ビールをもう一本飲みたいので、一品料理もたのんでみることにしたよ。

009玄蕎麦野中_一品料理メニュー01

「黒豆揚げ出し湯葉」以外は、江戸蕎麦の超定番だねー。
「焼き海苔」は、ありそうでない定番。
「淡い緑のそばがき」も気になるねー。

010玄蕎麦野中_一品料理メニュー02

オーガニック大豆と天然水と天然にがりにこだわった「こだわり豆腐」というのは、
ココの名物のひとつらしいねー。
「岩石揚げ」って、どんなんだろう?
たまーにあるけど、魚の干物もちょい珍しい。
まあ、特に考えもしないで、江戸蕎麦らしい「海老の踊りかき揚げ」にしてみた。
ちょっと、“踊り” というのが気になるけど。

011玄蕎麦野中_箸皿

これは、箸を載っけて出てきたトレイだなー。
なんと、ロイヤル・コペンハーゲン!
しかも、通し番号がついているから、特注品かなー?
凝ってるねー!

012玄蕎麦野中_箸皿アップ



013玄蕎麦野中_海老の踊りかき揚げ

はいはい、「海老の踊りかき揚げ」が出てきましたあー!

014玄蕎麦野中_海老の踊りかき揚げアップ

スカッ、と揚がっているねー。

015玄蕎麦野中_海老の踊りかき揚げ崩し

サクサクの衣を崩しながら食べていくと、
このメニューの名前の “踊り” の意味がわかった気がする。
むき海老がけっこう入っていたのだ。
4つかな?3つかな?
揚げの中心にこじんまりとしているんじゃなくて、
大き目のやつがポンポンポンと踊っている感じ。
これは、お得な気分!

でもね、このかき揚げの一番のポイントはそこじゃないんだなー。
それは、食べればわかる!
それは、うまい!ということなんだなー。
海老がぷりぷりしてる、なんてあたりまえでしょ?
海老にも衣にも、微妙に味をつけているんだろうなー。
口に運ぶたびに海老というか、磯というかの香りがふんわりと漂うし、
旨味がじわーっと口に広がるのだ。

僕はこれみたいな江戸蕎麦式のかき揚げを、あっちこっちでよく食べるんだけど、
これほどうまいのは、いまんとこなかったなあ。

つまんだり呑んだりの間に、蕎麦を注文。

016玄蕎麦野中_蕎麦メニュー01

017玄蕎麦野中_蕎麦メニュー02

僕は、1日10食限定の「蟻巣(アリス)の田舎蕎麦」、
連れは「海老天とろろ」を。
気になるメニューがけっこうあるっしょ?
全部試してみたくなるよねー。

そうそう、写真を撮り忘れちゃったけど、温かい蕎麦のメニューも豊富。
天丼もあったよ。



018玄蕎麦野中_蟻巣の田舎蕎麦

きたきた!「蟻巣の田舎蕎麦」。
器が凝り凝り!葱があさつき!大根おろしもついている。

019玄蕎麦野中_蟻巣の田舎蕎麦寄り

凛とした麺の姿!盛りもいいね!

020玄蕎麦野中_蟻巣の田舎蕎麦アップ

芸術的だねー!
田舎蕎麦といっても、色は全然黒くない。
よくある、やや緑がかったグレーだよね。
ホシ(蕎麦殻のかけら)がまばらに見えるので、
蕎麦殻がついた状態から全部挽いた全層粉じゃないことがわかる。
白っぽい粒と滑らかなグレーの部分が見られるので、
別々に挽いた粗挽き粉と微粉をブレンドして、
さらに挽いた蕎麦殻を加えたものじゃないかなー。

もちろん、十割だよ。
うーん、ここまでやる店が日本でも他にあるかあ?

021玄蕎麦野中_蟻巣の田舎蕎麦箸上げ

そんなんだから、田舎蕎麦といっても、全まったくごわごわ感やもそもそ感がないんだよ!
しかも、細打ちだから、かなりつるーっといける。
カドも立っていて、喉越しもバツグンだー。
バカみたいにコシが強いということがなくて、
噛むと、粗挽きの穀物フレーバーと蕎麦の味が口の中に広がる。

これは、いわゆる “田舎” じゃないな。
「粗挽き」と「微粉」の良さを足して、蕎麦殻で香りをつけて、3で割らない芸術作品だ。
やや粗挽きに寄った仕上がりだね、“もっちり系の粗挽き” とでもいうのかな。
これは、老舗名店にもニューウェイブ店にもない蕎麦だなー。

022玄蕎麦野中_蟻巣の田舎蕎麦箸上げアップ

本みりんと、ざらめと、ヒゲタの限定蔵出し醤油と、上質にとった出しが、
どれが出っ張るということなくまとまった辛汁とあいまって、
つるつる手繰りが止まらなくなっちゃった。

<銘品種>+<玄蕎麦保管>+<石臼手挽き>+<粗挽き粉&微粉&ホシブレンド>= 絶品

蕎麦好きなら、この公式を覚えておくといいんじゃないかなー。
いま考えられる、ベストの蕎麦が食べられると思うよ。



023玄蕎麦野中_海老天とろろ

ほらほら、かわいいっしょ!
これが「海老天とろろ」。
僕は、海老のおか天が別盛りになった、とろろつけ蕎麦が出てくるんだと思ってたんだけど、
こんなお洒落なぶっかけ蕎麦なんだねー!

024玄蕎麦野中_海老天とろろアップ

麺は「せいろ」の麺、常陸秋の微粉のはず。
とろろは、もっこりねばっこい自然薯だ。
ちなみに、このお皿もロイヤル・コペンハーゲンの通し番号つき!
HPの写真を見ると、マイセンの時もあるみたいだね。



025玄蕎麦野中_蕎麦湯

ふーっ、めーーーーーーーーーーっちゃ、うまかった!!
ごちそうさまでした。
隅から隅までこだわり凝り凝りの蕎麦屋、「星みっつですーー!」。

この時は9月だったから、キタワセの “夏新“ と常陸秋の貯蔵玄蕎麦だったけど、
いまはもう、各種 “秋新” が出揃う頃かな?
また、すぐにでも行たい店だなー!!



026玄蕎麦野中_坪庭

●『玄蕎麦 野中』(げんそば のなか)
東京都練馬区中村2-5-11
03-3577-6767
11:00~15:00(LO1430ころ) 17:00~20:00
ランチ営業
定休日/月曜、第3火曜 (月曜日が祝日の場合営業、翌火曜日が休業)、
    火曜日午後(11時~14時半のみ営業、火曜日が祝祭日の場合は平常通り営業)


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