ゆらゆら草

もう少し感受性を働かせれば、毎日がスペシャルになる。そう自分に言い聞かせて、 いろいろ感じたことを書きとめてみよっと。



電子書籍の衝撃

●『電子書籍の衝撃』 本はいかに崩壊し、いかに復活するか?
佐々木 俊尚(ささき・としなお)
2010年
ディスカヴァー携書(株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン)



「本がなくなるって?そりゃ困るなあ。タブレットって固いから、ベッドで読んでて
寝ちゃって顔に落ちたら痛いよな」って、そういう問題じゃないス。

本が全部電子化されたら、紙屋さんは儲からなくなるし、印刷屋さんも減収、
トーハンや日販もいままで通りにはいかなくなるし、本屋さんはどんどんなくなるし、
出版社や編集者はどうなるんだろう、ってな大問題なんだよ。

逆に、著作者は印税収入が増えそうだし、
読者は書籍を安く買えるようになるかもしれないな。

それより、作る側は大がかりな先行投資が不要になるから、
誰でも本を出版できるようになるよね。
これは、革命的!

反面、どんな内容でもどんどん発刊されるから、
何が正しくて何が間違っているのか判断が難しくなるし、
ネットって、情報がフラットに大量に流されるから、
僕らは何を参考にして書籍を選べばいいのかわからなくなるね。
間違った情報や、つまんない物語を買ってしまう可能性が高まるのかなあ。

これまでは、出版物って、書く人がいて、なんとか賞などの評価システムがあって、
編集者などの納得があって、出版社や流通や小売店の理解があって、
何人もの評論家や作家のエールがあって・・・
たくさんの人の「これは出版の価値がある」という太鼓判を押されることで
社会的にオーソライズされて本になってきたわけでしょ?
書店に並んでいるだけで、なんらかの存在価値があるんだ、ということが肌でわかったんだね。

その過程がごそっとなくなるか簡略化されるから、ネットの画面に本が並んでいても、
なんだかさっぱりわからない、ということになりそうだね。
ネットの「ランキングもの」や「比較もの」、「レビューもの」が人気になるのも
この辺に理由があるんだと思うな。

逆に、「村上春樹ならなんでも買う」というような買い方とは別に、
「おもしろければ、主婦がケータイで書いた小説だって買う」といった現象が起こってくる。
コンテンツの時代とか言われてきたのは、そういうことだよね。
でも、ケータイ小説が売れたのには、別の理由があるとこの本の筆者は言っている。

筆者の佐々木さんは、コンテンツから “コンテクスト(文脈)” の時代になった、と言っているんだ。

それはちょっとした比喩的な言い方であって、
マスメディアが発する作者情報や作品情報を頼りにするんじゃなくて、
その作者がネットの世界を通じて、「どんな考え方やどんな活動をしているのか」、
「どんな属性なのか」、「どんな人柄なのか」、
「その作品がみんなからどんな口コミを得ているのか」など、
その作者や作品の中身ではなくその周辺の “脈動”というか、
“みんなでわかり合う、関わり合う、生き方やあり方”
人の心を動かす要素になる、ということだと僕は解釈したね。

主婦のケータイ小説で言えば、
その中身がおもしろかったのではなく、
「素人が」、「ケータイで連載アップする新しいスタイル」や「フツーの人の話のリアリティ」、
「それに対してレビュアーがレスを繰り返すことによる盛り上がり」、
そうこうしながら、「仲間化、ファン化」が増殖して、
「自分たちの要望で書籍化する」など、
“自分たちが関わって、その小説が盛り上がって、中身が書籍化されるまでの文脈”
がおもしろかったから
、みんなその小説を買った、ということだということ。

これは、売る側が仕掛ければ「マーケット・イン」というやり方になるんだけど、
ケータイ小説の場合は自然発生的というか自発的というか、
そこんところが “熱く” なれる原因なんだろうね。

宣伝やPRに関わる人間にも、↑この辺がこれからの仕事の大切なポイントになるに違いないな。

そういえば、音楽出版の世界はとっくの間にそれが進行しているんだね。
iTunes などの大手音楽配信プラットホームの成功はもちろん、
僕らが全然知らないのにネットで大人気で、自作自演自録りの曲をネットで販売して
ビジネスを成立させている人もいるのだ。

この本は、2007年頃からアメリカで本格化した電子書籍ビジネスや音楽配信ビジネスを例に、
今後、日本でどんな電子書籍の嵐が吹き荒れるのかを示唆している。
2010年発刊だから、ハナシの内容が古くなっていそうな気がするけど、
2013年現在、日本では電子書籍の本格化はまだまだこれからといった感じだから、
“出版物の電子化” というものをマーケティング的に捉えたい人には、
いまこそ読むのに最適な本だと思う。

本や音楽だけでなく、雑誌や新聞、映画、ドラマ、アート、漫画・・・
ほらほら、もうどんどん進んでいるよね。
だから、あらゆるコンテンツビジネスのヒントがこの本には書かれている、と言えるなあ。
この本が電子書籍じゃないのは、どういう意味があるのかわかんないけど。

ある日突然、レコード盤が発売されなくなった。
いつの間にか、カセットテープもVHSもベータも消えた。
レーザーディスクやDATはどこへ行ったんだろう。
気づいたらMDプレーヤーが電器屋から消えてた・・・
デジタルの世界の変化は、驚くほどドラスティックだよね。

いま、タブレットを買おうかどうか迷っている人は、
この本を読んだらすぐに買っちゃうだろうなあ。


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