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ベトナム料理の魔法、との出会い


初めてベトナム料理を食べたのは、
たしか、1984年か '85年だよなー。
けっこう、早いでしょ(少し自慢)。

とても記憶に薄いんだけど、たしか新潮社から出版された
「大コラム」という小説新潮の臨時増刊号か、
'85年に刊行された同シリーズの臨時増刊号
「個人的意見・大コラム」というやつに、
ベトナム料理のことが書かれていて、
新大久保にベトナム料理の店があることを
知ったからだったと思う。

東京じゅうのエスニックレストランを知ってたわけじゃ
ないんだけど、たぶんその頃はベトナム料理を
食べられる店は、ほとんどなかったんじゃないかと思う。

休みの日にトボトボ歩いてたどり着いたその店は、
もちろん混んでなどいなかったよ。


そのコラムでは、たしか(また、たしかかい)、
オムレツみたいな「バンセオ」と、
揚げ春巻き「チャージョ」生春巻き「ゴイクン」
3つが紹介されていて、他のメニューはまったく
知らなかったので、迷わずその3つを注文したはず。

生春巻きは、千切りのキュウリやニンジン、パクチー、
ニラ、春雨、茹でたエビなんかをサニーレタスで
棒状にくるんで、それをさらに軽く茹でたライスペーパーで
春巻きみたいに包んだやつ。

それを手でつまんで、いまでいうスイートチリソースに
つけてかぶりつく。
一口食べて・・・
「うおっ、こんなにうまい食い物が、この世にあったのか!」
って思ったね。

揚げ春巻きは、生春巻きの中身から、茹でたエビを抜いた
ような中身で、それを一口サイズくらいにライスペーパー
でくるんで、油で揚げたもの。

これは、揚げたてを手でサニーレタスで包んで、
やはりスイートチリソースにちょぼんとつけて頬張る。
「むむっ、こんなにうまい食い物が、この世にあったのか!」
って思ったよ。

オムレツのほうは、生っぽいモヤシと、炒めたひき肉と
タマネギ、パクチーなどを、玉子をたくさん入れた
クレープ生地でオムレツみたいに挟んだもの。
ベトナム風お好み焼きって、言われているのかな。

これも、手で適当な大きさにちぎって、
サニーレタスで包んで、スイートチリソースに
ぺちゃんとつけて口に運ぶ。
「うひゃ、こんなにうまい食い物が、この世にあったのか!」
って思ったんだな。

なんてこったい!
ベトナム料理って、こんなんかい。
生野菜がふんだん使われていてヘルシーなうえに、
なんといううまさだよー。

でもさ、どれも特にすごい食材など使われていないよね。
エビは入っているけど、伊勢海老だとか車海老だとか
というわけではないし、特上の牛肉だとか、
フォアグラだとか、スモークサーモンだとか、
料理の味や香りを司るメインが入ってないのだ。

まるで、腕利きの脇役だけを集めて作った映画。
主旋律のない極上のハーモニー。
なんて不思議で、うまい食いもんなんだろうって思ったよ。


どんなマジックが隠れているんだろう、
ということでよく見ると、この3つの料理に共通しているのは、
口に入れる前に、ちょぼっとつける “タレ” なんだな。

「そうか、こいつがヌシだったのかー」って、
指ですくってなめてみると、甘い!
そして、辛い、そして少し臭い、しかし、うまい!

すかさず、お店のベトナム人らしきおばちゃんに、
「これは、どうやって作っているの?」
って聞いてみたね。

たどたどしい日本語で、
「ニョクマムを水で薄めて、砂糖とレモンと刻み唐辛子とニンニク」
だとのこと。
ニョクマムとは、その大コラムに “しょっつるのような魚醤”
でベトナムの醤油、って書かれていた
ので、
下味とかスープ系に使われるんだろうと思っていたんだけど、
「おお、こういう使われ方をしているんだ」って気づいたね。

そうか、そうか、こいつがこのベトナム料理の
ハーモニー世界のコンダクターだったのか、
というわけでちょっと実験してみることにした。
こいつをモノにしたら、どんなものだって
ちょいとつけるだけで、
「こんなにうまい食い物が、この世にあったのか!」
になるんじゃないか!って思ったんだよ。

まずは、サニーレタス。
サニーレタスのみをつまんで、このタレをつけて
食べてみたら・・・うぬぬ、そんなにすごくうまい
というほどでもないじゃないか。

次に、揚げ春巻きだけをつまんで同じことをしてみたら、
うむむ、これも驚くほどうまいというわけでもない。

おかしいな、そんなはずはないとムキになって、
今度はちぎったオムレツだけでやってみたら、
うにょにょ、これも大したことはない。

不安に襲われながら、次には揚げ春巻きとオムレツを
サニーレタスで包んで、タレをつけるデフォルトな
やり方で食べてみると・・・おおーっ、これだこれだ、
ちゃんとすごくうまいではないかー。

念のために、春巻きとオムレツをサニーレタスで
包んだだけの、タレをつけないやつもほおばって
みたけれど、これは全然味気がないのだ。

わいはー、やはりハーモニーなのだっ。
この時僕は、ベトナム料理には、いや料理というものには
とてもデリケートで絶妙・深遠なバランスが生み出す
神なるハーモニーというものが存在することを
教えられたのだったよ。


それから、何年か経って、タイ料理にも “ナムプラ” という
魚醤が存在することや、あのタレが自分で作らなくても
“スイートチリ” という名称で売られていることを
知ったのさ。

時々買い求めて、鶏の唐揚げや魚のフライなんかに
かけて食べたりするんだけど、やっぱりゴイクンや
チャージョ、バンセオほどは美味しくないね。

食い物はその地域の人々の知恵であり、文化であり、
芸術なのだ、という理性に基づけば、
ベトナムやベトナム人にはどっか他の部分にも、
デリケートで絶妙・深遠なバランスで人を魅了するものが
息づいているに違いないと勘ぐっているんだけど。
なんちゃってね。



仕事仲間の知人が、ベトナムの方と結婚して
開業したというベトナムレストランに行ってきたよー。
ちょっと応援してやろうと思ってね。
今年の春だけど。


001コムトゥアン外観.jpg
お洒落な一軒家タイプ


002コムトゥアン入口.jpg


003ビール.jpg


004奥のテーブル.jpg
入口すぐ左に、10人掛けのテーブル
僕が行った時には、2家族くらいのグループが
わいわいやっていたよ


005手前のテーブル.jpg
お店に入って正面に、4人掛けのテーブル
僕が座ったところは、キッチンに向かった
カウンターで3人くらい座れる感じ


006サラダ.jpg
ランチセットの「牛フォーとベトナム春巻き2種のセット」
1,200円也を注文。
まずは、干しエビのサラダが出てきたよ


007セット全景.jpg
右が生春巻き(ゴイクン)、左が揚げ春巻きだけど、
こんなにでかい揚げ春巻きは初めて見た。
包む用のサニーレタスがついてないで、
あのハーモニーが醸せるのか?


008春巻き.jpg
“タレ” はたぶん、唐辛子を漬けといたニョクマムを
水で割って、辛みをつけて砂糖を加えて、
刻みニンニクを振ったものだろうなー。
んー、刻み唐辛子のいっぱい入った、
もっと辛いやつがよかったなあ


009ついだビール.jpg
ベトナムのビールもうまい!


010牛肉のフォー全景.jpg
メインは牛肉のフォー。
牛肉か牛骨できれいにとったダシがきいている。
透き通っていてさっぱりしてるのに、
牛ダシのうまみがじわっとくる


011牛肉のフォーアップ.jpg
上質な牛の薄切りロース肉に、みるみる熱が通ってくる


012ランチメニュー.jpg



●コム トゥアン
東京都小平市花小金井1-18-9
042-458-3274
11:00~15:00 17:00~22:00(L.O.21:30)
定休日/日曜







♪ Winelight / Grover Washington Jr.





♪ The Shadow Of Your Smile / Ron Carter





♪ AIM TO PLEASE / The Jan Holberg Project ft Senri Kawaguchi









013航空公園への跨道橋.jpg


014航空公園駅前の夜店.jpg


ちょっと、ぶらーっと


ついこのあいだの休みの日、カメラを持って散歩へ。


001紅屋.jpg


できるだけ歩いたことのない道を探して、
住宅街を縫うようにして歩いていたら、
グレーの鍔つきの帽子を被ったじいさんが
歩いていたんだよ。

横を抜き去ろうとしたら、ぐい、と寄って来た。
「すみません、駅はどっちでしょうか?」

外を歩いていると、よく道を聞かれたりするんだよなあ。
平日に仕事で移動中でも、休みの日でもけっこう
捉まるんだよ、昔から。

で、なぜか外国人が多いような気がする。
しかも、白人。
英語がそんなにできるわけでもないし、
そんなに外をぶらぶらしてるわけでもないのに。

外国人に道を聞かれやすい風貌とかあるんだろうか?
でも、今回は日本人のじいさんだわ。

「んーと、この辺からだとどこの駅にも近くないけど、
どこへ行くつもりなんですか?」
「石神井公園」
「んーと、西武池袋線だよね」
「はい」
「だったら、所沢駅がいいですね」
「ああ、西武線だったらどこの駅でも大丈夫です」

・・・と言っているけど、全然大丈夫そうには見えない。
現に、道に迷っているんだろ、
西武新宿線の電車に乗ったとして、
この昭和レトロじいさんは池袋線に
乗り換えられるのかい?

002行き止まり.jpg


「わかった、所沢駅まで一緒に行きましょう。
僕も所沢駅まで行こうと思って歩いていたんです」
「はっ、ありがとうございます!」

「けっこう遠いけど、大丈夫?」
そうして、僕らは家の建て込んだ路地を
ひたすら歩いた。

「石神井公園へは、何しに?」
「住んでるんです」
「へ? じゃ、石神井公園から所沢へ来たんだ?」
「はい」

「所沢へは、何しに来たの?」
「ちょっと、呑みにでも、と思って」
「・・・って、まだ昼飯どきだよ。石神井公園の駅の
付近にだって飲み屋はいっぱいあるんじゃない?」

「ありますが、ちょっとぶらーっと、
遠くへ行きたい気分で」
「ふーん」
「昔はよく所沢へ来たんだけど、
駅から出たら道に迷ってしまって」

迷うにも程がある。
「駅までは、まだ20分くらいかかるよ」
「最近、頭がおかしくなってねぇ」

いわゆる “徘徊老人” というやつか、って思ったんだけど、
会話の内容はそんなに変な感じはしないよな。
「ホントに頭がおかしな人は、最近、頭がおかしいかも
なんて言わないでしょう、そういう人はたいがい
オレは頭がおかしくなんぞねえ、って言うんですよ」
「わはは」

「あ、ここはさっき通ったところですな」
ちゃんとわかっているのだ。

003あまのや.jpg


駅近くの商店街にたどり着いた時、じいさんは言ったよ。
「お礼に、この辺でビールでも一杯どうですか」
「んー、まだ昼間だし、夕方から少し片づけたい
仕事もあるしねぇ」
「ああ、そうですかあ」

「ほら、あそこが所沢駅のエスカレーターですよ」
「ああ、わかります。もう、帰れます」
「ん、改札まで行ける? キップ買える? 池袋線のホームわかる?」
「わかります、わかります」
「んー、ついでだから、券売機のところまで
一緒に行きましょう」

「ほらほら、石神井公園までなら240円ですよ。
池袋線だから3番線ですよ、行けます?」
って、振り返ってじいさんを見ると、
黒っぽいウェストポーチから千円札の束をごそっと
つかみ出して、こちらへ突き出しているではないか。

「お礼と言ってはなんですが、受け取ってください」だと。
「いやいや、いらない、いらない、そんなつもりは
毛頭ないんですよ、ちょうど僕も駅まで歩くところ
だったんですから」
「でも・・・」
「いいから、物騒だから早くしまって、
石神井公園に着いたら、それでビール呑むんでしょ?」

それから、じいさんは僕に礼を言って、
改札を通って3番線のほうへ歩いて行ったっけ。



後から振り返れば、その日は「敬老の日」だったんだ。
僕は、いいことをしたと思っていたんだけど、
そうではなかったのかもしれないなあ。



ちょっと、ぶらーっと出かけたくなって・・・
住宅街をジグザグ30分ほど歩いて遠くの駅へ・・・
じいさんも僕も、やってることは同じこと。


004枯葉.jpg


005彼岸花.jpg







♪ Uncleあるちゅうの唄 / ふきのとう





♪ Alone Again / John Lennon





♪ 白いページの中に / 柴田まゆみ




プロフィール

つかりこ

Author:つかりこ
北海道生まれ。広告制作会社勤務。スポーツ、飲み食い、音楽、読書、映画などなど、興味がゆらゆら。

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