邦題、いいねぇ ~『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』


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これは、緻密に書かれた文芸作品って感じだなー。

ジョン・アーヴィングの『熊を放つ』とか、
『ホテル・ニューハンプシャー』、
ティム・オブライエンの『ニュークリア・エイジ』、
レイモンド・カーヴァーの短編群のような
肌ざわりの物語じゃないだろうか。

日常にホントにありそうなシュール。
日常に散りばめられたメタファー

村上春樹さんが翻訳を手がけた系。



その男は、何一つ不自由なく育ったんだな、たぶん。
いい学校を出て、素敵な女性と結婚して、
コネで金融会社に就職して、
仕事も優秀で、将来も嘱望されているエリート。

でも、なんとなく変な人間。
奇妙な行動を起こしたり、狂暴で危ないやつだとかではなくて、
とてもインテリでちゃんとしているんだけど、
なんのひっかかりもない人間。

んー、他人にもツレあいにも全然興味がないというか、
自分がいま目の前にしていることにしか興味がないというか。
流しが水漏れしてたり、冷蔵庫が壊れていたりしても、
何の感慨も行動も起こらない。
そう、ココロがない
ただ、粛々と寝て、起きて、ピシッと仕事をする繰り返し。

どうしてそうなってしまったのか、劇中では描かれていんないだよ。
自閉症的なものなのか、すっかり仕事の忙しさや都会のシステムに
浸かってしまって、いつの間にか無感情にロボットのように
機能するだけになってしまったのか。

奥さんとも日常的に会話が噛み合わない。
まるで、倦怠期まっただ中の夫婦。
いや、それは違うな。
この男の方が、奥さんに興味がないみたいで、
奥さんの方は彼にやさしい
からだ。



ところがある日、突然、事故で奥さんが亡くなってしまう。
でも、この男は全然悲しくないんだな。

ただ、いままであたりまえのようにそこにあったものが
突然なくなって、自分でも何だかわからない「空虚感」
みたいなものに包まれてしまう。
それからは、いよいよ “ココロ、どこにもあらず” で、
仕事もプライベートも、上っ面になってしまう。

ところが、自分のある奇妙な行動がきっかけになって、
少しずつココロを取り戻していくんだな。
ひょんなきっかけで出会ったシングルマザーとその子供が
触媒
になって、恋とか、悩みとか、反抗心とか・・・
思い出していくかのように。

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で、その子供と非現実的な行動を繰り返していくうちに、
奥さんがどんなに自分を愛していたのか、
自分が奥さんをとても愛していたのに、
何の愛情表現もして来なかったことに気づくんだな。

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・・・そうそう、このハナシは、西川美和監督の『永い言い訳』
とそっくりだよね。

あまりうまくいっているとは言えない夫婦が、
奥さんが亡くなって、第三者が触媒になって、
男は奥さんをもっと愛さなかったことを後悔する。

野暮だけど、ちょっと調べてみた。
西川美和さんが小説の『永い言い訳』を発表したのが、2015年2月25日。
この映画が封切られたのが、2015年(アメリカ?日本?何月何日?)
映画の『永い言い訳』が封切られたのが、2016年10月14日。
・・・だから、どっちがどっちの影響を受けたのか、わからん!
発表された時期まで、そっくりときたかあ。



劇中で、奥さんが生前に書いたこんなメモが出てくるんだよ。

「If it's rainy, You won't see me, If it's sunny, You'll Think of me.」
もし、今日が雨ならあなたは(このメモに気づかず)私に気づかないけど、
もし晴れなら、私のことを想ってくれるよね。


ううう、なんてせつなくて、悲しい愛の言葉。(泣)
彼女が恋人なら「なんてかわいいやつ」ってことになるんだろうけど、
ツレアイに言わせちゃいけないよな。

なんで、雨なら気づかず、晴れなら気づくのかは
観ればわかる、というやつだなー。



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それから、エンドロールを最後まで観ると、
こんなのが出てくるんだよ。

「Warmest regards David C. Mitchell」
心を込めて 敬具 - デイビッド C.ミッチェル

デイビッド C.ミッチェルとは、この映画の主人公の男の名前かな。
ん、手紙?
この映画を観ている人宛てってこと?

んーーー、そうか、主人公から僕に・・・
近頃、流されていやしないか?
ココロが鈍ってやしないか?
キミは、心からツレや子供を愛しているのか?
おもいやりに満ちた生活を体現しているのか?
そんな問いかけをくれている映画なんだろうなー、って思った。

お子ちゃまには無理な映画だなー。





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●雨の日は会えない、晴れた日は君を想う(Demolition)
2015 アメリカ
上映時間/101分
監督/ジャン=マルク・バレ
製作/リアンヌ・ハルフォン、ラッセル・スミス、モリー・スミス、
   トレント・ラッキンビル、シドニー・キンメル、ジャン=マルク・バレ
製作総指揮/サッド・ラッキンビル、エレン・H・シュワルツ、カーラ・ハッケン、
      ブルース・トール、ネイサン・ロス、ジョン・マルコビッチ、
      ジェイソン・ライトマン、ヘレン・エスタブルック
脚本/ブライアン・サイプ
編集/ジェイ・M・グレン
音楽監修/スーザン・ジェイコブス
美術/ジョン・ペイノ
衣装/リア・カッツネルソン
出演/ジェイク・ギレンホール、ナオミ・ワッツ、クリス・クーパー、
    ジューダ・ルイス、C・J・ウィルソン、ポリー・ドレイバー ほか







♪ Mr Big / FREE





♪ Touch Me I'm Going To Scream Part II / My Morning Jacket





♪ Warmest Regards / Half Moon Run



↑ 3曲とも、この映画の挿入歌だよー。


インスタ動画的リアリティ ~『私たちのハァハァ』


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福岡県の北九州市に住む高校3年生女子4人の
青春ロードムービー。

仲良しの4人は、高校生活最後の夏休みということで、
東京の渋谷公会堂で行なわれるクリープパイプの
コンサートを観に行こうぜー、となるんだなあ、
なんと通学用自転車で。

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とりあえず親には内緒。
資金は、誰かの貯金やみんなの手持ちのお小遣いの残り。

でも、すぐに自転車がパンクしちゃって、
ヒッチハイクすることになったり、
所持金を使い果たして、キャバクラでバイトしたり・・・。

はたして、ライブ本番に間に合うのか?

仲良しと言ったって、学校とプライベートの一部でのつきあい。
途中でいろんなことがあって、みんなで解決していくうちに
それぞれの家庭の事情や、進路に対する考えや、意外な性格などなど
これまで知らなかった友達の姿が浮かび上がる、というシカケ。

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ちょっぴりアクティブで、ダサくて、せつない、18才の冒険。
飾りっけのない映像で、まるでツイッターやインスタグラムのアップを
オンタイムで観ているよう

大した盛り上がりもないところが、かえってリアル。(汗)

監督は『アフロ田中』や『アズミ・ハルコは行方不明』を
撮った松居大悟。
ミュージシャンの井上苑子と、ほんのちょっとだけ出てくる
池松壮亮だけは知ってたなあ。



時には、ふとママチャリでどこかへ行きたくなることってない?
(はい、ないよね)





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●私たちのハァハァ
2015 日本
上映時間/91分
監督/松居大悟
脚本/舘そらみ、松居大悟
音楽/クリープハイプ
主題歌/クリープハイプ「わすれもの」
撮影/塩谷大樹
編集/松居大悟
制作会社/CONNECTS LLC
製作会社/SPACE SHOWER NETWORKS INC.
配給/SPOTTED PRODUCTIONS
出演/井上苑子、大関れいか、真山朔、三浦透子、クリープハイプ、
   武田杏香、中村映里子、池松壮亮、satellite blue metro、
   佐藤太一郎、茜チーフ、池浦さだ夢、土佐和成、中村まこと ほか
受賞/ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2015
   ・ゆうばりファンタランド賞
   ・スカパー!映画チャンネル賞
   第7回TAMA映画賞
   ・最優秀新進監督賞(松居大悟)
   第25回日本映画プロフェッショナル大賞
   ・第9位







♪ わすれもの / クリープパイプ





♪ What goes on / The Feelies



ジジイの頑固には訳がある ~『幸せなひとりぼっち』


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どこの国にでもいる偏屈ジジイのハナシだなー。
ほら、いるよね?
車両侵入禁止の路地へうっかり車で入ったら、
家から飛び出してきて怒鳴るジジイとか、
ゴミ置き場で突っ立っていて、ひとのゴミの分別を確かめて
怒っているジジイ(ババアか?)。

このオーヴェじいさんもそんなジジイなんだな。
でも、ちょっと頑固過ぎるし、いちいち人のやることに
文句ばかりつける。
言っていることは正しいのだけど、ちゃんとやるべきことを
ちゃんとやれない人を見下しているかのような態度終始。

だから、友達など一人もいない。
根がまじめすぎるほどの直球人間だから、
正誤あやふやな他人や制度と折り合いをつけることができないのだ。
町内の嫌われ者のジジイ。

でも、彼がそんなふうになってしまうのには、
いくつもわけがあったんだな。
そして、彼は彼のやり方を通し続けて、嫌われ者でよかったんだ、
彼は孤独だったかもしれないけど。

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若い頃、おっさんやおばはんに説教を受けて
「もう、そんな時代じゃない、過去の人は黙ってろ」って
思ったことない?

そして近年、若いもんと対峙して
「価値観がどんどん変わっていくけど、こればっかりは昔もいまもない、
間違っていることは間違っているのだ」
って思ったこともない?

若い頃、「うるさいなー、古いんだよ」と思っていたことが
しばらく経って「ああ、あの時あの人が言っていたことは正しかった」
って思うことがいくつもあって、それを教訓にしていま、
子供や後輩に対して「経験上、これはこういうもんだぜー」なんて言って、
「うるさいなー、古いんだよ」と思われている自分がいるんだよなー。


そして、子供や後輩たちには、しばらく経って
「ああ、あの時あの人が言っていたことは正しかった」
って思ってくれるに違いない、と思いたい。

そう、そんなことが繰り返されていることに、
トシを食ってくればわかるもんなんだなあ、
ってことがわかってきたよ。

その時代に、
若いもんにだけ見える未来と、ジジイ、ババアにしか見えない理性とが
ぶつかりあって、先見と経験が混じり合って、
次の時代が創られていく
んだよなあ、ってこの映画で考えさせられたよ。

どっちか一方だけではだめ。
ジジイには孤独を買って出てでも、ジジイの役割というものが
あるんだなあ、って。

よーし、オレも頑固ジジイにならなくちゃー。

『幸せなひとりぼっち』って、邦題だけど、
幸せって誰のことなのか、映画を観るとわかるかなー。
まあ、ジジイ向けの作品だけどねー。

原作は、ニューヨーク・タイムズのベストセラーリストに
77週連続で載った小説。

トム・ハンクス主演で、ハリウッドリメイクされることなったそうだ。

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●幸せなひとりぼっち(En man som heter Ove/A MAN CALLED OVE)
2015 スウェーデン
上映時間:116分
監督/ハンネス・ホルム
脚本/ハンネス・ホルム
原作/フレドリック・バックマン
製作/アニカ・ベランデル、ニクラス・ビークストレム・ニカストロ
製作総指揮/フレデリク・ビークストレム・ニカストロ、ミカエル・ユルト
撮影/ギョーラン・ハルベリ
編集/フレドリック・モルヘデン
音楽/ガウト・ストラース
メイクアップ/ラブ・ラーソン、エヴァ・フォン・バー
配給/アンプラグド
出演/ロルフ・ラッスゴード、バハー・パール、フィリップ・バーグ、
   イーダ・エングヴォル、カタリナ・ラッソン ほか
受賞:ゴールデンビートル賞(スウェーデンのアカデミー賞)
   ・主演男優賞/観客賞 ダブル受賞
   第89回アカデミー賞
   ・外国語映画賞/メイク・ヘアスタイリング賞 ノミネート 







♪ Out Of The Ghetto / Isaac Hayes





♪ Out of the Ghetto / Donald Fagen





♪ Slinky Thing / Donald Fagen




岡田節のルーツ ~『ちゅらさん』(第25話~40話)


◆ちゅらさん

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2001 日本
●脚本/岡田惠和
●演出/榎戸崇泰、遠藤理史、大友啓史、渡辺一貴、藤井靖、高橋練、堀切園健太郎
●出演/国仲涼子(少女時代 - 浦野未来)、平良とみ(ナレーション兼任)、堺正章、
    田中好子、ゴリ、山田孝之、小橋賢児、丹阿弥谷津子、菅野美穂、村田雄浩、
    余貴美子、鮎川誠、肥後克広 ほか



NHKの朝ドラ『ちゅらさん』の続きを観たぜー。
DVD全13本の3本目。
第5週~第6週(第25話~40話)かなー。

『ちゅらさん』のDVDは、レンタル屋さんでもVol.の最初のほうが
品薄みたいで、予約を入れといてもなかなか順番が回って来なかったよー。
(在庫がないと、僕の予約リストの次のタイトルを送って寄こす)
2枚目からなんと1年くらい経っているんじゃないかな?
13本観切るのに何年かかるのよー?

やー、でも、やっぱりおもしろかった!
で、30話目くらいからえりぃが家出して東京に行っちゃうんだけど、
住むことになったアパートに行ってびっくり!
なんと、これは『ひよっこ』ではないか!?
なんたって、岡田惠和(おかだよしかず)脚本だもんね。

いや、『ひよっこ』は昭和の “和” な感じのアパートだけど、
『ちゅらさん』は『すいか』みたいな “洋” な感じではある。
だけど、玄関から入ってすぐのとこで大家のおばはんが寝てるし、
住人の一人の菅野美穂がどっかで観たことある感じ!

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この人、メルヘン作家だかで、
いつも部屋に籠って原稿書いているんだけど、
えりぃのことを気にしてるうちにネタにしてしまうんだよ。
ほら、『ひよっこ』のアパートの住人の漫画家志望の
二人みたい
でしょ?

その上、性格がサバサバで冷たい感じが
まるで『ひよっこ』のシシド・カフカ!
一人で、あの漫画家たちとシシド・カフカを合わせたような
キャラなんだな。

『ちゅらさん』を観たことがある朝ドラファンは、
『ひよっこ』を観て、ふふーん、って
鼻を鳴らしてたんじゃないかと思ったよ。

「お前、今頃気づいたのかあ」って言われそうだけど、
『ちゅらさん』、いま観てるとこなんだから、許してちょー。

あ、そういえば、岡田惠和さん脚本のドラマ『ユニバーサル広告社』
ってのが始まったねー。
原作は、荻原浩っていう人の小説みたいだけど。

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これまた、沢村一樹、和久井映見、三宅裕司、やついいちろう
なんかの『ひよっこ』メンメンで固められた
ヒューマンコメディなんだな。

“岡田惠和ブランド”、確固としてきたねー。





♪ Best Friend / Kiroro




奥崎謙三という戦争 ~『ゆきゆきて、神軍』


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あれは、忘れもしない1987年12月17日の午前11時過ぎ

暗闇の客席が、ゆっさゆっさと揺れ出したんだよ。
数十人の観客が、一斉に騒ぎ出す。
スクリーンの両端に立っている、BOSEだかJBLだかの
スタンドタイプのスピーカーがガタガタ揺れて、片方がバッタリ倒れた。

幸い惨事にはならなかったけど、
十勝沖地震の経験からして、あと3秒揺れが続いたら、
僕は出口に向かって激走していたと思う。

銀幕に写ったその男は、そんなことにはまったくお構いなく
ただ怒鳴り続けていた。



千葉県東方沖地震
千葉市でおよそ震度7、東京都内で震度4。
僕はその時、この映画を観ていたんだよ。
なんで、平日の昼間に映画を観ていたのかは言えない。(汗)

まだ、東京・渋谷の桜丘町にあった頃の「ユーロスペース」
(いまは円山町へ移転)。
思い出せないけど、キャパはたしか50~100人くらいだったかな。
当時は “単館ロードショウ” の映画館、なんて言ってたはず。

名画座とは微妙に違って、リバイバルだけでなく、
「大手の配給会社が商業的な価値から見放したんだけど、
これは映画ファンに紹介せずにはいられない」というような作品や監督を
発掘したり、「ヤバ過ぎて、フツーの劇場では上映できない」
というような作品を喜んで引き受けたりする趣向だな。

そう、いまで言う “ミニシアター” というやつだねー。
ユーロスペースはその先駆けの一つだったんだね。

で、この『ゆきゆきて、神軍』は、
その「ヤバ過ぎて・・・」の部類だったわけだ。
なんせ、あの岩波ホールでさえ上映を断念した作品なんだから。

封切りは、同年の8月1日だったそうだ。
僕が観に行ったのが、その12月17日だから、
なんと4カ月半ものロングランの真っ最中。
結果、7カ月もの間上映し続けたんだそうだ。
しかも、単館ロードショウでだよ。

今年の終戦記念日の前後に、
渋谷の「UPLINK」というミニシアターで、
『ゆきゆきて、神軍』公開30年記念上映と題して
リバイバル上映が行なわれていたみたいだね。

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■奥崎謙三 “神軍平等兵” ~ 正義と制裁を振りかざす狂気

●1920年、兵庫県明石市生まれ。
●1941年3月、岡山連隊に入営(陸軍二等兵)
●1943年1月、独立工兵第36連隊に配属、4月にイギリス領東ニューギニアへ。
部隊は敗走を重ねながら飢えとマラリアに苦しむ。
奥崎は、たびたび上官に暴行を働いて食料を奪取した。
●1944年7月、「GI, Come gun!」と叫び、投降。豪州軍の捕虜となる。
●1946年3月、復員。
引揚船内で復員者の食料を横領しようとした船長に執拗な暴行を加え、
腹部をハサミで刺傷

●1947年3月、鉄工所に就職。
●1951年、神戸市兵庫区にサン電池工業所を開業。
バッテリー商・中古車販売・自動車修理を経営。
●1956年、店舗の賃貸借をめぐる金銭トラブルから不動産業者を刺殺
傷害致死罪で懲役10年。
●1969年、天皇を戦犯と決めつけ、皇居の一般参賀で
「ヤマザキ、天皇をピストルで撃て!」と叫び、昭和天皇にパチンコ玉を発射
暴行罪で懲役1年6カ月。
公判廷では、性器を露出して検事に小便をかけ、判事に唾を吐きかけた。
●1974年、残留日本兵救出の目的でグアムを訪問。
●1976年、『宇宙人の聖書!?』自費出版。
●1976年、皇室ポルノビラ事件。
銀座、渋谷、新宿のデパート屋上から、ポルノ写真に天皇一家の顔写真を
コラージュしたビラ約4,000枚をまき
、猥褻図画頒布で懲役1年2カ月。
●1977年、獄中から参院選全国区に出馬。神軍新聞発行。
●1980年、再度参院選全国区に立候補。
選挙広告の掲載を拒否した朝日新聞社を恨み、社長・渡辺誠毅の襲撃を計画

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●1981年、「天皇に通ずる社会の悪因」として、『田中角栄を殺すために記す』を自費出版
田中に対する殺人予備罪で書類送検。
●1982年、『ゆきゆきて、神軍』の撮影開始
●1983年3月、西ニューギニアでロケ敢行。
●1983年9月、パプアニューギニアへ単独で慰霊行。
●1983年12月、衆院選で当時の兵庫1区から立候補

奥崎謙三 政見放送

1983年12月、衆院選兵庫1区で三度目の立候補。落選

●1983年12月、改造拳銃での殺人未遂事件
当映画撮影中に、自身が所属した部隊で「戦病死」したとされた兵士が、
実は上官命令で終戦後にも関わらず “敵前逃亡" の罪で処刑されたことを突き止める


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元中隊長ほか3名の殺害を決意。12月15日、選挙期間中にも関わらず
元中隊長宅を訪問時に応対したその息子に向け改造拳銃を発砲・傷害
逃亡の後、自首のようなかたちで逮捕。
護送時、駆けつけた報道陣に対し、手錠をかけられた右手を振り上げ、
「ご苦労さん!」と言い放った。

●1986年9月18日、妻のシズミ没。
●1987年9月4日、広島高等裁判所における奥崎の第二回公判で、
この映画の映像が弁護側の証拠として採用され、法廷内で上映
奥崎は原監督に「全く面白くありません」と手紙を出した
のちに殺人未遂等で徴役12年確定。
●1987年9月18日、拘留中に妻・シズミの一周忌として、
虎屋に特製「神軍饅頭」を注文(「神」「軍」の2種焼き印入り)。
ユーロスペースの観客および関係者に配布

●1997年8月、府中刑務所より満期出所。
●1998年、映画『神様の愛い奴』に主演。
●2005年、死去。



この映画は、上記青字の1982年から1983年12月の改造拳銃による殺人未遂事件
までを追ったドキュメンタリー
なんだよ。
しかも、’87年9月の拘留中の出来事は、8月に封切られたこの映画の
興行中に行なわれたこと。

奥崎が、嫌がる相手の家へ強引に押しかけたり、
話の途中で逆上して怒鳴り散らし、暴力を振るったり、
改造拳銃で人を撃ったりするのを記録したこの映画の撮影は、
本物のドキュメンタリーなのか、傷害や殺人の幇助なのか、
監督の原一男の罪が追及
される一面もあったんだよ。
なんせ、この映画が裁判の証拠になったくらいなんだから。

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マーチン・スコセッシ監督は、「誰もこんな映画を作ったことがなかった」、
「誰もこんな映画を観たことがなかった」と言った。
マイケル・ムーア監督は、「私がこれまでに見た最高のドキュメンタリーの
傑作は『ゆきゆきて、神軍』である」と語った。



奥崎謙三は、第二次大戦で
ニューギニアで飢えとマラリアに苦しみながら敗走を繰り返した
千数百名の部隊の一員だった。
そして、ギリギリ生き残った30数名のうちの一人だった。

記録では、復員後に狂暴化したように見える。
自らを “神軍平等兵” と名乗って、
主に、昭和天皇の戦争責任や戦地で行なわれた犯罪、金権政治などを糾弾して
単独で活動を行なっていた
んだな。

やっていることは支離滅裂に見えるけど、言っていることはけっこうまとも。
でも、フツーの活動家やアナーキストと違うのは、
ひとたび悪と決めつけたら、対象の人物を全部殺そうとすることだ。

奥崎の生きる理由は「正義」だったんだと思う。

24時間毎日、いつ敵に撃たれて死ぬかも知れない恐怖、
人肉を食らわざるを得なかったほどの飢え、
毎日マラリアで死んでいく仲間、
上官の理不尽な命令と制裁、
すべてが極限状況の戦場・・・

奥崎はきっと、死ぬか狂うかが永遠に繰り返されるあの戦場で、
この世には、神も仏も天皇もない、政府も個人もない、男も女もない、
信じられるものは自分か敵か、正義か悪か、生か死か、怒りか沈黙か
しかないと悟ったんだろうな。

すべてが狂ってしまっている戦場で、
自分の正義にしがみつき、そうでないものを撃滅する(殺す)ことだけが
自分が発狂せず、生きていける術
だと胸に彫り付けてしまったんだろう。

奥崎謙三という人は元々、日本という国や天皇陛下や友人を
とても愛していたんだと思う。
でもその気持ちは、戦争という狂気に裏切られたのだ。





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●ゆきゆきて、神軍(ゆきゆきて、しんぐん)
1987 日本
上映時間:122分
監督:原一男
企画:今村昌平
製作:小林佐智子
製作協力:今村プロダクション ほか
撮影:原一男
編集・構成:鍋島惇
録音:栗林豊彦
演出助手:安岡卓治、大宮浩一
撮影助手:高村俊昭、平沢智
演出協力:徳永靖子、三宅雄之進
選曲:山川繁
効果:伊藤進一
ネガ編集:神谷編集室
タイトル:日映美術、8 - 8光映、にっかつスタジオセンター、IMAGICA
出演:奥崎謙三、奥崎シズミ ほか
受賞:日本映画監督協会新人賞
   ベルリン国際映画祭カリガリ映画賞
   毎日映画コンクール日本映画優秀賞、同監督賞、同録音賞
   報知映画賞最優秀監督賞
   日本映画ペンクラブベスト1位
   キネマ旬報ベストテン2位(読者選出1位、読者選出監督賞)
   ブルーリボン賞監督賞
   ヨコハマ映画祭ベストテン1位、同監督賞
   おおさか映画祭特別賞
   くまもと映画祭特別企画製作賞
   映画芸術ベストテン1位







♪ Anarchy In The UK / Sex Pistols





♪ With A Gun / Steely Dan





♪ Surf and-Or Die / Walter Becker


Steely Dan 消滅! ウォルター・ベッカーが、9月3日に死んじゃってた!!
これまで、ひねくれた音楽をたくさん聴かせてくれて、ありがとう。 R.I.P. 合掌



◎9月15日朝6時過ぎ、北朝鮮がまた北海道越しにミサイルを飛ばした。
 奥崎謙三が生きていたら、どんな行動に出るんだろうな?