ゆらゆら草
もう少し感受性を働かせれば、毎日がスペシャルになる。そう自分に言い聞かせて、 いろいろ感じたことを書きとめてみよっと。
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客の花咲く、デパ蕎麦 ~ 『更科堀井 立川店』


2013年の東京都の桜の開花は3月16日。
去年より15日も早かったそうだ。
千代田区の靖国神社にある桜(ソメイヨシノ)の標本木が咲いたんだねー。
1953年以降の観測史上、2002年とタイで過去最速だってさ。

満開宣言は3月22日。
これも統計開始以来2番目の速さ。
ちなみに、最も早かったのは2002年の3月21日だって。

最近、竜巻とか雹(ひょう)とか、北海道の激しい寒波とか、天気が異常なことが多いけど、
桜の開花が早い、というのはイヤな感じはしないよね。
まあ、真冬に咲いたりすると、やっぱり調子が狂うけど。

001桜

というわけで、以下、桜と春の木の花の写真を呈上!
3月23日(土)撮影でーす。

002桜

埼玉県所沢市の花々だから、22日に東京の満開宣言が出てても、まだ満開じゃないみたい。
東京より、ちょっと寒いのかな。

003桜

ソメイヨシノだよね。

004桜

ツボミもたくさん残ってます。

005プリヌス-プシリフローラ

これも、桜。赤みは全然ない、まっ白。
直系20ミリくらいの小さな花だよ。

006プリヌス-プシリフローラ

図鑑で調べたら、「プリヌス-プシリフローラ」という種類らしい。
中国雲南省の特産種。違うかなあ?

008コブシ

コブシですよねぇ?

007コブシ

乙女椿?

乙女椿01

植物にまったく疎いんです。

乙女椿02


花を眺めて、すっかり春の気分にひたっていたんだけど、
そうだ!お腹も春の気分にしなさい!
と、ふと、天の言葉降臨。
そりゃー、“桜切り” しかないわさ、
というわけで、“変わり蕎麦” のできる蕎麦屋を探してみた。

近所にもいろいろあるけど、立川の伊勢丹に『更科堀井』が入っているのを発見!
1月始めにも、麻布十番の本店に午後酒しに行ったけど、
“デパ蕎麦” もおもしろいかも、ということで行ってみることにした。


東京都立川市は、昔は “米軍基地の町” として知られていたんだね。
駅の北口にある、いまの「昭和記念公園」や官公庁エリアは、
米軍のエアポートやいわゆるハウスが立ち並んでいて、
駅からベースキャンプまでのストリートは、
英語の看板の並ぶ外人相手の繁華街だったんだよ。
東京の西多摩地区では唯一、街娼が街に立ち、
連れ込み旅館や怪しげなスナックなんかが密集する “欲望産業” のある街だったんだよ。

それが、いまは近年の再開発のおかげで、駅周辺の怪しげな店群は一掃。
高島屋がリニューアルし、伊勢丹ができ、モノレールが走り、
すっかりさわやかな都会と化しちゃったんだねー。
漫画「聖☆おにいさん」のブッダとイエスは、立川のアパートに住んでるけど、
いまでは、駅のすぐそばでは、賃貸のモルタルアパートを見つけるのはむずかしくなっちゃったね。


『更科堀井 立川店』は、立川伊勢丹の8階にあった!
麻布十番にある、あの更科(※1)の “総本家” 唯一の支店だよ。
「銀座 天一」や「銀座アスター」、「キハチ」なんかと同じフロアだから、
その “格” がどんな位置づけなのかわかるというもの。

でもね、同じフロアにある呉服屋みたいに敷居が高いということはなくて、
入口に扉がないし、美人の花番おねえちゃんの店外での接客もテキパキで、
気軽で快活な印象だったね。

000更科堀井立川店_入口

お昼の12時少し前に着いたんだけど、さすが土曜日、
店の外の待合いすはいっぱい、たくさんの人が待っていたよ。
さすがは、人気百貨店、人気蕎麦店。

客層はさまざまで、じじい、ばばあ、おじん、おばんはもちろん、
ヤングなカップル('75年以前生まれは、アベックと呼ぶ)や
中学生くらいの男二人組というものいた。
ランチタイムでも、丼物とのセットメニューみたいな
お手頃価格でヤングの腹を満たすものはないのに、奇特な若者たちだ。
って、僕よりお金持ちなだけかあ。

たのんだのは、「十番膳」という松花堂弁当みたいなお昼の限定メニューと
もちろん「桜切りそば」だ。

001更科堀井立川店_昼メニュー

「十番膳」には、松と竹があって、なぜか松の方が安い。

002更科堀井立川店_十番膳_松

もりとさらしなに鳥、玉子の “焼き物” と 筑前煮みたいな “煮物” がついて、1,260円。
お上品なお得さだね。

玉子焼きは、更科系ならではの甘味が強めのかえしの味がきいたもの。
焼き方が本店より少し固めかな。
「鳥焼」も、ちゃんと堀井の味だ。

003更科堀井立川店_十番膳_松_焼物

煮物の鴨は絶品!
柔らかいし、肉の旨味とつゆのハーモニーが後頭部を突き抜ける。

004更科堀井立川店_十番膳_松_煮物

あれ?これはなんだ?
写真では筍の下に隠れてわかりずらいんだけど、
ひとつ、よくわからないものが入っていたんだよ。
生麩のような歯ごたえと舌触りで、中にぷつぷつと蕎麦の実が埋まってる。
確かめながらもうひと齧りしてもわからない。
なんだかよくわからなくてもいいか、うまいんだから。ハハハ

蕎麦は、オーソドックスな微粉のもっちりつるつる・・・

005更科堀井立川店_十番膳_松_もり

・・・と更科ならではのまっ白でコシのあるさらしな。

006更科堀井立川店_十番膳_松_さらしな

白い蕎麦は、「御前蕎麦」として1750年にあったことが確かめられているけど、
当時、それと “さらしな” がイコールだったのかははっきりしないらしい。

更科堀井の前身「信州更科蕎麦処 布屋太兵衛」の蕎麦が徳川将軍家ご用達になったのは、
1840年頃からと言われているんだけど、その頃はそれを “御前蕎麦” と呼んでいたものの、
まだ白くなかったらしい。

更科の御前蕎麦が白い蕎麦になったのは、明治34年(1901年)頃ではないかと推定されている。
「信州更科蕎麦処 布屋太兵衛」の4代目の女将・ともが、
一番粉を篩にかけた粉で作る御前蕎麦を生み出したのだそうだ。
これがのちに、更科の白い御前蕎麦=さらしな蕎麦、ということになったそうだ。

007更科堀井立川店_十番膳_松_桜切り
季節の変わりそば「桜切りそば」893円

「桜切りそば」は、いわゆる季節の変わりそば(※2)、というやつ。
店によっては、うすいピンク色をしてるものあるけど、ココのはそうじゃない。
透き通った白いさらしな蕎麦に、塩漬けの桜の葉っぱのみじん切りが練り込んであるから、
“海苔のふりかけをかけたさらしな蕎麦” といった趣きだよ。

008更科堀井立川店_十番膳_松_桜切りアップ

でも、口に含むと、桜の香りがふんわり。
うん、年に一度のことだから、これはこれで楽しみのひとつだねー。

花見を愛でて、花になって、花を食べた一日でした。



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※1
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ついこのあいだまで、僕は“永坂更科”といえば「麻布永坂 更科本店」のことだと思ってた。
たまたま、「麻布永坂 更科本店」ばかりをデパート内の支店や通販商品などで目にしていたからだ。

ところがどっこい、麻布永坂のあたりには3つも“永坂更科”があったのだ!

『麻布永坂 更科本店』と『永坂更科 布屋太兵衛』と『総本家更科堀井』の3つ。

それを知ったのは、わりと近年。とほほ
しかし、どれがホントの元祖なのか、けっこうややこしい経緯があるんだよ。


麻布永坂町にできた更科の蕎麦屋のホントのホントの元祖は、
「信州更科蕎麦処 布屋太兵衛」という名前だったそうだ。
創業は1789年(寛政元年)というから、バリバリの江戸時代。

お、だったら、『永坂更科 布屋太兵衛』がその承継店だろ、
という感じがするけど、それは○正解ではなくて△ってとこかな。
まあ、ややこしいストーリーがあるんだよ。

信州の織物の行商人で、清右衛門という人がいて、江戸にちょくちょく来ていたんだけど、
麻布の保科という武家が逗留先だった。
当時は、行商人が物を売るために突然江戸にやってきてもバンバン売れるわけもなく、
口利きというか紹介人というか、そういうネゴが必要だったんだろうね。
保科家は、信州の保科村出身というから、
信州から来ている清右衛門と何らかの関係があったのかもしれない。

清右衛門さん、なんかのきっかけでその保科さんに実家で作って食べてる蕎麦を
打ってもてなしたことがあったんだろうね。
清右衛門さんは信州人の中でも相当蕎麦打ちがうまかったらしく、
保科さんはいたく気に入り、蕎麦屋の開店をすすめたそうだ。
そもそも保科さん自身が、すごく蕎麦が好きだったということもあるらしいけど。

その時に、清右衛門さんは「太兵衛」と名前を変えて、
当時の平民は苗字がないし、布売りだから「布屋」で、
くっつけて「布屋太兵衛」という名前になった。
で、店名は「信州更科蕎麦処 布屋太兵衛」となったわけ。

「さらしな」とは、信州の蕎麦の名産地「更級」のことだけど、
“級”を恩のある保科家の“科”の字に差し替えて、「更科」としたわけだ。

当時、“さらしな”を冠した蕎麦屋は「布屋太兵衛」が最初というわけではなくて、
いまの馬喰町や浅草並木町に「さらしな」や「更級」があったと記録があるから、
先行のそれらと区別するためにも“科”の字を使ったのかもしれないな。

「さらしな」や「更級」の看板や子孫は、どこへ行ったんだろう?
ひょっとすると、布屋太兵衛より古いさらしな蕎麦のルーツがあるかもしれないのに。

1800年代半ばには、逆に布屋太兵衛の「更科」をパクッて使った蕎麦屋が
何軒も出現するようになっていたらしい。

「信州更科蕎麦処 布屋太兵衛」は、保科家とのつながりから、
将軍家や大名屋敷、大寺院などにも出入りしていたと言われていて、
創業当初から御前蕎麦を売りとした高級店として超有名だったそうだ。

明治8年に、日本人全員が名字をつけることになった時、堀井とつけることにして、
“布屋”は「堀井家」となった。
麻布に大名がいなくなっても高級化は進み、
蕎麦だけでなく器や調度品、店内の造作などでも群を抜いて、
敷地の面積も拡大し、宮内庁や華族なども御用達だったと言われている。
この頃が、元祖「信州更科蕎麦処 布屋太兵衛」の最盛期だったのかもしれない。

隆盛を極めた永坂更科の布屋は、1941年(昭和16年)に廃業。
昭和恐慌による資金繰りの困難化や食糧統制、
そして、七代目松之助の放蕩などが原因だったという。

ところが、戦後で混乱する昭和23年頃に、突然「永坂更科本店」という蕎麦屋が出現!
堀井家とは全然関係のない、元料理屋をやっていた馬場繁太郎という人物が起業したのだ。
七代目松之助が、この人物に店名まで売ってしまったらしい。
これが、いまの『麻布永坂 更科本店』。
支店が全国にあるし、けっこう人気だよね。
僕はついこの前まで、これが江戸時代からある永坂更科の本家本元だと思っていたからねー。

ハナシがややこしいのは、この次。
まったく堀井一門と関係ない人に、店の名前を持ってかれたせいで、
本物を復活させないか、という気運がモリモリ。
麻布十番商店街の小林勇という人が旗を振って、堀井家の保氏とその妻きん、
布屋時代の職人などを呼び寄せて会社として、昭和24年にスピード再開したのだった。
実質的に、伝統のノウハウも味も復活したんだろうね、きっと。
これが、いまの『永坂更科 布屋太兵衛』。

でも、この店は、うまいこと小林さんを代表とした会社組織の下に配されて、
堀井一族を役員に迎えたりしていたけど、あくまで小林さんの商才で成り立つ会社だし、
他人がどんどん儲けておもしろくないし、ということで、昭和59年、
八代目の堀井良造氏は独立して直系の店を作ることを決意。
これが、いまの『総本家更科堀井』ってわけ。

先にできた2店が主な名称を商標登録してしまっているので、商標権争いに勝てなくて、
この店は、布屋太兵衛直系の店だというのに、“麻布”も“永坂”も“布屋”も“太兵衛”も
店名に使えない、なんてことになっちゃった。
それで、「総本家」なんて嘘くさい冠と、本家本元の全然知られていない名字「堀井」を
くっつけるという、いちばん本物っぽくない店名になっちゃったというわけ。
でも、この『総本家更科堀井』こそが、ホントの“麻布永坂の更科”なのだ。

でも、2番目の『永坂更科 布屋太兵衛』は、
戦後すぐに始めたし、開店当初は本物の布屋の人間と職人を擁してできた店なので、
いまは堀井家の血は流れていなくても、元祖・布屋の蕎麦屋としての体液は流れているかも。
つまり、味やサービスはより元祖に近いのかも、ということ。
まあ、伝統をきちんと守っていたら、のハナシだけど。

本家本元の「信州更科蕎麦処 布屋太兵衛」は、
いくつかの支店を残しているんだよ(いまでもやってるとこ)。

●明治20年に血縁分店第1号として生まれた、「布屋丈太郎」→ 現『神田錦町更科』
●明治32年に初の支店として生まれた、「麻布永坂更科支店布屋善次郎」→ 現『さらしなの里』(築地)
●昭和38年に有楽町更科から分れた、「布屋恒次郎」→ 現『布恒更科』(南大井、築地支店もあり)

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※2
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[更科堀井の季節の変わりそば]

1月4日~8日 / 桜海老切
1月9日~31日 / 柚子切
2月1日~28日 / 春菊切
3月1日~3日 / 三色そば
3月4日~15日 / ふきのとう切
3月16日~4月10日/ 桜切
4月11日~30日 / 木の芽切
5月1日~10日 / 茶そば
5月11日~23日 / よもぎ切
5月24日~6月5日 / 紅花切
6月6日~20日/ 蓼切
6月21日~30日 /トマトつなぎ
7月1日~7日 / 笹切
7月8日~31日 / 青海苔切
8月1日~31日 / しそ切
9月1日~21日 / 青柚子切
9月22日~10月9日 / 菊切
10月10日~31日 / くこ切
11月1日~21日 / くちなし切
11月22日~30日 / 柿の葉切
12月1日~30日 / 柚子切

※12月21日・22日のみ、かぼちゃ切

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●『更科堀井 立川店』
東京都立川市曙町2-5-1 伊勢丹立川店 8F
042-540-8273
11:00~22:00
ランチ営業、日曜営業
定休日/不定休(伊勢丹に準ずる)


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