「ビックラゲーション」って、知ってるかい?


本を片付けていたら、こんなのが出てきたよー。

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学校帰りに、本屋でよく立ち読みしたなあ。
その本屋、もうなくなっちゃったけど。

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●故郷からなくなったもの


駅前のダイエー

駅ビルの丸井今井

鶴丸デパート

母校の古い校舎

友達家族が住んでいた社宅、テニスコート

親友の実家

オーダーメイドのテーラー

布団も売っていたおもちゃ屋

でっかいスピーカーのあるジャズ喫茶

うまいけど、ものすごく辛いカレー屋

同級生の親が営む帽子専門店

福福饅頭をふかしてた食堂

銭湯の前でゆでトウキビを売ってたおばちゃん

今川焼きの甘太郎

F畳店

W呉服店

N青果店

水すましのいた池

とんび、野うさぎ、シマリス、赤トンボ

親友の実家

寒い冬の夜に、彼女と初めて〇〇した道

初めて〇〇した、丘の上の古い展望台

母のまな板の音

父の怒鳴り声



・・・だんだん思い出だけになっていくなあ
だんだん忘れていくんだろうなあ







♪ 青春 / Off Course





♪ 老人のつぶやき / Off Course





♪ 汐風のなかで / Off Course




ふかいことをおもしろく ~ 『吉里吉里人』


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●『吉里吉里人』
井上ひさし(いのうえ・ひさし)
1981年 新潮社
※イラスト:安野光雅



初版の発刊は、1981年かあ。
思い出すなあ、あの頃。

友達に、なまらおもしれーぞ、って勧められて読んだんだっけ。

本屋で現物を目にした時は、ビビッたよ。
だって、ハードカバーのいわゆる単行本サイズで、800ページ以上もあったんだよ。
背表紙の厚さを見ると、辞書並み!
しかも、中を開いてみるとなんと、ページの文字組みが2段組み!
当時の僕は、1冊でこんなに分厚い本は見たことがなかったんだな。

「えーっ、これホントに読めんの?どんだけ日にちがかかるんだろ」、
なんて不安になったんだけど、別の友達も、あれはおもしろい!って
言っていたのを思い出して、思い切って買ったんだったなー。

でも、読み出したらけっこうスイスイ行ける。
しかも、ものすごくおもしろい。
おもしろい、というのは、ストーリーに惹きつけられるという意味でもあるけど、
主にゲラゲラ笑える、という意味。
1週間くらいで、バーッと読んじゃったなあ。

あ、いまは文庫で上・中・下で出てるねー。
それぞれ、500ページくらいあるけど。(笑)



ストーリーを簡単に書けば・・・
東北にある「吉里吉里(きりきり)」という村が、
日本国から独立しようとするハナシだよ。

吉里吉里村は、岩手県に実在する地名だけど、
どうも地理的にはズバリそこにハマるわけではなく、
その近辺の架空の村という設定になっているみたい。

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その吉里吉里が、ある日突然、独立宣言をするんだけど、
独立するための準備や体制を整えたり、日本国からの妨害などがあったりして、
いろいろなことが起こるといった内容だね。
それが、実にユーモラス、かつアイロニックに展開するんだなー。

第33回読売文学賞、第13回星雲賞、第2回日本SF大賞を受賞。
“SF“ って言っても、この小説の場合は、スターウォーズみたいな
“Science Fiction(空想科学小説)“ じゃなくて、
社会的なテーマを語るという意味で、“Speculative fiction(思弁的創作)”
というジャンルに入るのかな、この小説は。
違うかなあ?
要は、科学とか宇宙じゃないけど、ファンタジーってこと。
SFの定義って、難しいんだよな。

なんか、難しそうな感じになっちゃったけど、全然そんなじゃないよ。
全篇おもしろおかしい、マンガみたいなハナシ。
終始、笑わせてくれるんだよ。



この小説の笑えるポイントは、3つあると思う・・・
一つ目は、方言をいじくり倒した “言葉遊び”
東北弁を標準語に訳してすっとぼけたりして、これはホントおっかしい。
でも、ちょびっと知的な遊びって気がするのが、井上ひさし節なんだろね。

二つ目は、登場人物のキャラのおもしろさ。
さすが、演劇の世界で長いこと活躍してきただけのことはあるね。
キャラクターの設定は明確で個性的。
みーんな、愛すべき変な人なんだなー。

三つ目は、含み笑いさせられるブラック・ジョーク
日本国に反抗して独立しよう、ってんだから、
おのずと日本の政府や、制度や、行政なんかをおちょくることになるわけ。
欧米風の風刺画を連発して見せられるようなおかしさもあるんだね。

で、腹を抱えながら読んでいくことになるんだけど、
だんだんと「んー、このハナシはそれほど荒唐無稽でもないかなー」、
なんて気になってくるから、コワイよねー。
“ふかいことをおもしろく“ の井上爆弾が炸裂するんだなー。

沖縄米兵少女暴行事件や米軍用地特別措置法問題などがあった '90年代後半に、
沖縄でこの本のリバイバルブームがあったらしいよ。
「日本政府が非協力的なら、我々は独立しようぜ」という気運があったんだよね。
いや、今でもあるのか。



これを読んだからって、「日本だって、アメリカから独立しようぜ」とか
「政権、変えようぜ」なんて気になるわけがないじゃん。
ひたすら、笑って読みましょうや。
・・・ってか







“ Stop Whispering “ / Radiohead





“ Inside Looking Out “ / Grand Funk Railroad




『記憶スケッチアカデミー』 記憶は偉大なコメディアン



001表紙

●ナンシー関の『記憶スケッチアカデミー』
ナンシー関(なんしー・せき)
2000年
株式会社カタログハウス



この本は、ある方法によって、ヒトの断片的な記憶をアウトプットさせることで、
脳の深層に潜む心理を科学的に分析しようとするものである。
・・・というのは真っ赤なウソ。
めっちゃ笑える “絵本” のようなものなのだー。

『通販生活』っていう、カタログ誌があるよね?
それの読者投稿コーナーだったものを再編集して単行本化したんだね。
知ってる人も多いかもしれないけど。

ナンシー関が、毎回、「お題」 を出す。
たとえば、「かえる」とか。
それに対し、読者がハガキに、かえるを “記憶だけを頼りに“ 描いて、投稿する。
・・・という、一見、ホントに大丈夫かよという趣向だけど、
これが、めっちゃおっかしい!



お題:ペコちゃん

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お題:ウルトラマン

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お題:パンダ

004パンダ



・・・ってな感じ。
ウチなんか、大人も子供も友達も親戚も、大笑いしちゃいました。
一家に一冊、おすすめ。

みょうちきりんな絵はもちろん、
それに添えたコメントがおもしろいんだよねー。



ナンシー関(なんしー・せき)
1962年青森県生まれ。
2002年6月12日(満39歳)没。
消しゴム版画家、コラムニスト。
主な著書、『耳部長』(朝日新聞社)、『テレビ消灯時間』(文芸春秋)、
『何がどうして』(世界文化社)



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更新遅いけど、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


『電子書籍の衝撃』 本はいかに崩壊し、いかに復活するか?



電子書籍の衝撃

●『電子書籍の衝撃』 本はいかに崩壊し、いかに復活するか?
佐々木 俊尚(ささき・としなお)
2010年
ディスカヴァー携書(株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン)



「本がなくなるって?そりゃ困るなあ。タブレットって固いから、ベッドで読んでて
寝ちゃって顔に落ちたら痛いよな」って、そういう問題じゃないス。

本が全部電子化されたら、紙屋さんは儲からなくなるし、印刷屋さんも減収、
トーハンや日販もいままで通りにはいかなくなるし、本屋さんはどんどんなくなるし、
出版社や編集者はどうなるんだろう、ってな大問題なんだよ。

逆に、著作者は印税収入が増えそうだし、
読者は書籍を安く買えるようになるかもしれないな。

それより、作る側は大がかりな先行投資が不要になるから、
誰でも本を出版できるようになるよね。
これは、革命的!

反面、どんな内容でもどんどん発刊されるから、
何が正しくて何が間違っているのか判断が難しくなるし、
ネットって、情報がフラットに大量に流されるから、
僕らは何を参考にして書籍を選べばいいのかわからなくなるね。
間違った情報や、つまんない物語を買ってしまう可能性が高まるのかなあ。

これまでは、出版物って、書く人がいて、なんとか賞などの評価システムがあって、
編集者などの納得があって、出版社や流通や小売店の理解があって、
何人もの評論家や作家のエールがあって・・・
たくさんの人の「これは出版の価値がある」という太鼓判を押されることで
社会的にオーソライズされて本になってきたわけでしょ?
書店に並んでいるだけで、なんらかの存在価値があるんだ、ということが肌でわかったんだね。

その過程がごそっとなくなるか簡略化されるから、ネットの画面に本が並んでいても、
なんだかさっぱりわからない、ということになりそうだね。
ネットの「ランキングもの」や「比較もの」、「レビューもの」が人気になるのも
この辺に理由があるんだと思うな。

逆に、「村上春樹ならなんでも買う」というような買い方とは別に、
「おもしろければ、主婦がケータイで書いた小説だって買う」といった現象が起こってくる。
コンテンツの時代とか言われてきたのは、そういうことだよね。
でも、ケータイ小説が売れたのには、別の理由があるとこの本の筆者は言っている。

筆者の佐々木さんは、コンテンツから “コンテクスト(文脈)” の時代になった、と言っているんだ。

それはちょっとした比喩的な言い方であって、
マスメディアが発する作者情報や作品情報を頼りにするんじゃなくて、
その作者がネットの世界を通じて、「どんな考え方やどんな活動をしているのか」、
「どんな属性なのか」、「どんな人柄なのか」、
「その作品がみんなからどんな口コミを得ているのか」など、
その作者や作品の中身ではなくその周辺の “脈動”というか、
“みんなでわかり合う、関わり合う、生き方やあり方”
人の心を動かす要素になる、ということだと僕は解釈したね。

主婦のケータイ小説で言えば、
その中身がおもしろかったのではなく、
「素人が」、「ケータイで連載アップする新しいスタイル」や「フツーの人の話のリアリティ」、
「それに対してレビュアーがレスを繰り返すことによる盛り上がり」、
そうこうしながら、「仲間化、ファン化」が増殖して、
「自分たちの要望で書籍化する」など、
“自分たちが関わって、その小説が盛り上がって、中身が書籍化されるまでの文脈”
がおもしろかったから
、みんなその小説を買った、ということだということ。

これは、売る側が仕掛ければ「マーケット・イン」というやり方になるんだけど、
ケータイ小説の場合は自然発生的というか自発的というか、
そこんところが “熱く” なれる原因なんだろうね。

宣伝やPRに関わる人間にも、↑この辺がこれからの仕事の大切なポイントになるに違いないな。

そういえば、音楽出版の世界はとっくの間にそれが進行しているんだね。
iTunes などの大手音楽配信プラットホームの成功はもちろん、
僕らが全然知らないのにネットで大人気で、自作自演自録りの曲をネットで販売して
ビジネスを成立させている人もいるのだ。

この本は、2007年頃からアメリカで本格化した電子書籍ビジネスや音楽配信ビジネスを例に、
今後、日本でどんな電子書籍の嵐が吹き荒れるのかを示唆している。
2010年発刊だから、ハナシの内容が古くなっていそうな気がするけど、
2013年現在、日本では電子書籍の本格化はまだまだこれからといった感じだから、
“出版物の電子化” というものをマーケティング的に捉えたい人には、
いまこそ読むのに最適な本だと思う。

本や音楽だけでなく、雑誌や新聞、映画、ドラマ、アート、漫画・・・
ほらほら、もうどんどん進んでいるよね。
だから、あらゆるコンテンツビジネスのヒントがこの本には書かれている、と言えるなあ。
この本が電子書籍じゃないのは、どういう意味があるのかわかんないけど。

ある日突然、レコード盤が発売されなくなった。
いつの間にか、カセットテープもVHSもベータも消えた。
レーザーディスクやDATはどこへ行ったんだろう。
気づいたらMDプレーヤーが電器屋から消えてた・・・
デジタルの世界の変化は、驚くほどドラスティックだよね。

いま、タブレットを買おうかどうか迷っている人は、
この本を読んだらすぐに買っちゃうだろうなあ。