先に戦闘準備したほうの負け、という時代かもよ、金さん ~ 『アイ・イン・ザ・スカイ』


「戦争」っていうと、フツーどんなイメージが浮かぶんだろう。

丘の上にあるコンクリートのトーチカに向かって、
ライフルを構えて突撃を繰り返す歩兵隊?

木造家屋が密集するエリアに、
数百発もの爆弾を絨毯爆撃するB-29?

塹壕のある、草のない野原に兵士たちが伏せて、
速射砲の砲弾をかわしながらライフルを撃ち合うようす?

平坦な浜に乗り上げた鉄の船から走り出す数千もの海兵隊員が
陸上の機関銃で撃たれて次々となぎ倒されて、
砂浜が真っ赤に染まっていくさま?

市街地に突入した戦車に、爆弾を抱えて轢かれに行く戦士?

鉛色の海に鈍重に浮かぶ戦艦が、幾十もの戦闘機に爆撃を受ける姿?

海面下の原子力潜水艦から勢いよく弾道ミサイルが発射されるの図?

街の何万人が巨大な閃光を浴びて、
逃げる間もなく血管の血液が沸騰して亡くなっていく地獄絵?・・・



この映画は、現代の戦争がまったくそんなんじゃないことを教えてくれる。

現代の戦争とは、一つはテロのことなのだ。
テロを起こすやつと、それを未然にアタックして防ぐやつの戦い。

いままさに爆弾付きジャケットを着ようとするテロリストを見張るのは
人口衛星の高精度カメラと、室内に忍び込ませた蜘蛛型のロボットカメラ

対する武器は、高度7,000mを飛行するMQ-9リーパー(軍事用小型ドローン)
から発射されるミサイル弾。

敵は某中東人、だのに戦地はケニア。
作戦を指揮するのはロンドンにいるイギリスの国防省だけど、
作戦を実行するのはアメリカ・ネバダ州の基地にいる米軍の
ドローン・オペレーターだ。


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002爆撃オペレーター.jpg


イギリスの作戦室にも、アメリカの作戦室にも、
それぞれ国防参謀長や政務官を同席させていて、
遠方にいる国務長官や外務大臣ともオンタイムで
連絡をとれるようになっている。

テロリストのいる現地に詰めた実働部隊は、
最終的にはケニア人の現地工作員たった一人だけ!
スマホでロボットカメラを操作して、
映像をアメリカとイギリスの作戦室に送っているだけなんだよ。

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そう、この映画は、いわゆる「精密爆撃」を描いているんだな。
「精密爆撃」とは、当該軍事目的に関わる施設や罪人だけを
爆撃ターゲットにするピンポイント爆撃のこと(これに対する言葉は「都市爆撃」)。
関係のない一般人をできるだけ巻き込まない、というのが
この攻撃のミソなんだな。

ところが、テロリストのミーティングなんて、
人里離れた山奥なんかでやるわけがなくて、
わざと民間人の集まるところでやったりするから厄介なのだ。

そうすると、爆撃を実行するほうは・・・

①たとえそのテロリストを討ち逃して、
そのためにテロが実行されてしまい、
たくさんの被害者が出るとしても、
その爆撃では絶対に民間人の犠牲者を出さないことを
第一義とするのか?

ごく少数の民間人の犠牲が出たとしても、
大量の人が死ぬかもしれないテロを防止するほうを優先
して
爆撃を断行するのか?

・・・少なからず迷ってしまうのだ。
この映画では、さまざまな責任者に意思決定を促し、
最後の最後まで民間人の安全を突き詰めて作戦が実行される。

観てないんだけど『ドローン・オブ・ウォー(Good Kill)』っていう
映画と似ているのかな、この映画?

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でも、映画ではなくて、実際の作戦時にそうなったらどうするのか?
NHKの戦争特番で、アメリカの軍事関係者が言っていた。

「現代の爆撃だって、我々の先人が第二次大戦の時に、
“第一次大戦の時のような残虐な無差別攻撃はやめよう” と言いつつ
日本の民間人を空襲で殺戮したのと同じことが行なわれるだけ」
と。

有事になれば、戦争とはそういうものなんだろうな。



スネイプこと、故アラン・リックマンに合掌。





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●アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場(Eye in the Sky)
2016 イギリス
上映時間:102分
監督:ギャビン・フッド
脚本:ガイ・ヒバート
製作:ジェド・ドハーティ、コリン・ファース、デビッド・ランカスター
製作総指揮:ザヴィエル・マーチャンド、ベネディクト・カーヴァー、
      クローディア・ブリュームフーバー、アン・シーアン、ガイ・ヒバート、
      スティーヴン・ライト
撮影:ハリス・ザンバーラウコス
編集:ミーガン・ギル
美術:ジョニー・ブリート
音楽:ポール・ヘプカー、マーク・キリアン
製作会社:エンターテインメント・ワン(英)、レインドッグ・フィルムズ(日)
配給:ファントム・フィルム
出演:ヘレン・ミレン、アーロン・ポール、アラン・リックマン、バーカッド・アブディ、
   ジェレミー・ノーサム、フィービー・フォックスイアン・グレン、
   ギャヴィン・フッド、モニカ・ドラン、マイケル・オキーフ ほか
受賞:2016年英国映画賞/脚本賞受賞(ガイ・ヒバート)





♪ AFTER THE GARDEN / NEIL YOUNG





♪ フランシーヌの場合 / 新谷のり子




そんな遊びは禁じよう ~『禁じられた遊び』


終戦記念日といえば、反戦映画かな。

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野口久光 作


なんだかんだで、5回目くらいかな、コレ観たの。
もう、どんな映画かってわかっていたつもりでいたんだけどなあ。

「戦争に巻き込まれて、戦災孤児になってしまった女の子の悲しいハナシ」
・・・と言えば、そりゃそうなんだけど、
それじゃ、世界の名作たるこの作品のフランス映画としての
エスプリというものがまったくないじゃんか、
というわけで、もうちょい深読みしてみた。



モンダイは、戦災孤児になってしまったポーレットが
引き取られた農家の末っ子・ミシェルと “十字架遊び” をすることだよね。
そう、“禁じられた遊び” とは、この “十字架遊び” のことなのだ。
ポーレットは5~6才、ミシェルは7~8才くらいかな。

“十字架遊び” とは、身のまわりで死んでしまった犬や虫やひよこやなんかの
お墓を作ってあげることなんだな。
二人は、大人に内緒で水車小屋に、十字架を立てたお墓をどんどん作っていく。

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ポーレットは、生き物の死というものをまだよくわかっていないようだ。
まだ幼児だし、都会のパリで無菌培養的に育ってきたんだな。
田舎道を一人で歩いている時に、死んだまま抱きかかえていた子犬を
土に埋めて十字架を立ててやることで、愛する者との別離と自分の悲しい気持ちに
決着をつけることをミシェルから学んだ
ばかりなのだ。

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両親が道端でドイツ軍機の機銃掃射で死んだのはそれより少し前だったので、
どうしたらいいのかわからず、両親の体をそのままほったらかしてきてしまった。
だから、ポーレットはお墓を作ってあげる、ということに執着してしまっているのだ。
言ってみれば、ポーレットにとって十字架を立てることは、両親への愛なのだ。



ミシェルは、川べりで佇んでいたところを見つけた時から
ポーレットが大好きになっていた。
同じくらいの歳の友達や年下の子が身のまわりにいないのと、
パリジェンヌのポーレットがとっても素敵に見えたせいなんだろうな。

ミシェルは、ポーレットがとても喜ぶもんだから、
十字架づくりや墓づくりに夢中になる。
そう、ミシェルにとって十字架を立てることは、ポーレットへの愛なのだ。
だから、それがどんどんエスカレートして、
十字架を町の墓場や教会から盗むようになるし、
わざわざ虫やひよこやを殺してまで墓を作ろうとするようになる。




僕は、この映画がいいたいことの一つ、いやとても重要なメッセージが
ここにあるんだと思うんだよ。
ミシェルは結果、ポーレットを愛しているがゆえに、
他者を殺し、神をも冒涜しているんだよな。
ミシェルにとって、誰かが死に、墓に埋めて、十字架を立てることが
愛の証
になっているんだな。
何と言う皮肉。

村上龍さんの古いエッセイか何かに、
「地球上から女がいなくなれば、戦争はなくなる」って書いてたけど、
まさか、この映画を観てそう思ったんじゃないだろうなあ。

「愛は、たくさんの犠牲の上に育まれる」って、
似たようなフレーズをよく聞くけど、いやいや、
僕が言いたいのは男女の愛のことではなくて、
国や同邦人に対する愛、ナショナリズムみたいなもの。

つまり、自ら(自国)を愛すれば愛するほど、
他者(他国)により多くの犠牲を強いることになる、
神をも冒涜することになる。

そんな、ジレンマというか戦争の本質みたいなものを
この映画は描いているんだろうな、ということ。

そうだよな、自国の土地や文化や宗教や民を愛するがゆえに
指導者って戦争をやらかすもんなんだよなあ。
マジで、愛こそがすべてのいざこざの元なのかものかもしれないなあ。
「LOVE&PEACE」なんて、儚いものだからこそ標語になるのかもなあ。



戦争は、“十字架遊び” 。
誰か禁じてくれる大人はいないもんだろうか。

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●禁じられた遊び(Jeux interdits)
1952 フランス
上映時間:87分
監督:ルネ・クレマン
製作:ポール・ジョリ
原作:フランソワ・ボワイエ
脚色:ジャン・オーランシュ、ピエール・ボスト、ルネ・クレマン
台詞:ジャン・オーランシュ、ピエール・ボスト、フランソワ・ボワイエ
撮影:ロベール・ジュイヤール
編集:ロジャー・ドワイア
音楽:ナルシソ・イエペス
セット:ポール・ベルトラン
配給:東和
出演:ブリジット・フォッセー、ジョルジュ・プージュリー、リュシアン・ユベール、
   ジュザンヌ・クールタル、ジャック・マラン、ロランス・バディー、アメデー、
   ルイ・サンテーブ、ピエール・メロヴィー、アンドレ・ワスリー ほか
受賞:第25回(1952年)アカデミー賞 名誉賞受賞(いまの外国語映画賞)
   第7回(1953年)英国アカデミー賞 総合作品賞受賞
   第13回(1952年)ヴェネツィア国際映画賞 金獅子賞受賞
   第18回(1952年)NY批評家協会賞 外国映画賞





♪ Romance Anónimo/ Narciso Yepes




真夏の夜に、冷えすぎない涼をどうぞ 3/3


◆クリーピー 偽りの隣人(Creepy)

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2016 日本
上映時間:130分
監督:黒沢清
脚本:黒沢清、池田千尋
原作:前川裕『クリーピー』
製作総指揮:大角正
エグゼクティブプロデューサー:黒田康太
プロデューサー:深澤宏、住田節子、赤城聡、石田聡子
撮影:芦澤明子
照明:永田英則
編集:高橋幸一
美術:安宅紀史
装飾:山本直輝
録音:島津未来介
音効:柴崎憲治
音楽:羽深由理
音楽プロデューサー:高石真美
スクリプター:柳沼由加里
助監督:海野敦
ラインプロデューサー:山田彰久
プロダクションマネージャー:小松次郎
製作会社:「クリーピー」製作委員会(松竹、木下グループ、
     アスミック・エース、光文社、朝日新聞社、KDDI)
制作会社:松竹撮影所
配給:松竹、アスミック・エース
出演:西島秀俊、竹内結子、川口春奈、東出昌大、香川照之、
   藤野涼子、戸田昌宏、馬場徹、最所美咲、笹野高史 ほか
受賞:第90回キネマ旬報ベスト・テン(2017年)
   ・日本映画ベスト・テン第8位
   第71回毎日映画コンクール
   ・男優助演賞、監督賞、撮影賞、美術賞、録音賞 ノミネート
   第66回ベルリン国際映画祭 正式出品作品
   第40回香港国際映画祭 クロージング上映作品


クリーピーって、どういう意味?

不意を襲われて、心臓がドキッとするようなことは、ほとんどないなあ。
不穏な予兆のせいで、恐怖が忍び寄るというのもないかあ。
予測のつかない展開で、次々と謎が明かされていくおもしろさ
というのもないなあ。
最初からバレバレだもんな。
凍り付くような結末、ということもないわさ。

じゃ、何がコワいんだよ、ってことになるけど、
それはずばり、香川くんの演技だよなー。
これは、コワい!

タイトルの “クリーピー” というのは、Google 翻訳で調べると
creepy = 不気味 っていう意味だな。
うんうん、香川くん、超不気味!

香川くんが好きとか、香川くんって演技すごいよね、
って思っている方なら、必見だなー。

なんせ、この映画を観た「ニューヨーク・タイムス」のマノーラ・ダーギスという記者(?)が
今年の1月に香川照之を「第89回アカデミー賞の主演男優賞にノミネートされるべき5人」
の1人に選出した
というくらいなんだから。
https://www.nytimes.com/interactive/2017/01/06/movies/critics-oscar-nominees.html?_r=0

情性欠如した性格異常」っていうの?
常に飄々としていて、恐ろしいことをつらーっとやっちゃうんだよな。
ニコニコしていても、異常さ、不気味さが常に彼のまわりに漂っている、って感じ。
そりゃもう、すごい!



元刑事、いま大学で犯罪心理を教える教授をやっている高倉は、
夫婦で新居に引っ越してきた。

お隣の西野さんへあいさつに行ったら、
なんだかいやーな感じの男が出てきた。
こちらの言うことにいちいち否定的だし、ハナシが噛み合わない。
怒っているのか、好意的なのか、態度もコロコロ変わる。

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その男が一人で住んでいるのか、と思っていたら、娘もいたのだ。
ある日、その娘が高倉家へ飛び込んできた。
「あの人、お父さんじゃありません。全然知らない人です」

そう、香川くんは西野という名前ではなかったのだ。
ご近所の老人夫婦に聞けば、西野宅は10年くらい前に引っ越してきたんだけど、
しばらく前から、奥さんの姿を見なくなったとのこと。

娘の苗字は紛れもなく、西野だ。
じゃ、そのコの父母はどこへ行ったの?
さらには、高野の妻はどこに行ったんだ?!

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高倉は、犯罪心理学者として、警視庁刑事の後輩と
8年前の「日野市一家3人失踪事件」の捜査を続けていた。

ある家の家族4人のうちの3人が失踪したままの事件だけど、
残された娘のあいまいな証言から、
高倉は、その家の隣の水田という男がその3人の失踪に関わる
犯人ではないかと睨んでいた。
「家族3人が失踪する前日に、水田がウチを眺めていた」と
残された娘が証言しているのだ。
しかし、いまはその水田家の住人も行方不明だから埒が明かない。

ところがある日、その水田家の中から、
失踪したと思われていた3人と水田家の夫妻2人が、
遺体で発見された
のだ。

え? じゃ、水田を名乗っていた男はいったい誰?
どこへ行ったの?

高倉はある時、この事件の被害者の家と水田家の配置が
いまの自分の家と西野家の配置がそっくり
なことに気づく。

被害者宅(3名不明、娘1名生き残り) = 高倉宅(高倉夫妻)
水田宅(被害者3名の遺体+水田家2名の遺体+行方不明のニセ水田1名)
 = 西野宅(行方不明の西野夫妻+西野娘+ニセ西野1名)

・・・高倉夫妻は、遺体になるということか。
行方不明のニセ水田とニセ西野は、同一人物なのか?




原作は前川裕氏の第15回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
Wikiを読むと、ホントはかなり複雑なストーリーみたい。

映画は、だいぶんシンプルに端折ってあって、
しかも、リアリティと言う意味では、納得のいかないところが
いくつかあるんだけど、まあいいか、って感じ。

だって、ちょっとくらいの不具合なら、
香川くんの演技が全部ふっとばしてくれるしぃ。

★個人的クオリティ度 6.0点
★個人的好きだなあ度 9.0点






♪ On The Road Again (Alternate Take) / Canned Heat





♪ 潮の香り / オフコース





♪ ドライブ / ケツメイシ




真夏の夜に、冷えすぎない涼をどうぞ 2/3


◆ザ・ギフト(The Gift)

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2015 アメリカ
上映時間:108分
監督:ジョエル・エドガートン
脚本:ジョエル・エドガートン
製作:ジェイソン・ブラム、レベッカ・イェルダム、ジョエル・エドガートン
撮影:エドゥアルド・グラウ
編集:ルーク・ドゥーラン
音楽:ダニー・ベンジー、ソーンダー・ジュリアーンズ
製作会社:Blumhouse Productions、Blue-Tongue Films
配給:STXエンターテインメント(米)、ロングライド/バップ(日)
出演:ジェイソン・ベイトマン、レベッカ・ホール、ジョエル・エドガートン、
   アリソン・トルマン、ティム・グリフィン、ビジー・フィリップス、
   アダム・ラザール=ホワイト、ボー・ナップ、ウェンデル・ピアース ほか
受賞:第48回シッチェス・カタルーニャ国際映画祭
   ・最優秀男優賞受賞(ジョエル・エドガートン)


ギフトって、どういう意味?

ジョエル・エドガートンの長編初監督、脚本、製作、出演!
ジョエル・エドガートンといえば、『スター・ウォーズ エピソード2』や
『スター・ウォーズ エピソード3』、『ウォーリアー』、『エクソダス:神と王』
などの役者だよね。
『ジェーン』の脚本もやってんだね。
へぇー、多才なんだねー。

この映画は、Wikiによると、サイコ・スリラーということに
なっているみたいだね。

「スリラー」というと、「ミステリー」と似た意味で、
映画・ドラマの世界では、「謎が謎を呼び、それが少しずつ解かれていく」系
の物語のことを言うんだそうだ。

でも、「ミステリー」は最後に事件解決的に謎が解明されるのに対し、
「スリラー」は最後まで謎が解明されないか、
最後に謎は解明しても、最後まで事件や問題が解決しない
もののことを
言うんだってさ。

で、「サイコ」は「心理」だから、「謎が解明されていく度、そぞーっとする映画」
というわけだ。がははー

でも、「ホラー」でも「オカルト」でもないから、
血や内臓が飛び出すような惨殺とか、突然驚かされる恐怖とか、
オバケの恐怖の映画ではないよ。
あくまで、ぞぞーっ。

ジョエル・エドガートン氏は、役者としてはフィジカル系がほとんどで、
コレ系の映画に出たことなかったと思うけど、
ご本人はこういうの好きなんだろうなー。

だってさ、すごく良くできたハナシなんだもんな。
やー、これはなかなかの名作だと思う。



ある幸せそうな夫婦がいて、夫の故郷に引っ越してくるんだな。
たしか、夫はIT系の事業に成功していて、新居もご立派。

ある日、二人で買い物かなんかに出かけた先で、
夫の高校時代の同級生にパッタリと出会う。
故郷なんだから、そういうこともあるわなー。

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後日、その同級生から高そうなワインが引っ越し祝いとして届けられる。
聞くところによると、アメリカあたりではディナーとかで招かれた時に
一緒に飲む酒を持って行ったりすることは稀にあるけど、
引っ越し祝いということで高価な贈り物を届けたりするようなことは
あまりなくて、あったとしたらそれはとっても粋なことか、
とっても奇異なことらしいんだな。

夫婦、特に奥さんのほうは、そのとっても粋なほうと受け止めて
すっかり気を良くして、彼を夕食に招く。
それからというもの、その旧友はちょくちょく高価な贈り物を
持って来るようになるんだな。
しかも、旦那のいない間に家までやってきて。

そう、だんだん不気味になってくる。
そう、この作品もこの “だんだん” というのが秀逸なんだなー。
サイコだよ、スリラーだよー。

で、奥さんは、旦那の高校時代からの親しい友人だし、
贈り物をくれるしということで好感を深めていくんだけど、
旦那のほうは妙に嫌っているところがミソなんだな。

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この映画が文脈の点で優れているのは、
何かをくれる人が不気味だというところにあると思う。
フツーこのテの映画は、破壊するとか、殺すとか
何かを “奪う” 人が不気味だからだ。
新しい!
もうそれだけで、「んー、いいね、いいね」って見入ってしまうわさ。

それから、ジョエル・エドガートンが演じる “贈り物男” に対する
自分の気持ちが、ハナシの途中からガラッと180度変わってしまう
のもおもしろかった。
ヒトって、状況によって思い込みがコロコロ変わるもんなんだねー。

そして、あのエンディング!

ギフトって、「贈り物」という意味の他に、
「神様からの授かりもの」という意味があるんだねー。
この映画を観た人には、それがどういう意味か、わっかるかなー?

★個人的クオリティ度 9.0点
★個人的好きだなあ度 8.5点






♪ Everyone's Gone To the Movies / Steely Dan





♪ Any World (That I'm Welcome To) / Steely Dan




真夏の夜に、冷えすぎない涼をどうぞ 1/3


◆インビテーション(The Invitation)

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2015 アメリカ
上映時間:100分
監督:カリン・クサマ
脚本:フィル・ヘイ、マット・マンフレディ
製作:マーサ・グリフィン、マット・マンフレディ、フィル・ヘイ、ニック・スパイサー
撮影:ボビー・ショア
編集:プラミー・タッカー
衣装:アリーシャ・レイクラフト
音楽:セオドア・シャピロ
音楽監修:ランドール・ポスター
配給:アットエンタテインメント
出演:ローガン・マーシャル=グリーン、タミー・ブランチャード、ミキール・ハースマン、
   エマヤツィ・コーリナルディ、リンジー・バージ、マイク・ドイル、
   ジェイ・ラーソン、ジョン・キャロル・リンチ ほか
受賞:シッチェス・カタロニア国際映画祭
   ・グランプリ受賞
   ストラスブール・ヨーロピアン・ファンタスティック映画祭
   ・審査員賞受賞


インビテーションって、どういう意味?

巷では評価が低いみたいだけど、なんでよー?
こりゃ、おもしろいよ。

サイコ・ホラーというやつだな。
まあ、たしかに、家の中を中心としたワン・シチュエーションものだし、
ちょっとは血が出るけど、チェーンソーで人をズバズバ切るとか、
壁から突然手が出てくるとかないし、
恐ろしい顔をした幽霊が出てくるというわけでもないので、
刺激が少ないと言えばその通りなんだけど、
この “不穏な空気” の描き方には脱帽だなあ。



あるカップルがいて、ある日、その男のほうにディナーの招待状が届く。
2年前に別れた、元妻からだ。
実は元妻のほうも、新しい恋人と暮らしているようだ。

元夫婦は、ある辛いことがあって別れてしまったんだよ。
喧嘩別れをしたわけではないので、
お互い憎しみ合っているというようなことはなく、
元妻の身辺で、何かいい進展でもあったんだろうなということで、
元夫はいまの恋人を連れて出かけていく。

かつての我が家に着くと、そこには旧友夫婦たちも集まっていた。
全部で10人くらい集まったのかな。
別れる前にずどーんとふさぎこんでいた元妻も、すっかり明るくなっていて、
みんなは思わぬ再会を喜び、和やかなパーティが始まろうとしていた。

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でも、元夫だけはなんとなく違和感を感じ始める。
住み慣れたはずの家の感じや、旧友たち以外に招かれている人のようすが
かすかだけど変な感じなのだ。
それが、時間が経つにつれ、少しずつ確信めいてくる・・・。

そう、この “不穏な空気” こそ、この映画の優れたとこなんだよ。

でも、「なんだー、ホラー映画によくあるワン・シチュエーションものの展開じゃん、
想像通りで安っちいなあ」って僕も観ていたんだけど・・・
ところがだ・・・
ラストで、ああーーーーっ、ぞぞーーーーっ!!

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失礼だけど小品です。
A級とB級の間くらいのカルトムービーって感じ。
でも、テレビドラマの『世にも奇妙な物語』でも観るつもりで観てませ―。
そしたら、辞書で「invitation」のもう一つの意味
確かめたくなること請け合い!

★個人的クオリティ度 6.0点
★個人的好きだなあ度 9.0点






♪ 絶体絶命 / シシド・カフカ




取り返しのつかない日々を取り返しに ~『永い言い訳』


ツレアイさんに、恋してますか?

出会ったばかりの頃みたいに、
明日、手をつなごうとか、抱きしめたいとか、チューしたいとか、
そんなことを考えてドキドキしたり、残念がったりしてる?

いつも一緒にいたいとか、ずっと話していたいとか、
ちょっとした仕草や言葉にキュンキュンしたりしてる?

・・・なわけないよねぇ。
そりゃそうだよね。
だって、それって、“恋愛感情” だもんね。
結婚にいたって、ふたりの子供を授かるまでの
“夢の期間”
だもんね。

“謎解きの期間”“修業期間”“自分で自分の気持ちに魔法をかける期間”
とにかく、夢中。
恋は盲目って言うよね。

・・・なんて言うと、「そんなことねーよ、いまでも、
今度、遊園地に行こうとか、映画観に行こうとか、
おいしいものを食べに行こうとか、ウキウキやってるぜー」
って言うむきもあるかも知れないけど、
それは、「あの人と一緒なら、どこに行ったって楽しい」
って思ってたあの頃のウキウキとはちょっと違うような気がするなあ。

いやいや、結婚してからは、
ツレを好きだという気持ちが失せてしまって地獄だよ、
なんて言いたいんじゃないよ。
結婚してからだって、相手を好きだという感情はあるし、
いつも、愛おしくだって思っている。

でも、それは、“恋愛感情” というのとは違う気がするなあ。
「そこからは、恋ではなく愛なのだ」ってよく聞くセリフだけど、
個人的には、かなりいい線言っていると思うけど、
それも微妙にあいまいな言い方な気がする。

かのサン=テグジュペリは『人間の土地』で、
愛するということは、
お互いに顔を見つめ合うことではなくて、
一緒に同じ方向を見ること

・・・って言ったけど、それそれ!

おつきあい期間は、「見つめ合い」で、
結婚してからは、「同じ方向を見る」だよね。

だから、夫婦の愛情って、恋愛時代の「ぽわーんとした愛」とか、
友達との「友愛」みたいなのとは違って、もっと
サイド・バイ・サイドというかギブ・アンド・テイクな絆ではあるけど、
でも、一緒に仕事をする仲間との「同志愛」というのとも違うし、
一緒に暮らす男女の間だけに生まれる感情なんじゃないかな。

「一緒に生活を高め合う男女」ならでは持てる「思いやり」
みたいなものなんじゃないのかなー。



で、この映画の夫婦は、その「一緒に生活を高め合う男女」ならではの
「思いやり」がまったくないんだな。

だって、お互い結婚した頃から、それぞれ自分がやりたい仕事に打ち込んで、
それぞれの目標を追求してきたんだから。
そう、結婚してもバラバラの方向を向いて来たということ。

だもんだから、子供もいない。
そりゃもう、ひととき罹る熱病であるところの恋愛感情が薄れれば
何のために一緒に暮らしているのかわからなくなるよな。

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黒木華ちゃんの軽い濡れ場も観られるぞー。

そんなんだから、憎しみ合っているわけではないんだけど、
しぜん、諍いばかりが目立つようになる。
共同作業をしているわけではないので、
相手の辛苦を「思いやる」必要も薄いからだな。

ある時、おっきめの諍いが起こる。
共同作業をしているわけでもなく、子供もいないんだから、
いまだに恋愛感情だけが絆のはずの二人には、破局の危機だ。

ポスターのコピーにあるように、
そのまま出かけてしまった妻は、そのまま帰らぬ人となってしまう。

残された夫は、それでもちっとも悲しくなかったんだけど、
コトの流れで、一緒に亡くなった妻の友達の遺された家族の面倒をみるうちに
「家庭の幸せ」というものをやっと知ることができるんだな。
でも、もう遅い。
取り返しがつかないのだ。

002友達の子供たち.png

この映画は、仕事や目標の追求・成功と、家庭の幸福を
同時に得ることはムリという文脈で描かれている気がする。
そして、どうしたらうまくいくのかは描かれていない。

そういえば、答えを出さずに終わる映画を作るのが好き
西川美和監督の作品だわー。
しかも、原作の小説も脚本も。

でも今回は少し、師匠の是枝(裕和)節が入っているかな。
リアルな日常・明篇の是枝に対する、リアルな日常・暗篇の西川
って感じかな。

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二度観したっけ、脚本の妙に気づいたぜ。
物語冒頭で、妻役の深津絵里が夫を置いて出かけて行く時に吐く
セリフが切ないんだわー。



たまたまツレと口ゲンカをして、
ツレと罵りあったりすることって時々あるよなあ。

それが、“生活幸福化委員” どうしの意見交換ゆえの摩擦
というのならいいけど、そうじゃない場合は
この映画を思い出すことにしよっと。

だって、どちらもいつか死んでしまうんだから、
その時に「取り返しのつかないことを、たくさんしてしまった」
なんて思いたくないもんな。
「ああ、一緒に暮らせて幸せだったなあ」って思いたいもんな。

あ、いけね、独身の人には関係ないハナシだったかなあ。





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●永い言い訳(ながいいいわけ)
2016 日本
上映時間:124分
監督:西川美和
原作:西川美和
脚本:西川美和
製作:川城和実、中江康人、太田哲夫、長澤修一、松井清人、岩村卓
プロデューサー:西川朝子、代情明彦
撮影:山崎裕
編集:宮島竜治
編集:宮島竜治
衣装:小林身和子
ヘアメイク:酒井夢月
サウンドエフェクト:北田雅也
挿入歌:手嶌葵「オンブラ・マイ・フ」
キャスティング:田端利江
助監督:久万真路、菊池清嗣
製作会社:「永い言い訳」製作委員会(バンダイビジュアル、AOI Pro.、
     テレビ東京、アスミック・エース、文藝春秋、テレビ大阪)
配給:アスミック・エース
出演:本木雅弘、深津絵里、竹原ピストル、堀内敬子、藤田健心、白鳥玉季、
   池松壮亮、黒木華、山田真歩、松岡依都美、岩井秀人、康すおん、
   戸次重幸、淵上泰史、ジジ・ぶぅ、小林勝也、木村多江(声のみ) ほか
受賞:第90回キネマ旬報ベスト・テン(2017年)
   ・助演男優賞/竹原ピストル
   ・日本映画ベスト・テン 第5位
   第71回毎日映画コンクール(2017年)
   ・男優主演賞/本木雅弘
   ・監督賞/西川美和







♪ そばにいて / ケツメイシ





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