ゆらゆら草

もう少し感受性を働かせれば、毎日がスペシャルになる。そう自分に言い聞かせて、 いろいろ感じたことを書きとめてみよっと。

取り返しのつかない日々を取り返しに ~『永い言い訳』  


ツレアイさんに、恋してますか?

出会ったばかりの頃みたいに、
明日、手をつなごうとか、抱きしめたいとか、チューしたいとか、
そんなことを考えてドキドキしたり、残念がったりしてる?

いつも一緒にいたいとか、ずっと話していたいとか、
ちょっとした仕草や言葉にキュンキュンしたりしてる?

・・・なわけないよねぇ。
そりゃそうだよね。
だって、それって、“恋愛感情” だもんね。
結婚にいたって、ふたりの子供を授かるまでの
“夢の期間”
だもんね。

“謎解きの期間”“修業期間”“自分で自分の気持ちに魔法をかける期間”
とにかく、夢中。
恋は盲目って言うよね。

・・・なんて言うと、「そんなことねーよ、いまでも、
今度、遊園地に行こうとか、映画観に行こうとか、
おいしいものを食べに行こうとか、ウキウキやってるぜー」
って言うむきもあるかも知れないけど、
それは、「あの人と一緒なら、どこに行ったって楽しい」
って思ってたあの頃のウキウキとはちょっと違うような気がするなあ。

いやいや、結婚してからは、
ツレを好きだという気持ちが失せてしまって地獄だよ、
なんて言いたいんじゃないよ。
結婚してからだって、相手を好きだという感情はあるし、
いつも、愛おしくだって思っている。

でも、それは、“恋愛感情” というのとは違う気がするなあ。
「そこからは、恋ではなく愛なのだ」ってよく聞くセリフだけど、
個人的には、かなりいい線言っていると思うけど、
それも微妙にあいまいな言い方な気がする。

かのサン=テグジュペリは『人間の土地』で、
愛するということは、
お互いに顔を見つめ合うことではなくて、
一緒に同じ方向を見ること

・・・って言ったけど、それそれ!

おつきあい期間は、「見つめ合い」で、
結婚してからは、「同じ方向を見る」だよね。

だから、夫婦の愛情って、恋愛時代の「ぽわーんとした愛」とか、
友達との「友愛」みたいなのとは違って、もっと
サイド・バイ・サイドというかギブ・アンド・テイクな絆ではあるけど、
でも、一緒に仕事をする仲間との「同志愛」というのとも違うし、
一緒に暮らす男女の間だけに生まれる感情なんじゃないかな。

「一緒に生活を高め合う男女」ならでは持てる「思いやり」
みたいなものなんじゃないのかなー。



で、この映画の夫婦は、その「一緒に生活を高め合う男女」ならではの
「思いやり」がまったくないんだな。

だって、お互い結婚した頃から、それぞれ自分がやりたい仕事に打ち込んで、
それぞれの目標を追求してきたんだから。
そう、結婚してもバラバラの方向を向いて来たということ。

だもんだから、子供もいない。
そりゃもう、ひととき罹る熱病であるところの恋愛感情が薄れれば
何のために一緒に暮らしているのかわからなくなるよな。

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黒木華ちゃんの軽い濡れ場も観られるぞー。

そんなんだから、憎しみ合っているわけではないんだけど、
しぜん、諍いばかりが目立つようになる。
共同作業をしているわけではないので、
相手の辛苦を「思いやる」必要も薄いからだな。

ある時、おっきめの諍いが起こる。
共同作業をしているわけでもなく、子供もいないんだから、
いまだに恋愛感情だけが絆のはずの二人には、破局の危機だ。

ポスターのコピーにあるように、
そのまま出かけてしまった妻は、そのまま帰らぬ人となってしまう。

残された夫は、それでもちっとも悲しくなかったんだけど、
コトの流れで、一緒に亡くなった妻の友達の遺された家族の面倒をみるうちに
「家庭の幸せ」というものをやっと知ることができるんだな。
でも、もう遅い。
取り返しがつかないのだ。

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この映画は、仕事や目標の追求・成功と、家庭の幸福を
同時に得ることはムリという文脈で描かれている気がする。
そして、どうしたらうまくいくのかは描かれていない。

そういえば、答えを出さずに終わる映画を作るのが好き
西川美和監督の作品だわー。
しかも、原作の小説も脚本も。

でも今回は少し、師匠の是枝(裕和)節が入っているかな。
リアルな日常・明篇の是枝に対する、リアルな日常・暗篇の西川
って感じかな。

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二度観したっけ、脚本の妙に気づいたぜ。
物語冒頭で、妻役の深津絵里が夫を置いて出かけて行く時に吐く
セリフが切ないんだわー。



たまたまツレと口ゲンカをして、
ツレと罵りあったりすることって時々あるよなあ。

それが、“生活幸福化委員” どうしの意見交換ゆえの摩擦
というのならいいけど、そうじゃない場合は
この映画を思い出すことにしよっと。

だって、どちらもいつか死んでしまうんだから、
その時に「取り返しのつかないことを、たくさんしてしまった」
なんて思いたくないもんな。
「ああ、一緒に暮らせて幸せだったなあ」って思いたいもんな。

あ、いけね、独身の人には関係ないハナシだったかなあ。





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●永い言い訳(ながいいいわけ)
2016 日本
上映時間:124分
監督:西川美和
原作:西川美和
脚本:西川美和
製作:川城和実、中江康人、太田哲夫、長澤修一、松井清人、岩村卓
プロデューサー:西川朝子、代情明彦
撮影:山崎裕
編集:宮島竜治
編集:宮島竜治
衣装:小林身和子
ヘアメイク:酒井夢月
サウンドエフェクト:北田雅也
挿入歌:手嶌葵「オンブラ・マイ・フ」
キャスティング:田端利江
助監督:久万真路、菊池清嗣
製作会社:「永い言い訳」製作委員会(バンダイビジュアル、AOI Pro.、
     テレビ東京、アスミック・エース、文藝春秋、テレビ大阪)
配給:アスミック・エース
出演:本木雅弘、深津絵里、竹原ピストル、堀内敬子、藤田健心、白鳥玉季、
   池松壮亮、黒木華、山田真歩、松岡依都美、岩井秀人、康すおん、
   戸次重幸、淵上泰史、ジジ・ぶぅ、小林勝也、木村多江(声のみ) ほか
受賞:第90回キネマ旬報ベスト・テン(2017年)
   ・助演男優賞/竹原ピストル
   ・日本映画ベスト・テン 第5位
   第71回毎日映画コンクール(2017年)
   ・男優主演賞/本木雅弘
   ・監督賞/西川美和







♪ そばにいて / ケツメイシ





♪ 夕暮れの鳥 / 神聖かまってちゃん





♪ 高気圧ガール / 山下達郎




そして家族になる ~ 『ディーパンの闘い』  


6月20日は、「世界難民の日」だったんだってさ。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などが提唱して、
国際連合総会の決議で2000年12月に定められたとのこと。
2001年から毎年、世界各国で難民救済のためのキャンペーンや
イベントが行なわれているんだそうだ。



この映画を観るまで、2009年の最近までスリランカで
激しい内戦が行なわれていた
ということを知らなかったよ。

スリランカは、シンハラ人という人種が7割
タミル人というのが約2割、+その他1割で構成されている
らしいんだけど、イギリスが植民地にしていた時代には
少数派のタミル人を重用する政策をとっていたとのこと。

でも、イギリスから独立した後からは、当然、
多数派のシンハラ人を優遇した政策がとられるようになるよね。
だもんだから、1956年頃から民族間の対立が高まっていったんだと。
またイギリスの負の遺産か、って感じ。

で、1972年にはタミル人がスリランカからの分離独立をめざして
「タミルの新しいトラ (TNT) 」という反政府勢力を発足。
'75年にはそのTNTを母体とした「タミル・イーラム解放のトラ (LTTE) 」
結成して、テロやゲリラ戦などの武力活動を展開していたんだよ。

そしてとうとう、1983年に両者の虐殺合戦が勃発。
総力戦の末、2009年5月にシンハラ派政府軍が勝ったカタチで内戦が終結。
その終戦の直前の4月に、難民と化した一般のタミル人が15万人も
国を脱出
したんだそうだ。

この映画の主人公の男は、その15万人のタミル人に紛れてフランスに脱出した
元「タミル・イーラム解放のトラ (LTTE) 」の戦士という設定なんだな。
や、主人公を演じた俳優は、ホントにLTTEの戦士だった人だそうだから
設定というかなんというか。

あ、ここまで読んで、「うぇー、おもしろくなさそう」って思っているよね?
まあね。
でも、映画の内容には、スリランカとか、タミル人とかあんまり関係ないかな。
「どっかの国から逃げて来た男(家族)」の「フランスでの難民生活」、
っとだけ知ってて観ればいいんじゃないかな。
いま、ヨーロッパでいろいろ問題になっている “難民のひとつのケース”
ということだね。



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主人公の男の名前は、ディーパン。
ホントの名前じゃない
パスポートに書いてある年齢も、ホントのトシじゃない。

妻はまったく知らない女。
スリランカの港で難民船に乗る直前にあてがわれた女だ。

内戦に巻き込まれて死んでしまった赤の他人の3人家族の
パスポートを流用して、その家族構成に当てはめて
即席に夫と妻ということにされたのだ。

娘は、道端で途方に暮れていた母子家族の3人の子供のうちの
1人をもらってきた

偽物の3人家族はフランスに着いた。
長い船旅をともにしたからといって特段、仲良くなったわけではない。

偽物とはいえ、3人の身元を証明するパスポートがあるのだから、
3人くっついているのが得策に違いないのだけど、
とりあえず妻、ということになった若い女にとっては、
まんまとスリランカを脱出してしまえば、好きでもない歳の離れた男と
人数合わせのための子供なんか邪魔なだけなのだ。

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ディーパンは、内戦のとばっちりでホントの妻子を亡くしていた。
もう、民族が違うだけで相手を憎んで暴力を振るったり、
愛する人を殺されたりするのは耐えられなかった。

どんなに貧しくて、どんなにボロい住居に住むことになろうとも
今度こそは、毎日銃弾に怯えたりすることのないところで、
穏やかに生きていきたい、と願っていたのだが・・・。

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難民の暮らしは、難民になる前も、なった後も過酷だ。
この映画は、偽物の家族が、そんな暮らしの中に
ホントの愛や家族の絆を浮かび上がらせる。





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●ディーパンの戦い(Dheepan)
2015 フランス
上映時間:115分
監督:ジャック・オーディアール
脚本:ジャック・オーディアール、トマ・ビデガン、ノエ・ドゥブレ
製作:パスカル・コシュトゥー、ジャック・オーディアール
撮影:エポニーヌ・モマンソー
編集:ジュリエット・ウェルフラン
音楽:ニコラス・ジャー
製作会社:Canal+、Ciné+、フランス2シネマ、フランス・テレビジョン、
     ページ114、ホワイ・ノット・プロダクションズ
配給:ロングライド
出演:アントニーターサン・ジェスターサン、カレアスワリ・スリニバサン、
   カラウタヤニ・ヴィナシタンビ、ヴァンサン・ロティエ、
   マルク・ジンガ、フォージ・ベンサイーディ ほか
受賞:第68回カンヌ国際映画祭 / パルム・ドール
   第33回マイアミ国際映画祭 / 審査員賞
   第19回オンライン映画批評家協会賞 / 米国未公開作品賞
   第40回トロント国際映画祭 / スペシャル・プレゼンテーション部門上映







♪ 15 Step / Radiohead





♪ ムラサキ☆サンセット / キリンジ




韓国庶民の叫びか ~ 『殺されたミンジュ』  


改正組織犯罪処罰法(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に
関する法律等の一部を改正する法律案)が、6月15日に強行採決されたねー。

国際組織犯罪防止条約(TOC条約)の批准条件を満たすことで、
2020東京五輪をめがけて、テロ対策整備を急いだんだろうけど、
委員会採決をすっとばすなんて、ちょっと乱暴なやり方だったよなあ。

でもさ、最大の問題はそこじゃないよなあ。
この法律のいうところのテロの準備って・・・

組織的犯罪集団に所属している
二人以上の計画者が
③ 277の「テロ等準備行為」(爆弾テロや毒ガステロの計画、現場の下見・工作
  資金集め材料や道具の調達 等)
④ 実際にその爆弾や毒ガスを入手し
⑤ 現場において使用し、人が死んだりモノを破壊する

・・・ってことらしいんだけど、
これまでは、④、⑤じゃないと検挙&処罰できなかったんだよね。
「疑わしきは、罰せず」。
世の中の犯罪について、すべてそういうもんだけどね。

でも、テロなどの場合、実行されちゃったら逮捕どころじゃなくなる、
そりゃ、逮捕しようとしていた警察官も立件証拠もぜ~んぶすっとんでなくなるよな。
それでは遅すぎる、というわけで②、③の段階でも検挙&処罰できる法律を
整備しようということになったんだな。

でもさ、「組織的犯罪集団」というのは、
事件が起こる前にどうやって断定するんだろうね。
ヤクザと脱税企業と革マル派とか赤軍派なんかの過激派?
まさか、日本中の企業、団体を盗撮、盗聴、メール傍受するんじゃないだろうね。
逆に、個人でテロを計画した場合は捕まらないの?
自衛隊内にいる革命分子は捕まえられないんじゃないの?
ヤクザ屋さんは包丁持って料理したり、花火をやっちゃいけないの?
だいたい、テロって組織的犯罪集団に属しているのかいないのか
わからないようなやつらがやるんじゃないの?
破滅思想のカルト宗教の教団だって、始めは組織的犯罪集団じゃないからね。

僕は、テロ対策用の法律を作ることに反対じゃないんだけど、
こんなんじゃ、穴だらけのざるだし、どうやって立件するの?
誤認逮捕の山を築くことになるんじゃないの?

まあ、治安維持法みたいな、国家権力の濫用を許すような法律にならないことを
祈るばかりだわ。



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「国家権力」といえば、最近観た映画はコレ。

国家のなんらかの機関の指令で、不幸な国民が不幸な国民を監視したり、
処罰したりする社会。
誠実に働いても報われない社会。
小さい頃から、死ぬほど勉強して高学歴を手に入れても
就職さえもままならない社会。
悠々と生きられるのは、ごく一部の国家権力者と大金持ちだけじゃないか!

・・・って感じの韓国映画だなー、これは。

韓国では、儲かっている企業といえばごく一部の大企業だけで、
その大企業に就職したいがためにみんな子供の頃からガリ勉で
一流大学をめざすけど、一流大学を出てもほんの一握りしかまともな会社に
就職できないのが現状なのだ、って何かで読んだけど、
ホントらしいのかなあ、この映画を観るかぎりでは。

それから、アメリカで言えばFBIというかCIAというかみたいな機関の
エージェントが市民生活の中に入り込んでいて、
市民が市民を監視したり始末したりするんだって言うのもひょっとして
ホントなのかもしれないなあ、って気になってくるわ、この映画を観ると。

だって、制作者のクレジットを見たら、ほとんどキム・ギドク一人で
やっちゃっているんだもんね。
シナリオを読んで、誰も乗らなかったってこと?
ヤバイから乗らない = ホントのこと、って感じがしない?



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映画は、冒頭からいきなり
女子高生ミンジュが殺されるシーンから始まるんだよ。
複数の男たちに捕まって、窒息死させられる。

そして1年後、謎の集団がそのミンジュ殺しに関わった男たちを
一人ずつ拉致して拷問を繰り返す。
ミンジュ殺しの仕返しなんだろうな。
主人公はその謎の集団のボスなんだよ。

でも、この映画は、わからないことばかりだ。

何の罪もない女子高生を殺したグループは、当然悪党に見える。
でも、ハナシが進んでいくと、どうもそのグループは
国家の諜報機関みたいなところにエージェントとして雇われて
いたんだろうな、ということが見えてくる。

それで、その女子高生殺しグループは、それぞれちゃんとした
職業に就いているし、逆に謎の仕返し集団は社会の
脱落組でまともな生活をしている人間が一人もいないから
実は、謎の仕返し集団のほうが悪いやつらなのかと疑念がわいてくる。

こいつらが、過去に国家機密に関わるようなことで、
謀反や失敗を犯したせいで国の特命機関にミンジュは殺されたのでは?
もうホントにどっちが正義でどっちが悪なのかわかんなくなってしまう。

ラストでは、いよいよ疑問だらけになって物語は終わってしまうんだよ。

●結局、最も悪いやつはミッションを発した国家の諜報機関ひいては
 国家なんだろうな?
●仕返し集団のボスは、過去にどんな謀反または工作をしたのだろう?
●ミンジュはその謀反や工作とどんな関係があって殺されたんだろう?
●最後に生き残ったやつは、実はミッションを達成したということでは?
●実は、あいつが女子高生殺しグループのリーダーなのでは?
●でも、結局は個人的な恨みをはらしただけなんだろうか?

・・・観た人と語らいたいわー。

ハングルの原題は、「1対1」という意味だそうだ。
これも、なんでそういうタイトルなのか考え中・・・
●女子高生殺しグループも謎の仕返し集団も、
 結局は集団としてのまとまりなどなくて、
 個人的な利害で動いていただけなのでは?
●国家のエージェントグループ VS 仕返し集団という複数対複数の
 戦いに見えるけど、よく考えればどちらもしがない一市民であって、
 そういう意味で1対1。結局、国家権力や富に踊らされるのは
 一小市民ばかりなのだ、と言いたいのではないか?
●ラストはミッションなどは関係なく、
 一個人の恨み VS 一個人の恨み と言いたかったのか?


そしてもうひとつの疑問は、さっきも書いた
「こんなことが、韓国国内でホントにあるんだろうか?」

思えば、実際に軍隊があり、軍役もあり、いまも北との戦争が続行中だし、
北へのスパイも、北からのスパイもうようよしてるし、
事実、日本とは危機感が何倍も強い韓国でのおハナシ。
フィクションとは思えない凄味があるよなあ。





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●殺されたミンジュ(일대일/ONE ON ONE)
2014 韓国
上映時間:122分
監督:キム・ギドク
脚本:キム・ギドク
製作総指揮:キム・ギドク
撮影:キム・ギドク
編集:キム・ギドク
配給:太秦
出演:マ・ドンソク、キム・ヨンミン、イ・イギョン、チョ・ドンイン、
   テオ、アン・ジヘ、チョ・ジェリョン、キム・ジュンギ ほか
受賞:第71回ヴェネツィア国際映画祭
   ・「ヴェニス・デイズ」部門 オープニング上映
   ・作品賞







♪ 返事はいらない / 荒井由実



がんばれ!ユーミン!!



♪ エイリアンズ / たなかりか





んー、これは、“フシギちゃん” ですー。

『スワロウテイル』や『リリイ・シュシュのすべて 』、
『花とアリス』の岩井俊二監督の最新作と言えばわかりやすいかな。

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●『リップヴァンウィンクルの花嫁』は、サスペンスである

最後までハラハラさせられるという意味では、サンペンスだし、
最後まで謎を孕んでいるという意味では、ミステリーかもしれない。

綾野剛が演じる人物が、結局は「いい人」なのか「悪い人」なのか、
何かのメタファーなのか、この映画を観た人と語り合いたくなるわー。

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●『リップヴァンウィンクルの花嫁』は、社会派である

物語の冒頭から、すぐにわかることだけど、
この作品の大きなテーマは「ネット社会」なんだなー。

PCやスマホって、カンタンに買い物をしたり、
バンドメンバーや結婚相手を見つけたりできるよね。
それって、フツーだったら「何度も接して・見て・話して・触れて・
いくつかの想いをシェアして・信用できる仲になって」
といっためんどい手続きを踏んでからやるものだけど、
ネットでだったらそれらを省いて、カンタンにやれる
ってことなんだよな。

何か込み入った相談事だって、余計な気を遣わずに
すぐにお互いの内面を持ち寄ることができる。
それによって、ずいぶん救われる人もいるはず。

でも、その「信用づくり」や「仲良し絆づくり」のプロセスが省かれているがゆえに
いつ諍いの爆弾が爆発するかもわかんないし、
それを利用した詐欺のような犯罪も生まれるんだろうね。

そんな「新しい社会現象」を生む道具について考えさせられるハナシでもあるな。

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●『リップヴァンウィンクルの花嫁』は、文芸作品である

この映画の言いたいことの核心は、「孤独」というものじゃないかと思う。
それは、ネットのあるいまも、それがなかった昔も
大した変わりはないのかもしれないけど、ネットという触媒ができたいま
人の孤独が新しい見え方をするようになったということ。

他人の行為を「優しい」と感じるのは、自分が孤独だからなのかもしれないし、
他人を「冷たい」と感じるのは、いま満ち足りているからかもしれない。
いまの時代の「孤独」とは?「絆」とは?

そんなことを問うているのではないだろうか?

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●『リップヴァンウィンクルの花嫁』は、おとぎ話である

岩井監督はきっと、「不思議の国のアリス」が好きなんだろうね。
この作品も、一人のいたいけな女子が、
いろんなハプニングに見舞われながら前に進んで行く。

ただ、主人公は少女ではなく(20代後半?)、
ハプニングは案山子がしゃべったりするようなファンタジーでなく、
実際にいそうな人や実在社会の悪意や善意だということ。
全然シュールじゃなくて、ありえないことは起こらない。
“いま、身のまわりにあるアリスの世界” なんだと思う。

主人公は、いくつものハプニングに出会い、どんどん堕ちていく
・・・ように見えるだけで、実はそのトラブルの壁を突き抜けて
傷つきながら大きくなっていく・・・ように見える。

ちなみに、“リップヴァンウィンクル” というのは、
欧米版の「浦島太郎」みたいなハナシなんだそうだ。(未読)
「浦島太郎」だって、亀を助けて竜宮城という時空を突き抜けて
新しい世界と自分を見つけるんだよね。
ほら、「不思議の国のアリス」だっておんなじ仕立てに違いない。

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●『リップヴァンウィンクルの花嫁』は、黒木華ムービーである

岩井監督はきっと、黒木華が好きなんだろうね。
監督いわく、2012年に手がけたCMのオーディションで
出会ったのをきっかけに、彼女をイメージして小説を書いたのが、
この映画誕生の第一歩だったんだそうだ。

僕も、色白で、か細い声で、まじめで、世間知らずで、
夢見がちだけどアグレッシブではなく、人を疑うことを知らない
危なっかしい女性・・・そんなイメージを持ってたっけ。

いやいや、ホントのことは知らないよ。
友達でも知人でもないし、
じっくりトーク番組なんかで観察したというわけでもないし。
イメージ、いめーじ。

この映画は間違いなく、映画俳優としての黒木華が、
ますます好きになる作品
だと言ってしまおう!

あ、Coccoの演技もすごいよ!
そうそう、この物語のコアメッセージは彼女にこそあると
言っていいかも知れないな。

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・・・こんな風に、いろんな観方ができるという意味で
“フシギちゃん” な映画だと言いたかったんだよ。
逆に言うと、どんなジャンルにも属さないと言えるのかも知れないね。

多元的な手ざわり、複数のテーマ、
たくさん出てくる疑問と、たくさん想像できる答え・・・
こんな複雑な味わいを持った作品は、原作が他人のマンガや小説では
作ることができないんだろうなあ。



最近、映画もテレビドラマも、やたらとマンガが原作のものが多いよねぇ。
それって、なんでかわかる?
もちろん、すばらしいマンガ作品がたくさんあるからに違いないんだけど、
映画製作上のたくさんの手間も省けるからなんだね。

なんにも決めずに、いきなりクランクインする場合もあるけど、
通常は商業映画って、クランクインするまでにもいろんな労力が注がれているんだね。

①「企画書」を書いて、出資者や制作会社、配給会社などにアタリをつける
②「ストーリー」を書いて、出資者や制作会社、配給会社などを説得する
③「シナリオ」を書いて、出資者や制作会社、配給会社、出演者などを説得する
④「絵コンテ」を書いて、制作関係者に浸透させ、制作を進める

↑オリジナル作品の場合、だいたいこんな感じなんだけど、
ところがマンガ本を原作にしたら、②~④を省く、
または大幅に削ることができるんだな。
だって、やり方によっては
絵コンテがすでにできあがっているようなもんだからね。
そりゃ、すごい手間の削減だよね。

しかも、タネ本のマンガはすでに発行済みだから・・・

⑤ 映画封切り前の宣伝・PRになる
⑥ すでにファンやオピニョンリーダーができあがっている
⑦ 相乗効果で、本・映画ともキャラクターグッズやノベライズなどの
  派生ビジネスがやりやすくなる

・・・などの省予算やシナジー効果も生まれるという、いいことづくしなんだね。

でも逆に、ビジュアルやストーリーが高い完成度でできあがっちゃっているがゆえに
「映画制作者の思い入れが反映しずらくなる」=
「映画表現の創造性や新規性が低まる」 = 「おもしろさが減る」
ということなんだろうな。



この映画は、原作から脚本、演出、撮影、編集まで岩井監督のオリジナルなんだよ。
だから、こういう絶妙なタッチの、誰にも似ていない作品ができるんだろうね。

最近では珍しい「映画作家」の映画、いいねぇー。





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●リップヴァンウィンクルの花嫁
2016年 日本
上映時間:180分
監督:岩井俊二
原作:岩井俊二
脚本:岩井俊二
製作総指揮:杉田成道
プロデューサー:宮川朋之、水野昌、紀伊宗之
制作プロダクション:ロックウェルアイズ
撮影:神戸千木
編集:岩井俊二
美術:部谷京子
スタイリスト:申谷弘美
メイク:外丸愛
音楽:桑原まこ
製作:RVWフィルムパートナーズ(ロックウェルアイズ、日本映画専門チャンネル、
   東映、ポニーキャニオン、ひかりTV、木下グループ、BSフジ、パパドゥ音楽出版)
配給:東映
出演:黒木華、綾野剛、Cocco、原日出子、地曵豪、和田聰宏、
   佐生有語、金田明夫、毬谷友子、夏目ナナ、りりィ ほか
受賞:第40回日本アカデミー賞(2017年)
   ・優秀主演女優賞/黒木華
   第41回報知映画賞(2016年)
   ・助演男優賞/綾野剛 (『怒り』、『64-ロクヨン- 前編/後編』と合わせて)
   第31回高崎映画祭(2017年)
   ・最優秀助演女優賞/りりィ
   第90回キネマ旬報ベスト・テン(2017年)
   ・日本映画ベスト・テン 第6位








♪ 何もなかったように / Cocco





♪ Hana wa Saku (Flowers will Bloom) / Kaori Muraji




いまのいやーな空気感 ~ 『恋人たち』  


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ふだん生活していて、なんとなく・・・
「これって、なんか間違ってるんじゃないの?」とか、
「どんだけ我慢すれば、解決するんだろう?」とか、
「こんな泥沼から抜け出したい」とか、
「どうしてこんなに不公平なのだ?」とか思うことって、ない?


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僕らの日常には、
●夫婦のマンネリが我慢できなくて、不倫する・・・
●人助けをしようとして、詐欺師に騙される・・・
●すごく有能で価値ある仕事をするのに、給料が少ない・・・
●高過ぎる健康保険料を払っているのに、いざという時の治療費が払えない・・・
●被害者が苦しんでいるのに、犯罪者が法に守られて大手を振って暮らしている・・・
●自分が被害者なのに、世間から咎められる、冷たくされる・・・
●身内が辛い目にあっているのに、見て見ぬふりどころか忌み嫌う・・・
●エラソーに命令するばかりで、責任をとらない先輩・・・
●ゲイだと、危険人物扱いされる・・・
●一番信じていた人が真っ先に去っていく・・・
●あの医者は、あの弁護士は、弱っている人から金を巻き上げる・・・
なんてことが、フツーに転がっているのだ。

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この映画は、複数の主役がそれぞれの物語を展開する群像劇なんだけど、
僕らがフツーに暮らしていて起こりうる理不尽というか不条理というかの
不幸を淡々と並べた作品
なんだなー。

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わざとらしい演出や、びっくりするようなハプニングなんかが
起こらないがゆえに、すごーくリアルな感じがするなあ。
いま身のまわりにある理不尽なことや時代の負の空気
ぜーんぶ詰め込んだんだろうなあ。
そして、『ぐるりのこと』の橋口演出の独特の人間くささ。

そういう、“いま、ホントにリアルな” 社会派の作品として、
2015年のキネマ旬報ベスト・テンで1位をとったんだろうな。

でもねぇ、ハッピーエンドっぽく描かれているけど、
すごーく嫌な気分になる、生活者として落ち着かない気分になる。

ズバリ、観ないほうがいいかもね。(笑)

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こんな不穏な空気の映画を作っちゃってさあ、
では、作った監督ご本人に言い訳してもらいましょう。


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●恋人たち
2015年 日本
上映時間:140分
監督:橋口亮輔
原作:橋口亮輔
脚本:橋口亮輔
製作:松竹ブロードキャスティング
エグゼクティブプロデューサー:平野隆
企画:越智貞夫
企画協力:文藝春秋
プロデューサー:木村理津、大原真人、渡邉敬介、浅野博貴、伊藤正昭
共同プロデューサー:藤井和史、山田昌伸
ラインプロデューサー:武石宏登
制作プロダクション:コブラピクチャーズ
撮影:上野彰吾
編集:橋口亮輔
音楽:Akeboshi
配給:松竹ブロードキャスティング、アーク・フィルムズ
出演:篠原篤、成嶋瞳子、池田良、安藤玉恵、黒田大輔、山中崇、内田慈、
   山中聡、リリー・フランキー、木野花、光石研 ほか
受賞:第89回キネマ旬報ベスト・テン
   ・日本映画ベスト・テン 第1位
   ・新人男優賞/篠原篤
   ・監督賞/橋口亮輔
   ・脚本賞/橋口亮輔
   第70回毎日映画コンクール
   ・日本映画大賞
   ・録音賞/小川武
   第37回ヨコハマ映画祭
   ・日本映画ベスト・テン 第2位
   ・監督賞/橋口亮輔
   ・助演男優賞/光石研
   第30回高崎映画祭
   ・最優秀監督賞/橋口亮輔
   ・最優秀助演男優賞/黒田大輔
   ・優秀新進俳優賞/篠原篤
   ・優秀新進俳優賞/成嶋瞳子
   ・優秀新進俳優賞/池田良
   第39回日本アカデミー賞
   ・新人俳優賞/篠原篤
   第58回ブルーリボン賞
   ・監督賞(橋口亮輔)
   第25回日本映画プロフェッショナル大賞(2016年)
   ・新進プロデューサー賞/深田誠剛、小野仁史
   第35回藤本賞
   ・奨励賞/深田誠剛、小野仁史







♪ Usual life / Akeboshi





♪ Stop Whispering / Radiohead




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